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2021年5月26日技術ブログ

「可能性を秘めたアイデア」を活かす方法とは?

破棄されがちな「一見魅力的に見えないアイデア」

新規価値創出、つまり既存のビジネス領域を広げたり新たな事業に挑戦したりすることは企業の発展において必要不可欠です。昨今の情勢を考えるに、例えばCOVID-19の影響のようにマーケットの状況の変化はめまぐるしい状況なので、いちはやくその変化をとらえて仮説検証しながら価値を生み出すことの重要性はより大きくなっています。

もちろん、多くの企業でアイデアソンやデザイン思考ワークショップなどを取り入れはじめていると思いますが、果たしてそこで生み出されたアイデアは新規ビジネスまで昇華できていますか。「実現性が薄い」「根拠に欠ける」など一見魅力的に見えないアイデアが捨てられていませんか。社会の本質を見抜いた破壊的なビジネスアイデアであるほど前例がなく不確実性も高いと考えられますが、一方で大きなROI(投資利益率)を秘めている可能性もあります。そのようなアイデアが「一見魅力的に見えない」という理由で破棄されてしまうのは非常に勿体ないことだと思いませんか?

そもそも、新規事業というのは成功確率が高くありません。コンサルティングファームの株式会社クニエによる2020年の実態調査(※)では、事業が成功したと判断できるケースは2割程度でした。データの分母に入っていないであろう事業発案の初期段階における失敗などを含めて考えれば、更に成功確率は下がるでしょう。つまり、新規事業というものは一般的に不確実性が高いものであり、失敗する確率の方が遥かに高いのです。

「リスクを恐れずチャレンジすべき」という精神論を主張したいわけではありません。めまぐるしく変化する不確実な市場において、検証できていない不確実なビジネスアイデアに対して大規模な投資ができないのは確かです。必要なのは、不確実性を少しずつでも解消しながら段階的に前にすすめるというプロセスです。

このような可能性を秘めたアイデアへ的確に投資するための方法論を当社では『Enterprise BizOps』として整理し、実践しています。本記事ではその内容と活動例をご紹介します。

株式会社クニエによる新規事業の実態調査レポート

https://www.qunie.com/release/20200703/

アイデアを生かすポイント

的確な投資の方法論を紹介する前に、その根幹となる「アイデアを生かすためのポイント」を3つご紹介します。

ポイント1 どんなアイデアでも

どんなアイデアでも、誰でもアイデアを提案でき、必ず一度は評価される環境を作ることが重要です。

長く従事しているベテランだからこそ生まれるアイデアもあれば、若手だからこそ生まれるアイデアもあります。社会の変化・潮流を理解しているのは意外にも新入社員かもしれません。したがって、役職や部署、従事している業務に関係なくとも起案できる仕組みが望ましいです。どんな奇抜なアイデアでもエントリー可能な心理的障壁の打破が必要です。

ポイント2 少しずつ育てる

すぐに可能性を摘まず、小さく段階的に投資しながらアイデアを評価し続けることが重要です。

ポテンシャルがあれども価値の実現については検証してみなければわからないというアイデアに対して、段階的な審査&投資を繰り返し、アイデアを少しずつ醸成することが効果的です。段階的な予算配分により投資コストを低減させるメリットのほかに、多くの可能性を秘めたアイデアをスモールスタートで検証を開始できるというメリットがあります。

図1:段階的なアイデアの醸成

図1:段階的なアイデアの醸成

ポイント3 最後まで面倒を見る

起案者がパッションをもって最後までプロジェクトを実行できることが重要です。

経験上、企画と実行が分断している場合うまくいかないことが多いです。パッションのない人が継続してプロジェクトを実行することにより、「検証(PoC)はしたが頓挫した」という状況に陥るのはもったいないです。したがって、起案者が実行できる時間を十分に確保することも大事なポイントです。

可能性を秘めたアイデアへ的確に投資できる『Enterprise BizOps』

前述の3つのポイントを踏まえて『Enterprise BizOps』という方法論を2020年4月に作り上げ、昨年度NTTデータ社内で実際に適用しました。これは「ステージゲート法」の考え方にもとづいた、組織的な新規サービス創出活動を継続的に支援・管理するための方法論です。

図2:『Enterprise BizOps』のイメージ

図2:『Enterprise BizOps』のイメージ

『Enterprise BizOps』とは、複数のアイデアが段階的に審査され絞られていく仕組みです。それぞれ異なる評価ポイントのゲートが用意されており、それぞれのゲートに通過したアイデアに予算が配分されます。エントリーに制限はなく、どんなアイデアでも必ず最初のゲートでポテンシャルを審査されます。

図3:『Enterprise BizOps』の実践事例

図3:『Enterprise BizOps』の実践事例

各ゲートにおける審査は、重要とされている多様性を重視し、管理職およびエントリーしたチームメンバー全員で実施し、あらかじめ定義した複数の評価観点から多角的な相対評価を行い、継続テーマを選定します。通過可能なテーマ数や時期感、評価観点については、本活動の継続的なフィードバックによって改善・変更していきます。

また各ゲートで落選してしまったテーマについても、それまでの活動で得られた知見そのものがDX案件実践のための価値あるR&D成果になり得るため、クロージングとして必ずアイデアの考察をして知見を残します。この活動により、落選してしまったテーマへの投資も無駄ではなくなります。

ビジネスアイデアの例:BtoCへの挑戦「新規広告サービス」

『Enterprise BizOps』だからこそ投資できたであろうテーマ例を一つご紹介します。このテーマの概要は、昨今の「オタク文化」の需要を理解し、そこをターゲットとしたBtoCの新規広告サービスです。

当社は斬新なアイデアに対しても入念にROIを確認し、確実に収益を見込めるものに投資する傾向が強いため、BtoCのような不確実性の高いアイデアに大きな予算を掛けることは難しいとされていました。また、良くも悪くも当社は固そうなイメージがあり、昨今のオタク文化をターゲットとしたアイデアを提案しづらい風潮がありました。

しかし『Enterprise BizOps』はジャンル・門戸を問わず、そのようなアイデアを妥当な評価軸で審査し、新規価値創出に繋げることが可能です。このテーマの発案者はオタクであり、このサービスのオタクにとっての価値・需要を具体的に示し、「もしもサービス化できたら100万円投資する(自費)」など熱くパッションを語っていました。

実際、このテーマはゲート1の段階では実現性など不明瞭な要素が大きく、既存の審査軸で考えると一見魅力的ではないアイデアと捉えられかねませんが、今回の『Enterprise BizOps』の仕掛けにより、「新規性のある価値創出モデルである」ことや「実現すればインパクトが大きい」などのポテンシャルを評価されゲート1を突破しました。その後の活動でMVPを作成することでゲート1では足りなかった実現性が増し、より価値が明瞭となったことでゲート2を突破できました。

このテーマはあくまで一例ですが、『Enterprise BizOps』は文化や風潮に左右されず正当に評価する仕組みであり、段階的に異なる軸で評価することで的確に投資できる方法論であることが伝われば幸いです。

最後に

本記事では可能性を秘めたアイデアへ的確に投資するための方法論『Enterprise BizOps』をご紹介しました。お気づきでしょうか、『Enterprise BizOps』という名称は前述のように「企業でビジネスを継続的に生み出す仕掛け、風土を作り上げること」を表しています。新規価値創出において、折角のアイデアがビジネスまで繋がらない、価値創出が単発で終わり持続性がないなどの課題をお持ちの方は、ぜひ当社にご相談ください。

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