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2022.12.14業界トレンド/展望

責任ある自由を ~つながる未来の職場づくり~

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業や組織は会社勤務を中止し、リモートワークの導入が必要となった。新型コロナウイルス感染拡大が収束しつつあり、出社とテレワークのハイブリッドな働き方が定着した今、対面でのやり取りなしでは、組織からつながりが消えてしまう心配があるのではないか。
目次

1.新型コロナウイルスによるリモートワークの導入

テクノロジーはいつの時代も、諸刃の剣でした。ある面で、テクノロジーは世界を根底から覆す不安定要因であり、ビジネスモデルや市場、そして長年にわたって確立されてきた働き方を破壊してきました。しかし、同時に多くのことを可能にするつながりを生む手段でもあります。

テクノロジーは、絶えず変化をもたらします。ところが2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大により旅行や社会生活に対する制限がほとんどの国で実施されたことで、変化のスピードが加速しました。3月末までに100カ国以上(※1)が全面的または部分的なロックダウンに突入しました。何百万もの企業が職場のシステムや構造の見直しを迫られるという大きな転換点が突然到来したのです。短期間のうちにリモートワークがニューノーマルとなった企業も多くありました。
これで混乱は起きなかったのでしょうか。もちろん起きました。ほとんどの企業が大打撃を受け、衝撃が大きすぎて存続できなかった企業も数多くあります。一番影響が小さかったのは、デジタル化をすでに進めていた「つながりのある組織」ではないでしょうか。たとえばNTTデータでは、アジャイルモデル、技術的専門知識とテクノロジーインフラを活用して、完全なリモートワークを比較的スムーズに受け入れることができました。

簡単な課題でなかったことは確かです。不確実性の高い時代にビジネスを継続させることは、常に困難を伴いますが、当社には技術的・文化的な観点からの備えがあったため、強靭性を保ち、強制的な人員削減や解雇を行わないという約束を守ることができたのです。残念ながら、すべての企業が実行できる訳ではありません。

2.つながりの土台となるもの

新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かいつつある(※2)今、一部の組織のように完全なリモートワークモデルに移行したいと考えていますか?と聞かれたら、私はノーと答えるでしょう。その理由を以下に述べます。
私の考えでは、NTTデータの強靭性の土台となっているのは、経営トップでも企業戦略でもなく、私たちはこういう企業だということを体現している企業文化であり、価値観であり、行動様式なのです。

企業文化を守るためには、少しでも対面で勤務することが必要で、これがないと社員の間のちょっとした日常のやり取りがなくなってしまうというのが私の考えです。人と会ったときにどう行動して何を話すか、どのような話し方をしたかなど、些細なことかもしれませんが、その積み重ねがチームとして、ビジネスとして、私たちを結びつけるつながりとなるのです。
そのため、対面でのやり取りという要素がないと、企業文化の本質が希薄化してしまうのではないかと考えています。画面越しに相手が見えるというだけでは不十分です。これは私一人の意見ではありません。調査によると、経営幹部の4分の3は、対面での仕事なしでは会社の財務状況が悪化すると考えているそうです(※3)

3.リモートワークにおける企業文化という難題

一般的な見解とは異なりますが、リモート企業で強固な企業文化を醸成・維持することは不可能ではありません。これは正に、ロックダウン中の1年間に私が実行せざるを得なかったことです。就任してわずか3週間の新米CEOとして、誰とも会わずに2,000人企業の文化を理解することは理想とはかけ離れていますが、何とかやり遂げました。
現実には、何千マイルも離れた別の国のオフィスにいる同僚が一同に会することを可能にしてくれるのは、テクノロジーだけです。さらに、Wikiやコンテンツ管理システムを導入すれば、社員がどこにいても他の社員の知識を活用し、また知識を提供できるので、テクノロジーが個人の集合体を超越した相乗効果をもたらしてくれます。
しかし、3年近く経った今、16,000人以上の従業員を抱える地域CEOとして、こうしたデジタルインフラを生の人間のやり取りと共存させる必要があると考えています。ここ数週間、私はペルー、コロンビア、ブラジルを訪問しましたが、実際に現地でチームと接してミーティングや交流で感じるエネルギーはまた違ったものでした。
100%リモートワークを可能にするツールがあるから、リモートワークをしなければならないと考える必要はありません。リモートワークのモデルでは機能しない業種はたくさんありますし、自分という人間の核となる部分として、また自分のスケジュール構成や労働生活の構築において、職場の日常作業や交流が大きな意味を占める人もいます。

社員の出社には大賛成というのが私の意見ですが、だからといって強制や脅しで出社を求めることはありません。そのような方法は現代では通用しません。反感を買い、緊張が生まれ、関係が悪化するでしょう。そのようなことをすれば、反発を受けるだけです。アップル(※4)、テスラ(※5)、AT&T(※6)で起きたことを見れば分かります。柔軟に対応できないと、業務に悪影響を及ぼしますし、新規採用にも人財の定着にもよくありません。従業員は大事な資源なので、出社を強制し、どう反応するか様子を見るという賭けに出ることはできません。

私がいつも心がけているのは、リモートワークを希望する人たちのニーズに応えつつ、同時に出社を促す方法を見つけることです。

4.最適なハイブリッド環境に向けての提案

NTTデータには「責任ある自由」という考え方があります。これは、幅広い観点から自分に合った選択をするよう社員に奨励するもので、最適なハイブリッドワーク環境を実現するための鍵になると思います。
つまり、人間は、他人が何を必要としているかを把握して、それに対応できるように自分の行動を変容させるべきです。自分の選択が他人に影響を及ぼすときには、歩み寄る覚悟と意思が必要なのです。例えば、子供を学校に送らなければいけないので、朝一のミーティングは避けたいという人もいるかもしれないし、チームの他のメンバーで、早起きの生活をしているのでその時間のミーティングがよいと考える人もいます。全員が自分の意見を主張すると、同僚との間に対立と緊張が生まれます。これは最適な解決策ではありません。

しかし、人々が「寛大な柔軟性」を発揮し、恨みっこなしに他人の役に立てるような働き方ができるようであれば、全員にとってウィンウィンになります。
そのため、組織レベルではリモートワークをする社員がいてもいいと思いますが、月に3~4回出社することは、業務にとっても、オフィス環境での対面勤務を好む同僚にとっても、価値あることだと社員を説得するのも、私の業務の一部だと考えています。週に一度の出社が必要となるかもしれませんが、これはチームの絆を深め、ソリューションを構築し、協同作業することで、集団の利益に貢献する方法なのです。これを理解すれば腹を立てる人はいません。

しかし、出社するだけの価値があることが明確にならないと、このような理解を得ることは難しいです。オフィスは無意味なミーティングが開かれる場所ではなく、出社すれば、これまで以上のことや、これまでとは違ったことができる目的地として、行きたくなるようにする必要があります。
これが実現できれば、リモートワークによって地理的に分散し、世代的にも多様化した従業員を結びつけるために必要な、つながりの感覚を生み出すことができるのです。繰り返しになりますが、物理的なオフィスに集まることが重要である理由はここにあります。
苦労して学んだ知恵と経験を組織内にとどめるためには、団塊の世代からZ世代まで、すべての世代間で知識やスキルを共有することが必要です。特にキャリアをスタートさせたばかりの頃は、経験豊富な同僚と一緒にいるだけで知識を吸収できるため、オフィスで勤務する方がこうした知識を共有しやすいのです。議論の共有、ミーティングへの参加、ちょっとした小話などで、知らず知らずのうちに知識が蓄積されています。これは、完全にバーチャルな仕事では起こりえないことです。

5.マネジメントの新たな心構え

当然ながら、寛大な柔軟性を会社に浸透させるには、自分の価値を認められて信頼されていて、安全な場所と従業員に感じてもらえるよう、これまで以上に尽力する必要があります。
従業員のメンタルヘルスやウェルビーイングを優先していない会社や、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)を推進できていない会社では、優秀な人財の多くが離職、または「最低限の仕事しかしない」ことになるでしょう。
上司が部下の仕事に関して過度に干渉するマイクロマネジメント(※7)では、共感的なリーダーシップを発揮し、生産性や忠誠心が高く、積極的で想像力に富む従業員を生み出すことはできないということです。上司が自分のウェルビーイングを気にかけてくれていると感じる従業員は、多くの優れたアイディアを生み出すということが調査でわかっています。

コロナ禍を体験した集団的トラウマの後では、なおのことです。従業員は安全性を求めていますが、それを提供できるのは透明性と信頼が確保された企業だけなのです。
NTTデータが提示しているのは、透明性と信頼に加えて、本当の意味での目的です。人々が評価するのは、目的なのです。利益は当然必要ですが、それは他のすべてを犠牲にしてまでも成り立つべきではありません。当社がお客さまと社会全般に「目的を持ったテクノロジー」を提供すると述べているのはこのためです。たとえば、当社では社会責任プログラムの一つとして、ラテンアメリカで何千人もの人々の教育を支援しており、大きな誇りを持っています。
リモートモデルとハイブリッドモデルは定着しており、これからも勤務環境の重要な構成要素であり続けると思われます。もちろん、これを可能とする接続環境を提供するのがテクノロジーであり、組織は自宅とオフィスをシームレスに切り換えるデジタルインフラストラクチャーを提供する必要があります。10年後には、メタバースによってどのような新しい次元が追加されているのか、誰にもわかりません。もしかしたら、将来のバーチャル労働環境が非常に充実していて、物理的なオフィスという人間の空間が必要なくなっているかもしれません。
しかしそれまでは、つながりのある世界でつながりのある組織になるために、テクノロジーだけでなく人間が必要だと私は信じています。

本記事は、NTT DATAのCXO Magazineの記事“Responsible Freedom: Creating the Connected Future Workplace”を翻訳したものです。

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