ビジネスパーソンの教養となりつつあるデータリテラシー
リテラシーとは「読み書き能力」とも訳され、特定の事柄に対して最低限心得ておくべき知識を意味します。PCが普及した90年代には、表計算ソフトや電子メールなどを使いこなせるという意味で「コンピュータリテラシー」という言葉が広く普及しました。それから20年以上が経った現在、「データリテラシー」という言葉を改めて定義し、焦点を当ててみたいと思います。
データリテラシーは、データベースソフトを使いこなせるという意味でしょうか。ここでは違います。(特に分析結果としての)データを、正しく見て理解し、必要な行動に結びつける能力、と定義できます。必ずしも自らデータ処理ができる必要はなく、データを読み解いて活用することが求められているのです。
特に経営者・管理者やマーケターなど、従来はデータと直接向き合う機会が少なかった階層・職種にとって、データリテラシーを高めることは急務と言えます。
企業における組織的データ活用のサイクル
図1:企業における組織的データ活用のサイクル
企業において「データが組織的に活用されている」とは、どのような状態でしょうか。私は、図のようなサイクルが円滑に回っている状態だと考えています。
組織である以上、重要な意思決定をするのは経営層であり、その経営層に対して「このような行動をしてはどうか」と提案されるものをここでは施策と呼んでいます。デジタル時代では、データ分析の結果得られた洞察・示唆が施策立案に活かされ、施策実行の結果はまたデータとして蓄積されます。
つまり、前述のデータリテラシーの定義である「データを、正しく見て理解し、必要な行動に結びつける能力」が十分発揮されなければ、このサイクルは回らないのです。
データリテラシーが発揮されるべき具体的な場面
では、データリテラシーが発揮されるべき具体的な場面とは、どのようなものでしょうか。以下に二つの例を挙げて説明します。
例1:集計データの平均値を疑う
あなたが小売店の店主の立場で、A製品とB製品どちらも一日平均100個売れているという集計データを受け取ったら、発注する数も同じとしてよいでしょうか。
このとき、平均値を疑って(それだけで判断はせず)、データのばらつきにも着眼すれば、「A製品は毎日まんべんなく売れているが、B製品は月末月初に集中的に売れる」という隠れた傾向に気づいて発注行動に活かすことができます。
例2:データを指標値化して正しく比較・評価する
C製品の在庫が100個あると聞いたとき、その在庫数が適正か判断することができるでしょうか。数値そのものを単独で評価することは不可能でしょう。
このとき、C製品の月当たり売上個数が300個であるというデータを組み合わせれば、この在庫全てが約10日で売れてしまうと逆算でき、「発注リードタイムを加味するとこの数では足りないのでは」と判断できます。これは「在庫日数」という指標値を計算によって創り出し判断に活用している例です。
まとめ
前述のデータ活用サイクルを着実に回していくことができれば、必ずしも難解な統計解析手法を使いこなしたり高度な分析ツールを導入したりすることなく、その組織にとってデータは武器となり競争優位性の源泉となるでしょう。
データ分析担当者の報告を鵜呑みにするのではなく、個々の経営層やマーケターがデータリテラシーを高め、企業活動や業務の目的に照らし合わせてデータから意味を見出そうとする姿勢を持つことが重要です。
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