「テックリード」としてプロジェクトを俯瞰し、金融システムの全体最適を導く
――まず、お二人が所属するSWA(ソフトウェアアーキテクチャ)グループの役割を教えてください。
川瀬
当社の金融分野には3つの事業本部があり、お客様の属性や取り組む課題がそれぞれ異なっています。私たちが所属する金融高度技術本部は、それらの事業部とは異なり、金融分野全体のプロジェクトを横断的に支援する組織です。その中でも基盤技術部SWAグループは、高度な技術的知見をもとに、全体最適の観点からアプリケーションの処理方式や技術選定について最善・最良な方法を模索し、各プロジェクトの意思決定をサポートしています。
中村
基盤技術部には幅広い技術的バックグラウンドを持った人たちが集まっているテックリード部隊があり、その中では基盤・クラウド系のグループと、SWAグループに分かれています。SWAグループではアプリケーションの処理方式やアプリケーション基盤の技術選定、認証認可やロギングなどの「業務ロジック以外の横断的な領域」に関する支援を行うことが多くなっています。
――SWAグループがいることでどのような価値創出が可能になるのでしょうか。
川瀬
NTTデータの金融分野では、非常に大規模なプロジェクトを手掛けています。規模が大きくなるとチームや担当領域が細かく分かれ、全体の構造や方針が見えづらい部分が出てしまいます。チームごとに開発の進め方が異なると、保守や品質に影響が出てしまうことがあります。だからこそ、社会の屋台骨のような巨大システムを作り上げるためには、全体最適の目線が不可欠なのです。
中村
NTTデータ自体も大きな組織であり、それぞれのお客様に関する深い業務知識を持った人財が大勢います。その一方で、私たちSWAグループのように、特定の技術領域に精通したメンバが、組織の持つ幅広い知見や過去の事例を活かしながら「どの技術を選択するのが最適か」をアドバイスすることにも価値があります。業務のプロフェッショナルと技術のプロフェッショナルが連携することで、お客様にとって最適なソリューションを提供できる。そのために私たちSWAグループがいるのだと考えています。
――「技術支援」としてプロジェクトに参画するにあたって、プロジェクトのメンバからはどのようなことを期待されていますか?
中村
ただ単に新しい技術を推奨するのではなく、既存の仕組みや背景を理解した上で、プロジェクトに寄り添った最適解を提案することだと思っています。
一例として、オンプレミスで稼働しているシステムをクラウドに移行する、といったプロジェクトがあったとします。そのような状況において、「SWAグループに相談すれば、最新のクラウド技術と金融分野内の過去の事例を踏まえて最適かつ現実的な提案をしてくれるはずだ」と信頼されている感覚があります。
川瀬
まさにそうですね。プロジェクト側で技術的な課題に直面したり、推進に必要な知見が不足していたりする場合に支援の依頼が来て、技術的な知見を提供する、というのが基本的な流れです。直接手を動かして課題を解決することもありますが、それ以上に、プロジェクトのメンバに働きかけ、チーム全体で課題解決を推進していく役割を担うことが多いですね。結果的に、プロジェクトを円滑に前に進めるための潤滑油のような役割も期待されていると感じています。
――現在、お二人が担当されているプロジェクトについて教えてください。
川瀬
金融機関向けインターネットバンキングの更改プロジェクトに参画し、アプリケーション方式チームのリーダーを務めています。チームを横断するコミュニケーションを取りながら、技術的な課題の解決や、基盤の機能も考慮したアプリケーションの全体構成や方針の策定を担っています。アプリケーションをどう作り、どう動かせばシステムに求められる要件を実現できるのか。機能要件と非機能要件の両方を考慮しながら、開発方針を定めるのが私の仕事です。
中村
私は現在、大手小売企業の決済システムを、オンプレミスからAWSへ移行するクラウドリフトの案件に携わっています。具体的には、アプリケーションの実行環境を従来の仮想マシンからコンテナへと載せ替えるプロジェクトです。このプロジェクトには、アプリケーション開発を担当するチームと、基盤設計を担当するチームがいますが、いずれのチームも、新しい環境へ移行するにあたってAPフレームワークに生じる差異やクラウド製品の活用に関して専門的な知識が十分でない部分があります。その領域を私がSWAグループのメンバとしてフォローしています。
――それぞれのプロジェクトで、まさにSWAグループの力が求められているのですね。これまでのご経験の中で「SWAグループがいたから乗り越えられた」と感じるようなエピソードがあれば教えてください。
川瀬
とある金融機関向けのプロジェクトで、カットオーバー後にトラブルが発生したことがありました。原因の切り分けが難しく、プロジェクトが困っている状況で、私が解決の旗振り役を担いました。基盤とアプリケーションを俯瞰して調査したところ、アプリケーションのレイヤーに問題があると判明。プロジェクトのメンバに具体的な検証作業を依頼し、その結果をもとに情報を集約・判断し、最終的に統括レベルの責任者に提言することで、無事に問題を解決に導くことができました。システム全体を俯瞰し、どこに問題の本質があるのかを見極め、関係者を動かして解決へと導く。まさにSWAグループとしての価値を発揮できた瞬間だったと思います。
中村
私の場合は、現在参画している決済システムのクラウドリフト案件ですね。基盤を刷新するにあたり、その上で動くアプリケーションも新しくする必要があったのですが、改修の規模をどう見積もればいいのか、プロジェクトの担当者だけでは判断が難しい状況でした。そこで私たちSWAグループに相談があり、過去のナレッジを参考にしながら、実機でソースコードをビルドし、動かしながら改修箇所を特定していくアプローチを提案しました。結果として見積もりの精度向上につながったと思います。組織として蓄積されたノウハウを、適切なタイミングでプロジェクトに提供できた好例ではないでしょうか。
自ら考え、学びながら手を動かす。主体的な姿勢が成長の糧となる
――お二人ともソフトウェアアーキテクト人財として活躍されていますが、キャリアの転機についても伺いたいと思います。川瀬さんはメインフレーム基盤からSWAへと、キャリアの途中で技術領域を大きく変更されたそうですね。
川瀬
はい。もともとメインフレーム基盤の技術者としてキャリアを歩んできたのですが、2019年頃、組織の変更をきっかけに、SWAという新しい領域に挑戦することを決めました。メインフレーム基盤の技術者としてスキルを深めるという選択肢もありましたが、SWAとメインフレームの知見を掛け合わせることで、自分ならではの強みを持った技術者になれると考えたからです。
――SWA領域にキャリアチェンジした後、どのような壁がありましたか?
川瀬
メインフレーム基盤の技術者とSWAでは担当範囲がまったく違います。私自身、チームリーダーという立場で異動したのですが、当初はSWAグループの一員として何をすべきか分からず、手探りの状態でした。転機となったのは、異動後に参画した公共系のプロジェクトです。そこでは、分からないなりにNTTデータの標準フレームワークである「TERASOLUNA(テラソルナ)」を一から勉強し、実際にAWS上でモックを実装してみるなど、リーダーという肩書にこだわらず、とにかく手を動かしました。自分で設計したものが実際に動くという経験や、発生したトラブルを自力で解析し、改修できたという経験の積み重ねが、少しずつ自信につながっていきましたね。
――一方、中村さんはプロジェクトのリードを初めて担当した経験が転機になったそうですね。当時の状況を、今、どのように捉えていますか?
中村
現在の支援プロジェクトには、最初はSWAグループの先輩と一緒に参画していましたが、途中から私が中心となって技術支援を任されることになりました。それまであまり触れてこなかったコンテナやLinuxなどの技術にも本格的に取り組むことになり、自分にとって大きなチャレンジでしたね。ただ、NTTデータには自己研鑽を支える制度や環境が整っているので、関連する認定資格の取得にも挑戦しながら、少しずつ知識を広げていくことができました。振り返ると、この経験が技術面でも自信を持つきっかけになったと感じています。
――責任ある立場に置かれながらも、学習機会の多さが成長を支援したのですね。
中村
はい。勉強すればするほど、現場で飛び交う言葉の意味が分かり、自分の中で語彙が増えて、世界が広がっていく感覚がありましたね。「頼れる存在になりたい」という想いから能動的に学ぶ姿勢が身につきましたし、結果として一人でも技術支援者としてプロジェクトに貢献できるようになった。今振り返れば、スキルを伸ばすにはこれ以上ない環境だったと思います。
――お二人ともこれまでの挑戦や経験の積み重ねが、今の活躍につながっているのですね。SWAグループとして働くうえで、技術的なスキル以外に大切だと感じることはありますか?
中村
コミュニケーション能力が非常に重要だと感じています。SWAグループは、業務アプリケーション側の担当者と基盤側の担当者の間に立つ、いわば「架け橋」のような役割を担うことが多いからです。例えば、業務アプリケーション側は「早く基盤を決めてほしい」と思い、基盤側は「早く業務要件を固めてほしい」と思っている。そうした状況で、両方の言い分を理解し、プロジェクト全体として最適な着地点を見出すためには、双方から信頼される存在でなければなりません。技術的に尖っているが話しにくい、というタイプではなく、誰からも率直な相談をしてもらえるような、オープンな姿勢が大切だと思います。
川瀬
私もそう思います。技術の知識を持っているだけでは不十分で、その技術をどう活かすか、プロジェクトのメンバにどう動いてもらうかを考え、実行していく必要があります。そのためには、やはり人間的なコミュニケーション能力が不可欠です。中村さんは、プロジェクトメンバの信頼を得るためにどんなことを意識していますか?
中村
まずはこちらから献身的に動くことを心掛けています。自身の担当範囲やコンフォートゾーンを少し超えてでも、プロジェクトのために必要だと感じた検証やトラブルシューティングに協力することで、「この人は信頼できる」と感じてもらえます。結果として他のメンバへの協力依頼もスムーズに進むようになります。
川瀬
それは重要な姿勢ですよね。それと、オープンな姿勢に加えて、SWAグループには「トレードオフ」を判断し、全体最適の視点を持つことも求められます。ある部分だけを最適化しても、システム全体として上手くいかなければ意味がありません。例えば、性能を極限まで高めるべきなのか、それともコストとのバランスを考えるべきなのか。状況によって正解は変わります。プロジェクト全体を俯瞰し、何が最も重要なのかを常に考え、判断していく姿勢が大切ですね。
どんなキャリアを描くかは自分次第。技術を活かし、未来を創造する
――組織の雰囲気についても伺わせてください。SWAグループならではのカルチャーはありますか?
川瀬
困ったことがあれば、Teamsのチャネルに投稿したり、詳しそうな人に直接チャットで相談したり、といったコミュニケーションは日常的に行われていますね。誰に聞けばいいか分からなければ、上長に相談すれば「この人なら知っているんじゃないか」とつないでくれます。雑談のようなカジュアルな会話の中から新しいアイデアが生まれることも少なくありません。
中村
SWAグループには、利害関係を超えた助け合いの文化が根付いていると感じます。プロジェクトで技術的な課題に直面し、組織内に持ち帰って相談すると、先輩も後輩も関係なく、必ず誰かが反応してくれて、一緒になって解決策を考えてくれます。
川瀬
その点、さまざまな専門性を持ったメンバが集っていることも私たちの強みですよね。SWAグループのメンバは、それぞれが得意とする技術領域が多岐にわたります。
中村
はい。Javaの黎明期から開発に携わっているようなベテランもいれば、生成AIの最新モデルのチューニングに精通しているメンバも、スマートフォンのネイティブアプリ開発の深いノウハウを持っているメンバもいます。そうした仲間たちがいるからこそ、一人では解決できないような難しい課題にも、チームとして立ち向かっていける。それが私たちの組織の強みですね。
川瀬
付け加えると、生成AIのような最先端の領域だけでなく、レガシーな技術領域に強みを持っているメンバが多く在籍している点も、当社らしい点かと思います。私自身、もともとメインフレームの技術者だったこともあり、今でも基盤系のプロジェクトに支援に入ることがあります。それぞれに分野の違う有識者が集い、お互いに協力し合っていますね。
――多様な専門性を持ったメンバが集っているのですね。一方で、メンバに共通する傾向はありますか?
川瀬
得意分野は人それぞれですが、基本的に技術が好きな人が集まっているのは間違いないですね。ただ、技術一辺倒というわけではなく、気さくでコミュニケーション能力が高い人が多い印象です。SWAグループは業務と基盤の間をつなぐ役割なので、自然とそういう人が集まってくるのかもしれません。
中村
まさに川瀬さんがそうですよね。川瀬さんは人の懐に入るのが上手く、相手によって態度を変えることなく、言うべきことは常にしっかりと発言しています。プロジェクトを前に進めていく力は、私も見習いたいと思っています。
川瀬
私は中村さんを新人の頃から知っていますが、自分でどんどん勉強して成長していけるタイプなので、どんなプロジェクトでも任せられる安心感があります。中村さんのように、新しい技術に対して積極的に学習する意欲のある人もSWAグループでは活躍しやすいですね。
中村
ありがとうございます。私もそうですが、SWAグループには知的好奇心が旺盛な人が多いですよね。自分の専門領域だけでなく、新しい技術トレンドにも常にアンテナを張っている。組織内のチャットでも、日常的に最新技術に関する情報交換が行われています。そうした環境だからこそ、常に新しい知識をインプットし続けられるのだと思います。
――SWAグループでは、どのようなキャリアパスを描けるのでしょうか?
川瀬
比較的新しい部署であり、SWAグループのキャリアパスはまだ確立されていません。そのため、他の部署と比べて、「自由」という大きな特徴があります。つまり、どのようなキャリアを歩みたいかは、自分で自由に描けるということです。例えば「この技術のスペシャリストになる」と決めれば、その技術を活かせる支援の機会はいくらでもありますし、挑戦させてもらえる環境があります。自律的にキャリアを考え、築いていきたい人にとっては、非常に魅力的な組織だと思います。
中村
たしかに、組織として確立されたキャリアパスの前例が豊富にあるわけではありません。だからこそ、自分たちで作り上げていける面白さがありますね。私自身、今はバックエンドの知識に偏っていますが、今後はフロントエンドの技術も学び、両方の領域を見ることができるソフトウェアアーキテクトになりたいと考えています。
――最後に、お二人が今後NTTデータで挑戦してみたいことを教えてください。
川瀬
NTTデータは「デジタルの力で日本を元気に!」というメッセージを掲げています。そのためには、まだ世の中にない、新しいものを生み出していくことが必要です。お客様から言われたものを作るだけでなく、どのようなものを作って、どのようなビジネスにしていくのか、アーキテクチャのグランドデザインを含めた「超上流」に携わっていきたいと考えています。技術的な素養を持ちながら、お客様と一緒にビジネスの未来を描き、社会に貢献していく。それが今の私の目標です。
中村
私はもともと技術志向というよりは顧客志向の人間なので、あくまでも「ユーザーのための技術」にこだわり続けたいと思っています。世の中全体の傾向として、「ビジネスに興味のない技術者」と「技術に興味のないビジネスオーナー」との間に生じる溝が、最終的に「ユーザーの不便」につながってしまっているケースは少なくありません。その溝を埋めて、大規模な社会インフラシステムのユーザー体験を高めるための改善案を、具体的な方式とともに提案し、実現することに挑戦する。それが、私の中で永遠のテーマになっています。
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金融全体の多様なプロジェクトを横断的に支援し、全体最適の視点に立って、高度な技術知見をもとに金融プロジェクトを成功へと導くソフトウェアアーキテクト。若いうちから大きな裁量を持ち、挑戦的なテーマに取り組む経験は、そこで働く人財をプロフェッショナルへと成長させます。自律的なキャリアを築きたい、技術の力で金融の未来を支えたいと考える人にとって、最高の舞台がここにあります。


