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いつだって、がむしゃら。オープンマインドで「改善」を模索し続ける、若手運用担当者

24時間365日、安定稼働して “当たり前 ”。そんなシステムに対する社会の通念を支えているのが「運用」を担当するIT技術者たち。中村直子も、キャリアの大半を運用担当として過ごしてきたひとり。入社当初に抱いていたビジョンとのギャップを乗り越え、「これからの運用」に想いを馳せる中村の仕事観に迫ります。

目次

初めて知る「運用」の世界に戸惑い。それでも前を向けたのは先輩がいたから

中村 直子
製造ITイノベーション事業本部
第四製造事業部

中村直子の入社は2012年。スマートフォンが急速に普及し始め、電子書籍リーダーが流行、通話やチャットアプリがリリースされたこの当時──。次々と世に出る新たなITの仕組みやサービスによって、人々の常識が変わっていく感覚を肌で感じていた中村の胸にあったのは、自ら「サービスを生み出す側になって、皆の生活をより良いものに変えたい」という想いだったと言います。

中村 「 IT業界に大きな可能性を感じていました。当時の NTTデータには、公共や金融業界の基幹システムのイメージが強くありましたが、今後は法人分野やグローバルに注力していくというメッセージが打ち出されていたんです。だから、法人分野でなら、きっと新たなサービスの立ち上げにも携われるはずだと考え、採用の面接でもそんな想いをアピールしました」

世の中の常識を変えるような、新たなサービスを──。ITの世界で “ものづくり ”に携わる自らの姿を思い描き、NTTデータに入社した中村。しかし、最初に配属されたのは、大型BPO(Business Process Outsourcing)案件の維持運用チームでした。

維持運用チームのミッションは、システムを日々監視しながら、安定稼働のために必要な対応全般を行うこと。そして万が一の障害発生時には、システムの復旧に必要な処置を施すこと。中村が入社前に抱いていた “ やりたいこと”とは、ギャップがありました。

さらに2年目になると、実際にシステムを使用するお客様の各業務部門をマネジメントする業務チームの配属に。現場で使用されるマニュアルの整備や、お客様の業務フローの変更に携わるようになります。1年目と同様、“ものづくり”のイメージからは隔たりのある業務領域です。

中村 「入社前は『運用』という業務があることも知らなかったので、正直に言えば、最初は『あれ、私の社会人生活はどうなってしまうんだろう……』という感じでしたね。でも、次から次へと目の前に出現する課題にがむしゃらに取り組むうちに、そんな葛藤は消えていきました」

気持ちを切り替えて前を向くことができた理由を、中村はふたつ挙げます。

ひとつが、ロールモデルとなる先輩女性社員との出会い。社内はもちろん、お客様からも絶大の信頼を寄せられているその先輩の仕事ぶりを目の当たりにして、「業務知識を獲得して、早く一人前になりたい」という成長意欲が芽生えたといいます。

もうひとつが、お客様との距離の近さ。入社1年目から、先輩・上司とお客様とのやりとりを間近で見聞きし、自らも週1回の定例会議で積極的に提案や発言することを求められていたという中村。信頼関係を土台に、“ものづくり”とは違うアプローチからお客様に貢献することができる。その確かな手応えが、運用領域のミッションに主体的に取り組む原動力になっていきました。

中村 「先輩や上司がお客様にどう向き合っているか、というお手本を近くで見ていたからこそ、『お客様との信頼関係』についてはかなり早い段階から意識していましたね。一度、大きなトラブルが発生し、お客様に大変なご迷惑をおかけしてしまったことがあります。でも最終的にはお客様から、『きちんと対応してくれてありがとう』という言葉をいただけたんです。これまでに築いた信頼関係があればこそだと、深く印象に残りました」

信頼関係の第一歩は、「互いを理解できていること」と中村は言います。

中村 「お客様とはオン・オフを問わず自分から積極的にコミュニケーションをとるようにしていました。一番身近な先輩が、社内外問わず、周りの人とたくさん話をする様子を見ていたことも大きかったです。今でも、コミュニケーションは自分のコアの部分として大事にしたいなと思っています」

未知のマーケティング領域でお客様に貢献! 粘り強い対応でピンチ脱却

その後、プロジェクトは第2期開発フェーズに入り、中村は初めてアプリ開発チームに配属されます。ここでは、維持運用に加え、比較的規模の大きなシステム改修にも携わりました。

中村 「入社 3年目にして初めて、いわゆる “システム開発 ”を経験しました。それまで業務チームのメンバーとしてあらゆるセクションの業務を見ていたこともあり、『実はここが使いにくいよね』ということもわかっていたので、アプリチームになってからは実際に改善につなげることができて嬉しかったですね」

こうしてトータル3年間、同一プロジェクトで複数のセクションを経験した中村。4年目には一旦このプロジェクトから離れ、ITD(ITディレクター:お客様先に入り込み、開発領域だけでなく、より上流フェーズからお客様のビジネス変革をサポートする人財)として、別の製造業のお客様のマーケティング部門への常駐が決まります。ECサイトの新規立ち上げにあたり、開発ベンダーとお客様との橋渡し役を期待されてのことでした。先輩とふたりきりでお客様先に常駐することが決まった時は、ずいぶん戸惑ったといいます。

中村 「 ECサイトへの知見もありませんでしたし、会議にもすべて参加させてもらっていたものの、お客様が話すマーケティング用語がさっぱりわからず……。お客様からは、入社年次は関係なく “ ITのプロ”としての働きが期待されるので、その期待に応えられるのかな、と最初は不安でした。

でも、お客様がチーム一丸となってプロジェクトに情熱を注いでいる様子を近くで見ているうちに、『絶対、私もメンバーとして役に立ってみせる!』と。一度火がつくと、そこからはもう、がむしゃらです(笑)」

ECサイトは、1年でリリースに至ります。しかし、想定を大きく上回るページビューがあったことでサイトトラフィックが増加し、公開直後に一時閉鎖を余儀なくされます。この事態に、サイトの構築時点から合意を形成していた現場担当者の理解は得られたものの、お客様の上層部は怒り心頭。ITDとして、中村は先輩と一緒に、上層部への説明を行うことになりました。

中村 「ものすごくつらい経験でした。でも、 NTTデータのさまざまな部隊のプロフェッショナルにも助言を求めて、短期間で打ち手を考えてお客様に提案し、無事に解消につなげることができたんです。最終的には、お客様からも評価の言葉をいただくことができました。ピンチの時、『こういう理由があるからしょうがないよね』ではなくて、さしあたって何ができ得るのかを考えることの大切さを実感する機会になりました」

雨降って地固まる。リリース後半年ほど、中村はITDとしてお客様に伴走し続けました。

初めてのマネジメント経験で気付いた「自分に足りなかったこと」

その後、中村は、入社当初より携わっていたプロジェクトに、アプリチームのサブリーダーとして復帰します。プロジェクトは第3期の開発フェーズに入っていました。「メンバー」ではなく、チームのマネジメントの一端を担う「サブリーダー」という初めての立場。

それまでずっと、コミュニケーションを大切に周囲と良好な関係を築いてきた中村でしたが、ここで初めて人間関係の壁にぶつかります。プロジェクトのメンバーである協力会社の社員に指示を出しても納得が得られず、チームが円滑に回らなくなってしまったのです。

中村 「理由は、私が協力会社さんの立場を十分に汲むことができていなかったこと。これに尽きます。私自身は上長からの指示に納得して、それを協力会社さんにも伝達していたけれど、当然ながら NTTデータの社員である私と協力会社のメンバーの方では立場も異なります。だから、私は上長から受け取った内容を単に『伝達』するのではなく、理解を得られるようにきちんと『翻訳』しなければいけなかったんです。でも、サブリーダーになって間もない頃の私にはそれができていなかった」

だからこそ、今では相手が誰であれ、納得感を持ってもらえるように伝え方を立ち止まって考えるようになったといいます。

中村 「思い出すと、今でも胸の辺りがキリッと痛みますが、あのとき『そんな説明じゃ納得できない』と、諦めずに私に向き合ってくれた協力会社の方には本当に感謝しています」

苦い経験の中から、自分に足りないものを学びとり、それを克服する術を模索する中村。何事にも妥協しないその姿勢は、間違いなく成長の原動力となっています。

プロジェクト自体も、第3期の開発が完了し、現在は運用フェーズが進行中。2019年に入社8年目を迎えた中村は、全体を統括する立場として、サービスのマネジメントを担当しています。

中村 「業務やシステムに変更の必要が生じた際に、更改作業の着手を判断したり、できあがったものを最終チェックして問題がなければリリースの許可を出したり、といったところがチームでの主な役割です。また、予算交渉も含めたお客様への提案や、調整役も担っています」

その手腕は今や社内でも折り紙つき。

NTTデータ社内で、法人分野の運用チーム間の切磋琢磨を促すため、業務改善やお客様への提案件数、お客様からの御礼件数、ノウハウの共有等をポイント化して可視化し、その総合得点をチーム対抗で競う試みが2018年度より始動したのですが、ここで中村のチームは優秀な成績を収め続けているのです。

中村 「やるからには 1位をとりたいですしね(笑)。でも、こういった施策がなくても、常に改善を続けるのが運用の使命だと思っています」

柔和な表情を浮かべつつ、そう断言します。

担当者にもっと寄り添う「運用」を実現するために

お客様の業務に精通し、運用の領域で着実に経験を積んできた中村。しかし、日々の業務の中で、「運用ならではの難しさ」を実感することも少なくないといいます。

中村 「システムは、お客様にとって『安定稼働して “当たり前 ”』の存在。その 当たり前 を支えるのが運用チームの仕事です。実際のところ、日々の安定稼働を確実なものとしつつ、セキュリティ事故のリスクを排除するため、運用の現場ではさまざまな工夫をしているのですが、その努力をお客様に感じていただける場面というのは、あまり多くはありません。

だからこそ、安定稼働プラスアルファで、絶えず『改善』のアプローチが求められるわけですが、改善を模索し続けるのは簡単ではありません。チームのモチベーションをどうやったら高い状態に保つことができるかを常に考えています」

そんな中村ですが、最近、当たり前 を支える運用チームの業務負荷の軽減に向けて動き出しました。

きっかけは、ラスベガスで開催されたクラウドサービスのカンファレンスに参加したこと。ここで、サービスマネジメントクラウドサービスServiceNowに出会い、これまで工数や費用の面でハードルが高かった運用フローの変更が実現できる可能性を感じたといいます。

中村 「 ServiceNow はあくまでソリューションの一例ですが、運用担当者に寄り添ってくれるようなソリューションがあれば、積極的に採り入れていきたいと考えています。社内の各運用チームに対して横展開していけたら、という目論見でアプローチしているところです」

また、自身の今後のキャリアについては、次のような展望を抱いています。

中村 「 “新しいサービスを生み出す ”というところに惹かれてこの業界に入ってきているので、今後、 “0から1を生み出す ”ような取り組みに、お客様に近いポジションで携わってみたいなと思っています。またグローバルにもすごく興味があるので、いつかグローバル案件にも関わってみたいですね」

最後に、自身の7年余りのキャリアを振り返りながら、こんな想いを打ち明けました。

中村 「私ひとりでは何もできませんし、秀でたスキルもありません。それをコンプレックスに感じたこともありましたが、今の自分なら『ひとつのことをやり遂げるために皆に協力してもらうことが得意』と言い切ることができます。そこを強みに、お客様はもちろん協力会社のメンバーも含めたプロジェクトの全員と良好な関係を築きながら、仕事を前に進めていくための術を常に考えていきたいと思っています」

コミュニケーションの難しさゆえの価値を十二分に理解しているからこその決意を胸に、中村は運用業務の “常識 ”を塗り替えるべく、挑戦を続けています。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです