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2018年10月18日技術ブログ

今あらためて振り返る、ブロックチェーンの価値とは(1) ―改ざん耐性の視点から―

ブロックチェーンの活用を成功させるためには、この技術によりもたらされる価値を正しく理解し、適切に活かせるユースケースを検討することが必要である。本稿では、ブロックチェーンの価値の1つとして取り沙汰される「改ざん耐性」というキーワードに注目し、技術観点からその性質を解説すると共に、ビジネス観点からその活用方法を考察する。

世の中の動向

Bitcoinをはじめとする暗号通貨への期待や課題は、今もなお留まることを知らず、暗号通貨ビジネスは、ブロックチェーンのキーワードの中で大きな一角を占めています。他方で、ブロックチェーンをより広い範囲で活用しようという試みは、この数年であらゆる分野に一挙に拡大し、今日もいたるところでユースケースの検討や実証実験が行われています。しかしながら、様々な分野でブロックチェーンの活用が模索されつつも、その価値を引き出せるユースケースがなかなか見出せず、ブロックチェーン活用のハードルの高さを実感し始めている人々も増えてきているように見えます。

今回は、ブロックチェーンに対して期待される性質のうち、「改ざん耐性」というキーワードについて、技術的な観点からあらためて観察し、ブロックチェーンの活用によって何が実現できるのかを考えます。

パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーン

昨今のブロックチェーン技術やその利用方法は、パブリック型とプライベート型に大別することができます。インターネット上に公開され、その内容が誰にも否定できない台帳の実現を目指すものをパブリックブロックチェーンと呼び、BitcoinやEthereumを代表とする暗号通貨プラットフォームはこれに基づいて動いています。他方で、ある特定のユーザ群が参加するネットワーク上で、台帳の共有を目指すものをプライベートブロックチェーンと呼びます。

今日盛んに検討が行われているエンタプライズ領域でのブロックチェーン活用検討では、プライベートブロックチェーンが採用されるケースが多くなっています。そこには、ノード参加形態が許可型であり台帳共有範囲を制御できる点で、業務情報を扱うためのセキュリティ要件を充たしやすいことや、性能が高く確実なトランザクション処理が可能なことで、業務処理量を実現しやすいことが理由としてあります。

ブロックチェーンの改ざん耐性について考える

本稿では、ブロックチェーンに特に期待される「改ざん耐性」という性質が、これら2種類のブロックチェーンでどのように実現できているかについて、あらためて考えます。

まずはパブリックブロックチェーンから考えてみましょう。
Bitcoinをはじめとするパブリックブロックチェーンでは、台帳を更新するために必要な作業証明(Proof of Work)と呼ばれる計算コストが存在し、その計算コストが最も多く注ぎ込まれた台帳を正しいと認める合理性(経済的インセンティブ設計)が、システムに組み込まれています。そのため、不正な台帳を勝手に組み上げて周りに伝播させたり、一度作り上げられた台帳の中身を消したりすることを防ぐことができます。ひとことで言えば、正しい台帳にはコストに基づく客観的な証明が付与されるのです。(図1)

図1:パブリックブロックチェーンにおける台帳の維持

図1:パブリックブロックチェーンにおける台帳の維持

一方プライベートブロックチェーンでは、異なるアプローチを取ります。すなわち、参加者間で台帳に載せる情報を都度確かめ合い、合意の上で台帳を更新していくのです。コストに基づく台帳維持の仕組みが性能に大きな影響を及ぼすために、プライベートブロックチェーンではこのような設計を採っていますが、同時に、正しい台帳を客観的に判別する機能を失うことになります。当事者間で合意した内容の正しさは、そのネットワークの参加者にしか判断できないということです。(図2)また、このような設計で動くプライベートブロックチェーンでは、台帳への書き込み時に参加者間で不正チェックを行う機能は提供されているものの、後から台帳を書き換えたり消し込んだりする不正までは対応しきれません。

図2:プライベートブロックチェーンにおける台帳の維持

図2:プライベートブロックチェーンにおける台帳の維持

以上をまとめますと、パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンでは、改ざん耐性とひとことで言っても、客観性という観点ではその意味合いにギャップがあります。限られた主体の間で台帳情報を共有するだけならば、性能がよく、種々の業務要件を充たすことに特化したプライベートブロックチェーンを採用するのが良いかもしれません。

しかしながら、ビジネス観点からは、台帳に書き込まれた情報を第三者視点からも正しいと判断できることが重要な領域も存在します。
例えば、食品トレーサビリティのユースケースでは、食品流通に偽装がないことをエンドユーザも判断できるという透明性が重要になると考えられます。
そういった要件を実現するためには、台帳が改ざんされていないことを客観的に証明することが必要です。
プライベートブロックチェーンだけでは、そのような客観的証明を付与することができない可能性があります。

改ざん耐性というキーワードでブロックチェーンの活用を検討するときに、パブリックブロックチェーンによりもたらされる客観的証明が必要なのか、プライベートブロックチェーンで実現される当事者間の高速な合意形成が必要なのかは、大きな判断ポイントになると言えます。

おわりに

本稿では、ブロックチェーンによりもたらされる改ざん耐性について取り上げ、技術観点からその性質を解説しました。また、ビジネス観点からその活用方法を考察しました。
ブロックチェーンに期待される価値としては、改ざん耐性以外にも「非中央集権性」、「高可用性」「スマートコントラクト」などがあります。
ブロックチェーン活用には、これら複数の価値を正しく理解し、組み合わせて考えることが求められます。
改ざん耐性以外に期待される価値も大変興味深いテーマです。またいずれ別の機会に解説させて頂きたいと思います。

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