ソフトウエアによりネットワークの動作を自由に制御するSDNビジネスの展開について ~世界初の方式を実装したOpenFlowコントローラを開発~

ニュースリリース/NTTデータ

2012年6月8日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータは、ソフトウエアによりネットワーク機能や構成を制御するという概念であるSoftware-Defined Networking(以下、SDN)に関するビジネスを2012年内に本格開始します。具体的には、SDNを実現する基盤技術「OpenFlow注1」を活用したネットワーク構築、システム開発、導入コンサルティングサービス等を行います。

このたびNTTデータは、このSDNビジネスの展開に向け、OpenFlowを簡易に、段階的に導入することを可能にするソフトウエア「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」の開発を開始しました。

OpenFlowの導入にあたっては通常、OpenFlow対応ネットワーク機器が必要ですが、NTTデータではOpenFlowを導入するために必要な機能をソフトウエアとして提供することにより、既存のネットワークに特別な機器を導入することなくOpenFlowを活用した環境構築を可能にします。

さらに本ソフトウエアは、既存ネットワーク機器とOpenFlow対応ネットワーク機器の混在環境にも対応する世界初の方式を採用しており、既存ネットワークを活用したOpenFlow環境に、OpenFlow対応ネットワーク機器を追加導入することで、段階的により高機能なOpenFlowネットワークへの移行も可能です。

NTTデータは本コントローラの試作機を6月13日から15日の間に開催されるInterop Tokyo 2012展示会にてデモ展示します。

NTTデータはSDNビジネス関連で2013年度に年間10億円の売り上げを目指します。

背景

近年、情報システムに対する要求が多様化・複雑化しており、変化する市場に迅速に対応可能なシステムが強く求められています。しかし、従来のネットワークでは、ネットワーク構成変更の際に煩雑な作業が必要であり、システム構成の変更に対する柔軟な対応に課題がありました。そこで、ネットワーク分野ではソフトウエアで自由にネットワークを制御できるSDNに大きな期待が集まり、SDNを主導するONF(Open Networking Foundation)が設立され、これを実現する重要な技術基盤であるOpenFlowの標準化が推進されています。

OpenFlowでは、従来は同一のネットワーク装置内に存在した伝送機能と制御機能が分離され、制御機能はソフトウエアとして集約して設置可能です。これより、ネットワークの動作の一括制御や、他システムとの連携を容易に実現できるため、ネットワークの運用コストを従来と比較し50%以上の低減が期待できるほか、さまざまな応用が期待されています注2。そのためOpenFlowは、大規模ネットワーク事業者やクラウド事業者だけでなく、さまざまなITベンダーにも注目されています注3

概要

NTTデータでは、OpenFlowに関する研究開発を2010年より実施しています。また、NTTデータを含むNTTグループは2011年よりONFに理事的役割を持つボードメンバーとして参画し注4、OpenFlowの標準化に貢献してきました。

この中でNTTデータは、2011年に大手ネットワーク機器ベンダーおよび仮想化ソフトウエアベンダー5社からの協力を得て、マルチベンダー環境下におけるOpenFlow技術適用の検証実験を成功させました注5。その検証の成果を活かし、「Hinemos®仮想ネットワーク管理オプション」(2012年6月5日販売開始)注6や、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所の「研究者向けクラウドシステム」に採用された「バーチャルネットワークコントローラVer1.0」注7の開発を進めるなど、OpenFlowの実用化を進めてきました。

また、2012年にはネットワーク帯域の空き状況に応じて通信経路を決定しネットワークの利用効率を向上させる機能を開発し注8、本機能を実装したOpenFlowコントローラを、当社データセンタにて実際に開発環境の運用に利用しています。

これらの取り組みを通して蓄積したノウハウをもとに、OpenFlowによる情報システムのより一層の最適化を目指し、データセンタネットワークに限らず、広域ネットワークや企業内ネットワークにも対応可能な新たなOpenFlowコントローラ「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」の開発に着手しました。「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」は2012年内の販売開始を予定しています。NTTデータでは、本コントローラの提供に合わせ、OpenFlowを活用したネットワーク構築、システム開発、導入コンサルティングサービス等の、SDNビジネスを開始する予定です。

特長

「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」はOpenFlowバージョン1.0に準拠しており、主に以下に示す4つの特長を持ちます。

1.ネットワーク利用率の向上と初期導入費用の抑制に対応したネットワークの仮想化が可能

本コントローラでは、OpenFlowによるネットワーク実現方法として、OpenFlow対応ネットワーク機器を利用するhop-by-hop方式と従来のネットワーク機器を利用するoverlay方式の両方に世界で始めて対応しており、両方式を混在させることもできます。hop-by-hop方式では、トラフィック流量が少ない通信経路を優先して新規通信に割り当てる機能を持つため、従来40%程度しか利用されていないネットワークを、約100%利用することができます(図1)。またoverlay方式では既設設備を活用したOpenFlow技術の導入が可能であるため、初期投資コストを抑えたOpenFlow導入が可能です。

具体的には、本コントローラでは、まず初めにお客さまが保有するネットワーク装置を活かしつつoverlay方式のOpenFlowを導入してネットワークの仮想化を行い、次に既設装置をOpenFlow対応の装置に置き換えてhop-by-hop方式に移行してネットワークの利用効率を向上させるといった、お客さまが保有するネットワーク環境に合わせた、段階的なネットワークの仮想化、効率化を実現できます(図2)。

【図】

図1:ネットワーク帯域の有効活用例

【図】

図2:段階的なネットワーク仮想化の例

2.ネットワーク仮想化の容易な導入が可能

本コントローラは、従来型ネットワーク装置と高い接続性を持っているため、システムの一部のみネットワーク仮想化を導入するスモールスタートが可能です。また、冗長化したL3スイッチとの接続(図3左)やマルチシャーシリンクアグリゲーション注9による接続(図3右)にも対応しており、既存スイッチとOpenFlowスイッチ間の帯域増強、信頼性向上を容易に行えます。さらに、既存のネットワーク仮想化技術との親和性も高く、VLAN多重化注10されたネットワークとOpenFlowにより構築されたネットワークを連携させたマルチテナントシステム注11も容易に実現できます。閉域ネットワーク間で通信を行う場合、従来はL3スイッチを経由して通信を行う必要がありましたが、本コントローラは閉域ネットワーク間を特定サーバー間のみ通信が可能な状態で接続できるため、L3スイッチに不必要な負荷をかけません(図4)。

【図】

図3:既存設備との接続例

【図】

図4:閉域ネットワーク間を超える機能を用いて共有サーバーと通信を行う例

3.ネットワーク運用コストの削減が可能

ネットワーク構成変更を自在に制御可能な汎用的なコントローラAPI群が用意されており、OpenStack等のクラウド基盤や、「Hinemos」等の運用管理ソフトと高度な連携が可能です。API実行によりコントローラ配下で動作するスイッチ群を一括で制御可能で、従来と比較し50%以上の運用費削減が期待できます。また、APIはネットワーク機能を抽象化しており、高度な専門知識を持たないユーザによる運用管理も容易です。スイッチ増設時に特別な設定変更は必要なく、サービスを継続したまま設備増強が可能です。増設するOpenFlowスイッチは特定ベンダーに統一する必要はなく、NTTデータにより検証された複数のOpenFlowスイッチを利用できます。

4.災害対策のための複数データセンタ連携が可能

overlay方式で利用されるトンネリング技術注12を用い、データセンタ間のライブマイグレーション(仮想マシンの物理サーバー間移動)にも対応できます。多種多様なデータセンタ間でライブマイグレーションを行う場合、仮想マシンに対してクラウド基盤が払い出すMACアドレス情報が重複し通信に悪影響を与える問題にもNTTデータ独自の技術により対応しています(図5)。

【図】

図5:MACアドレス重複の例

今後について

NTTデータは6月13日から15日の間に開催されるInterop Tokyo 2012展示会にて「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」の試作機をデモ展示します(図6)。展示会ではバーチャルネットワークコントローラに関する講演も予定しています。また、本コントローラを適用し、「Hinemos仮想ネットワーク管理オプション」の機能向上を図っていく予定です。

本コントローラの販売開始に合わせ、独自の機能開発を可能とするOpenFlowコントローラ開発用内部APIの公開、開発パートナー募集も行う予定です。

NTTデータは、バーチャルネットワークコントローラの販売を含むSDNビジネス関連で2013年度に年間10億円の売り上げを目指します。

【図】

図6:Interop Tokyo 2012デモ用に開発した画面

なお今回のニュースリリースにあたり、ONFおよび関係各社から以下のエンドースメントを頂いています(会社名50音順)。

Open Networking Foundationからのエンドースメント(原文)

"ONF's mission is to promote the commercialization and use of SDN and its underlying technologies," said Dan Pitt, executive director, Open Networking Foundation. "We are genuinely enthused when we see member companies develop new products that advance the introduction of OpenFlow-based SDNs into both existing networks and new ones. Such efforts by members to innovate, accelerate, and commercialize OpenFlow gets it in the hands of the users who can and will benefit from the technology."

Open Networking Foundation
Executive Director Dan Pitt

Open Networking Foundationからのエンドースメント(和訳)

ONFは、SDN及び関連基盤技術の商用化と利用の推進をミッションとしています。メンバー企業による新製品開発は、既存及び新しいネットワークにおけるOpenFlowをベースとするSDN技術の導入を前進させるものだと確信しています。OpenFlow技術のイノベーション、商用化などにおける多くのメンバー企業の努力により、お客様にとってより使いやすく効果的なOpenFlow活用が期待できると考えます。

Open Networking Foundation
エグゼクティブディレクタ ダン ピット

インテル株式会社からのエンドースメント

インテルは、株式会社NTTデータ様のバーチャルネットワークコントローラVer2.0の発表を歓迎いたします。インテルでは、次世代データセンタのキーワードとして「自動化」、「シームレスな連携」、「クライアント協調」を掲げ、オープンで相互連携可能なデータセンタ・ソリューションの実現を推進しています。今回発表のバーチャルネットワークコントローラVer2.0が、データセンタとネットワーク運用の自動化を加速し、クラウド・オペレーターと企業ユーザの効率的なIT運用を支援する有力なツールとなることを期待します。

インテル株式会社
クラウドコンピューティング事業本部
本部長
平野 浩介

NCLコミュニケーション株式会社からのエンドースメント

NCLCはこの度のNTTデータ様のOpenFlowコントローラ新製品発表を歓迎いたします。私どもNCLCは米国Pica8社のOpenFlowスイッチ(PRONTOシリーズ)の国内唯一の代理店であり、NTTデータ様のOpenFlowコントロ-ラとPica8社製品による検証実験の成果をInterop Tokyo 2012にてご紹介させていただくことをたいへん喜ばしく思います。Pica8社PRONTOシリーズはネットワークイノベーションを推進する新世代のSDNスイッチデバイスです。クラウド時代の新しいネットワークアーキテクチャであるSDNをNTTデータ様と共に推進していきたいと考えます。

NCLコミュニケーション株式会社
代表取締役社長
関根 尚

日本アイ・ビー・エム株式会社からのエンドースメント

日本アイ・ビー・エム株式会社は、「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」のプロトタイプの発表を歓迎します。 当製品とIBM System Networking G8264 ラックスイッチ製品によって、既存環境を生かしたネットワークの最適化を実現し、データセンタから一般企業まで幅広いお客様が、OpenFlowのメリットを享受できるよう支援します。今後は、弊社のサーバーやストレージ、ネットワーク製品のみならず、アプリケーションとの連携もより強化し、お客様にとって最適なIT環境の構築を目指して最先端技術を備えたクラウド基盤を提供していきます。

日本アイ・ビー・エム株式会社
専務執行役員
システム製品事業担当
薮下 真平

日本電気株式会社からのエンドースメント

日本電気株式会社は、OpenFlow技術を活用したネットワーク製品「UNIVERGE PFシリーズ」を世界でいち早く製品化し、SDN(Software Defined Network)の実現・拡大に注力しております。このたびNTTデータの「バーチャルネットワークコントローラ Ver.2.0」が、ネットワーク仮想化の実現方法としてhop-by-hop方式とoverlay方式の両方に対応することを、歓迎いたします。お客様の環境やニーズに合わせたネットワーク仮想化技術を提供することで、SDN市場のさらなる拡大に繋がるものと確信しております。

日本電気株式会社
企業ソリューション事業本部
UNIVERGEサポートセンター 主席事業主幹
渡辺 裕之

ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社からのエンドースメント

ブロケードは、NTTデータ様のソフトウェア・デファインド・ネットワーク(SDN)に関するビジネスの本格展開の開始の発表を歓迎いたします。このたびの発表に含まれるネットワーク仮想化技術により、データセンタの仮想化を推進されることになると考えます。この結果、データセンターリソースの利用率が向上することで、より付加価値が高く、投資効率の高いITサービスを実現できることを期待しています。ブロケードは、本ソリューションを実現できるように、その掲げるSDNビジョンのもと、引き続き製品開発とソリューション提供を推進していきます。

ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社
代表取締役社長
青葉 雅和

注釈

  • 注1非営利組織「Open Networking Foundation(ONF)」により標準化が進められるネットワークを制御するためのソフトウエアインターフェース規格です。
  • 注2他には、他システムと高度に連携したシステムポリシー適用、セキュリティ、ネットワーク帯域制御等の実現が考えられます。
  • 注3OpenFlowは、大規模ネットワーク事業者やクラウド事業者だけでなく、チップメーカーやシステムベンダー、コンピュータ会社、ソフトウエア会社、テスティングやトレーニング会社など非常に多くの会社に注目されています。
  • 注4NTTグループを代表してNTTコミュニケーションズ株式会社がONFに参加しています。
  • 注52011年10月3日 次世代ネットワーク技術「OpenFlow」を活用したクラウド環境構築の検証実験に成功
  • 注62012年6月5日 OSS統合運用管理ソフト「Hinemos®」が仮想ネットワーク管理に対応
  • 注72012年6月6日 国立情報学研究所の研究者向けクラウドシステムを構築
  • 注82012年に開催されたSDN/OpenFlowをテーマに掲げる世界的カンファレンスOpen Networking Summit 2012において、デモ展示しています。
  • 注91台の装置から複数のケーブルを敷く形態ではなく、異なる装置からケーブルを敷く形態で経路の冗長化と帯域増強を行う方法。
  • 注10VLAN(Virtual LAN)技術により一つのネットワーク装置を複数のテナント、もしくはシステムが共用する方法。
  • 注11一つの物理的なシステム基盤を複数のユーザで共用しているシステム。
  • 注12離れた拠点間を結ぶ閉じられた仮想的な通信経路を生成する技術。
  • 「バーチャルネットワークコントローラ」は日本国内における株式会社NTTデータの商標です。その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
平形
TEL:03-5546-8051

製品・サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
技術開発本部
ITアーキテクチャソリューションセンタ
磯部、永園
TEL:050-5546-2301