経験者採用入社者の早期活躍を支える、公共・社会基盤分野の取り組み
――まずは、公共・社会基盤分野が行っている経験者採用入社者向けのオンボーディング施策について教えてください。
オンボーディング施策全体の目的は、社員がそれぞれの経験や知識を活かした早期の活躍と、将来を見据えたキャリア形成を支援することです。入社後、社員の状態に応じた3つの段階で構成・実施しています。
1段階目は、入社直後に行われる組織文化や仕事の進め方に慣れるための情報提供です。ここでは、業務に直接紐づくスキルや知識を習得します。例えば、分野別に行われる「経験者採用社員向けオリエンテーション」や「Teams相談窓口」「能力開発の説明会」などがあります。
2段階目は、インプットした知識や前職の経験を活用し、組織内で成功体験を積み重ねるための支援です。人事と職場の上司・先輩社員が一体となって、社員の活躍をサポートします。成果創出につながる組織内でのコミュニケーションを促す仕組みとして、「バディ制度」を用意しています。
3段階目では、中長期での活躍を見据えた社内での人脈形成、そしてキャリア形成意識の醸成を図ります。「経験者採用社員交流会」はこの3段階目に位置し、業務や組織理解だけでは得られない幅広い視野を手に入れ、活躍するための土壌づくりに欠かせない取り組みとなっています。
――「経験者採用社員交流会」とは具体的にどのようなイベントなのでしょうか?
2022年の立ち上げ以来、年1回のペースで開催しており、今回が4回目の開催となります。公共・社会基盤分野に経験者採用で入社した社員を対象として、毎年130名程に参加いただいています。
彼らは、新卒入社者と違い、同期がいないことがほとんどです。
そのため、「経験者採用社員交流会」は、ある程度会社に慣れてきた社員の組織横断でのつながりや社内ネットワークづくりを目的としています。
これまでの開催では、その場限りの一時的な関係で終わってしまうケースが多かったのですが、今年はつないだ人脈を中長期的に活かしていただくこと、そしてつながりを持った人からどんどんと輪が広がっていくことを意識して企画をしました。
社内ネットワークが築けた結果、社員一人ひとりが仕事の幅や視野を広げ、新しいアイデアを組織連携で生み出していく、といったさまざまな波及効果も期待されています。
また、このイベントを通して、私たちが普段知ることが難しい経験者採用入社者の本音を知ることも目的のひとつとしています。
綿密な設計で生み出すのは、新たなつながりとその先の広がり
――当日はどのように運営されたのでしょうか?
イベントは二部構成になっており、いずれも横のつながりを作ってもらうことを目的としたものです。それぞれ、テーマを設定していたので、より有意義なものになったと思います。
第一部では「誰と知り合ってもらうか?」「交流から何を持ち帰ってもらうか?」を運営側が設計し、第二部では参加者ごとの目的に合わせてイベントを使ってもらうため、自由に交流を持っていただく運営としました。
――第一部の様子と企画で工夫した点を教えてください。
第一部は、アイスブレイクから開始。明るい雰囲気で幕が開けました。続いての渡邉事業推進部長からのメッセージは、事業方針やAIを武器とした戦略などについての言及もあり、参加者の皆さんは共感しながら真剣に聞き入っている様子で、分野としての考え方や思いが伝わる良いプログラムになったと思います。
その後に続く各コンテンツも、意図をもって設計しました。例えば今回の座席配置は、年代や職種などの軸で境遇は近いものの、これまで交流がなかった社員同士をグループにしました。ワークショップでは「バリューズカード」というカードゲームをコミュニケーションのツールとして使い、お互いの価値観を知ってもらうようにしました。ゲームを通じてつくられる「遠すぎず、近すぎない距離感」は、自然と本音を共有・共感できる仕掛けとなります。本音で会話をするために必要なのは、まずお互いの深層心理やパーソナリティを知ることです。価値観やそれに伴う原体験、そして未来の夢などを自然に語ることができるコンテンツとして用意しました。つまり、それぞれが置かれた環境を知り合う手段なんです。あえてそこに焦点を絞り、相互理解の深化を狙いました。
実際に参加者からは、「初めて知り合った方ともゲームを通じて、お互いの人となりを知れたので、その後の意見交換をしやすくなった」という声を多数いただきました。
その後、「NTTデータ入社後に感じたギャップ」というテーマでチームディスカッションを実施しました。ここでは、現状の課題と前向きな改善策について意見を交わすチームが多く、主催者側の私たちにとっても新たな発見や今後につなげていきたいと思うアイデアがいくつもありました。
――次に、第二部の様子と企画で工夫した点を教えてください。
第二部は食事やドリンクを用意し、懇親会を実施しました。第一部で良い流れを作れたので、会場のあちこちで参加者同士の会話が生まれている様子が印象的でした。また、渡邉推進部長からのユーモア溢れる乾杯の挨拶もあり、自然と明るい雰囲気で開始しました。
コンテンツは、会場全体の発話量を上げ、交流の活発化を促進するため、ミニゲームと経営幹部へのQAタイムを設けました。
お互いに質問を出し合う「質問リレーゲーム」では参加者同士の気づきや歓談のきっかけづくりを、その後の「QAタイム」では経営幹部と参加者の相互理解を深めることを狙いました。
こうしたコンテンツを通して社員の本音を改めて聞き、普段社内の人脈作りに苦労されている社員が多くいることを実感しました。
一方で、「この会がなければ関わることがなかった社員と交流することができた」「日頃の悩みや苦労を共有できた」というポジティブな声がとても多く、人脈作りという課題解決の糸口となる成果を感じられたと思います。
継続的な支援で目指すのは、将来の可能性を広げられる組織
――改めて、今回のイベントを振り返ってみていかがでしょうか?
イベント全体に対して、おおよそ9割の参加者の方々から「満足」と回答いただきました。また、「今回のイベントを通して、初めて知り合った社員と継続的なつながりを作ることができましたか?」という質問においても、7割以上の方から肯定的な回答をいただいています。
会社によっては、オンボーディング施策が最初のインプットで終わってしまうところもあると思います。しかしNTTデータのオンボーディングチームは、自走して配属先で仕事ができるという状態をゴールとするのではなく、さらにその先まで踏み込みます。将来的な活躍とキャリア形成、組織やビジネスの発展性まで見据えた支援を提供していく、これが企画をするうえでの考え方です。
今回このイベントの企画に携わり、関係各所と話をする機会が多くありましたが、特に公共・社会基盤分野は人の定着や活躍に対して想いが強い組織だと感じました。
それは経営層やオンボーディングチームだけではなく、参加者である社員の方々も同じです。当日のディスカッションの様子やアンケートの結果を見ても、今後のアクションを含めた意見が多く出されており、組織全体が持つ前向きな姿勢や向上心が、組織の強みだと実感しました。
――来年度以降のオンボーディング施策では、どのようなことに取り組みたいですか?
多種多様なニーズに柔軟に対応できるアプローチを検討していきたいと考えています。
現時点で見えている課題としては、「求めていることの個人差」です。これは、今回のイベント開催を牽引し、幅広い方に参加いただいたからこそ認識できたことです。
例えば入社直後の方の場合、交流するための前提の部分が構築できていません。まだ自分の担当業務を語れる段階ではなかったり、横のつながりよりも目の前のことに精一杯であったり、置かれている状況はさまざまです。
だからこそ、これからは一人ひとりが持つ多種多様なニーズに対して、明確に応えられるものへとブラッシュアップしていく必要があると思っています。それと同時に、効果的な施策を届けられるようにターゲットとなる対象者の検討も進めていきます。
このように、オンボーディング施策の質や価値を高めることで、社員の可能性を広げ、自分らしく活躍していける組織や文化の醸成につなげていきたいと思います。


