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2018.8.13技術トレンド/展望

ユーザ×AI ~ユーザ中心アプローチによるAIのUXデザイン~

UXデザインを専門とするeverisのDigital Experienceでは、「User in Tech Research Series」という一連のユーザーリサーチ活動を行なっています。人々がどのようにして最新テクノロジを受け入れていくかを探り、デジタル・プロダクトのデザインの指針とします。本稿では、AI(Artificial Intelligence、人工知能)に関するユーザーリサーチの結果と、そこから得られたUXデザインのポイントをご紹介します。

AIに明るい未来を感じる開発者、不安に感じるユーザ

あなたはAIに対してどのようなイメージを持っていますか?映画『ターミネーター』のようなAIに支配される世界でしょうか?あるいは、映画『2001年宇宙の旅』のようなAIの暴走でしょうか?
AIの仕組みを理解しているIT系の人々は、そのような漠然とした不安を抱くことはないでしょう。AIの研究者の多くはその明るい側面にフォーカスし、企業はAIの開発・導入を急いでいます。しかし、その仕組みを知らない一般の人々はどうでしょう?彼らはAIに対し、恐怖や不安を含む複雑な感情を持っていると言われています。
今日のAIを活用したデジタルプロダクトの多くは、最新テクノロジに敏感な人々をターゲットにしていますが、さらに普及させるためには、マーケットの半数を占めると言われるレイトマジョリティやラガードに属する一般の人々をユーザに取り込む必要があります(※2)。
彼らはAIをどのように捉えているのでしょうか?なぜAIに対して恐怖や不安を感じているのでしょうか?彼らの恐怖や不安を取り除き、AIを身近に感じてもらうためには、何が必要なのでしょうか?
このような疑問を明らかにするため、私たちはレイトマジョリティとラガードに該当する老若男女を対象にワークショップを行い、ユーザーリサーチやデザイン思考の手法を用いて、AIがどのように認知されているのか、AIに彼らがどのような期待を抱いているかについてリサーチを行いました。

ユーザの3つの特徴とデザインのヒント

1.ユーザはAIに不安を感じる一方、安心してスマートフォンを利用している

“Robots will take over humans!(いつか人間がロボットに支配される!)”
“AI is dangerous, but smart products aren’t.(AIは危険だけど、スマートプロダクトは大丈夫。)”

レイトマジョリティやラガードに属するユーザは、「AIは高度な技術が使われている、難しくてよく分からないもの」と考えています。また、SF映画やメディアのネガティブな報道の影響により、「AIは人間を支配する危険なもの」と捉え、AIに対して不安を感じていることが分かりました。
一方、スマートフォン等、日常生活に浸透しているAIを使ったプロダクトに対しては、特に不安を感じることなく、安心して利用しています。
このギャップの正体は何でしょう?その差は「自分の理解の範疇にあり、コントロールできる」と感じられるか否かにあると考えられます。

デザインのヒント:
技術的な専門用語の利用を避け、ユーザにとって分かりやすい、親しみやすいデザインとすること。

例)SONY Smart Watch 3(※3)
ポジティブな印象を与える「スマート」という言葉によって、信頼感と快適性を簡潔に伝えている。技術的な専門用語を使用せず、プロダクトへの親近感を与えている。

2.ユーザは既知のAIプロダクトを受容する一方、未知のAIプロダクトに強い抵抗を感じている

“I’m using Siri more frequently now than when I just bought my iPhone one year ago.(1年前にiPhoneを買った時に比べて、今の方がよくSiriを使っているよ。)”
“My phone started talking to me out of the blue and I freaked out!(スマホが急に私に話しかけてきた時はビックリしたわ!)”

ユーザが気づかないうちに、AIは既に日常生活の中で使われています。例えばAmazonのレコメンデーション機能は、AIが使われていることを気にすることなく、ユーザはそのメリットを享受しています。メリットがあれば、ユーザは喜んでそれを受け入れるでしょう。しかし、ここで重要なのは、ユーザが「自分の理解の範疇にあり、コントロールできる」と感じられることです。これまでにない、全く新しいAIプロダクトを開発する際は、段階的にその価値を広め、時間をかけてユーザの日常生活に浸透させることが重要です。

デザインのヒント:
ユーザにとって既知のものと関連づけつつ、プロダクトや機能を段階的にリリースすること。

例:Alexa(AI音声認識サービス)(※4)
「今日のニュースは?」「今日の天気は?」等、回答が明確な質問に的確に答えることから、音声アシスタントに対するユーザの信頼の獲得を始めている。音声アシスタントがユーザの日常生活に浸透した後、複雑で人間的な会話が可能となるであろう。

3.ユーザは人間の感情や判断を代替するAIに抵抗感を示す一方、人間の生活を安心・安全に導くAIは歓迎している

“When humans have to compete with robots, it’s an unfair battle.(たとえ可能だとしても、人間の全てをロボットで置き換えるべきではないわ。)”
“It would be wonderful if AI can help doing research to cure cancer.(AIが癌治療の研究の役に立つなら素晴らしいね。)”

利便性や安全性の向上の目的でAIが利用されることは賛成ですが、感情や対人関係、自己表現に関する分野でAIが利用される場合、ユーザは抵抗感を示します。ユーザは人間の行動の大部分がロボットに置き換わるだろうと予測する一方、人間の自由意志や自立性が脅かされることに対して強い不安を抱いています。

ユーザ×AI ~ユーザ中心アプローチによるAIのUXデザイン~

AIに感情が支配されるか否か、AIに依存するか否か、判断の主体をAIに奪われるか否か − ここにユーザがAIの受容を分ける境界線があると考えられます。

ユーザ×AI ~ユーザ中心アプローチによるAIのUXデザイン~

デザインのヒント:
AIによってより人間性を感じられるデザインにすること。AIプロダクトは、人間の核となる価値 − 共感、自由意志、自己表現を尊重するものであるべきである。人間の才能や能力を補完するもので、置き換えるようなものであってはならない。

例:Woebot(カウンセリングのチャットボット)(※5)
カウンセリングをしているのがマシンであることを、ユーザに明確に伝えている。(例えば、ロボットを示す”bot”を名前の一部に取り込む、ロボットのイメージをアイコンとして使用している等)人間と会話していると思っていたが、実はボットだった場合、ユーザは騙されたと感じる。チャットは人間の感情に関するものであるため、慎重にデザインする必要がある。

例:自動運転
車の運転は、伝統的にユーザに権限や独立を与えるものであると言われており、自動運転はそのような価値観と対抗する可能性がある。ユーザは、例えば複雑な判断をマシンに委ねることを好まない。ドライバーに選択肢が示され、常に自分が車をコントロールしていると感じられると、その機能は受け入れられやすいだろう。

理想的なAIのUXとは?

理想的なAIのUXとは、一連のインタラクションの中で、ユーザが常に以下を感じられることです。

  • Feel in control(自分がコントロールしていると感じられる)
  • Feel safe(安全であると感じられる)
  • Feel free(選択の自由があると感じられる)
  • Feel human(自分が人間であると感じられる)

当たり前に感じるかもしれませんが、AIに関わる人はこの基本的な事項をきちんとおさえておくべきです。技術的な実現性と、ユーザのニーズや心理的な受容性は、多くの場合一致しません。
ユーザの信頼を獲得し、多くの人に愛されるAIプロダクトを開発するためには、AIの技術だけではなく、AIを使ってユーザにどのような価値を提供するかに加えて、ユーザがAIに対して抱いている不満や期待を理解し、適切なデザインに落とし込んでいくことが鍵となります。

最後に

NTTデータは、2018年6月11日、六本木の泉ガーデンにデジタルビジネスのデザインスタジオ「Fluid Experience Design Studio “AQUAIR(アクエア)”™」をオープンしました。(※6)本スタジオは、NTTデータグループのデザインスタジオをつなぐNTT DATA Design Network(※7)を活用したグローバルの事例・ノウハウの共有、プロジェクトの組成が特徴の一つとなっています。
私たちeverisのDigital Experienceは約10年前に発足し、スペインをはじめヨーロッパのお客さまにUXデザインを提供しています。ぜひNTT DATA Design Networkを通じ、everisが蓄積したUXデザインのノウハウをご活用ください。

  1. ※1 UXデザイン
    UX(User Experience)とは、ユーザがプロダクト、または、サービスを通じて得られる体験を指し、UXデザインとは、その体験を設計する行為を表す。
  2. ※2 レイトマジョリティ、ラガード
    社会学者ロジャースは著書『Diffusion of Innovation』の中で、アイディアが普及する過程を5つのカテゴリに分類した。レイトマジョリティ、ラガードは、アイディアの採用に消極的なカテゴリを指し、それぞれマーケットの34%、16%を占めると言われている。
  3. ※3 SONY Smart Watch 3
    https://www.sonymobile.co.jp/product/smartproducts/swr50/(外部リンク)
  4. ※4 Alexa
    https://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=5262653051(外部リンク)
  5. ※5 Woebot
    https://woebot.io/(外部リンク)
  6. ※6 ニュースリリース「六本木にデザインスタジオ「AQUAIR™」を開設」
    http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2018/052500.html
  7. ※7 NTT DATA Design Network
    https://nddn.design/home(外部リンク)
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