持続的成長に向けた限界認識
テクノロジーを起点とする社会やビジネスの変革が、地球上の至るところで現実のものとなっています。一方で、倫理的な課題や新たな脅威が日々生じており、地球環境にも大きな負荷を与えているのも事実です。ただ豊かな生活や便利なサービスを求めるだけでは、世界のいずれかのコミュニティに不利益を押し付けたり、これまでの成功体験やルールに従うだけでは、我々に負の影響を及ぼすことも認識され始めています。
人類の永続的な発展と企業の持続的な価値創造のためには、その活動の土台となる地球自体の持続可能性が不可欠です。人口変動、格差の拡大、食糧危機、インターネットガバナンスなど、地球上には様々な課題が山積しています。我々には、地球が抱える課題を認識し、解決に向けた知恵を人間の活動に組み込むことが求められているのです。
地球規模課題への挑戦
国連は2015年にSDGs(持続可能な開発目標)(※2)を制定しました。このSDGsにより、地球という一つの共同体として、国、地域、企業、個人が相互協力を図りながら、人類がこれまで乗り越えることができなかった地球規模の課題解決に向けて行動するという大きな潮流が生み出されました。この流れは、政治や経済活動、そして企業の戦略構築にも影響を与え始めています。
企業に対してはESG経営も求められています。環境(Environment)・社会(Society)・企業統治(Governance)の3つの視点から、地球規模の社会課題に即して企業活動そのものを位置付け、将来を見据えた戦略を再構築することが、変化への強靭な適応力の獲得や、持続的な企業活動につながり、企業価値の源泉として結実していくでしょう。
循環視点の戦略再構築
これらSDGsやESGに対応していくためには、自社の事業の本質を循環視点で見つめ直すこと、そしてテクノロジーが持つ可能性を事業に活かすことが必要になるのではないでしょうか。
循環型の視点を企業戦略に取り込み、事業を推進する取組みは世界中で進んでいます。ある食品製造会社は衛星センシングと海洋プラスチック除去といったテクノロジー開発への投資を継続しています。地球温暖化による海洋生態系の変化を把握し、周辺環境の汚染要因を取り除くことで、事業活動の根幹をなす海洋資源の持続性を確保することが、自社の持続性につながるためです。
企業活動を循環視点で捉えた場合、バリューチェーンの至るところに存在する課題に対しては、自社の能力だけでは対応できない場合もあります。その時にこそオープンな連携が必要となるのです。テクノロジーの進化によりあらゆるリソースがつながり活用できる現在だからこそ、それが実現できるのです。
テクノロジーが果たす役割
社会システムも同様に、オープンな連携により持続性をもたせることができます。資源、老朽化したインフラ、余剰な都市機能など、循環的な視点で見れば、まだまだ活用可能なものが存在しています。
例えば、英国の大学では、液体貯蔵可能なエネルギーシステムの開発に挑戦しています。ナノ分子を含む液体に電力を蓄え、それをオンデマンドで放出する機能を実現しようというものです。このテクノロジーが実現できれば、従来のガソリン給油のように電気自動車へエネルギーを供給することが可能となるかもしれません。また既存のガソリンスタンドのインフラを再利用できる可能性もあります。
今後、人類の活動範囲が拡大していく中で、限られたリソースの偏在をテクノロジーによって解消していく取組みは、社会発展のために欠かせない要素になっていくでしょう。
持続可能な社会の実現
テクノロジーを起点とする情報社会は、自身の課題を克服する可能性を持っています。我々が置かれている社会環境、ビジネス環境、生活環境を循環型の視点で捉え直していくことが、今まさに、世界に求められているのではないでしょうか。
個人の思考や行動、企業の事業活動がテクノロジーによって力を得て、資源や環境、社会システムやパートナーシップが循環的につながれば、持続可能な社会が到来するかもしれません。それは我々人類が未来や子孫に残すことのできる、かけがえのない財産となるでしょう。
http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/foresight/sp/index.html
Sustainable Development Goals