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2022.6.27事例

マーケティングオートメーションの導入だけでマーケティングは自動的に高度化しない!
~多様な要求に応えるマーケティングオートメーションの運用設計と、活用の定着を促すマーケティング部門の役割~

NTTデータでは、セールスフォース・ジャパン社の提供するSalesforce製品の導入にとどまらず、自身がSalesforce製品のユーザーとなり、日々、マーケティング改革に取り組むことで、お客様環境に適した製品価値の最大化を目指している。具体的な自社運営として、2022年4月現在、約75,000名のお客様に対し、メールマガジンの配信をMarketing Cloud Account Engagement(旧名称:Salesforce Pardot)にて実施している。従来バラバラであった各組織のメール配信基盤を統合するプロジェクトを2019年度に開始して以来、毎年参画組織を増やし、現在では広報部から事業部門までの10組織以上が参画する一大基盤となっている。各組織の目的が異なる中、我々マーケティング部門が共通基盤であるMarketing Cloud Account Engagementの活用を推進することで、各組織の目標達成をサポートしている。

本稿では、NTTデータの大規模MA基盤Marketing Cloud Account Engagementの運用をけん引する荒川に、他社のマーケティング事例を知る山﨑(2022年5月に中途入社)がヒアリングした。現在のNTTデータにおけるMA活用の実際についてユーザー目線で切り込み、議論することで、MAの運用設計における成功要因とマーケティング部門の在り方を導き出す。
目次

1.マーケティング/セールスを中心に、一連の購買フローがデジタルシフト

荒川:昨今のコロナ禍を契機に,お客様の購買行動のデジタルシフトが一層加速しています。非対面のオンラインコミュニケーションが増加したことで、お客様の行動履歴を把握しやすくなりました。この状況下でタッチポイントと対応を最適化するにあたり、「オンライン上での認知の推進」、「お客様が興味をもつ情報のオンライン提供」、「迅速なアフターフォロー」がますます重要になっています。

デジタルシフトで変化する顧客購買行動とマーケティング&セールスのアプローチ方法

デジタルシフトで変化する顧客購買行動とマーケティング&セールスのアプローチ方法

山﨑:確かに、私が以前在籍していた電機メーカーや取引先企業でもデジタルシフトが起こっていました。緊急事態宣言下やまん延防止等重点措置発令時にはオンラインによるお客様との接点が激増しましたが、反対に緊急事態宣言が解除されるとオンラインの接触が激減するので、フィールドセールスの支援に移行するなど、環境に合わせて活動内容を変化させていました。
「オンライン上での認知の推進」「お客様が興味をもつ情報のオンライン提供」という点で特に衝撃を受けたことは、オンライン情報だけで商品の候補選定を行う企業が増えたことと、既に関係性がある企業や担当とのコンタクトに集中する傾向が見られたことです。当時の販売パートナー企業が、経費精算システムを検討中とのことで、その選定会議に参加したことがあります。その会議では、既に選定候補が3社に絞られており、機能や価格をまとめたマトリクスに基づいて議論がなされていました。私はてっきり、数社と打合せをした後の最終選定会議だと思って聞いていたのですが、打合せの終盤で「では今後、各企業と打合せて詳細を比較します。」と言うのです。会議参加者に聞いたところ、今回はシステム導入に向けた初回打合せで、まずオンラインや今ある情報だけで導入候補を絞り、その企業の中から選定を行うというのです。つまり、オンライン上に掲載されてない企業や、以前から関係性が無い企業については、候補にすら入りません。そのため、オンライン上の認知はもちろん、競争が激化する中で、その情報の質が問われていると痛感した瞬間でした。

荒川:まさにその通りで、ここ数年で急激にオンラインでの情報提供の重要性が高まり、対面での営業訪問による情報収集に頼らなくなりました。このトレンドを踏まえて、マーケティングチームの強化やインサイドセールスチームの創設など、営業機能別の組織再編に取り組む企業が増えています。また、システムを活用した顧客管理(SFA)やマーケティングオートメーション(MA)に取り組む企業も増えています。NTTデータも同様の状況であり、組織・システムを通じた営業改革を行うことで、コロナ禍においても着実に売り上げを伸ばしています。

2.Marketing Cloud Account Engagementの活用によるマーケティング高度化のカギ

山﨑:業界やビジネスモデル問わず様々な企業でインサイドセールスの立ち上げが増えていますよね。従来は、ハイエンド商材やカスタイマイズ中心のSIビジネスで、マーケティングやインサイドセールスが重要視されることは稀でした。一方で、MAの導入や運用を立ち上げたにもかかわらず、MAが“メール配信システム”と化している場合や、メンテナンスに追われて本来行うべき運用ができていない場合が少なくありません。現在のNTTデータでは、どのようにMAが活用されているのでしょうか。

荒川:まずNTTデータの営業は、主に顧客営業とソリューション営業に分類されます。双方で営業方法は全く異なりますが、SFA(Sales Cloud)の領域だけでなく、MA(Marketing Cloud Account Engagement)を活用することで効果を上げています。営業方法を問わず、Marketing Cloud Account Engagementを利用することで効果を上げている組織に共通する改善点は、オンライン上でお客様の反応を測ることで、お客様に迅速かつ適切なアフターフォローを目指していることです。MAでは、お客様個人単位で、いつ、どのページを、どの程度閲覧したのかが把握でき、お客様の購買関心度を非対面で測ることができます。これにより、購買確度の高いお客様を効率よく抽出できるだけでなく、クロージングの短期化に繋がります。このMAの長所を理解し、マーケティングの高度化を図ることが営業組織には重要です。

大規模MA基盤運用における事務局の役割

大規模MA基盤運用における事務局の役割

一方で、マーケティングの高度化を目的としてMAが導入されることは多いのですが、単純にMAを導入するだけでは、マーケティングの高度化は難しく、効果は限定的です。自組織のビジネスモデル、営業フローを俯瞰しながら、システムを活用してどのように営業工程を改善できるか検討することが肝要です。MAツールの持つ特長を活かし、お客様とどのようにオンライン上のコミュニケーションを設計できるかがカギとなります。特にMarketing Cloud Account Engagementは、Sales Cloudとの連携に優れた製品ですから、いかに営業貢献を見据えたマーケティング設計ができるかが重要となります。

山﨑:マーケティングの業務設計がビジネスモデルに深く依存することはおっしゃる通りだと思います。過去に、エンタープライズ向けのビル設備システムで成功したマーケティングの運用設計を、月額数万円のクラウドビジネスに適用しようとして、大失敗したことがあります。今振り返ると当たり前のことなのですが、B2BとB2Cでカスタマージャーニーが異なることはもちろん、同じB2Bでも直接販売とパートナー経由が存在するように、チャネルも業務設計に影響しますし、サブスクリプションモデルに代表されるストックビジネスとフロービジネスのように、ビジネスモデルも影響します。一方で、昨今はビジネスが多角化しており、複数の事業や商材を展開している企業がほとんどです。NTTデータも例外ではなく、ターゲットが全く異なる事業を展開しています。にもかかわらず、複数の事業部門が同じMA基盤を利用していますが、マーケティング部門として、どのような活動や工夫をしているのでしょうか。

3.大規模基盤運用におけるマーケティング部門の役割

荒川:社内の多組織が利用するNTTデータのMarketing Cloud Account Engagement環境では、各組織が目的とする成果を達成できるよう、私をはじめとする事務局担当者が、運用管理に加え伴走支援を実施しています。「メール配信効率を最大化したい」「個人情報を確実に管理してほしい」「オートメーション機能を活用し、継続的に情報提供したい」「トラッキングデータをもとに製品に関心のあるお客様の抽出を行いたい」など、組織間の要望は異なり、事務局は基盤運営に日々奮闘しています。しかし、単純にマーケティング基盤の運営をするだけでなく、各組織の営業・マーケティング目標を把握し、提案型の伴走支援を実施することで、利用組織のシステム活用度が日に日に高まっている状況です。

山﨑:各部門の課題や相談を受けるというのは面白いですね。その営業活動を間近で理解し、社内コンサルティングと併せてマーケティング施策を実行するわけですね。そして、必要に応じて、現在のビジネスや営業手法に最適なマーケティング戦略を描いた上で、活用方法を提示するイメージでしょうか。
ちなみに、荒川さんの実体験としてお聞きしたいのですが、異なる目的を持つ利用部門の中で統合MA基盤の運用を成功に導くために、最も重要なポイントは何なのでしょうか。

荒川:第一に、利用部門の方々が、 MAが“共通基盤”であること― つまり、自分たち以外にも多くの利用部門がいることを意識し、理解していただくことです。例えば、各利用部門が良かれと思って作成した配信スケジュールでも、受信者が1日に何通も同じ会社からメールを受信すると不満や配信停止につながります。この問題を解消するために、利用部門の相互認識と、共通利用に関する理解を促す場を設けることが必要でした。

第二に、活用ノウハウの蓄積とその横展開です。MA運用では、各組織のマーケティングプロセスや目的に合わせて機能を使いこなすことが重要ですが、容易ではありません。業務シーンごとに、MAで“できること”と“解決したいこと”を紐づける作業が必要になるためです。しかも、“解決したいこと”は利用部門毎に異なるため、シーンに応じて事前にマニュアルを用意することは困難です。そのため、活用ノウハウの実績と横展開の場が必要でした。

この2点を実現する方法が利用部門合同の定例会でした。この定例会の目指す姿は一方的な発信や報告ではなく、“相談会”や“共有会”に近い形です。「相談は利用部門、回答は事務局」と固定されているわけではなく、別の利用部門の経験の中から良い解決策が見つかることもありますし、事務局が提案を持ち掛けることもあると思います。この定例会を通じて、共同利用の意識と総合的なノウハウが蓄積され、延いては部門の垣根を越えたマーケティング施策の取り組みにつなげたいと考えています。

山﨑:“利用部門同士の理解を促し、新しい取り組みを生み出す”という観点は、非常に有効ですね。例えば、「実証実験のニュースリリースを皮切りに、各種プロモ-ションを行い、インサイドセールスを経て、顧客との商談につなげる」という流れをMAを用いて設計しようとすれば、必然的に広報や営業など様々な部門が関係します。自部門の業務に関する問題解決に留めず、各利用部門が共通の全体像を認識した上で、専門的観点を織り込むことにより、マーケティング全体の価値を大きく向上させることができます。これからも、Marketing Cloud Account Engagementを起点にインタラクティブなコミュニケーションを通じて、マーケティング価値を向上させていきましょう。

NTTデータのSalesforceソリューションについて詳しく知りたい方はこちら

https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/salesforce/

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