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2021年1月18日INSIGHT

デジタルの力で実現する、「繋がる」ヘルスケア

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により改めて注目を浴びた医療業界。医療の発展を支え、人々の健康を守るため、ITには何ができるのか。――NTTデータでヘルスケアのデジタル化を推進する高橋弘明が、その取り組みとポイントについて解説する。

NTT DATA Innovation Conference 2021において本記事に関する講演があります。
詳細は本記事の下部をご覧ください。

1.ヘルスケアの現状

ヘルスケアの概念は、大きく病気になった際の治療を主とする「医療」と、病気にならないように予防する「健康」に分けられます。「医療」で言えば中心には病院やそこで働く医療従事者の方々がいて、医療機器のメーカーや製薬会社、検査会社などが支えながらヘルスケアを形作っており、幅広いステークホルダーが存在しています。
そんなヘルスケアの世界でいま取り組むべき課題が、情報の蓄積と共有です。「医療」と「健康」の両面から説明します。

(1)医療
目の前の病気を治療するという観点では、ある医療機関の中で完結できるケースも少なくないでしょう。しかし、医療の発展という視点に立つと、世の中にはまだ解明されていない病気がまだ多くあり、これから新しい治療方法が開発されていきます。その過程には多くの症例を集めて分析したり、学会で議論したりという営みが必要です。現状では各医療機関に点在しているデータをどのように集め、まとめていくかが大きなポイントであり、データをまとめるために必要な標準化の動きも進んでいます。

(2)健康
健康寿命をどのように延ばしていくかということを考えると、個人の生活習慣や既往歴、そのときの体の状態などに合わせた、いわゆるパーソナライズされた医療の提供がポイントとなります。しかし、現状では、医療機関において個人の受診履歴や健康情報のすべてを把握することができません。そこで、被保険者番号を活用したりすることで名寄せを可能にし、個人のデータを一元管理するような発想が生まれてきています。

このように、ヘルスケアにおいてもデータを統合する動きが加速しており、そのために不可欠となる、さまざまなIT技術を活用した基盤やインフラの整備も始められています。

2.NTTデータにおけるヘルスケア

日本の医療は国民皆保険と共にどの医療機関や薬局を選んでも安心して医療等を受けられるフリーアクセスを前提としています。つまり新しい取り組みを進める上では、皆が使うことができる基盤やインフラの整備が必要不可欠となるのです。そこはNTTデータが得意としてきた領域であり、また、昔から広く提供してきた「繋ぐ」役割を担う立場にあると思っています。医療従事者や病院、ヘルスケア関連企業や国の間に立って歩調を合わせながら、仕組みやシステムを作っていく。この考え方を大切にしながら、ヘルスケアに関連するさまざまなソリューションを展開しています。医療と健康の観点から、その一部を紹介します。

(1)Tele-ICU
ひとつの支援センターにいる専門医が、複数のICUから送られてくる患者データを監視し、重症度や優先度を判断しながらリアルタイムで治療方針を指導・助言することができます。複数の拠点と専門医を繋ぐことで、専門知識の共有ができるとともに、複数の医療機関で発生する症例などのデータを蓄積し、そこから得た知見を横展開することも可能となります。

図1:Tele-ICUの概要

図1:Tele-ICUの概要

(2)Health Data Bank(HDB)
長期にわたる健康管理を可能にする「生涯健康管理システム」です。健診データの管理だけでなく、個人に紐づくスマホやウエアラブル端末などのデバイスにより、さまざまなバイタルデータの取得や管理を進めています。HDBに蓄積された各種データや分析技術をヘルスケア関連企業にも活用してもらうことで、より個人にフィットした商品やサービスの開発が可能となります。

図2:Health Data Bankの概要

図2:Health Data Bankの概要

(3)AI画像診断(※1)
医療の世界では、CTやMRIなどの画像を用いた診断の需要が増しています。画像診断は癌や心疾患、脳血管疾患など重大な疾病の早期発見に有効であり、予防医療の拡充には不可欠です。一方で、画像診断のスペシャリストとしての放射線科医が不足しているという課題を抱えています。AI画像診断ソリューションでは患者の医用画像をAI技術で分析し、疾患の可能性がある箇所を示すことで的確な診断をサポートし、この課題の解決に寄与することができます。

図3:AI画像診断ソリューション 開発プロジェクトの概要

図3:AI画像診断ソリューション 開発プロジェクトの概要

3.ヘルスケアの未来に向けて

私は入社以来ずっとヘルスケアの領域に従事しています。さまざまなソリューションに携わってきましたが、IT技術は、「医療をすべて代替するもの」ではないと思っています。ITが最も貢献できるのは、技術でサポートすることで、医療に携わる方々が、「人にしかできないこと」に100%注力できる環境をつくることです。たとえば、大量の症例データを集め、分析して新しい治療法を考える材料を作る。医療従事者の作業を一部支援したり手助けをすることで、人材不足を解消する。遠い場所同士を繋ぐことで、場所にとらわれない医療行為を可能にする、など、幅広い可能性が考えられます。

ヘルスケア業界は成長領域だと言われて久しいものの、倫理観の観点やステークホルダーが多いがゆえに解決すべき事項が多々あり、小さな課題を一つひとつ解決して発展を続けているというのが実情です。インフラやシステム面のみが整備されればよいというわけではなく、地道に関係者の意識を合わせて枠組みを作っていくことが大切です。私自身、ヘルスケアIT業界の標準化を推進する「保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)」の運営会議議長や、データ共有を推進する「SS-MIX普及推進コンソーシアム(※2)」の会長としても活動してきており、ヘルスケアに関わるみなさまとの連携を強めています。ここで培った関係性を武器に、さまざまなソリューションを取り扱うベンダーを中立的な立場で取りまとめて、よりよいサービスを作っていきたいと考えています。

私は日本に閉じず、グローバルも見据えています。先に紹介したAI画像診断ソリューションでは、実はAIが学習しているデータはNTT DATA Servicesが収集したアメリカの医療データです。日本での展開の前に、インドの医療機関でも実証実験を行いました。このように、日本の技術を海外で実践し日本に持ち帰る、海外の技術をまた別の国で実践する、というような取り組みができるのは、グローバルに展開しつつ、各ローカルに根差した活動をしているNTTデータだからできることだと自負しています。

一方で、すべてのステークホルダーが急にデジタルに対応できるわけではありません。従来のアナログな部分とデジタルを融合させるような、一見地味にも見える経験とそこから得たノウハウを多く持っているのが、NTTデータの強みのひとつでもあります。私も現在、ヘルスケアを管轄する部門と、それに関わる技術を開発する部門を兼任し、ヘルスケアへうまくデジタルを取り入れられるよう、日々取り組んでいます。

医療や健康の分野は、誰でも必ず関わるものです。自分や家族、友人など、周りの人も含めた皆の将来のためにも、少しずつでも結果に繋げたい、貢献したいという一心で取り組んできており、これからも続けていきたいと思っています。

講演情報

NTT DATA Innovation Conference 2021
デジタルで創る新しい社会

2021年1月28日(木)、29日(金)講演ライブ配信

2021年1月28日(木)~ 2月26日(金)オンライン展示期間

2021年1月28日(木)14:30~15:00

「これから本格化するヘルスケア分野のDX」
NTTデータ 第二公共事業本部 ヘルスケア事業部 統括部長
高橋 弘明

お申し込みはこちら:https://www.nttdata.com/jp/ja/innovation-conference/

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