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2つの顔を持った組織で、キャッシュレス決済の「未来」を創出する

近年、日本中で普及が進むキャッシュレス決済。その裏側で、全国の加盟店様とクレジットカード会社様や金融機関様を結んでいるのが、NTTデータが開発・提供する日本最大級のキャッシュレス決済プラットフォーム「CAFIS」です。カード&ペイメント事業部では、このCAFISを軸に決済ソリューションの企画・提案・開発・運用を一手に手掛けています。日本の決済シーンの「いま」を支え、「未来」のあり方を模索する彼ら独自の取り組みとは?事業部長を務める栗原正憲に話を聞きました。

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生活インフラのひとつとなった決済ネットワーク「CAFIS」

1984年、来るクレジットカード市場の拡大を見据えて、カード決済総合ネットワークとして誕生した「CAFIS」。その後、社会発展とテクノロジーの進化に呼応してサービス領域を拡大し、キャッシュレス決済の普及を下支えしてきました。

現在では、電子マネーやQRコード決済など店頭/ネット決済の垣根を超えて、さまざまな「デジタルのお財布」に対応。さらにECサイト向けソリューションや次世代型ポイント・会員管理ASP、公金収納サービス「モバイルレジ」など、多種多様な周辺ソリューションを兼ね備えた総合型決済プラットフォームへと進化しています。

私たちカード&ペイメント事業部のミッションは、日本の購買・決済・収納に関わる生活インフラを自らの手で整えること。そして、日本のキャッシュマネジメント環境をより便利で快適にしていくことだと捉えています

実際、仮にいまCAFISが止まるような事態が起これば、日本のキャッシュレス決済の大部分が機能停止に陥りかねません。ですから、事業部のメンバーは電気・水道・ガスのように公共的な仕組みの一部を支える緊張感と、社会に役立つやりがいの両方を感じながら業務に取り組んでいますね。

この事業部では現在、企画・営業・開発など400名以上の社員が活躍しています。彼らが目指すのは、安心、安全で便利で快適なキャッシュレス社会の実現と、そのためにカード会社様、金融機関様、加盟店様といったペイメントエコシステム全体の加盟店様の企業成長と事業変革に貢献すること。

デジタル化の進行する昨今においては、決済業務だけに留まらず、CX/EXの変革やバックエンド業務の効率化など周辺領域を含めたエンドツーエンドのDXサービスの提供に注力しています。また、デジタライゼーションに合わせたペイメントエコシステム全体の構造変化や最適化にも取り組んでいます。

CAFISという安全・安心で高信頼性・高可用性な社会インフラをしっかり支え、継続的なレベルアップによって付加価値を高めていくこと。これが我々のビジョンのひとつです。ただし、これからの未来に目を向ければ、どこかでパラダイムシフトが起こる可能性も高い。

そうした今後起こりうる変化を見据え、私たちはあえて2面性を持った組織づくりを推進してきました。既存のCAFISを守り育てる部隊と、ゼロベースの攻めの発想で“まったく新しいサービス”を生み出す部隊。この両輪を兼ね備えているのが、当事業部の最大の特徴と言えます。

キャッシュレスの普及が、多くの課題を顕在化させた

CAFISとそれを取り巻くエコシステムの原点は、1980年代の社会環境や価値観のもと、当時の最新技術を駆使して構築されたもの。

その強固なネットワークインフラを各時代の先端テクノロジーでアップデートすることでゆるぎない実績を積み上げ、現在の一大サービスへと昇華してきました。

2015年頃から、日本のキャッシュレス市場は一気に拡大してきました。スマートフォンをひとり1台持つ時代になり、電子マネーやQRコードなど多種多様なスキームが続々と登場してきたのは記憶に新しいと思います。

こうした流れはFinTechや決済ソリューションの流行・飛躍など良い見方もできますが、その後ろ側のネットワークインフラを担う我々は、『ペイメントにおける色々な課題が一気に浮き彫りになってきた』と捉えているのです。

例えば決済手段が増えたことで、購買体験は“ピッ”とワンタッチになりましたが、実は裏側の精算の仕組みでは二重三重の複雑性が生まれ、非効率性が高まっていると言います。

また加盟店様に目を向ければ、キャッシュレスで便利になったはずが、決済手段の選択と処理に時間がかかり、レジに行列ができることも少なくありません。こうした状況を踏まえ、栗原は「ボトルネックだらけ」と捉えているのです。

当然、CAFISにはまだまだ進化の余地があり、いまこの瞬間もブラッシュアップが進んでいます。しかし、日本のデジタル化が急速に進み、これまでとは社会の前提条件が大きく変わってきていることも事実。そこで栗原は、CAFISを生み出した先人たちのように、5年、10年先のリテール決済市場や収納市場を見据え、次世代のインフラサービス創出への挑戦が必要不可欠だと考えました。

いまの最新技術、いまのお客様の課題、いまの消費者の価値観。そうした「いま」と「これから」という時間軸でもう1回前提を置き直し、新たなサービスを創出・提供しなければいけません。

だからこそ、一方でCAFISを活かしながら、もう一方で本当にゼロベースから破壊的創造に挑戦するチーム『Digital CAFIS』を設立しました。このチームは2017年ごろに前身の部隊を発足。現在は規模と業務領域の両面を拡張し、デジタル特区として活動しています。

Digital CAFISには現在、事業部内の約30%にあたる100名ほどの社員が参画。パートナーを含めれば300名ほどの組織になっています。

Digital CAFISの基本的なコンセプトは、すべてを内製する集団。社員もパートナーもフラットな体制を構築し、一人ひとりが自分で考え、自ら手を動かし、0→1を目指しています

いわばこの特区そのものが、既存のCAFISに対する競合のようなもの。有用なテクノロジーやサービスがあれば他社プロダクトも柔軟に採用できる開発ルールを敷いていますし、彼らは『既存の既得権益を壊す!』くらいの勢いで新規サービスの創出やインフラの構造変化に取り組んでいますね。

既存と新設。刺激し合う2つの組織に共通する「想い」とは

既存のリソースを最大限に活用してさらなる発展を目指すCAFISと、前例や実績に縛られることなく次世代のペイメントインフラの創出を図るDigital CAFIS。

チームカラーが異なれば、当然それぞれで活躍する人材像にも違いが表れてくるもの。そのため、カード&ペイメント事業部には多様性に富んだ社員が集まっていると言います。

既存のCAFISチームでは、NTTデータで長年経験を積んできたメンバーや、キャッシュレス決済やPOSシステムなどペイメント関連の企画・開発経験を持つ経験者採用入社の社員が数多く活躍していますね。組織力によるモノづくりが得意なタイプや、開発に至るまでのプロセスを重視するタイプが多い印象です。

一方のDigital CAFISは20代が多く、新卒1~2年目のメンバーや、決済関連に限らずユーザー志向、顧客志向でサービスやシステムをデザイン・開発してきた経験者採用入社社員が中心。当社の色や決済領域の常識に染まっていない者が多く、個の力を重視した柔軟なカルチャーが育まれています。

栗原は2つのチームを両立し、それぞれに組織文化・風土を育むために評価方法なども個別に設定。事業部内でハイブリッドマネジメントを実践することで、イノベーションが循環する独自の組織像を目指します。では、お互いのチームに共通点はないのでしょうか?この質問に栗原は「使命感と目的志向」だと答えます。

既存のCAFISチームは『自分たちが日本のインフラを支えてきたんだ』という想いがものすごく強い。一方で、Digital CAFISサイドは、『それを壊してでも自分たちの力で新しい価値を創り上げるんだ』という強烈な想いがある。だからこそ、互いに刺激し合えるし、いい相乗効果が生まれているわけです。

こうした強い想いは、これから経験者採用入社される方についても問われてきます。ここで何を成し遂げたいのか、それを実現するために自分に何ができるのか。そうしたビジョンや意志を発信できなければ、我々の事業部での活躍はきっと難しいでしょう。

逆に次世代の社会インフラに対して自分なりのビジョンを持っている方であれば、ぜひここで実力に磨きをかけ、仲間との共創によって新たな価値を創出していただきたいですね。

日本のキャッシュレス決済を、次のステージへと進化させる挑戦。その鍵は、新たな人材との出会いにあるのかもしれません。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです