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2023年5月26日トレンドを知る

連載:一巡した企業のDX。つぎの潮流を読む(3)

デジタルトランスフォーメーション(以降DX)の取り組みを多くの企業が進めており、DXを企業文化に組み込み、新たな事業運営の仕組みを備える転換期が訪れている。DX推進を一通り実施した中で、次に立ちはだかる壁は何か?計4回の連載記事で紹介する。
目次

DXは始まったばかりの正念場

―多くの日本企業では、DXが一巡して、一定の効果が出ているという意見が多いみたいですが、どうお考えですか?

近藤「そう思いたい気持ちはわかりますが、実態はそこまで甘くはないと思っています。
そもそも、“一巡”という表現が、何となく一通りやり切ったというイメージを想起させますが、実際はロケットに近いイメージじゃないかと思っています。」

井出「ロケットですか?」

近藤「ええ。今はロケットのブースターである程度の高さまで上がっている状態。ここで、ブースターを切り離して、次の段階に進まなければ、大気圏は突破できません。」

―つまり、正念場ということでしょうか?

法人コンサルティング&マーケティング事業部 デジタルタレントチーム 近藤 博一

法人コンサルティング&マーケティング事業部
デジタルタレントチーム
近藤 博一

近藤「はい、おっしゃる通りです。ここまでは誰でもできる段階で、ここからが差をつけるフェーズです。
もし、DX人材の定義を作成し、その定義に基づき、採用し、研修を用意して安心して、自社のDXは安泰だと思っているようであれば、その会社は危険な兆候だと思います。」

DX推進における人材面の壁

―お二人は人材・組織の領域関するコンサルタントですが、次のフェーズに進むにはどうすればよいでしょうか?人材・組織面で克服すべき課題を教えていただければと思います。

近藤「私は、3点ほど、大きな課題があるのではないかと思っているのですが、多くのDX人材に関する案件に携わっている井出さんは、どう思いますか?」

井出「私は、人材面から『目利きの不在』と『適性を考慮しない計画』が大きな課題だと感じています。」

近藤「はげしく同意です。」

―具体的に『目利き』と『適性』と言いますと?

井出「はい。まず、『目利き』については、どんなに良い人材定義や制度・施策を作っても、それを見極めることができる人がいないと、その制度・施策は形骸化して、絵に描いた餅になってしまいます。」

近藤「そういえば、とある会社で、DX人材定義書を作ったものの、評価する目利きがいないから、ほとんどの社員の評価がほぼ全員が平均点になってしまい、できる人から辞めていっているという話を最近聞きました。」

井出「あー、わかります。皆さん、プライドを持って仕事していますからね。
制度や施策を絵に描いた餅にしないためには、たとえ外部の要員でもいいから、スキルの高いプロフェッショナルを身近に置いておく必要があるということです。」

井出「一方、『適性』については、社員の資質を見極めたうえで、育成対象者を選ぶということです。残念ながら、誰もがDXに向いているわけではないですし、DXと言っても多種多様なので、全社員一律で同じ育成プログラムをやっても意味がありません。パフォーマンスが出にくい社員が一定数出て来てしまいます。それは、たとえ、育成プログラムが完璧に素晴らしいものであっても、です。」

近藤「これは私たち、デジタルタレントチームのコンセプトですが、「個性を活かす」ことが重要で、すべての社員が、自分の得意なことに取り組むことが、持続的な成長につながると思っています。」

―それらの課題に対する処方箋はあるのでしょうか?

法人コンサルティング&マーケティング事業部 デジタルタレントチーム 井出 未来

法人コンサルティング&マーケティング事業部
デジタルタレントチーム
井出 未来

井出「ちょうど、いま、『DX推進オールインワン・ナレッジプロセスアウトソーシング』サービス(以下、DX推進KPO)という、目利きのアサインや社員の資質による適正配置を含むDX人材のためのトータルサービスを立ち上げました。」

井出「『目利き』には、人材定義を作った後の認定制度のアセッサーからアドバイザリーサービスまで含んでおり、お客様のニーズに柔軟に対応できます。」

近藤「アセッサーの人選については、法人コンサルティング&マーケティング事業部所属の人材だけでなく、社を退職されたOBOGのアルムナイネットワークを活用や、ミドル・シニア層のリスキルなど、DX人材のエコシステムを構築しつつあります。」

井出「『適正配置』については、過去のプロジェクト参画状況から適正な配置を分析するPeople Analyticsのツールを使った科学的な手法を取り入れています。」

近藤別の記事でも紹介していますが、NTTデータで実績のあるデータドリブンの人材施策を汎化して、広くお客様に提供しています。」

DX推進における組織面の壁

―ところで、課題は3つと伺いましたが、もう1つは何ですか?

近藤「ああ、そうそう。ちょっと過激だから、言うのをやめようと思っていたんですけど…
人材の問題って、最後は組織・文化などの環境の問題に行きつくんですよ。そして、環境を決定づけるのが、組織のトップです。そのトップからの方針やメッセージと実際の評価基準の運用の整合性が取れていないというのが隠れた課題です。」

井出「例えば、DX化推進という目標を掲げていながら、実際には既存事業に従事する社員ばかり評価が高い、ということですか。」

近藤「はい、その通りです。逆に成果が出ていないのにDX従事者の評価が高いという例もあります。評価制度を変える必要はないのですが、評価の運用を適切にコントロールする必要があります。それには、『目利き』が現場に必要なのは言うまでもありません。」

近藤「これも前述のロケットと同じで、トップの方針を示すところが第一段階。そして、実際の評価をそれに合わせるところが第二段階。なかなか第二段階に進んでいる組織は少ないのではないかと思っています。ただ、DX推進KPOと比べて、あまり引き合いが多くないんですよ。」

井出「それは、どうしてですか?」

近藤「さあ、不愉快な真実が暴かれるので、組織のトップがこの取り組み積極的じゃないからじゃないですか。(涙)」

井出「DX推進の最後の壁がココロの問題と言われる所以ですね。」

最後に

―では、最後にひとことお願いできますか。

井出「DX推進の問題は多岐に渡っているので、個々の課題をつぶすのも大切ですが、全体を見て、話をすることできる私たち中長期の観点でとお付き合いしていただけると嬉しいです。」

近藤「100点満点のまとめですね。ありがとうございます。
私たちデジタレノヒト(デジタルタレントチームのコンサルタント)は、本日お話しできたこと以外にも、人材と組織の領域でいろいろな実験をしていますので、ぜひディスカッションしましょう。」

―本日はどうもありがとうございました。

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