ゆうちょ銀行のデジタルチャネル拡充に向けたこれまでの歩み

Q.ゆうちょ銀行のデジタルバンキングシステムプロジェクトとは?

今日はよろしくお願いします。今回は私がプロジェクトマネージャーを務める、ゆうちょ銀行様のデジタルバンキングシステムプロジェクトに参画している開発メンバーに集まってもらいました。

思えば長いプロジェクトで、インターネットバンキングシステムの開発に始まり、スマホアプリの「ゆうちょ通帳アプリ」のリリース、その後の機能追加と、いくつものステップがありましたね。

はい。直近では、お客様が2024年に「ゆうちょ通帳アプリ」登録口座数1000万という目標を前倒しで達成することもできました。それまでのストーリーも振り返っていきたいですね。

私は2018年に入社しましたが、プロジェクトはそれ以前から続いていたんですよね。今回は入社前の話も聞けるのが楽しみです。

それではまずプロジェクトの全体像から紹介していきましょうか。ゆうちょ銀行様に関わるサービスやシステムが数多くある中で、ありがたくもNTTデータ 郵政・政策金融事業部では多くのシステムに携わっています。その中で私たちのプロジェクトではインターネットバンキングやスマホアプリ、Fintech企業向けのオープンAPIなど、リテール向けのデジタルバンキングシステムの開発を行っています。

プロジェクトの大きな流れを整理すると、まず「ステップ1」として、世の中にデジタルチャネルを提供する基盤としてインターネットバンキングシステムをお客様と作り上げました。私は産休・育休でプロジェクトを一時的に離れるまで、主に「ステップ1」のインターネットバンキングシステムの開発に携わってきました。

私も豊島さんと同様、「ステップ1」からプロジェクトに参画しています。アプリケーションの開発をメインに担当し、中でもスペシャリストとしてテクニカルな課題に取り組むことが多く、オープンAPIの開発など新規プロジェクトの立ち上げにも携わりました。

岩波さんはデジタルバンキングシステムの基礎となる部分を作り、システムの品質を守り続けてくれました。インターネットバンキングシステムが完成した後、「ゆうちょ通帳アプリ」を開発し、リリースするまでが「ステップ2」です。この時から、私は本格的にプロジェクトに参画しています。

私がNTTデータに入社したのは「ステップ2」の時期でした。そして2020年2月に「ゆうちょ通帳アプリ」をリリースした後、多くの方にアプリを使っていただけるように「育てる」フェーズが「ステップ3」でしたね。

その通りです。最初は照会機能のみの状態からアプリをスタートさせたので、その後もたくさんのチャレンジがありました。西川さんには、ことら送金の機能追加やeKYC認証など、世の中の話題になるような大規模な機能追加を中心メンバーとして担当してもらいました。今回の座談会の参加者を選ぶ時にも「西川さんには参加してほしい!」という声が多かったです。

Q.プロジェクトの難しさは?

開発という面から見たゆうちょ銀行様の特徴としては、システムの品質に対する強い責任感を持っていることが挙げられます。一般的な企業の場合、システム部門は少人数で、経営部門など他部門からの要望を踏まえてベンダとの調整を実施するケースが多いと思うのですが、ゆうちょ銀行様のシステム部門は組織の規模が大きく、皆さんが主体的に自分たちのシステムやサービスについて真剣に議論しています。

ゆうちょ銀行様が品質に対して強い責任感を持つ背景としては、日本最大級の預金残高を誇り、わずかなシステム変更が大きな影響を及ぼす可能性があることを意識されているからでしょう。そのようなシステム開発に従事できるのはもちろん緊張感もありますが、醍醐味とも言えますね。

その成り立ちを考えても、ゆうちょ銀行様は数ある金融機関の中でも特に求められる公共性が高く、ユニバーサルサービスとしての視点もありますよね。

はい。日本全国どのような地域にもある銀行だからこそ、子ども名義の口座を開設する方が多かったり高齢者のユーザーが多かったりしますよね。

そうした背景があるため、「アクティブに口座を使っている人ばかりではない」という特有の課題もあります。だからこそ、インターネットバンキングやスマホアプリなどのデジタルチャネルを利用して口座利用を活性化させていくことが重要になるわけですね。

新しいサービスの開発は、安定的なサービス提供と相反する部分があります。前例や実績があるものしか取り入れないのでは、どうしても他社との差別化は難しくなります。

そこは、デジタルチャネル拡大に踏み切る際の課題でした。しかし、お客様の中でも次世代のサービスを見据えたデジタルの専門組織が生まれ、これまででは考えられなかったような新しいサービスも取り入れる風土が生まれています。「ゆうちょ通帳アプリ」は、まさにそれを体現していますね。
これまでの価値観を刷新し、未体験の領域にも果敢に挑戦

Q.印象に残るエピソードは?

私は2018年のオープンAPIの開発が印象深いですね。先ほどの話の通り、ゆうちょ銀行様は実質的な社会インフラとしてサービスを提供してきたため、「トラブルは絶対に起こしてはいけない」という考え方で長年開発を行ってきました。そのため、比較的システム開発にかける時間を長めに確保する傾向にありました。

品質を担保するためにはやむを得ないとはいえ、当時は「DX」や「Fintech」という言葉が流行り始めた頃で、世の中の動きが加速していました。それまでのやり方では変化への対応が間に合わないのは明白でしたよね。

はい。そこで私たちはこれまでのやり方を大切にしながらも、新しい開発方法や体制を作り上げ、スモールスタートでオープンAPI開発に挑みました。影響範囲の小さいところから着手し、成功したら重要なサービスにも展開していくという手法で進めました。大変さはもちろんありましたが、新たなチャレンジだったのでやりがいがあり楽しかったですね。

非常に大規模なシステムで品質の高さも大切にされているお客様だと、開発方法や体制を新しくすることは容易ではなさそうです。挑戦的な試みも楽しんで乗り越えたのは、岩波さんだからこそかもしれません(笑)。なるほど、オープンAPI開発の頃からお客様も私たちも意識が変わり始めたんですね。

オープンAPI開発で成功したこともあり、スモールスタートでのアジリティの高い開発は「ゆうちょ通帳アプリ」でも取り入れられたんです。まずは、残高や明細などの照会機能の開発からスタートし、問題なくリリースができた後に、インターネットバンキング側の機能を参考にした送金機能の開発を行いました。

送金機能の実装(フルバンキング化)以降は、「ゆうちょ通帳アプリ」独自の機能を検討するようになりましたよね。独自機能を開発する上での変化は、外部サービスとの接続機会が増えたことです。そうするとステークホルダーが増えるのですが、それに対し豊島さんは苦労があったのではないですか?

そうですね。何度か話に出た通り、ゆうちょ銀行様は品質を重視したものづくりをしてきたのですが、外部サービスの中には品質に対する考え方が違うところも少なくありません。「なぜそこまでやりたいと考えるのか?」ということを外部サービスにも納得して対応いただく必要がありました。

一般的なWebサービスだと「不具合が出たらその時に直せばいい」という考え方が主流ですからね。金融サービスとの大きな違いです。


いままでとは違うステークホルダーと関わりながら、どうすれば品質を積み上げていけるのか。これまでのやり方にプラスアルファで考える必要があったという点で印象に残っていますね。

そして西川さんは2018年に入社して、eKYC認証やことら送金など、外部サービスを取りまとめながら新しい機能の開発に携わってきました。若手でありながら重要な機能に挑戦してもらいましたが、やはり苦労もあったのではないでしょうか?

特にことら送金機能の実装時は、苦労しましたね。というのも、当初から担当していた先輩が途中で異動になり、私が主管となって顧客折衝や課題推進をすることになって。豊島さんのお話にも通ずるのですが、外部サービスとの連携となるため、社内外の複数のステークホルダーと調整するのは大変でした。しかも、新たに検討しなければならないことが多く、社内外を奔走しましたね。

eKYCに関してはタイトなスケジュールで導入することになり、企画に近い部分からお客様と協力して進めていきました。試験のスケジュールを組むのも一苦労で、まるでパズルのようでしたね。その時は苦労しましたが、いまはゆうちょ銀行様のいろいろなサービスでeKYCが認証のキーになっており、「皆で力を合わせ、がんばってよかった」と誇らしく思います。

西川さんにとっては大変な時期だったと思うのですが、その分、やりがいも大きかったのではないですか?

はい。岩波さんのおっしゃる通り、いま思うと楽しかった…と言えるのですが、当時はとにかくがむしゃらでした(笑)。

それでもトラブルなくリリースできたのは本当にすごいことだと思います。当時はどんなことを意識していたんですか?

特別なことはしていないのですが、先輩方から「これもやった方がいい」と言われたことは素直にしっかりやるように心掛けていました。

私から見ても、西川さんはけっして妥協しないという印象でした。どんなに大変であっても、すべてに対して真摯に向き合っていて。PCを持って社内の関係者のところに突撃していく様子をよく目にしました(笑)。

そうでしたね(笑)。関係部署に何かしらの作業を依頼する時ですよね。それでも嫌がられずに「西川さんが言うなら」と対応してもらえていたのも、西川さんがきちんと事前に準備して、自分の中で納得した上でお願いしていたからですよね。

自分なりに考えて、調べた上でお願いすることは意識していました!私としては、先輩方の手厚いサポートあってこそだと思っています。

吉川さんや岩波さんをはじめ、質問したらしっかり聞いてくれる先輩ばかりでしたよね。風通しの良さがあるからこそ若手社員や経験者採用の方も活躍しやすいのだと思います。
通帳アプリは金融の領域を超えて、人々の生活とつながっていく

Q.プロジェクトに携わる意義や魅力は?

質・量ともにチャレンジしがいのあるプロジェクトです。なかなかない規模と影響力を持つスマホアプリ開発ですからね。その中で、一人ひとりが責任のある業務を任される風土があります。

若手であっても自由度が高く、挑戦させてもらえるところには私自身やりがいを感じています。困ったことがあった時には助けてくれる先輩方もいるので、安心して働けます。

トラブルが起こっても、ひとりだけでどうにかする必要はありません。必ずチームでサポートしますし、上司が必ず守ってくれます。私もずいぶん吉川さんには助けてもらいました。いまではマネジメントを担う場面が多くなってきたので、吉川さんの姿を見て学んだことを実践しているところです。

「ゆうちょ通帳アプリ」の開発だけでなく、運用やサポートを考えるなど、多角的な視点からアプリに携わることができるのも魅力の一つだと思います。それと、何と言っても自分の生活にとっても身近なサービスであることは大きな魅力です。

プロジェクトの「わかりやすさ」は魅力の一つですね。自分自身もユーザーとしてすぐに利用できるというおもしろみがあります。また、先ほど西川さんがお話ししていた「若手の活躍機会」に近いのですが、「成長できる環境である」ことも魅力だと思います。若手であっても、経験者採用で入社したばかりの人であっても、主体的に考えて行動する姿勢を大切にしているので、そこに楽しさを見いだせる人には活躍機会が多く、向いているプロジェクトだと思いますね。

私としては、吉川さんがこのプロジェクトのコンセプトに掲げている「明るく、楽しく、元気よく」という言葉が気に入っています。吉川さんのおかげでコンセプト通りの雰囲気が生まれていると感じています。

私も良いコンセプトだと思います!心身ともに健康で働き続けるためにも大切なことですからね。楽しく働ける環境だということは最大の魅力かもしれません。

ところで吉川さん、なぜ「明るく、楽しく、元気よく」というコンセプトなんですか?

改めて説明するのは恥ずかしいですね(笑)。私は役職にとらわれず、皆がフラットにワイワイ言いながら働くことでいいものが生まれると信じているんです。システムのように多くの人が協力しないと作れないものこそコミュニケーションが重要だと考えていて。やっぱり人が魂を込めて作ることが必要なんです。

たしかにシステムをインテグレートするには、「人をインテグレートする」ことが重要ですよね。各分野の専門性を持った人たちがインテグレートされることで、大きな価値を生み出せます。それがNTTデータの強みですし、ゆうちょ銀行様のプロジェクトにも活かされているのかなと。

Q.プロジェクトの今後は?

お客様は「ゆうちょ通帳アプリ」1000万口座登録を目標にしていましたが、予定よりも早い時点で達成することができていました。1000万口座達成を受けてお客様は計画を上方修正し、中期経営計画では2025年度内に1600万口座を目標にしています。

数字としては順調に推移しているとはいえ、これからはいままでと違う難しさも待ち構えているんですよね?

はい。ゆうちょ銀行様の通常貯金口座数は約1億2000万(2024年3月末時点)ですが、既に話が出てきたようにアクティブな口座ばかりではありません。これからは口座をいかに活性化させていくかといういままでと違った観点も必要になると思います。

そこでいま、お客様は「ゆうちょ通帳アプリ」の中だけで完結するサービス提供ではなく、生活とのつながりを強めていく動きを考えていらっしゃいます。金融機関のその先にいる顧客や企業を視野に入れること、そして金融機能を公共サービスや異業種サービスと連携させていくのは近年の金融サービスのトレンドでもありますね。

まさにそうです。お客様がこれからやりたいことはたくさんあり、NTTデータには多様な相談をしていただいています。新たな技術を使ったり、これまでになかったサービスを作ったり、「金融」の枠にとどまらないチャレンジはこれからも続きます。

「ゆうちょ通帳アプリ」を通じてさまざまなビジネスを企画しているところですよね。やることはまだまだ無数にあり、たしかに大変と言えば大変ですが、お客様と一緒にどういうサービスを届けたいのかを考えて実行できるのはやりがいがあります。

ありがたいですよね。ゆうちょ銀行様はこれまでにいろいろなアプリを提供してきましたが、その中でNTTデータの品質を高く評価いただき、現在は「ゆうちょ通帳アプリ」をもっと大きく育てようとしてくれています。これだけ多くの相談をいただいているのは、本当に皆のがんばりの成果だと思っています。

これからスマホアプリをインターフェースとして新しいサービスを作っていきたいという人にはチャンスが豊富にある環境です。金融以外の領域ともつながりを作っていこうとしているので、金融ではないバックグラウンドを持つ人も活かせることが多く活躍いただけます。

そうですね。異業種からの転職者であっても活かせる強みは必ずあります。ゆうちょ銀行様のデジタル戦略は、これからも続きます。刺激的で、おもしろいチャレンジがしたいあなたを私たちは歓迎しています!ぜひ一緒にプロジェクトを楽しみましょう。
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登録口座数1000万を突破し、単一の金融サービスにとどまらない広がりを見せようとしている「ゆうちょ通帳アプリ」。吉川たちの言葉の通り、この先もワクワクするようなチャレンジが待っています。