インタビュー動画
特定の業界にとどまらず、社会全体に影響を与えたかった
若いころはオープンソースやAIをはじめ、さまざまな技術に触れながら、腕を磨くことに精を出していた原。その気持ちに変化が生まれたのは、30代の後半に差し掛かったころだと言います。
エンジニアとしてできることが増えてきて、自分の携わるシステムが社会にどのように役立っているのかを意識するようになったのが転職のきっかけです。当時は大学向けに検索システムやeラーニングシステムを開発していたのですが、大学に対して自分が与えられる影響は、意外と限定されていると思いました。それは学業の本質的な価値である学生の能力向上が、システムよりもコンテンツに依存すると感じたからです。
学生や教員の煩わしさをなくす観点では貢献できていたものの、自身が中心的な役割を果たせていないことに、原は疑問を感じていました。また、大学は個別にカスタマイズされたシステムを利用する傾向にあることから、広範囲に影響を与えることが難しく、社会に貢献しているという実感がわかなかったようです。
そのような状況下で、世の中はコロナ禍に突入。DXのニーズが急速に高まるなか、現金給付や保険証との一体化などでマイナンバー制度に注目が集まり、原自身もマイナンバー制度関連の話題に接する機会が増えていました。
教育業界では学校ごとに独自のシステムを扱うことから、システム単位で異なるIDが発行されていて、転校・進学などで学習履歴(スタディ・ログ)が適切に引き継がれないリスクがあります。このような課題も、マイナンバー制度を活用すれば解決できるんじゃないか。そのようなアイデアを思いついた時、マイナンバー制度への興味が大きくなりました。政府がマイナンバーをデジタル強靭化社会の基盤として位置付けているため、国策として幅広い業界に影響を与えていくことが期待できます。その基盤づくりに関わることで、社会貢献に対する渇きが満たされるのではないかと考え、転職を決意しました。
転職活動では、さまざまなIT企業の求人に目を通したという原。最終的にNTTデータを選んだ理由は「プロジェクトの多彩さにある」と語ります。
もともとマイナンバー関連事業を手掛けている会社を探しているなかで、NTTデータに興味を持ちました。そのうえで、NTTデータはプロジェクト単位で求人を出していて、マイナンバー関連事業の他にも、社会インフラ基盤をつくるプロジェクトが複数あり、「これも面白そうだな」と目を惹かれたんです。自分自身が惹かれるレベルの社会貢献性の高いプロジェクトを複数動かしているNTTデータなら、色々な視点から社会を変えていく仕事ができると考えました。
前職での開発経験を活かしつつ、これから社会を大きく動かしていくプロジェクトに関わりたい。そんな想いを抱いていた原にとって、行政や準公共領域で新たな社会モデルを創造するNTTデータのプロジェクト群は、長いエンジニア人生に充実感を与えるうえでも魅力的に映ったようです。
社会のあるべき姿を思い描き、数年後の当たり前に深化させる楽しさ
NTTデータに転職した原は当初の希望通り、マイナンバーの情報連携基盤の開発プロジェクトに参画しました。マイナンバーのコアシステムであり、個人情報を安全かつ効率的に連携するための仕組みをつくることはやりがいが大きい反面、想像を上回る大変さがあったと打ち明けます。
日本国民の生活に直結していることから、「止めてはいけない」ということに対する意識レベルが全然違うと感じました。一度システムが止まると全国各地に影響が及び、ニュースにもなるほど大きな出来事として世の中に認識されます。だからこそ、お客様の要求がシビアになりますし、それに応えるために私自身も粘り強く取り組んでいきました。
複数の委託先とスコープや権限を細かく協議する、開発でのトラブル発生時には原因調査から顧客報告まで主体的にやり切るなど、裁量を持って業務を進めていきました。プロジェクトメンバーが前職の5倍以上に増え、慣れないことも多々あったものの、チームで協力しながら困難な壁を乗り越えていったと言います。
そのうえで、前職の知識・経験が活かせたシーンを尋ねると、原は「高度な技術者で構成されたプロジェクトオーナー組織との技術的な議論を経て、現場に課題の解決策を還元したこと」を挙げました。
データベース管理システム(DBMS)をOracleからPostgreSQLに置き換える際、データ断片化を防ぐ仕組みをどのように構築するかという点で前職の知見が活かせたと思います。PostgreSQLはデータの更新・削除を行った際にデッドタプル(物理的に残存するデータ)が溜まり、これを放置すると性能劣化の原因になるのですが、当時の現場にはこの事象に詳しいメンバーが私しかいませんでした。そのため、技術の専門家が集まるプロジェクトオーナー組織と私が直接やり取りして、一緒に解決策を協議したうえで、現場に還元しました。
情報連携基盤の開発完了後、原は同プロジェクトの保守業務を経験。異動のタイミングで課長に昇進し、現在はマイナンバー関連の申請を受け付けるシステムの開発・保守プロジェクトでPLを務め、申請・審査・交付のプロセスを効率化するミッションに挑んでいます。
今年、マイナンバーカードの更新を行ったのですが、申請してから手元に届くまでに約1ヶ月もかかり、これは大きな課題だなと改めて痛感しました。カードの有効期限を迎える方が増えてきていますので、何とかしないといけないと強く感じています。このようにエンドユーザー起点で考えた課題の解決策を提案し、実現可能性を踏まえたリアルな世界観をお客様と共有しながら、細かな要件を一緒に詰めていけるのはNTTデータならではの魅力です。こうすれば住民や職員の負担をもっと減らせるのではないか。そんな無数のアイデアのなかから最適なものを選ぶだけで終わらず、政策提言や社会実装を通じて実現に結びつける力がNTTデータにはあります。自分の思い描いた世界観が数年後の未来に実現されることや、それを自分の手でつくり上げられるワクワク感はなかなか味わえないものです。
あるべき将来像を絵に描いた餅で終わらせず、社会への実装を経て、支え続ける。そのような一気通貫でのソリューションで社会に貢献できることが、原にとっても大きなやりがいとなっているようです。
マイナンバーカードを起点に、デジタル社会の未来を切り拓く
健康保険証や運転免許証との一体化だけでなく、行政手続きや金融機関との連携など、マイナンバーカードの利用シーンは拡大傾向にあります。さまざまな活用方法が模索されており、今後あらゆる領域に進出していく可能性を踏まえると、マイナンバーカードは豊かな暮らしを支える起点になるでしょう。
マイナンバーカードが暮らしの利便性を高めていくためには、重視すべき指標が複数あります。私が携わっているプロジェクトは、数ある指標のなかでも保有率にダイレクトに響く領域です。保有率が高くなければ、マイナンバーを軸にした多種多様な施策は成り立ちません。そう考えると、自分自身が担っている役割の重要性を再認識します。
現在のマイナンバーカードの保有率は78.7%(2025年7月時点)で上り調子ですが、より高い水準をキープしていくためには、これまで以上の改善が欠かせません。次期マイナンバーカードの導入検討が進み、速やかな発行体制の確保が求められていることからも、原が携わるプロジェクトへの期待は高まっていくでしょう。
デジタル庁が掲げるデジタル3原則(デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ)を踏まえても、マイナンバーカードにはまだ多くの課題があります。交付までのリードタイムを短縮することはもちろん、オンラインで完結できる範囲を広げていきながら、手続きの煩わしさをなくしていくことが重要です。今は申請から交付までに来庁が必要な場面がありますが、将来的には役所に行かずに全てをオンラインで完結でき、マイナンバーカードが短時間で手元に届くような世界観を実現したいと考えています。
効率化を施しながら、利便性と安全性の両方を確保する。それは決して容易なことではありません。それでも、NTTデータならやり遂げられる。原がそう確信している背景には、NTTデータと社会インフラの密接な関係性があります。
NTTデータは半世紀以上にわたり、数々の社会インフラを手掛けてきた実績があります。お客様とも深い信頼関係が築かれていて、ご相談いただくシーンも多いです。また、マイナンバーに関しては仕組みを網羅的に把握しているからこそ、構想の実現可能性を高いレベルで考え抜くことができます。私自身、未来を思い描くことが好きなので、今後は構想フェーズにも業務の幅を広げて、マイナンバーの未来をお客様と一緒に描き、この手で実現していきたいです。
マイナンバーの中枢システムを通じて、日本の生活を豊かにする。その想いを胸に秘めながら、これからも原の挑戦は続いていきます。


