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2017年8月21日技術ブログ

[第64回]我が国の持続可能な物流網の構築に向けたAI活用展望(1/2)

昨今、旺盛なEC需要を支えていた物流インフラへの負荷が限界を迎えている。物流需要は益々増えていく中で、限られた物流就労人口で生産性を上げていくために、AIの活用はブレイクスルーの1つとして注目をされている。

1.物流クライシス~このままでは、我が国の物流網が破綻する

2017年に入り、物流業界がにわかに注目を集めています。ヤマト運輸がアマゾン・ドット・コムの当日配送の受託から撤退と総量規制を表明したことがきっかけです。EC(電子商取引)の社会浸透による、多くの消費者の「いつでも・どこでも・すぐにでも買いたい、受け取りたい」ニーズに応えるために、バックヤードの物流業務には大きな負荷が掛かり、ついにパンクしてしまったのが、問題の構図です。これにより、物流インフラの危機が国民全体に広く知れ渡りました。

しかし、物流業務従事者の間では、企業間物流(BtoB物流)においても同様の課題が発生していることを知ってほしいという声も聞かれます。近い将来、宅配(BtoC物流)が正常化したとしても、"ラストワンマイルまでモノが届かない"事態となる可能性もあります。例えば、企業間物流(BtoB物流)の配送能力が足りずに、医薬品メーカーの工場から医薬品卸業者に薬が届かない(もしくは遅れる)としましょう。すると、当然ですが病院や医薬量販店に薬が届かず(もしくは遅れる)、日本の医療活動全体に支障をきたします。

事実、宅配だけではなく、サプライチェーン全体での物流供給能力が長期的に落ちていくことは濃厚です。2010年時に比べ、2030年には、トラックドライバー数は、10%減(87.2万人)に落ち込むことが予測されます(※1)。しかし、貨物輸送量は最大16%増(6,209億トンキロ)になる、という試算も出ています(※2)。現状のまま対策を講じない場合、我が国の物流は破綻することが予見されます。物流は、経済の血液に例えられますので、それはつまり、日本経済の破綻を意味します。

  1. ※1
    環境省『2020年、2030年のマクロフレームについて』
    https://www.env.go.jp/council/06earth/y0613-14/mat01.pdf(PDF:9ページ, 524KB)(外部リンク)
  2. ※2
    鉄道貨物協会「大型トラックドライバー需給の中・長期見通しに関する調査研究 」(2014年)
【図】

図1:物流需要と供給の格差拡大イメージ

2.持続可能な物流の実現方向性

将来にわたって滞りのない物流を実現するためには、企業、地域、国土の3つのレベルでの生産性や効率を上げなくてはならないと考えています。

  1. 1.企業レベル:荷主(製造業や流通・小売業)が物流を内部化・共通化する。この過程で、荷主同士が共同物流網(水平統合)、物流事業者が複数荷主の共同集配(垂直統合)を行う。

  2. 2.地域レベル:都市・過疎地域の二極化に伴い、それぞれ異なる特性の物流インフラが構築される。特に、都市においては、鉄道・不動産事業者が、まちづくりの一環として再配達削減に取り組む。具体的には、地域共同集約、配送を行う。

  3. 3.国土レベル:都市間をつなぐ幹線物流において、全体最適化を図る。現状配送効率は40%台であり、マッチング事業者が抜本的な変革を行う。更に、自動運転技術の実用化による、ドライバー不足を補う物流の仕組みを確立する。

これが実現された時、物流からの情報がサプライチェーン内外へ伝達されます。「モノ」のみでなく「情報」を運ぶことで、持続可能なインフラを社会に提供していく役割を担うことができるようになると考えています。

【図】

図2:NTTデータが描く持続可能な物流の未来

3.業務変革を支えるデジタルテクノロジー

このような持続可能な物流インフラを構築するにあたっては、今後、2つの観点で業務変革が必要です。第一に、人手依存の作業そのものを削減(省人化)すること、第二に、生産性が高い出荷、配送、要員の計画を作る(最適化)ことです。

この変革をおこなうための手段として、デジタルテクノロジーの活用が注目されています。私たちは、3つのデジタルテクノロジーを、情報をデジタルデータ化する「目(AI・IoT)」、デジタルデータを処理する「頭(ビッグデータ解析)」、オペレーションを実施する「手(ロボティクス)」と捉えています。「目」から取得したデジタルデータを「頭」で処理し作業計画を立て、「手」を制御することで、物流業務を省人化・最適化することが可能となります。

【図】

図3:物流業務変革を支えるデジタルテクノロジー

NTTデータでは、「目」の技術要素の確立が、物流業務変革の実現に向けた第一歩であると考えています。「頭」で考えるためのインプット情報をまずは取得する仕組みを作ることで、意思決定を最適化する「頭」を作り上げることができるためです。

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