“ここなら言える”という自分を出せる場所を探してみてほしい

田中さんはNTTデータ第四公共事業本部で地方公共団体の営業担当として活躍されており、プライベートでは同性パートナーと生活するゲイ当事者であることを公表されています。
ありのままの自分を認められるようになるまでのバックグラウンドや、ゲイ当事者として感じる理想の職場環境についてお話を伺いました。

NTTデータ
第四公共事業本部
ヘルスケア事業部
第二統括部
営業担当
田中 勇太さん

Sier企業で法人向け営業業務を経て、NTTデータに入社。現在はヘルスケア事業部に所属し、営業業務に携わっている。

本当の自分を知ってくれる人がいない、嘘を重ねていくつらさ

2022年にパートナーシップ宣誓を行い、現在同性パートナーとともに生活されている田中さん。しかし、過去には自分はゲイだと認められず、バイセクシャルだと言い聞かせていた時期が長くあったといいます。

「子どものころから、なんとなく同性が好きなのかもしれない、という気持ちはありましたが、いじめられるのではという怖さもあり、周囲に打ち明けることはできませんでした。結婚して子どもや家族に囲まれ幸せに暮らすという、メディアなどで見るような幸せのカタチに乗れないのもつらかったです。自分は男性も女性も好きになれると言い聞かせることで、あえて逃げ道を作っていたのかもしれません」

さらに、カミングアウトする以前には、「周囲に嘘をつき続けるつらさ」をとくに感じていたといいます。

「ちょっとした雑談の中で彼氏や彼女の話題が出たときや、たとえば部屋の間取りや夕飯のことなど、小さな嘘をつかなければいけなくなってしまいます。実際は2LDKの部屋に住んでいて、それをそのまま言うと本当に一人暮らしなの?と思われるのでワンルームと言ってしまう。嫌いな相手ではなく、とても信頼している人であったとしても、どんどん嘘を重ねていくことになる。ありのままの自分を知っていてくれる人がいないというのはつらかったですね」

このような葛藤を経て、田中さんは22歳ごろから周囲に自身のことについてカミングアウトしはじめました。

「言ってみると意外と大丈夫」受け入れてもらえる経験を積んでいく

最初は親しい友人からカミングアウトをしはじめた田中さん。24歳をすぎるころにはほとんどの友人に話をすることができていました。そこからさらに、当時勤めていた会社の親しい同僚、上司へと話していくようになります。

社内へのカミングアウトには当初抵抗もありましたが、話してみると意外に周囲からの反応に否定的なものはあまりなく、受け入れてもらえたそうです。「言ってみると意外と大丈夫」という経験を重ねて慣れることで、自分自身を認めていくことができるようになりました。

NTTデータでは、転職して入社した初日からゲイ当事者であることをオープンにしていました。上司からも家賃補助や福利厚生制度の利用も含めて、何も問題ないという反応でした。

仕事の場でプライベートな話になったときなど、さりげなく話題をそらしてくれる同僚の自然な配慮に助けられているそうです。

NTTグループ全体で毎年参加している、東京・代々木で開催されるLGBTQ+パレード(東京プライド)に参加しました。

安心できる職場環境のために、まずは身近なところから

会社の仲間としてともに働くにあたって、嬉しいと感じる声掛けについて田中さんはこう話します。

「パートナー、という言葉を使ってもらえるとすごく嬉しいです。最初から彼氏/彼女がいるの?ではなく、パートナーいるの?と話しかけてもらえると、とても話しやすいし、この人は理解してくれているという安心感があります。慣れない言葉で最初は違和感があるかもしれませんが、そういった小さなところから変えていければと思います」

雑談などのコミュニケーションでも「男性/女性はこうあるべき」といったような前提に立ってしまうと、オープンに会話しにくくなってしまいます。「ゲイ」としてラベリングをするのではなく、ひとりの人として接してほしいといいます。

「もしかしたらこの中にLGBTQ+当事者がいるかもしれない、と頭の片隅においていてほしいです。ですが、逆に気を遣いすぎて雑談ができなくなってしまうようなことはよくないと思います。どんな場面でも間違えない人はいないですから、気を使いすぎずに会話して、もし間違ったり、嫌な思いをしたりしたら、それを伝えられるような関係をつくれたら理想ですね」

また、NTTデータでは、福利厚生などの制度が同性パートナーも対象とされており、LGBTQ+アライ活動も会社主導で行われている点も特徴的です。

こういった取り組みが働きやすい職場環境につながっていくと田中さんはいいます。

「管理職の方たちもこういった制度をよく理解し、浸透しているなと感じています。他の社員が使える家賃補助などの制度を、当たり前の権利として同性パートナーも使えるのは心強いです。また、アライコミュニティなどの活動が自分の働いている会社にあるというのは働きやすさに直結します。より推進していってもらいたいです」

10月14日に行われたイベント「とよサス映画祭」に登壇された田中さん

ラベリングにとらわれず、自分を出せる場所を探してみてほしい

田中さんは、テレビなどでよく見かけるタレントなどから受けるゲイのイメージにも思うところがあるといいます。

「ゲイにもいろいろな人がいて、テレビで見るような特徴的な言葉づかいをする人ばかりではありません。あまり喋らない人ももちろんいますし、ステレオタイプなイメージにとらわれてほしくないなと感じています」

最後に、この記事を読んだ方に伝えたいメッセージについて、次のように話してくれました。

「私がゲイであることをオープンにできているのは、もちろんまわりの環境に恵まれた部分も大きいです。ですが、いまも自分自身に嘘をつき続けて、そのつらさをまわりに言えず苦しんでいるかたがいるとしたら、伝えたいのは“この人だからできたこと。自分にはできない”と思わないでほしいということです」

「すべての方にLGBTQ+について広く理解してもらえるようになるには、まだ多くの時間が必要な現状があります。それを待っているのではなく、ひとつでもいいので“ここなら言える”という場所を自分から探すことができれば、一歩を踏み出せるかもしれないのではと思います」

ラベリングにとらわれることなく、対等に向き合える場所をつくっていくことが大切なのではないでしょうか。