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R&D成果の事業化へ向けて。グローバル展開も視野に、チャレンジは続く

SIerのR&Dを担う部署で、シニアエキスパートを務めている松本。NTTデータのなかでも珍しいケースで転職を果たした彼が今まで築いてきたキャリアとは?
さらに新境地でのチャレンジングな仕事内容や、取り組みについてご紹介します。

目次

重なった転機と評価。それが、新たな扉を開く

松本 威
技術開発本部
エボリューショナルITセンタ
グローバル・アライメント担当

大学卒業後、半導体商社で、コンシューマ向け製品の組み込みプログラム開発や技術サポートなどのキャリアを築いてきた松本威。

松本 「取引先の業種はさまざま。音声コーデックやタッチパネル、車載機器など開発製品が幅広いことに魅力に感じて、10年ほど勤めていました」

転機が訪れたのは、家電業界の低迷に伴い、半導体事業も厳しさを増した2017年頃。「新規ビジネスの一環として、NTTデータのグループ会社へ出向したこと」だったと言います。

松本 「ちょうどその頃、NTTデータでは『豊洲の港から』という新規ビジネスの社内コンテストがありまして。それに応募するタイミングで出向し、NTTデータに常駐する形で異音検知というAIの実証実験を担当することになりました」

これは、スーパーマーケットなどに設置されているエスカレータに異音検知の仕組みを取り入れ、その音声データに異常値がないかをAIで判断し、検知結果をインターネットに送信するというもの。

松本 「AIが異常を識別するという画像関連の技術はありますが、音声に関してはあまりありません。でも実際は、画像と同じように、AIで音声を識別させることは可能です。NTT研究所にこのような技術があることに注目し、その成果を応用することでこの技術を実現しました」

当初は、半年程度の出向を想定していたのだが──。出向終了予定日の前週、ドローンプロジェクトの話が急遽持ち上がり、さらに1年半ほど、常駐することに。

松本 「ドローンに関しては、全くの個人的な趣味。4年くらい自分で機体を作って、飛ばしたりしていました。飲み会などでその話をしていたら、出向先の会社で話題になり、ドローンを活用したPOCを担当することになったのです」

この経験が、松本の運命を大きく変えることになるとは──。

松本 「2018年の1月からスタートしたプロジェクトでは、自動航行のアプリをインターネットから制御する、お客様への提案資料を作るという業務を同時進行しなくてはならず。ドローンについてソフトからハードまでわかる人財が他にはいなかったことから、私一人でこのプロジェクトを担当することになりました」

目の前に立ちはだかった障壁。それは、2人のメンバーの参画により乗り切ることができました。

松本 「プロジェクト完了後には、大きな達成感を味わえただけではなく、メンバーから『楽しかった』と言われて嬉しかったですね。このように教育もしながらプロジェクトを完遂したことが、評価されたのかもしれません。プロジェクトが終わった段階で、『NTTデータの社員にならないか』と、声をかけていただきました」

ミッションは重大。その分、やりがいも大きい

「これまでとは違う立場から製品開発・研究に取り組みたい」と考えた松本は、2018年11月、ついにNTTデータへの転職を決意。2019年9月には、AIをビジネスに導入する仕組み作りを担うR&Dチームを率いることになりました。

松本 「AIと聞くと、画像認識やロボットなどの研究だと思われがちですが、全く違います。製品開発の前段階における研究、開発、実証実験をして、各事業部に成果を展開する部隊です。NTTデータの研究所での成果を応用して何ができるか、サービス化した際にどのような結果がもたらされるかといったことを検証し、AIに関連した技術の調査などを主に行っています」

具体的には、海外の子会社を通して、お客様にNTTデータの技術を展開していく業務を担当。実際、スペインの子会社からブラジルの銀行向けに実証実験を提案した事例もあります。

松本 「AIは何でもできると思われていますが、正解がないと適用が難しいのが現実。しかも、正解がわかるのなら、AIは必要ありません。AIの精度は環境によって変わるため、精度を保つのは非常に難しいのです」

AIモデルは、学習、認識、回答それぞれにデータが必要。データは環境によって変わるため、同じものばかり使用すると精度が低下していきます。ECサイトで画面に表示される“おすすめ商品”などにもAIは使われていますが、季節や時期によって変化してくるため更新が不可欠です。

松本 「AIは仕分け、予測、画像認識などにはマッチします。それをどのようにいろいろなものに当てはめていくのかといったアイデアや、どのように実装していくのかといったことを考えてビジネスにしていくのが、R&Dチームの主なミッションです」

現在、このグローバル・アラインメント部隊には約20名のメンバーが在籍。それぞれが分担しながら業務を進めています。サーバやAWS、WEBアプリなどのアセット開発を担当しているのは、そのうちの5~6名です。

松本 「さまざまなバックグラウンドを持つ社員がいて、優秀な人財が多いですね。隣の島には、オープンソースソフトウェア“Apache Hadoop”のコミッタに就任したADP関連の社員もいます。凄腕たちが周囲にたくさんいる刺激的な環境ですし、まだ世の中で実現されていない最先端技術に取り組めることに、大きなやりがいを感じています」

柔軟な環境下で、AI関連の新規ビジネス開発を目指す

NTTデータの社員になってから、わずか1年。R&D部門で開発したものを直接お客様に販売することはできないため、完了したり、ビジネス化した案件はまだありません。しかし、松本の視界は常に未来を見据えています。

松本 「受託案件では、いかにお客様の要求を満たすかが重要です。しかし研究開発には提案が不可欠です。公共事業関連の仕事は多いのが現状ですが、公共事業も決して安泰とは言えなくなっていくでしょう。そのため、グローバル展開は必須です。そんな危機感を持って、新しいことにどんどん挑んでいきたいですね」

海外の子会社では、お客様の要望をカスタマイズして形にし、評価してもらうことに注力しています。「しかし、AIは何にでも使えると思われているため、適用例をなかなか形にできないのが現実です」と話す、松本。

そんなジレンマを抱えながらも、松本は自身の業務以外のことにも積極的に取り組んでいます。実例はまだないものの、9月に開催される「EVITフォーラム」での展示を意識し、コンビニ店舗用の商品画像を認識するAIモデル運用管理システムにチャレンジ。

松本 「明るい場所で撮影した画像でも、暗い場所では認識精度が低下してしまうのが通常。そこで、AIモデル運用管理システムを導入して精度を高め、暗い場所でも同じものだと認識できるデモを作りました。また、個人的にドローンコミュニティで発表などをしている経験を活かして、『NTTデータ』と『ドローン』を融合させていくことも模索中です」

様々な困難がある中でも、いろいろなことに意欲的な松本。NTTデータならではの社風も、彼の背中を押しているのかもしれません。

松本 「堅いイメージを抱かれがちですが、社長ミーティングをはじめ、役員と直接話せるチャンスが多くありますし、フリーアドレス制やテレワークなど最先端のことを取り入れるなど、柔軟で面白い会社です。平均年齢も若く、最近では中途採用者の悩みを聞く会を開くなど、より良い組織にするための新しい試みを行っているところも魅力だと思います」

AIの事業化は、松本だけではなく、NTTデータにとっても新たな挑戦。R&Dの成果からNTTブランドのビジネスを生み出し、実績を積み上げて信頼を勝ち得ることが、松本が率いるチームの究極のゴールです。それを実現するため、松本のチャレンジは、これからも止まることはありません。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです