CMMI-SVCの概要
システム開発の世界では、プロセス改善のデファクトスタンダードとして「開発のためのCMMI(以下、CMMI-DEV)」が長らく用いられてきました。近年、システム開発後のサービスの改善にも焦点を当てるため、「サービスのためのCMMI(以下CMMI-SVC参考1)」がリリースされ、海外では徐々に普及してきています。CMMI-SVCはCMMI-DEVと同じ5段階のレベルを持ち、企業レベルの改善活動を支援するのに使われています。
CMMI-SVCの優位性
CMMI-SVCにはどのようなメリットがあるか、主要な二つの点を紹介します。
一つ目は提供中のサービスレベルの維持と改善に焦点を当てていることです。安定したサービスの提供、トラブルが起きた時の復旧、サービスリクエストの迅速な対応、増加する業務量への先を見越した対応など、利用期間中に利用者が感じる価値を高めるためのプロセスを定義するのに役立ちます。
二つ目は高いサービスレベルの提供を可能にするためのシステム作りに配慮していることです。CMMI-SVCではサービスレベルの管理以外にも、「サービスシステム開発(Service System Development)」というプロセスがあり、要求されるサービスレベルをどのように作りこみ、効率的かつ確実に提供していくかを設計するノウハウも提供しています。
実際にCMMI-SVCを適用している海外のNTTデータグループの会社では、リクエストの応答時間の改善に際して、サービス提供時の運用プロセスの改善だけでなく、サービスを構成しているシステムの作りの見直しで実現する、といった改善活動にも活用されています。
普及に欠かせない正式翻訳、日本語版のリリースについて
CMMI-SVCの原本は英語版であり、正式訳があるのはスペイン語、アラビア語です。一方、やや歴史の長いCMMI-DEVの正式訳はフランス語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、中国語、日本語があります参考2。改善モデルの普及において正式訳があるか無いかの違いは大きく、例えば2015年の1年間に報告されたCMMIレベルの達成件数でみると、英語圏(アメリカ、インド等)、スペイン語圏(スペイン、メキシコ等)はCMMI-DEV、CMMI-SVCともに件数が多いのに対し、CMMI-DEVしか訳がない中国ではCMMI-DEVが800件以上あるのに対して、CMMI-SVCはわずかに3件となっています。日本も同様で、CMMI-DEVが18件なのに対しCMMI-SVCは0件です。
以上のことから、正式訳の存在が普及を後押ししていることがわかります。CMMI-SVCモデルの日本語訳については、これまでCMMI-DEVに関わってきた専門家を中心に、有志による日本語訳が試みられてきました。サービスに特有のプロセスに関する記述について関係者による訳語の議論も行われており、正式な日本語訳の公開に向けた動きは加速しています。