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2025.12.2事例

3年で約4倍以上の導入数に。預貯金等照会業務のDXはなぜこれほど普及したのか

行政機関が金融機関に口座等の取引状況を問い合わせる「預貯金等照会業務」は、長年にわたり紙と手作業に依存してきた。処理には数週間から数カ月を要し、現場にかかる負担が深刻な課題となっている。こうした状況を打開すべく、NTTデータは預貯金等照会業務のデジタル化サービス「pipitLINQ(ピピットリンク)」を提供。2019年のローンチ以降、さまざまな業界へ進出し、現在では約2,100(※1)の機関で利用されている。導入が広がる背景には、国税庁を含む関係省庁との共創の取り組みがあった。
目次

国税庁の預貯金等照会業務を大幅に効率化

「預貯金等照会業務のデジタル化をどのように進めていくかが長年の課題でした」。そう語るのは国税庁 デジタル化・業務改革室 課長補佐の山岸亮平氏である。「預貯金等照会業務」とは、行政機関が社会保障の安定的な運用および税の公平性の担保を目的に、個人や法人の預貯金残高、取引履歴などの情報を金融機関に照会する業務を指す。過去の調査によると、年間の照会件数は約6,000万件に上り、そのうちの1割が国税庁に該当する。これは単一の行政機関としては最大の照会件数にあたる。

「従前の照会業務は紙ベースで行われていたため、毎回膨大な量の書類を処理することになります。案件によっては照会先の金融機関から段ボールいっぱいの回答書類が届くこともありました。人的コストは非常に高く、行政側・金融機関側の双方にとって、大きな負担となっていたのです」(山岸氏)

たとえ金融機関から回答を得られたとしても、業務はそれで終わりではない。取得した書類の情報を活用するためにデータ化する必要があるからだ。この処理にもまた多くの労力と時間が費やされる。

こうした煩雑かつ非効率な業務フローに対して、現場からは改善を求める声が絶えず上がっていた。それだけに国税庁にとって、pipitLINQはまさに「渡りに船」といえるサービスだったという。そしてローンチから2年が経過した2021年、国税庁でもpipitLINQの全面導入が始まった。

「NTTデータが預貯金等照会業務のデジタル化のサービスを提供されると伺い、ぜひ当庁としても導入したいと考えました。行政機関全体でデジタル化を推進する動きが加速する中、私たちが先陣を切って取り組むことには大きな意義がありました」(山岸氏)

導入の効果は想定を大きく上回った。業務全体が効率化されたことで、一つひとつの処理にこれまで以上に丁寧に向き合えるようになった。

「我々も『ここまで効率化できるのか』と驚いています。回答受領までの期間が大幅に短縮できたことや、回答をデータで受領できるなど業務フローが改善されたことで、分析や調査により多くの時間をかけられるようになりました。一部の機関に対してはまだ書面で対応してはいるのですが、今やpipitLINQは課税・徴収事務では欠かせないツールになっています」(山岸氏)

ステークホルダーとの共創から国策化へ

pipitLINQのプロジェクトが始動したのは2016年のこと。NTTデータの藤屋雅史は「預貯金等照会業務」に着目した理由を次のように振り返る。

「当社はこれまで社会課題を起点としたサービスの創出に注力してきました。そのためpipitLINQの背景にも、社会保障給付の適正化や税負担の公平化といった大きなテーマがあります。社会保障や税の制度を健全に運用する方法を突き詰めていった結果、個人・法人の資産確認、つまり預貯金等照会業務に辿り着いたのです」(藤屋)

しかし、預貯金等照会業務のデジタル化は一筋縄でいくものではない。さまざまなステークホルダー、プレーヤーが関係しているうえ、依頼書のフォーマットや運用ルールも機関ごとに異なるためだ。

pipitLINQの要件検討にあたり、NTTデータは中央省庁や地方自治体、銀行などを招いた「預貯金照会業務・取引照会業務のあるべき姿に関する勉強会」を開催。照会業務のデジタル化に向けて、標準フォーマットの作成や業務フローの整理、オンライン上で依頼・回答を行うための仕組みなどについて検討を重ねた。

このような勉強会が実現できたのは、NTTデータが行政・金融の両分野で多様なシステムを提供し、長年にわたって顧客との信頼を築き上げてきたことに他ならない。それと同時に、関係者たちの間で預貯金等照会業務のデジタル化が待ち望まれていたことの証左でもある。

「この取り組みが社会的に注目を浴びれば、預貯金等照会業務のデジタル化も一気に加速するのではないか。そんな期待感がありました。その勉強会をきっかけにして、内閣官房IT総合戦略室(現:デジタル庁)に提言することもできました。結果、『デジタル・ガバメント実行計画』の中に『金融機関に対する預貯金等の照会・回答』が盛り込まれることになったのです」(藤屋)

関係省庁と共創して、新たな業界を切り拓く

pipitLINQの導入拡大の背景には、関係省庁とNTTデータの戦略的なパートナーシップがある。2021年に国税庁がpipitLINQを導入して以降、省庁、自治体、銀行へのpipitLINQ導入が拡大した。導入機関が増えることは、税務執行機関である国税庁にとっても望ましいことだ。

関係省庁とNTTデータは協議を重ね、さらに預貯金等照会業務の電子化を広げていくための戦略を練った。pipitLINQ導入機関は、当初は金融機関を中心に増え、現在は生命保険や証券などの業界まで裾野を広げている。

「関係省庁の皆様とともに、プレーヤーを広げるための取り組みをさせていただいています。具体的には、勉強会を開催して、預貯金等照会業務のデジタル化を統一のフォーマットで行うためのルールメイキングを行っています。そこで各分野のプレーヤーの方々に一堂にお集りいただき、預貯金照会のあるべき姿の意見交換などを通じて、預貯金等照会業務のデジタル化の機運を高めていきました」(藤屋)

これらの取り組みの成果は数字にも表れている。2022年4月時点では中央省庁2機関、自治体403機関、銀行51機関だった導入数は、2025年11時点では、中央省庁9機関、自治体1,108機関、銀行970機関、生命保険会社・共済9機関、証券会社5機関、クレジットカード会社1機関、資金移動業者1機関にまで拡大(※1)。3年間で全体の導入数は約4倍以上に成長した。

一連の共創プロセスを通じて、国税庁の山岸氏はNTTデータを「公益性の高い企業」と評価している。

「NTTデータは、つねに先進的な取り組みに挑戦されている印象を持っています。新しい課題に向き合い、そこからソリューションを生み出していく。結果として多くの人々が幸せになる。pipitLINQのコンセプトには、そのような社会的な価値を目指す姿勢が息づいているように感じます」(山岸氏)

デジタル庁の「pipitLINQ」への見解

行政機関のDXを推進するデジタル庁は、預貯金照会のオンライン化の取り組みをどう評価しているのか。デジタル庁 戦略・組織グループ 調査企画チーム 参事官補佐(取材時)の寶崎雄輔氏は「我々の本質的なミッションにも通じている」と話す。

「デジタル庁は発足以来、社会全体のデジタル化を促進するという大きな目標を掲げてきました。その重要性を痛感したのは、新型コロナウイルス感染症の流行期で、行政と民間のシステム連携が不十分であることが浮き彫りになり、構造的な見直しの必要性がこれまで以上に高まりました。そうした観点に立つと、pipitLINQの開発から普及にかけてのプロセスは、我々が目指す方向性とも合致します」(寶崎氏)

実際のところ、デジタル庁が毎年策定・更新している「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中でも、「異分野を含めた関係行政機関・民間事業者の協業による新たな価値の創出」について言及された上で、国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会の同意が得られた共通化推進方針に基づき、「預貯金照会のオンライン化の拡大」に係る取り組みを推進することとされている。
「預貯金照会のオンライン化の拡大に係る共通化推進方針」において、今後の対応策として民間事業者によるオンライン照会サービス等を活用してデジタル化を推進することとされている中、pipitLINQは民間事業者のサービスの1つとして取り上げられている。

「デジタル化を実現するためには、行政機関と金融機関が足並みを揃えながら、それぞれの課題を解消していくことが望ましいと考えています。その方針は、デジタル庁の前身にあたる内閣官房IT総合戦略室から受け継いだものです。内閣官房IT総合戦略室時代からNTTデータとは議論を重ねており、その後、重点計画の中に『金融機関に対する預貯金等の照会・回答』を設定するに至りました。今後もpipitLINQをブラッシュアップし続けて『利用者体験の向上』を追及していただきたいと考えています」(寶崎氏)

「利用者体験の向上」という観点からも、藤屋は「導入先が増えるほどpipitLINQの価値は高まる」と強調する。導入件数が伸びれば、サービスを提供する側は機能の改善や拡充により多くのリソースを投入しやすくなる。さらに、さまざまな機関が共通のシステムを利用することで、情報のやり取りがよりスムーズになる。結果、システム全体の利便性と信頼性が底上げされるというわけだ。

pipitLINQと税務行政DXのこれから

国税庁の山岸氏は、NTTデータへの期待を次のように語る。

「ここ数年でデジタル化の必要性が本格的に叫ばれるようになり、社会の仕組みも目まぐるしく変化しています。税務行政もその流れに適応していかなければ、いずれ立ち行かなくなるでしょう。国税庁でも『税務行政の将来像2023』というビジョンを掲げ、DXの取り組みを推進しているところです。pipitLINQの導入もその一環であり、業務効率化に加えて、職員の職場環境の改善にも寄与するものと考えています。今後もpipitLINQのようなツールを活用し、税務行政のデジタル化を進めていきます」(山岸氏)

デジタル庁の寶崎氏はNTTデータの取り組み姿勢について次のように語る。

「預貯金等照会業務のDXに向けて、NTTデータは行政機関や金融機関の声に丁寧に耳を傾け、それらの意見を着実にサービスへ反映させてこられました。そうした積み重ねが現在のpipitLINQを形づくる基盤となっているのではないでしょうか。現場に寄り添った地道な姿勢には、心から敬意を表したいです。今後もこれまでの方針を大切にしながら、サービスのさらなる質向上に取り組んでいただきたいです」(寶崎氏)

写真:関係省庁、NTTデータのメンバーが協力して預貯金照会のオンライン化を推進

最後に両氏の発言を受けて、藤屋も将来の展望を語った。

「pipitLINQが対応できる業界をさらに広げていくことが、今後の大きなテーマです。デジタル給与や新NISAの導入により、個人の金融資産は多様化が進んでいるので今後も業界拡大に継続して取り組んでいきます。ユースケースが生まれれば、それが新たなユースケースを呼び込む好循環につながります。その流れをさらに加速させるためにも、国税庁様やデジタル庁様とともに、預貯金等照会業務のあるべき姿を追求していきたいです」(藤屋)

(※1)

銀行、生命保険会社・共済、証券会社、クレジットカード会社、資金移動業者数は2025年11月時点の金融機関コード数から算出。

預貯金等照会業務の電子化サービス「pipitLINQ」公式HPについてはこちら:
https://pipitlinq.jp/

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