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2023年12月11日トレンドを知る

レジに並ばずショッピング。
ウォークスルー店舗「CATCH&GO」での不可逆的な顧客体験に迫る

商品を手にとって店を出れば、いつの間にかスマホに決済完了通知が届き、ショッピングが完了する。この画期的なウォークスルー店舗「CACTH&GO」が、日本初の路面店として「イオンフードスタイル横浜西口店」内にお目見えした。先行して実証実験の場として展開していたNTTデータ社屋内CACTH&GO豊洲店も含め、CACTH&GOが実現する革新的な顧客体験やもたらされるメリットに迫る。
目次

スピーディかつシンプルなショッピング体験は、一度味わえば病みつきに

日進月歩で進化するITの技術によって、人々のライフスタイルは驚くほどのスピードで変化しています。社会環境が利便性、快適性を追求し続けた先に待っている、私たちの日々の行動や体験はどのようなものなのでしょう。

2023年10月27日、神奈川県・横浜市にオープンした「イオンフードスタイル横浜西口店」(以下、横浜西口店)には、近未来のショッピングスタイルを予見するようなウォークスルー店舗CATCH&GOが併設されました。株式会社ダイエーとNTTデータが協働で出店したこの店舗には、レジも、販売スタッフも存在しません。顧客は欲しい商品を自由に棚から選び、カバンに入れるだけ。レジに並ぶ必要もなければ、自分でバーコードをスキャンする必要もなく、そのまま商品を店舗外へ持ち出せば決済が完了するのです。あとは、スマートフォンで自分の買い物に対してきちんと決済されているかをチェックするのみ。これが、セルフレジのさらに先を行く、レジさえも存在しないウォークスルー型のショッピングスタイルです。

横浜西口店オープンに関する報道発表はこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2023/092600/

法人コンサルティング&マーケティング事業本部 法人アセットベースドサービス推進室の新原友美はこう話します。
「アプリをスマートフォンにインストールしていただければ、あとは店内で好きな商品を手にとって店を出てくるだけで決済が完了します。このショッピング体験を、店頭の案内掲示物やスタッフによる呼び込みで認知していただくにはまだ課題が残っていると感じますが、一度、利用してみていただければこの利便性に感動してもらえるはずです。私たちは実際の店舗前で顧客の動向を確認しているのですが、決済完了を確認したお客さまが『おおっ』と感嘆の声をあげていたのを見て大きな手応えを感じました。昨今、ITを駆使した利便性の高いサービスは世の中に次々と実装されていますが、CATCH&GOのショッピング体験はとりわけ革新的であるとお客さまに感じていただけたのでしょう」

圧倒的にスピーディで快適かつシンプルなショッピングを実現するこの店舗。既存のスーパーやコンビニエンスストアが当たり前のようにこうしたウォークスルー型のシステムを導入する日はそう遠くないかもしれません。

数字でみる、CATCH&GOの多様なアドバンテージ

「イオンフードスタイル横浜西口店」内のCATCH&GOは不特定多数の利用者を対象とした日本初のウォークスルー路面店舗です。この店舗オープン前には、約2年間、実験店舗での実証実験が行われていました。2021年9月、NTTデータ社屋内に誕生した「CATCH&GO 豊洲店」(以下、豊洲店)の運営によって課題抽出、システム改善、顧客のリサーチなどを繰り返し行い、その結果として日本初の路面店出店が実現したわけです。この豊洲店を例に、CATCH&GOが有するさまざまなアドバンテージについて紹介していきましょう。法人コンサルティング&マーケティング事業本部 法人アセットベースドサービス推進室の西郷拓海はまずこう説明します。

「売り場面積は約37平方メートル。この店内には700品目以上の商品が常時、置いてあります。2023年12月現在では1日あたり800‐900人程度の利用があり、一人数点の商品を購入することが多いため延べ数千点ほどの商品が動く計算です。レジがないため顧客対応専門のスタッフは存在せず、売れていった数千点ほどの商品を都度、補充するスタッフが1名のみで運用しています。つまり商品補充や物流業者とのやりとり、コーヒーマシンの清掃など店内で必要な業務を1名でこなせるのが大きなメリットです。このスケールの店舗で有人レジの場合なら、昼時のピーク時などは顧客対応だけで3人以上はスタッフが必要になるのではないでしょうか」

店舗側から見れば、レジの人員を確保しなくて良いことだけではなく、レジ設置場所の確保も必要ありません。
昼時の1時間に顧客200人に対応するとなれば、1人平均2分程度時間がかかると仮定すると、セルフレジが7台(1時間で1台あたり30人の利用)は必要となるでしょう。ウォークスルー型ならレジ導入をしなくて良いので、設置場所までもがまったく必要ない点も、大きなメリットです。

「また、有人レジではヒューマンエラー、セルフレジではうっかりとスキャン漏れしてしまったとか、あるいは万引きのような犯罪なども含めて、どうしても会計のエラーが起こります。しかしCATCH&GOでは誤請求の発生率が低く、会計の正確性は現状で99.9%。この点も店舗側には大きなメリットとなります」(新原)

一方、顧客にとって最大のメリットはとにかく素早くショッピングが終えられるという点です。混雑した店内で延々とレジ待ちをした体験は誰にでもあるでしょう。CATCH&GOではお財布をポケットから出してお金を取り出したり、スマホをレジにかざしたりする時間も必要ありません。ただ欲しい商品を棚から取り、店を出ればよいのです。

「たとえば豊洲店には入り口のゲートから5mほどの位置に缶コーヒーが置いてあります。この場所とゲートを往復する約10m、およそ80m/分の一般的なスピードで移動した場合、7.5秒で缶コーヒーの購入が完結する計算です。セルフレジの会計でさえ一人2分程度ですから、ウォークスルー型のショッピングがいかにスピーディかが理解いただけると思います」(新原)

仮に、有人レジの店舗と、ウォークスルー型の店舗が並んでいれば、顧客はどちらを選ぶでしょう。その違いを体感している顧客であれば、圧倒的に快適なウォークスルー型が選ぶことが増えてくるのは間違いありません。顧客に選ばれやすいということは、イコール、店舗側にとっても競合他社との差別化となる非常に大きなアドバンテージなのです。

さらに、ウォークスルー型であれば、店舗側がクーポンなどをオンラインで発行した場合や、ポイント加算の際にも、わざわざスマホやポイントカードを用意する必要がありません。店舗側のシステムが顧客のスマホと連動し、自動的にクーポンの利用やポイント加算ができ、顧客にとっては大きなメリットとなります。理論上、クーポン利用率は100%ですから、顧客を誘引したい店舗側からみてもクーポン発行の費用対効果が高まります。

画期的なショッピング体験を社会に実装していくために

画期的なショッピング体験をいち早く提供した豊洲店。ウォークスルー店舗を支える設備について新原はこう話します。

法人コンサルティング&マーケティング事業本部 法人アセットベースドサービス推進室
新原 友美

「顧客がどの商品を手にとり、購入しようとしているかは、天井に設置した30台以上のカメラと、商品棚に設置した重量センサーが分析し、判断した結果をその方のスマホアプリに転送していきます。棚からピックアップされた段階で重量センサーがその商品を何個、購入しようとしたかを重量によって判断してくれます。もちろん、一度、手にとってまた棚に戻した場合にも重量センサーが『商品が購入されてない』と判断してくれるので、迷った末に購入しないという顧客のアクションにも対応しています」

商品の動向をリアルタイムで認知できる重量センサーには、こんなメリットもあると西郷は説明します。

「どの商品がどこにどれだけあるかが重量センサーによってリアルタイムで確認できます。この商品動向の情報を、賞味期限などの情報と組み合わせれば、フードロスを減少させる取り組みにも貢献できると考えています。また、顧客は全員がアプリを持っているため、購買履歴の情報をもとにして、賞味期限が迫っている商品をリコメンドするといったアクションも起こせます。将来的にはこうしたアクションによってフードロスを減少させることができるかもしれません」

店舗側、顧客側にそれぞれ多様なメリットが生まれるCATCH&GO。ウォークスルー型の店舗運営にはスマホと連動した出入り口のゲート、天井部のカメラ、重量センサーといった設備を導入すればあとはITによって管理するだけで、他の特殊な機器は必要ありません。普及のカギは、こうした設備をいかに迅速かつシンプルに既存の店舗へ実装していくか、だと新原は話します。

「NTTデータとしては、このようなウォークスルー型の店舗を未来の“当たり前”にしていくため、短期的には新たな店舗形態として新規出店をしていき、中長期的には既存のコンビニやスーパー、それ以外も含めたさまざまな店舗に導入していくことが大事だと考えています。そのうえで現状の課題である、店舗面積の拡大への対応と、商材や顧客の多様化への対応に取り組んでいきます」

西郷はいかに広く顧客層を取り込めるかが普及のカギだと語ります。

法人コンサルティング&マーケティング事業本部 法人アセットベースドサービス推進室
西郷 拓海

「普及において重要なポイントは、アプリ前提のこのサービスに対し、現金決済を好む顧客をどう取り込んでいくかという点です。私自身は普段小銭さえ持ち歩かず、ほぼ100%キャッシュレスのショッピングを体現していますが、まだまだキャッシュレスに馴染まない方は世の中に多いのが現状です。大前提として小売業界は、可能な限り広い層の顧客を対象としなければなりません。ですからあらゆる層にこの快適なショッピングスタイルを体感していただくために、広報活動や普及啓蒙はとても大切ですし、その結果利用者が飛躍的に増大した場合のシステム対応も検討する必要があるでしょう」

早ければ今から10年後には、このウォークスルー店舗が社会で広く見られるようになると口を揃える二人。労働人口の減少、フードロス、万引きなどの防犯など、さまざまな社会課題解決にもつながるCATCH&GOの今後の展開に、ぜひご期待ください。

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