欧米では輸出入型企業向けに、製商品受注から納品・決済までの期間長期化に伴うリスクを担保することを目的に、サプライチェーンファイナンスの一類型としてP.O.(Purchase Order)ファイナンスなども提供されている。中東で原油をタンカーに積み、日本に運ぶまでの間、業者(サプライヤー)は輸送途中の原油を長期間に亘り現金化することが出来ない分、流動性リスクを負うことになるが、その間の資金繰りを手当てするなどの目的で利用されるケースが多い。
一般的にサプライチェーンファイナンスとは、「部材購入→組立・生産→流通→販売→請求」といった取引情報にフォーカスし、企業が日々必要とする運転資金を適宜提供することを目的とした融資スキームを指す。主として、輸出企業における資金回収や調達の迅速さを支援する目的で活用されつつあり、商流情報を分析したうえで、企業が求める資金需要を迅速に把握し、速やかに融資を実行する、といったモデルとなる。
我が国での適用を考える際、まずは国内に閉じた商取引から導入することが有効だ。
ここで、金融機関が国内企業間での個別取引情報を取得する場合を想定してみよう。この場合、EDI等で交換される企業間の受発注情報を、金融機関として電子的に活用することが理想的ではあるものの、受発注情報の根幹となる企業間メッセージ自体、企業系列単位で個別に定義されているケースが多く、そのままでは金融機関での利用は難しい。同様に、企業コードも独自の定義付けがなされているなど、系列を超えて、あるいは金融機関が利用しやすい体系での必要情報の取得は困難なのが現状だ。
ただし、企業間ではXMLに基づくメッセージ交換が普及しており、金融ネットワークのXML化も推進されていることから、XMLをベースにEDI情報を活用することが出来れば、金流・商流の情報連携を実現する大きな助力となるだろう。
実際、金流と商流はそれぞれ独自に情報共有ネットワークを整備してきたものの、連携する仕組み自体が未だ確立されていないことが課題として認識されつつあり、双方の有意連携への期待は高まっている。
とりわけ、流通業界においては、いわゆる「仕入高払い」といった商慣行などもみられ、結果として入金額と認識債権額にギャップが生じるなど、改善の余地が多々残されている。したがって、商流と金流との情報連携不備による消込業務の煩雑さを解決することが共通課題として認識されている。
そこで、法人番号の活用により、各企業が独自に割り当てている取引先企業コードなどを企業の枠を超えて一本化し、取引先企業情報を一意に特定したうえで、銀行が保有する個別企業の支払情報との紐付けを容易とすることが考えられる。これによりまずは取引情報の一覧性を確保することでき、さらに次の段階で受発注情報などに基づき企業活動を精緻に分析・評価することで適切なファイナンスの実現が可能になるものと期待される。
法人番号の活用は、金融機関のアクティビティを大きく変容させる可能性を秘めており、番号制度導入という「制度対応負担」をビジネスチャンスに変えることが十分に可能となるだろう。