1.システム更改・開発の目的や背景
西日本シティ銀行は、2025年3月に既存の営業店システムの保守期限が迫る中、2022年に次世代営業店システムの導入を決定しました。
また、行員の日々の活動の立脚点となる営業支援システムにも課題がありました。従来のシステムでは、顧客情報がさまざまなシステムに分散して管理されていたため、顧客の行動プロセスを一元的に把握することが難しく、顧客への効果的なアプローチが困難でありました。営業情報のブラックボックス化が進んでいたのです。
NTTデータより、これらの課題解決に向けて、新しいシステムの導入を提言いたしました。

2.営業DXの推進における課題と注力点
西日本シティ銀行において、営業DXの推進における課題として、以下の3点がございました。
1点目は顧客の定量・定性情報や営業プロセスのデータ化、2点目は営業担当者や店頭行員の若年化、3点目はさらなる顧客データ管理の効率化や高度なソリューション・マーケティングへのデータ活用です。これらの課題に対して、西日本シティ銀行では、営業DX実現のために3つの施策、「CRM/SFAシステム導入」、「新たな営業店システム導入」、そして「SIC導入」の"Triple Impact"を組み合わせて推進しています。
さらに、クラウド型コールセンターやデジタルチャネル等とCRM/SFAシステムを連携し、各チャネルで有している顧客情報を一元化させることで、対面・非対面の顧客体験の向上を目指しています。
3.営業DXにおける"Triple Impact"、その効果とは?
"Triple Impact"は、銀行の営業活動のデジタル化を大きく前進させるものです。その詳細を見ていきましょう。
- (1)CRM/SFAシステム導入:顧客情報の統合と営業プロセスの可視化
SalesforceのFinancial Services Cloudを利用したCRM(顧客関係管理)システム「Micata(ミカタ)」の導入により、顧客情報の一元化・データ化や営業プロセスをデータ化するとともに本支店での情報共有を可能とします。その結果、組織的に顧客のビジネスモデルや経営課題・ニーズ等の理解を深め、最適なソリューションを素早く提供できるようになります。またデジタルチャネルやマーケティングオートメーション(MA)、コールセンターシステムとも連携させることで、効率的なマーケティング活動が期待されます。 - (2)新たな営業店システム導入:事務手続きの合理化
新たな営業店システム導入の主目的は、現金ハンドリングレス、伝票・帳票レス、勘定集計レスの3レスの実現により、窓口業務の効率化を図ることです。現金・現物に基づく事務からデータに基づく事務へ転換を実現し、昨今の人手不足への対応や、システム更改コストの削減を実現しました。 - (3)SIC導入:データドリブン経営への変革支援
SICは顧客情報を一元管理し、他システムとの柔軟な連携を可能にします。スピード感のある事業展開や抜本的な業務効率化、革新的な新サービスの創出を通じて顧客ニーズに応え続けられるような変革を実現します。

図1:CRM“Micata(ミカタ)”の目指す姿

図2:新たな営業店システムのコンセプト

図3:システム連携図(イメージ)
4.今後の展望と足元の課題
今後の展望として、西日本シティ銀行は顧客理解の深化に向けた基本行動の徹底を重要視しています。これにより、顧客の課題やニーズに対応する最適なソリューションをタイムリーに提供することが期待されます。加えて、AIやデジタル技術の積極的な活用により、高度なマーケティング活動や営業プロセスの合理化を目指します。
足元の課題としては、CRM/SFAシステムの早期利用定着に向けた行員の研修と人材育成が挙げられます。特に、新しい技術やプロセスを行員が十分に理解し、日々の業務に活用できるようにするための教育が重要です。行員教育により、顧客満足度の向上と銀行の競争力強化が実現されるでしょう。また、AIやデジタル技術の利用により、さらなる効率化が期待されています。

5.まとめ
西日本シティ銀行は"Triple Impact"に基づく営業DXを推進することで、顧客情報の一元管理と営業・マーケティング活動の高度化を目指しています。今後、お客さま起点の営業プロセスを推進し、最適なソリューションや商品を最適なチャネル・タイミングで提供していきます。NTTデータやSalesforceの技術とソリューション提供により、高度なシステムと営業プロセスの仕組みが構築されます。さらには将来的にAIやデジタル技術の活用により、さらなる営業プロセスの改善と顧客満足度の向上が期待できます。
引き続き、西日本シティ銀行が取り組む営業DXの深化は、多くの地域金融機関にとっても参考となるべき事例となるでしょう。このような取り組みにより、金融業界全体の競争力が向上し、顧客に対するサービスの質が極めて高いものになることが期待されます。
これからもNTTデータは、西日本シティ銀行とともに営業DXの推進に寄与して参りたいと考えています。
※本記事は、2025年3月14日(金)に開催されたデジタルバンキング展で、西日本シティ銀行とNTTデータとの共同セミナーをもとに構成しております。また、登壇者のプロフィールは、イベント開催時点の情報です。
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