頭だけの理解だけでなく
当事者と直接対話することが一番の近道

NTTデータ・ウィズで活躍している髙橋さんは、トランスジェンダーであることを公表しています。
本記事ではLGBTQ+(性的マイノリティ)を取り巻く環境について、トランスジェンダー当事者のひとりとして紹介します。

NTTデータ・ウィズ
戦略推進本部
事業戦略推進部
セールス&プロモーション部
髙橋 麻美さん

飲食店の販売促進業務を経て、NTTデータ・ウィズに入社。現在はセールス&プロモーション部に所属し、各本部の営業促進業務に携わっている。

人の数だけ性別はある

若い頃は”女性”として扱われることが本当に嫌だったと語る髙橋さん。現在はそれほどこだわりを持っていないと語ります。

「30歳を過ぎたあたりから男性と思われても女性と思われても、私は私ですしどっちでもいいかなと思うようになりました。誰でも女性ホルモン・男性ホルモンの両方をもっています。バランスは常に一定というわけでもないですし、表に出る割合も人それぞれですから、私としては人の数だけ性別があると考えています。区別しないほうが楽なのではないでしょうか」

髙橋さんは学生時代にトランスジェンダー(FTM※1)であると診断を受けましたが、性別適合手術は受けていません。その理由を髙橋さんはこう語ります。

「医師から、『性別適合手術を行うとホルモンバランスが崩れるので健康を害するおそれがある。体調面を考えると手術しないのが一番安全だ』と説明を受けました。

加えて“将来的に一般的な恋愛傾向に戻ってしまう例も中にはあるが、“今後も男性としての気持ちのままでいる確信があるか?”と問われ、そのときは即答できませんでした。治療を受けてみないと分からないことですから。

それが性別適合手術を受けなかった理由です。何が正解だったかは今でもわかりませんが、現在健康に気を付けながら過ごせているので良いかなと思っています」

  • ※1 FTM(Female to Male)とは、生まれたときに女性としての性を割り当てられ、男性として生きることを望むトランスジェンダーの方のことです。

性別チャート

社会人として大切なのはしっかりと仕事に向き合うこと、性別や格好は関係ない

髙橋さんは大学生時代、トランスジェンダーであることを隠して就職活動しましたが、自分を偽った服装での活動は苦痛だったと振り返ります。中途半端な服装と気持ちで内定をいただいた最初の就職先は、さまざまな事情から1か月で退職したといいます。

転機になったのは第二新卒として入った会社でした。前職を短期で退職することになった反省から、自分の好きな格好で仕事をしようと考えていた髙橋さん。入社した初日に直属の上司から個室に呼ばれました。

「『あなた何か言っておきたいこと、あるでしょ?』と問われました。正直に自身のセクシャルマイノリティに関する事情を伝えたところ、その上司は『好きな格好をしたらいいし、トイレだって好きな方を使ったらいい。1日30件営業回って毎日愚直に頑張りなさい』と言ってくれたんですよね。それからは本当に好きな格好でしか働いていません。まだLGBTQ+についての理解が浸透していなかった2016年から、ネクタイを締めてスーツで営業回りできたことは本当に恵まれていたと思います」

社会人として大切なのはしっかりと仕事に向き合うこと、そこに性別や格好は関係ないと教えられた髙橋さん。その後転職した先でも同様に過ごしていたといいます。

「ルールを守って、自分がされて嫌なことを他人にしなければ、他人からも尊重されるようになります。私の価値観として感謝・恩返しということを一番のモットーにしています。自分の在り方を尊重していただいたように、どんな方も尊重するということを大事にしています。」

髙橋さんは自らの性自認に従って男性物のスーツを着用していますが、名前は”麻美”という戸籍名をそのまま使用しています。名前と格好のギャップから取引先に顔を覚えてもらいやすく、営業として役に立ったという副産物もあったそうです。

自分に嘘をつかずありのままを出していることでストレスなく日々を過ごせているといいます。

勤務中の髙橋さん

理解してくれる人がいれば頑張れる

髙橋さんはジェンダーの悩みを抱えている方にこう語りかけます。

「トランスジェンダーの方は、自認する方の性別で呼んでもらいたいという思いがある方が多いと思います。だからといって周囲にそれを無理強いするのもちょっと違うんじゃないかと。その部分を気にしすぎると辛くなってしまうので、そこは本人が乗り越えなければならないことじゃないかなと思っています。乗り越えると楽な世界が広がっていると伝えたいです。周囲に理解してくれる人がいれば頑張れます」

また、周囲の人物に対しては、深刻に捉えすぎないほうが当事者も気楽だといいます。

「NTTデータ・ウィズに入社する際に、面接でトランスジェンダーだと伝えたところ『成果を出してもらうことと性別は関係ない』と、あっさりと、仰っていただいたんですよね。周囲に気を使わせていると感じることが重荷になることもあるので、当たり前のことのように受け入れてくれる姿勢がありがたかったです」

その一方で悪意のない軽はずみな一言が傷つけることもあると釘を差します。本人に自覚がない分、改善も期待しにくいという話です。

ジェンダーについてはこのようにも語っていました。

「男女の区別を意識させる場が少なくなればと思います。女性活躍推進の観点から研修などが男女ペアで組まれることがありますが、ジェンダーを強く意識させるのはどうかと思うところもあります」

ちなみに豊洲勤務で気になるところは「多目的トイレ」の数。実際、トランスジェンダーの方が、真夏の暑いときでも『トイレが遠くて水を飲むのを控えている』という話を聞くこともあり、深刻な問題に繋がる可能性があります。

豊洲センタービルアネックスの多目的トイレ

当事者との直接対話が一番の近道

“企業がDEI推進に本気で取り組むために必要なことは何か”という問いに髙橋さんはこう答えます。

「2025年10月14日(火)にサステナビリティ経営推進本部でイベントがありましたが、こういう場があることではないでしょうか。昨今研修やセミナーでLGBTQ+について学ぶ機会も多いですが、頭だけの理解で机上の空論になっているのではと感じるところもあります。正しく理解するには、やはり当事者と直接対話することが一番の近道と思います」

『私は当事者ですが、他の当事者の方にとっては、私もまた第三者です。私も含めて、お互いに思い込みで不要な配慮をしたり、無意識に傷つけたりしないように、当事者との対話でそのギャップを埋めてほしい』と語ります。

「マイノリティだったりハンディキャップだったり、何かを抱えている人たちがそれを公にしたとしても、周囲と調和がとれてチームワークが図れる環境が理想の職場と考えています。色々な立場の人とコミュニケーションを取る機会が増えていくことを期待します」

「LGBTQ+の当事者の方は12~13人に1人いるといわれています。左利きの方とほぼ同じ割合だそうです。もしかしたら自分も、そして家族や大事な方が当事者である、もしくは当事者になる可能性は充分にあります。他人事ではなく、もしかしたら近くに当事者の方がいるかも?ということを念頭に置いて行動していきたいですね」

髙橋さんは2025年10月14日(火)に実施されたイベントのトークセッションにも登壇し、参加者にご自身の体験と職場がどうあるべきなのか具体的な対応についても語ってくれました。