近年、スマートフォンによる位置情報活用サービスが多く提供されています。例えば、店の前を通ると割引クーポンを発行するサービスや、LINEアプリを起動していると近くに自動販売機があることを通知してくれるサービス(※1)などがあります。多くのサービスは、「ユーザの近くにあるもの」を通知してくれるものですが、現在のトレンドとして、従業員配置最適化や商業施設内ナビゲーションなどへの活用のため、屋内における現在位置測位技術が求められています。
屋外の場合はGPS衛星を使った位置測位が一般的ですが、残念ながら屋内ではGPS衛星の信号を受信することが出来ず、代替となる技術が必要とされています。
AppleやGoogleなどの最大手IT企業も屋内位置測位には力を入れており、市場調査によると屋内測位サービスは2021年に約2.6兆円規模の市場になると言われています(※2)
- ※1 「LINE」をかざすとポイントがたまる自動販売機サービス「Tappiness(タピネス)」を4月13日(木)より開始
http://www.kirin.co.jp/company/news/2017/0413_01.html(外部リンク) - ※2 Indoor Location Market – Global Forecast To 2021
http://www.marketsandmarkets.com/PressReleases/indoor-location.asp(外部リンク)
従来の屋内測位技術
従来用いられてきた主な屋内測位技術として、下記の技術が挙げられます。
・WiFi:複数のWiFiアクセスポイントから受信した電波強度の違いから、三点測位によって現在位置を推定する技術。WiFiアクセスポイントは既に多くの場所に敷設されているため追加設備コストを抑えられるが、後述するビーコンと比べて測位精度が劣る。
・ビーコン(BLE):複数のビーコンから受信したBluetooth電波強度から、三点測位によって現在地を推定する。ビーコンは小型かつ省電力であるため柔軟な設置が可能であるが、電波の干渉および反射によって精度が出ないケースがある。
・歩行者自律航法:スマートフォンのジャイロセンサや加速度センサで取得された値から、移動向きや移動距離を計算して現在地を推定する。絶対位置ではなく相対位置の推定技術であり、スタート地点の指定とセンサエラー蓄積誤差の補正が必要。
・画像認識:あらかじめ取得した屋内参照画像と、カメラで撮影した画像の照合により、撮影箇所(自己位置)を推定する。他技術と比べて計算コストが大きいが、狭い領域内の位置測位であれば、近年デプスセンサとの組み合わせにより高精度の測位を実現している(※3)。
・IMES(屋内GPS):GPS衛星と同じプロトコルの信号を発信するIMES送信機を屋内に設置し、各IMES送信機に設定された緯度・経度・高さ情報を読み取って位置推定を行う。屋内外のシームレスな位置測位を容易に実現できるが、IMES信号受信のため専用機器が必要。
いずれの技術も、十分な精度が実現できない/計算コストが高い/専用機器が必要等の理由により、決定的な技術がまだ登場しておりません。
- ※3 Google 'Visual Positioning Service' AR Tracking in Action
https://www.youtube.com/watch?v=L6-KF0HPbS8(外部リンク)
NTTデータが着目した「地磁気」による屋内測位とは
NTTデータでは、上記の精度・計算コスト・専用機器の課題を解決できる新しい技術として、「地磁気」を活用した屋内測位に注目しています。この技術は、屋内では建物の鉄骨等構造物の影響で異なる磁気パターンが生じる特徴を活用して、事前に作成した磁気データベースと現在の磁気データの照合によって自己位置推定を行います。
図1:「地磁気」を活用した屋内測位
NTTDATA Italiaとパートナーシップ契約を締結しているGiPStech社の技術では、市販のスマートフォンを使用して、リアルタイム処理で誤差2m以下の精度で測位を実現しています。(※4)
- ※4 2017 INDOOR LOCATION TESTBED
http://www.geoiotworld.com/testbed(外部リンク)
まとめ
本稿では、屋内測位技術のニーズおよび各種技術の概要を紹介いたしました。NTTデータでは多くのお客様へのヒアリングを通じて、様々な場面で屋内測位に対するニーズが高いことを確認しており、各技術の得意不得意を考慮しながら、お客様の要望を実現する屋内測位ソリューションの提案を進めてまいります。