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2022.8.18業界トレンド/展望

デジタルマーケティングの変遷と現在地を解説!いま必要な差別化要素とは?

マーケティングの手法は時代とともに変化してきました。最近よく耳にする「デジタルマーケティング」もここ数年の間に進化しています。この記事では「伝統的マーケティング」から今注目すべき「デジタルマーケティング2.0」まで、変遷を振り返りながら最新のデジタルマーケティングについて解説します。

NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。

マーケティングの定義をおさらい

マーケティングとは

マーケティングの手法は時代とともに変化します。しかし、マーケティングとは何か?という定義は、変わることはありません。世の中ではマーケティングの定義はさまざま語られていますが、ここでは少しかみ砕いた形でおさらいしたいと思います。

マーケティングとは、顧客・市場に対して、新しいサービスや商品といった“新しい価値”を提供し、市場を創造すること、です。もう少し細かく表現すると「顧客・市場に向かって、Why(なぜやるのか、なにをやりたいのか)・What(どんな価値を提供するのか)・Who(誰に対して価値を届けるのか)・How(どうやって届けるのか)を考え、一貫性・整合性を持って取り組むこと」といえます。

マーケティングとは、顧客・市場に対して一貫性・整合性を持って行うこと

伝統的マーケティングとは?

伝統的マーケティングとは

デジタルマーケティングが誕生する前のマーケティングをデジマイズムでは“伝統的マーケティング”と定義します。伝統的マーケティングでは、マーケティングの定義である「Why、Who、What、How」を「SWOT+STP+4P」で分析した上で戦略を立案し取り組んでいました。

マーケティングの第一段階としてまずは自社の事業環境を「SWOT(強み・Strength、弱み・Weakness、機会・Opportunity、脅威・Threat)」で分析し、参入する市場を決めます。

狙う市場が決まったら次に「STP(Segmentation・セグメンテーション/Targeting・ターゲティング/Positioning・ポジショニング)」により、市場を細分化し、誰をターゲットにして自社の製品をどこに位置づけるかを導きだします。

そして、最後に「4P(Product・製品/ Price・価格/Place・流通/Promotion・プロモーション)」のフレームワークを用いて商品戦略を検討し、商品を市場へ届けます。

日本の経済・市場が成長を続けていた時代は、この「SWOT+STP+4P」による分析や戦略がマーケティングの主流でした。しかし、1990年代に入ると日本の市場の多くは成熟期・衰退期を迎え、需要と供給のバランスが逆転します。需要が低下し、供給過多となった市場では、従来のマーケティング手法ではモノが売れない時代に突入し、マーケティングも変化していくのです。

需要が低下し、供給過多となった市場では、従来のマーケティング手法ではモノが売れない

デジマイズムが考える「デジタルマーケティング1.0」とは?

需要低下、供給過多となると同時に、インターネットが普及し、ユーザーがパソコンやスマートフォンを持つようになりました。そこで新たなマーケティングとして「デジタルマーケティング」が主流となる時代がきました。

伝統的マーケティングで紹介した4Pのうち、「Price」は現金による支払いから、電子マネーやバーコード決済といったキャッシュレスの支払いへと変化しました。また、「Place」は実店舗からEC、そしてアプリやSNSなどさまざまなチャネルを利用できるオムニチャネルへと変化しました。さらに「Promotion」では、それまでチラシやテレビといったアナログで展開していた広告、キャンペーン、販促も、デジタル化されWeb・SNSへと広がっています。

しかし、本質的には実は伝統的マーケティングと変わっていません。この時代をデジマイズムでは「デジタルマーケティング1.0」と定義します。「デジタルマーケティング1.0」はあくまでアナログの電子化にとどまっていたといえます。

「デジタルマーケティング1.0」はあくまでアナログの電子化にとどまっていた

デジマイズムが考える「デジタルマーケティング2.0」とは?

現在「デジタルマーケティング1.0」は終わり、さらに進化を遂げた「デジタルマーケティング2.0」へと突入していると、我々は考えています。これには2つの理由があります。

1つめはテクノロジーの進化です。お客さまを理解するためのデータの解像度が上がり、企業がお客さまの動向や趣向を細かく把握できるようになりました。さらにスマートフォンをはじめとしたユーザー側のデジタルツールも普及したことも大きな要因です。

2つめの理由は成熟期を迎えた日本市場の変化です。業界1位企業はその規模を活かしコスト優位性を築く「コストリーダーシップ戦略」を採ることができます。一方、規模ではかなわない業界2位以下の企業がお客さまに選んでもらうためには、価格以外の付加価値を提供することで競合する企業と差別化をするしかありません。そのためには「デジタルマーケティング2.0」は大きな武器となりうるのです。

「デジタルマーケティング2.0」では、伝統的マーケティングでは重要な手法であった「STP+4P」はすべてデジタルにより高度化されました。その変化を見ていきます。

SWOTは重要性が低下

変化の激しい現代において、環境変化を分析し未来を予測する「SWOT」は、これまでと比べて重要度が低下しました。市場(顧客)を知り、競合を知ることで自社の現状を分析するという視点そのものは重要ですが、不確実性の高い「デジタルマーケティング2.0」の世界では過去からの変化を考えるよりもありたい未来を考えるほうが重要と言えます。

STPは対象が個人へと変化

これまでトップダウン的にマス市場をある大きさに分割する考え方だった「STP」は、「デジタルマーケティング2.0」の世界ではお客さま一人ひとりの多様で強い嗜好を捉える「1to1の顧客理解」と、それによるボトムアップ的な市場形成に変わってきました。

すべてが進化した4P

① 「Product」は画一的なモノを販売するのではなく、「生活者の声によるモノづくり&体験価値付加」が必要となります。1to1のカスタマイズ・オーダーメイドが求められ、さらにデジタルによる体験価値の付加や顧客理解に基づく継続アップデートも欠かせません。
② 「Price」は同一価格ではなく、ダイナミックプライシング、利用量課金、サブスクリプション、後払いなど「個々の生活者に合った金額や支払方法の多様化」へと変わりました。
③ 「Place」はチャネルの多様化という企業目線の考え方から、「生活者の都合に合わせた受け取り方法の多様化」という生活者目線へと進化しました。OMO(Online Merges with Offline)などが当たります。
④ 「Promotion」は新規顧客の獲得よりも既存顧客とのエンゲージメント形成が中心となり、顧客との対話によって価値を創造する「双方向コミュニケーション」へと様変わりしました。

伝統的マーケティングからデジタルマーケティングへの変遷

デジタルマーケティング2.0の導入事例

「デジタルマーケティング2.0」の世界はすでに始まっています。実際にどのように導入されているのか、4Pそれぞれの観点で事例を紹介します。

〈Product事例:一人ひとりに合わせたヘアケア用品を提供〉

ヘアケアブランドMEDULLA(メデュラ)では、オンラインで10の質問に回答するだけで髪質や希望に合わせた処方カルテを発行。約5万通りからの中からお客さまのカルテに合わせ、カスタマイズしたシャンプーやトリートメントを製造し、届けてくれるサービスを展開しています。


MEDULLA(メデュラ)|オーダーメイドシャンプー&リペア
公式サイト:https://medulla.co.jp/

〈Price事例:スマートショッピングカート導入で嗜好に合わせたベストプライスを提供〉

福岡県を中心に、全国各地で264店舗を展開するスーパーマーケット「トライアル」では35店舗でスマートショッピングカートを導入しています。スーパーマーケットの買い物カートにタブレット端末とスキャナーを搭載しており、商品を手に取ってバーコードをスキャンすることで並ぶことなく買い物を済ませることができます。さらにスマートショッピングカートを利用するお客さまのみが利用できるクーポンを用意。画面上に表示されたクーポンを選ぶとお得な料金で商品を購入できます。


TRIAL-トライアル-
公式サイト:https://www.trial-net.co.jp/

〈Place事例:ECで購入した商品を実店舗で提供〉

ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取るBOPIS(ボピス: Buy Online Pick-up In Store)はすでにさまざまな業種で導入されています。

アパレル大手のユニクロでは、ECサイトから注文した商品を注文時に選んだ店舗で受け取ることが可能です。荷物を受け取るために自宅にいる必要がなく、好きなタイミングで受け取れるため一人暮らしのビジネスパーソンなどに好評です。


ユニクロ|ユニクロ ORDER & PICK|公式オンラインストア(通販サイト)
公式サイト:https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/feature/shopping-guide/order-pick/

〈Promotion事例:ユーザー同士、ユーザーと企業で双方向コミュニケーション〉

登山家をターゲットとした登山地図アプリ「YAMAP(ヤマップ)」では、ユーザーが登山で歩いた軌跡を保存した活動日記を作成したり、瞬間(モーメント)を共有したりできる機能を搭載。ユーザー同士はフォロー・メッセージ送信・コメント書き込みなどの交流をすることができます。アプリを提供する企業も顧客の声を受けるカスタマーサポートを重視し、登山に行って写真などをアップすると『DOMO』というポイントを付与。貯まった『DOMO』は山の保全や登山道整備などのプロジェクト支援に使うことができます。山が好きなお客さまに企業として新たな価値を提供し、お客さまとしても自分の好きな山を通して企業とつながる双方向コミュニケーションを実現しています。

出典:YAMAP / ヤマップ|登山をもっと楽しく、登山情報プラットフォーム:https://yamap.com/

今後ますます広がっていく「デジタルマーケティング2.0」

ここまで「伝統的マーケティング」から「デジタルマーケティング2.0」まで時代とともに変化するマーケティングの変遷を振り返ってきました。かつてはいかにしてマスに商品を届けるがマーケティングのメインテーマでした。しかし、「デジタルマーケティング2.0」の世界ではターゲットは個人へと変わりました。デジタル化した4Pでお客さま一人ひとりのニーズに合わせたアプローチをする「1to1マーケティング」が大きな鍵を握っています。

デジマイズムでは「デジタルマーケティング2.0」はさまざまな業界・業種で広がっていくと考えています。「デジタルマーケティング2.0」を参考に、今後のマーケティングのあり方を検討してみてはいかがでしょうか。NTTデータではマーケティング戦略の検討や実装、運用と言ったご支援だけでなく、この記事のようなマーケティングの変遷と言った意見交換も積極的に行っていますので、お気軽にお声がけください。

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