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2022年3月14日事例を知る

AWSと語るデジタル変革最新事例

NTTデータは顧客のDX支援に力を入れるだけでなく、自らもデジタル変革への取り組みを積極化させている。この事例を大規模な決済ソリューション「CAFIS」のテクノロジーやプロセス、組織の観点から、アマゾンウェブサービス(AWS)との連携やデジタル変革について現状と将来を探る。
目次

アジリティと安心安全の両立が基本

顧客ニーズとシステム構成の両輪にとって最適なITプラットフォームを目利きし、クラウドサービスを一元的に提供する。そんな「ハイブリッドクラウド戦略」がNTTデータの基本姿勢だ。アジリティ重視のシステムにはパブリッククラウドを、高いサービスレベルや個別要求が求められるシステムにはプライベートクラウドなど、アジリティと安心安全を両立させる形でサービスの提供につなげている。

データセンタ&クラウドサービス事業部
海野 孝幸

具体的な内容について、サービスインテグレーション統括部長 海野 孝幸はこう説明する。「コンセプトは、お客さまに寄り添い企画立案から移行・維持運用、サービスのリセールまでをワンストップで提供することです。クラウドのソリューションは、データ収集・蓄積・活用、セキュリティ、マネージドサービスなど幅広く取りそろえ、お客さまのDXを支援します」

その一方、NTTデータは自らのデジタル変革にも取り組む。日本を代表するペイメントシステムである決済プラットフォーム「CAFIS」を通して、変革への考え方や具体的な取り組み、さらに課題への向き合い方の事例を見ていきたい。「CAFIS」は、国内ほぼ全てのカード会社や金融機関と100万店以上の加盟店を結んでおり、35年以上の運用実績がある日本最大級のキャッシュレス総合プラットフォームだ。今やクレジットカードでの買い物には不可欠な仕組みである。ただ、近年の技術進歩と決済サービスのコモディティ化などで、競争は激化している。

海野はデジタル変革について「より早く質の高いサービスを生み出し、オープンAPIによるペイメントエコシステムの形成が重要になってきました。しかし、従来の組織や開発プロセスのままでは実現が難しいので、既存組織とは切り離した『Digital CAFIS特区』を設置し組織改革を行いました。そして3つのビジネスコンピテンシーの獲得を目指すことにしたのです」と説明する。立ち上げは3年前。自ら変革することを目的に商品開発力や安定的なサービス提供力、デジタル人財育成の3つの観点でビジネスコンピテンシーを獲得する組織を目指した。

図1:Digital CAFISとは

図1:Digital CAFISとは

価値創造のための組織開発

自らを変革させた組織開発の全容はどのようなものだったのか。まずDigital CAFISではインテグレーションの領域でScaled Agile Framework®(以下:SAFe®)を取り入れて組織を再生した。これまでの組織は、戦略、営業、開発、保守、運用などに細分化されていた。これを抜本的に見直し、営業系の2つの組織はコンサル・サービスデザインチームに、開発系の4つの組織はプロダクト・デリバリーチームに統合した。プロセスも営業系はロジカル思考からデザイン思考へ、開発系はウォーターフォール型からアジャイル型に変更した。海野は「前述のように、我々はお客さまが進めたいビジネスをアジリティ高く実現し、価値創造ができる組織を目指しています。作り変えたものは不変ではなく、状況に応じて変化し続けていきます」と話す。現在の体制は25チーム、300人体制で運営している。

図2:SAFeを利用し組織開発、プロセスを再構築

図2:SAFeを利用し組織開発、プロセスを再構築

そしてこのような大規模な組織でアジリティ高い開発を支えるため、高度技術者をSRE(Site Reliability Engineering)チームと、QA(Quality Assurance)チームに配置。SREチームは共通的な仕組みを整え、各スクラムチームに対しインフラ面で高度な技術サポートを提供している。QAチームは品質面でスクラムチームをサポート。このような体制で、サービスの安定提供とデリバリーの品質保証を両立させている。

状況に合わせ絶えず変化を続ける

Digital CAFISとして新たに立ち上げた組織での事業運営コンセプトについて「一言で言えば、徹底したデジタルデータの活用です」と海野は強調する。従来は企画開発から調達、財務管理に至るまで個々に仕組みが細分化されていた。これをデジタルプラットフォームという形で一つに統合。商品開発のための環境と事業運営のシステムを統合することでデジタルデータを一元的に見える化し、コミュニケーション基盤やセキュリティ、クラウドの技術を活用しながらデジタルワークプレイスを整備した。「このような形で事業データを分析することにより、ビジネスのアジリティを継続して高めていくことを目指しています」と付け加える。

それを実現するためのプラットフォームは、各種サービスが稼働する『本番環境』と『開発・事業の管理環境』がある。これらはAWSをはじめとするクラウドサービス環境で実現している。このプラットフォームのポイントは以下の4点だ。

  • (1)ハイブリッドクラウド環境下において、1,000以上の大規模なKubernetes(※1)クラスター上でサービスを提供する統合オーケストレーション
  • (2)PCI DSS(※2)などで必要となる監査の証跡やログの管理など、すべて自動化するセキュリティサービスプラットフォーム
  • (3)ServiceNowを活用してエンタープライズレベルでの高品質な運用を実現するオペレーションプラットフォーム
  • (4)アジリティの高い柔軟でセキュアな開発環境を提供するCASB(※3)

「先進性やアジリティだけではなく、高い品質やセキュリティを維持するためのプラットフォームを整備し、大規模に運用していることが特徴になっています」(海野)という。もちろんアーキテクチャーもビジネス変化に応じて継続的に改善している。

(※1)Kubernetes

コンテナ化したアプリケーションのデプロイ、スケーリング、および管理を行うための、オープンソースのコンテナオーケストレーションシステム

(※2)Payment Card Industry Data Security Standard(PCI DSS)

クレジットカード会員の情報を保護することを目的に定められた、クレジットカード業界の情報セキュリティ基準

(※3)CASB

企業が利用するクラウドアプリケーションに対して可視化、データプロテクション、ガバナンスを実現するソリューション

協業としての位置づけは最上位のパートナー

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 アライアンス統括本部
元永 秀史 氏

次にNTTデータとアマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)との協業を紹介したい。アマゾンは米国で2006年にAWSのサービスを開始し、日本での本格展開は2011年に日本での東京リージョンを設立してからになっている。翌年には早くもNTTデータがパートナーとして参画している。AWSジャパンのアライアンス統括本部 元永 秀史氏は、NTTデータとの協業について「クラウドにいち早く着目されていたこともあり、ほぼスタート時点で協業を始めるなど、とにかく取り組みが早かった。以来、NTTデータのクラウド利用の幅広い技術力は大きく向上してきたことを実感します。AWSの協力企業の中でもプレミアティアサービスパートナーとして現在まで続いていることが証です。取り組み姿勢と技術力が協業のポイントといえます」と話す。

図3:NTTデータとAWSの取り組み

図3:NTTデータとAWSの取り組み

このような信頼関係のもとで「このほど両社で戦略的協業契約を締結しました。これはNTTデータとAWSジャパンがお互いに投資し合い、お客さまのDXをお手伝いする事を目的としています」と元永は続けた。具体的な協業は3点で、1つ目はビジネス面で特定の顧客の課題に対し両社で訪問し、共に顧客の課題解決に取り組む。2つ目はNTTデータが幅広い分野で提供しているオファリングをAWS上で展開し、顧客に価値あるサービスを提供する。3つ目は、技術人材の育成。「AWSジャパンがサポートしながらNTTデータの人材育成のお手伝いを実施し、顧客に貢献できるようにしていく事です」(元永)

AWSから見たDigital CAFISの取り組み

ではDigital CAFISとAWSとの協業について、AWSジャパンはどのような見方をしているのだろうか。以下図に示した通り、現状は5つの取り組みがある。

図4:5つの取り組み

図4:5つの取り組み

このうちAWSのプロフェッショナルサービスは、AWSへの移行に向けたシステムの棚卸から評価・分析・お客さま環境に適した移行計画の立案を支援している。パイロット移行を実施し、立案した計画の妥当性と実現性を評価。移行に向けAWS環境標準を整理したい、クラウド推進組織を立ち上げたいという顧客への支援も実施している。エンタープライズサポートは、テストや開発の段階からAWSの移行完了後、中長期的に安定運用するために支援するサービスのことだ。

これらのサービスとDigital CAFISの協業は、「Digital CAFISのSREチームが窓口になり、プロフェッショナルサービスとエンタープライズサポートを手がけるAWSアカウントチームと一体になってAWSの利用を推進している。NTTデータとAWSジャパンの様々なアライアンスプログラムは、Digital CAFISのプロジェクトを3年にわたり推進してきた」とAWSジャパン 技術統括本部 金融ソリューション本部 野上 忍氏は説明する。

AWSのプロフェッショナルサービスでは、導入時のアーキテクチャレビュー、週一回常駐でのAWS活用技術相談会の開催、各スクラムチームへのキャラバンで再レビューを行いアーキテクチャーの高度化を行う。またDigital CAFISチームに新しく入ったメンバーにAWSの人材育成のトレーニングのほか、チーム全体の技術力を底上げするためAWSトラブルシューティングの勉強会を実施している。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部
野上 忍 氏

さらにAWS利用料を月次で分析しコスト最適化の提案している。「AWSソリューションアーキテクトでは、新サービスの紹介と導入、サービスチームとのコワーク連携で顧客の課題解決につなげる取り組みや、マイグレーションプログラムの導入を適用してきた。これがDigital CAFISにおけるAWSの大きな取り組みです」と野上氏は語る。さらに今後は「これらのノウハウをプラットフォーム化し横展開していく方針です。AWSは今後もDigital CAFISとの協業継続に取り組んでいく考えです」と付け加えた。

ノウハウのアセット化で顧客のDXを強力に推進

本稿ではNTTデータのクラウド戦略やサービスについて触れ、Digital CAFISの事例を通して、どのようにしてデジタル変革してきたかを説明した。次にAWSジャパンの視点でNTTデータの取り組みについて忌憚のない意見を語ってもらった。今回伝えたDigital CAFIS以外でも、NTTデータのデジタル変革は広がっている。海野は「今後に向けてこのような取り組みのノウハウをアセット化して顧客のデジタル変革やDX推進をさらに強力に支援していく考えでいます」と強調した。

本記事は、2022年1月27日、28日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2022での講演をもとに構成しています。

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