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2022.10.5業界トレンド/展望

【対談】スタートアップエコシステムに学ぶ!大企業における新規事業の挑戦と魅力

NTTデータの新規事業創造に奮闘する社員たちが集う「ビジネスデザインスプリント(BDS)コミュニティ」。これまで新規事業を数多く手がけてきたキュレーションズ株式会社のPinky(荒井宏之)さんをゲストに招き、大企業内の新規事業にどう取り組むべきか、そして40代の中間管理職世代が新規事業にどう向き合っていくべきかを、BDS開発・運営メンバーの西村祐哉さんと、同じくBDS開発・運営メンバーのデジマイズム編集長・小木曽が熱く語り合いました。新規事業に取り組みたい人は必見の対談です!

NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。

【対談メンバー】

荒井 宏之 a.k.a. Pinky ※写真左
キュレーションズ株式会社 Principal
イノベーション戦略デザイナー。メガベンチャーで新規事業創出に従事後、複数のスタートアップでCOO、CSO、子会社CEOを歴任。2019年よりキュレーションズに参画。スタートアップ村出身ながら大企業発イノベーションを通じ世界をよりよくすることをミッションに活動。イノベーション戦略策定・文化醸成・制度設計・人材育成を多角的に体型立てた支援を実施。

西村 祐哉 ※写真中央
株式会社NTTデータ 法人コンサルティング&マーケティング事業部 ビジネスデザイナー
FORTH Innovation Methodマスターファシリテーター。ベンチャー、スタートアップ起業、コンサルファーム、電機メーカーを経てNTTデータに帰還。イノベーション創出・新規事業開発加速支援と、人財と組織づくりのノウハウを持つビジネスデザイナー。その一方で国外シンクタンクでのスマートシティ研究者としての経験も持つ。現在は、"ひとのいとなみ"に着目した都市と都市空間のDXと顧客共創型のイノベーション創出に従事。ビジネスデザインスプリント開発チームの一員でもある。

小木曽 信吾 ※写真右
株式会社NTTデータ SDDX事業部 シニアビジネスアクセラレーター
NTTデータ入社後、大手小売業向けのECサイト構築・運用などに従事。その後、様々な業種の大手クライアントを対象に、テクノロジーを活用した新規事業創出のコンサルティングに10年ほど従事。現在は消費財流通業界のマーケティングDXや新規サービス創出支援に取り組む。ビジネスデザインスプリント開発者であり、デジマイズムの編集長も務める。

社内新規事業コミュニティの価値~孤独の解消と暗黙知の共有

小木曽:今回の「ビジネスデザインスプリント(BDS)コミュニティ」特別対談は、キュレーションズ株式会社のPinkyさんに来ていただきました。Pinkyさん、まずは簡単に自己紹介をお願いします。

Pinkyさん:私自身は大企業に所属したことがなく基本的にスタートアップを転々としてきました。10年ほど前に大企業向けにセミナーでお話する機会をいただいたことをきっかけに、新規事業を外部からサポートさせていただいています。

スタートアップの経営にも携わってきましたが、日本でスタートアップを作っても、世界を変えるイノベーションを起こしにくいことに気がつきました。その一番の要因は株式市場のマーケットサイズの違いです。上場時のバリュエーションが大きく異なるがゆえに、日本のスタートアップが1億円を調達するのに四苦八苦している時に、アメリカや中国のスタートアップは100億円を調達する。スピード感や金額の規模が全然違います。

ひるがえって日本の大企業を見てみると、ブランドがあって、顧客資産があって、販路があって、すでに世界に展開している。めちゃくちゃいい武器を持っている。しかし、それを活かしたイノベーションが起こせていない。

しかし大企業の人たちは真面目でいい人がすごく多い。既存事業で培った武器に加えて、イノベーションを起こすための方法論を武器として手に入れれば、大きく変わる可能性がある。そうして、大企業の人たちとの付き合いを深めるたびに、自分は大企業に一度も所属したことがないのに、大企業が好きすぎるというところに辿りつきました。

今は大企業が新規事業を作る際の戦略策定や制度設計、人材育成、事業創出のためのネクストアクションの整理などを仕事としています。それを通じて「ジャパン・アズ・ナンバー1・アゲイン」を大企業発で実現したいということをミッションにしています。

小木曽:ありがとうございます。ではまず、せっかくBDSコミュニティに来てもらったので社内新規事業コミュニティの存在について話していきたいと思います。当社のBDSコミュニティはPinkyさんの目にはどのように映っていますか?

Pinkyさん:セミナーなどでいつもお伝えしているのが、社内ビジネスコンテスト(ビジコン)3年目の壁という話です。だいたいビジコンは3年目に応募件数が0件に限りなく近づいて、制度自体が終わるケースが多いんです。

その原因は2つ。3年間も参加者がモチベーションを保てない。もう一つはアイデアの枯渇です。どのビジコンもユーザーの「不」から着想していますが、自分たちが知っている不なんてそんなにたくさんあるものじゃない。だから3年でみんなネタを使い尽くしちゃってアイデアが出てこなくなります。

その原因を防ぐためには、部署や年次、役職をまたいでフラットに議論ができる場所が、継続的にあることが重要だと私は言い続けていますが、どの会社でもうまくいってない。せいぜいチャットルームをつくるくらいです。

そんな中でBDSコミュニティのアクティブ率90%。これはめちゃくちゃすごいことで、御社は日本企業のなかで、かなり最先端を走るコミュニティづくりができています

BDSコミュニティについて語る西村さん

BDSコミュニティについて語る西村さん

西村さん:私もそう思います。私はPinkyさんほどではないですが、NTTデータに新卒で入社して3年目に辞め、会社を転々として今は2回目のNTTデータです。

大企業で新規事業をやっている人たちというのは、基本的にすごく孤独ですよね。既存の事業部の中に副業のように空きリソースで新規事業をやれと言われている人たちがいて、お互いに何をやっているのかを知らない。孤独や恐怖感に苛まれているのをすごく感じます。

それに対して、BDSコミュニティは参加している人はいろいろ大変な部分はあるけど、それをシェアしながらやれている。これまで見てきたどの会社にもこういうコミュニティはありませんでした。

Pinkyさん新規事業は型通りになんて絶対進まない。だからこそ暗黙知の共有が重要です。たとえば、壁にぶつかった時に何が起きたか、どう対処したかなどの経験則を口伝することは非常に大切になります。

また西村さんが言うような新規事業の放置問題は多くあります。ビジコン通過者を2〜3年放置した挙げ句、事業終了後に窓際の部署に飛ばすというような事例を聞いたことがあります。

結局多くの課題は、中間管理職が何もサポートしていないということにある。反省を踏まえて事務局的組織をちゃんと作ろうという動きがでてきているのは確かです。しかし多くの企業で事務局がビジコンの「運営」を仕事にしてしまっている。

社内新規事業コミュニティの価値を語るPinkyさん

社内新規事業コミュニティの価値を語るPinkyさん

スタートアップエコシステムに学ぶ~事務局や中間管理職の果たす役割

小木曽:世の中の多くのビジコンは狩猟採集型ですよね。みんなでアイデアのタネとなる「不」を探す場がある訳ではなく、元々誰かが持っていたアイデアを刈り取るだけ。そういう形だとアイデアを持っている人が減っていくのは当たり前ですよね。また、1回目のビジコンでいいところまで行ったものの、その後の出口が設計しきれておらず、結局2回目、3回目と参加していく内にモチベーションがどんどん下がってしまう。いろんなところがギクシャクしている気がします。

Pinkyさん:どの会社も事務局をつくって整備をし始めたけれど、エントリー前や通過後のサポートはあまり語られていません。事業領域ごとにやるべきことが違うので、全てを同じ型に当てはめるのが難しいのが原因だと推測しています。

だけど、サポートはできるはず。サポート体制をどう作るのかという知見がまだまだ足りない、共有されていないのでしょう。

スタートアップの場合、起業家がいて、そこに投資するVC、そしてそこに資金を出す投資家がいます。それを大企業に当てはめると、起案者が起業家、事務局または中間管理職がVC、その上にいる役員や社長が投資家になります。

VCは投資家から資金を得るために自分たちのめざすべきビジョンやミッションとしての使命感を語ります。ところが大企業の新規事業ではこれがない。誰もビジョンを語らない。中間管理職に強いビジョンがないから、事業を中長期戦略の中でのコーポレートフィットとして語ることができない。そして、投資する領域が決まらない。

新規事業は百発百中で成功することはありません。そのため10個目ぐらいで成功したら全体で損失を回収できるという具合に、ポートフォリオで管理する必要があります。これもVCである中間管理職の役割ですが上手くできているとは言えません。

また、暗黙知の蓄積も大切です。私が関わったある会社では、過去にある領域の新規事業で失敗していたのですが、ビジコンで新たにその領域の事業提案がありました。すごくいい案だったのですが、最終ピッチの段階で「うちの会社はその領域ではすでに失敗しているよね」という理由で採択されませんでした。本来は過去の失敗を知見として次に活かすべきで、スタートアップ界隈ではVCが普通にやっていることです。

そして何より、大企業では中間管理職が起案者をサポートしていない。なぜか評価者側に回ってしまうんです。起案者にとっては敵しかいません。もちろんVCも厳しいフィードバックはしますが、自分が投資をすると判断したのですから、投資家に対してはその会社に投資し続ける理由を自分の言葉で説明します。大企業の中間管理職はそれができていない。

「ビジョン実現を見据えてポートフォリオを考えて投資をする」「暗黙知を貯めておく」「事業化をサポートする」。この3つは大企業も組織的な構造をつくって、意識的に対応していかなければなりません。ところが、その立場にあるべき社内ビジコン事務局メンバーや新規事業部門の部長が3年で異動してしまう。最低でも8年から10年は異動させないでほしいですね。

事務局や中間管理職の果たす役割について語る西村さん・Pinkyさん・小木曽

事務局や中間管理職の果たす役割について語る西村さん・Pinkyさん・小木曽

中間管理職へのススメ~外との対話で自分の才能と限界を知る

小木曽:事務局の人たちというのは、スタッフ部門出身の方が多くて、必ずしも事業開発経験があるわけではないというのも悩ましい問題ですよね。そしてVC的な存在であるべき中間管理職自身も新規事業経験がない点も問題だと思っています。彼ら自身の責任ではない面が大きいのですが、こうした状況に置かれた事務局・中間管理職は何をすべきだと思いますか。

Pinkyさん:彼らが上司の説得をする一つの方法として、あの会社でこういうふうにやっているんですよというだけで、話が通りやすくなったりとか、他社の事例を活用していくのが重要だったりしますよね。

最近、いろいろな会社の中間管理職的ポジションの人を集めて、飲み会を開いています。大企業の人はNDA(秘密保持契約)の文化があって、他社との情報交換を嫌がる傾向がありますけど、その雰囲気を少なくとも新規事業界隈だけでも壊したい。

私があるスタートアップでCSO(最高戦略責任者)をやっていた時は、競合のCEO(最高経営責任者)とよく飲みに行って意見交換していました。スタートアップ界隈では競合同士でも経営レイヤーからスタッフレイヤーまで普通に情報交換しています。スタートアップ界隈では、競合同士が真似をすることは悪いことではないんです。なぜかというと、同じマーケットを作っていく仲間だから。

西村さん:大企業は共同でマーケットグロースしようというより、限られた目に見えるパイの中で自分達がどれだけ食えるかという発想で考えてしまうところがあります。

新規事業での失敗というのは、人が悪いか、間が悪いか、ネタが悪いかしかない。さきほどの事例も3年後にいいアイデアが出てきたということは、事業を始めたタイミングが悪いから失敗したのかもしれませんよね。人が悪いというのも、その人の能力うんぬんではなくて、たまたまその事業には向いていなかったというだけかもしれない。それはチームを変えることで改善できます。ネタが悪いのはどうでしょうか。

Pinkyさん:ネタが悪くても、仮説検証で得られたインサイトは宝の山のはずなんです。それをバッサリ切り捨てちゃうのは問題ですよね。BDSコミュニティのような場で、失敗であってもすべてオープンにして、口伝していくのがいいんですよね。

西村さん:事業を停止した、活動停止したことは別に失敗ではないんです。失敗から何を学んだのか、その報告をしてくれれば、それはグッドチャレンジに変わります。一番問題なのは失敗を隠蔽して、見ぬふりをすることですね。

小木曽:最近はNDA文化がちょっとずつ柔らかくなってきたのを感じていますがPinkyさんから見て大企業が変わってきたというイメージはありますか?

Pinkyさん:新規事業のマネジメントに携わって、2周目に入っている人たちは情報交換の重要性に気づいてきているので、制度などの「仕組み」に関しては共有してもいいという意識に変わってきています。だからこそ中間管理職が外の人と意見交換をしないのはすごくもったいない。

私は今年で40歳なんですが、この世代は最も詰め込み型教育を受けています。答えのないクリエイティビティさがどういうものなのかを考える機会がなかったんです。しかも、就職した時から不況だったので挑戦する機会もほとんどなかった。上の世代を保守的だと批判している僕らの世代の人が、実は一番保守的な世代になってしまっている可能性があります。それは自覚する必要がある。

大企業で経営を学ぶ経験は実はほとんどありません。役員になってはじめて経営者になるんです。一方で、新規事業に挑戦した若い世代は、規模は小さくてもその新規事業を通して経営が学べるわけです。40代の中間管理職は経営を学んでいないのに、20代や30代の若者達は少なからず経営をやっている。経験値で間違いなく抜かれてしまうことが目の前で起きるかもしれない時に、保守的なままか、自分も挑戦するのか、もしくは挑戦者をサポートするのか。3つしか選択肢がないんです。どれかを選ばなければなりません。

この3つの中から保守的なままでいることを選ぶのは、キャリアとしてすごくリスキーです。いつか若い世代に追い抜かれて立場がなくなるのではと、外から見ていて感じます。

中間管理職のキャリアを説くPinkyさん

中間管理職のキャリアを説くPinkyさん

小木曽:Pinkyさんや西村さんのように一度外へ出てみるというのは、意識を変えるためにはいいですよね。私自身も2年間ほどですが、資本関係のない企業に出向していたことが、自身のキャリアの大きな気づきになりました。一度外に出て違う文化に触れることで、視野が広がり、さまざまな選択肢が見えてくるということもありますよね。

Pinkyさん大企業の人はもっとスタートアップの人たちと触れ合う経験をした方がいい。大企業は研修制度がしっかりとあって、人財の平均点が総じて高い。対して、スタートアップは平均にしたら大企業には勝てないですが、ごく一握りのとびぬけた人たちが上手く歯車を噛み合わせて大きな価値を出すような組織構造になっています。誰かの不得意を埋める誰かの得意が噛み合って背中を預けあっている。新規事業のチームは本来そうあるべきなんです。

大企業の人たちも、組織の中で丸くなってしまっているだけであって、本来皆さんもどこか飛び抜けた才能があるはず。だけど、成熟期の企業では飛び抜けた才能は生かしにくい。新規事業では才能を活かす組織をつくることが非常に重要です。そのためまず挑戦し、自分ができることとできないことを自覚するのが第一歩になります。

小木曽:本当にその通りですね。私は今がちょうどその状態で、本業はビジネスアクセラレーターですが、自組織で自らプロダクトマネージャーとして事業立ち上げに取り組みつつ、社内ビジコンにもエントリーして新たな企画も進めているので、毎日自分の限界にぶつかっています(笑)。

Pinkyさん:あと、新規事業をやるとチームの大切さが分かりますよね。既存事業ももちろんチームで働きますが、事業計画に沿って細分化されたKPIの達成が目的になっていますよね。それに対して、新規事業はやらなければいけないことが山ほどあるのに人数が少ないので、歯車を噛み合わせて組織を作らないとうまくいかない。こういうところも、新規事業で経営が学べるところとも結び付いてきます。経営とは目的達成のための資源の最適配分に他なりませんから。

新規事業で壁に当たったときの振る舞い~スタートアップとサラリーマンの違い

スタートアップとサラリーマンの違いを語る西村さん・Pinkyさん・小木曽

スタートアップとサラリーマンの違いを語る西村さん・Pinkyさん・小木曽

小木曽:新規事業という言葉の意味を改めて考えると、自社にとっても新規だから既存と違うことをやらなきゃいけないと言うのは当たり前なのに、意外とそうなっていない。BDSコミュニティを運営している理由の一つに、既存事業では重要な部門や役職は関係なく、良いことを言っている・やっている人が支持される状況をつくりたいという想いがあります。そういう普段の振る舞いを変えていくのも大切なことだと思いますが、Pinkyさんはどう考えていますか?

Pinkyさん:たとえば大企業は役職をつけて〇〇部長と呼ぶ会社っていまだに多いですけど、全員あだ名で呼ぶとか、そういうところからまず変えていかないと文化醸成というのは難しいと思っています。結局、文化醸成とは行動様式をどう変えていくかということと同義なので、それをルール化して、強制的にやっていくことも時には必要です。

加えて、壁にぶつかった時に乗り越えられない言い訳を探すのがサラリーマンで、乗り越えられる方法を探すのがスタートアップの起業家という話をよくします。社内新規事業の場合、その壁が上司や役員、社長というケースは多いですが、話をしたけれど分かってくれないと諦めてしまう。私からすると、あなたが分かる説明をしていない、上司を突破するのもあなたの仕事だ、と感じます。これはあなたの責任ですって言い続けていると、なんでこの人はメンターなのに理解してくれないんだみたいな顔をされてしまうんですが(笑)。

サラリーマンとスタートアップの違いを語る小木曽

サラリーマンとスタートアップの違いを語る小木曽

小木曽:サラリーマンとしては、誰かのせいにすることで気が楽になる部分もあるので、耳の痛い話ですね。そういう時こそ、こうしたコミュニティを活用して、上司を説得する方法とか上手いねじ込み方をみんなで共有してほしいですね。

西村さん:新規事業の場合、話を通すためには手を替え、品を替えやっていくしかありません。だけど、既存事業は基本的には書式が定まっていて、その中身を磨き込んで、重箱の隅的なポイントを無くしていって、一定の水準に来ると「よし、許してやろう」と通る。その感覚のズレや違和感というのはありますよね。

Pinkyさん必要なのは対立ではなく、対話なんですよね。だから相手のことも理解してあげなきゃいけない。社長であっても、こと新規事業に関しては分かっていないことも多い。だからひとつひとつ丁寧に相手が分かるように説明をしていく。まさに手を替え品を替え理解を積み重ねていくことが大事なんです。

こういう話をするとスタートアップは権限委譲が進んでいるから楽だと言う人がいるんですが、そんなことはありません。実際はまったく逆です。スタートアップの起業家は日々の事業環境の変化や事業の成長に合わせてどんどん判断基準が変化していきます。朝OKだと言っていたことが夕方にはダメになることも多々あります。

その点、大企業の人はどんなロジックで判断するのかが推測しやすい。もちろん人や立場によってその判断基準は異なりますが、そうそう変わるものじゃない。だからこそ例えば昔部下だった人にどう伝えればいいのかを相談するとか、攻略方法を見つけることができるんです。

私自身の経験をお話しすると、昔携わっていた新規事業で、社長の決裁が下りているのに人事部や経理部が動かないために事業が進捗させられなかったことがあります。その時それぞれの部署に毎日のように顔を出して、部署の人と仲良くなって仲間になってもらったり、担当の役員に直談判に行ったりして事業を進めたことがあります。どこにでも抵抗勢力はいます。相手が自覚していないだけということも多いです。だからこそ、どれだけ手を替え品を替え策を打ち続けるかが重要なんです。

これはスタートアップがいい、大企業がいいという話ではないんです。それぞれ楽なところも面倒なところもある。一概にどちらの方が事業が作りやすいなんて比較は無意味です。比較ではなく、それぞれの良さを活かしてコラボレーションをすればいい。武器として全部使えばいいだけなんです。

私が大好きな大企業の人たちは、「大企業病」なんて言葉に惑わされずに、みんなもっと自分たちが持つ圧倒的な強みに自信を持って取り組んでほしいです。

小木曽:そう言われてとても勇気づけられました。ぜひ、Pinkyさんのお話を参考にして、多くの人に新規事業に挑んでほしいと思います。本日はありがとうございました。

対談を終えた西村さん・Pinkyさん・小木曽と司会のShellyさん

対談を終えた西村さん・Pinkyさん・小木曽と司会のShellyさん

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