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2024年4月9日展望を知る

戦略的オープンイノベーションが秘める、無限の可能性

日本国内の各業界において、世界を驚かせるイノベーションは起きにくいと言われて久しい。こうした状況を打破すべく、NTT DATAでは国内外でのオープンイノベーションに注力してきた。一方で、成長が見込める分野への注目度向上や国のスタートアップ創出にまつわる施策など、いくつかの追い風を受け、現在、国内のビジネス環境、投資環境は変化し、多様なイノベーションを生む土壌が整いつつもある。今後、NTT DATAは世界に散らばる「知」と「人」と「財」をどう結びつけ、どのような思考回路によって幾多のイノベーションを生み出そうとしているのか、考察していく。
目次

オープンイノベーションを取り巻く環境の変化

まずは、オープンイノベーションを取り巻く環境について、NTTデータグループ グローバルイノベーション本部の廣田和也に話を聞いていきます。

「グローバルにおけるベンチャー投資の状況を見ると、2023年には資金調達の規模がおよそ36兆円。これは前年比約40%の減少であり、2021年からの減少トレンドが続いていると言えます。同時にユニコーン企業の誕生についても減少トレンドが鮮明です。一方で、特定のテーマには投資が集中している傾向も見逃せません。SDGs関連、クリーンテック関連、そして生成AI関連への投資は堅調と言え、多様なイノベーションへの期待も高まっているのです」

このようなグローバルでの投資環境と比較すると、日本国内では異なるトレンドが顕著だと、廣田は続けます。

「2022年の実績ではベンチャーへの投資額が約8774億円と過去最高を記録し、一件あたりの投資額も大型化がひとつのトレンドとなっています。また、日本政府は一昨年、スタートアップ創出元年を宣言し、ベンチャー企業への投資を重点施策と位置づけ、5カ年計画に基づき一兆円を超える予算措置を講じるなど、スタートアップ育成の土壌は整いつつあります。このような環境において、NTT DATAは生成AIなどの成長分野に注目しつつ、新たなテクノロジー分野においてスタートアップ企業との連携を一層、深めようと注力しています」

図1:グローバル・ベンチャー投資(年間推移)

図1:グローバル・ベンチャー投資(年間推移)

図2:日本国内におけるスタートアップへの投資額

図2:日本国内におけるスタートアップへの投資額

NTT DATAが注目する成長領域とは

具体的には、どのようなプロセスを経て、スタートアップとの協業が成立していくのかについて、廣田はこう説明しました。

「まずは社内の技術戦略部隊との連携や、スタートアップデータベースサービスなどの活用によって、どのような技術分野にフォーカスしていくかを明確にし、グループ企業内のネットワークやスタートアップイベント参加を通じ、スタートアップ企業を探索していきます。その後、技術検証や顧客PoCを実施し、結果良好であればパートナーシップ締結、ビジネスの具現化へと進めていきます」

こうした取り組みの中で、NTT DATAが注目している技術テーマとはどのようなものかについて言及していきましょう。ひとつは、データインテリジェンスやサイバーセキュリティ、クラウドといった、現在の我々の主力のソリューションやオファリング・ビジネスとなっている領域です。この領域をテクノロジーフォーカスエリアと呼んでいます。この領域において、次世代のデファクトスタンダードとなり得るスタートアップ探索を推進しています。もうひとつはイノベーションセンター領域で、この領域には技術としては注目を集めていているものの、まだビジネスとして立ち上がっていない分野が多く含まれます。デジタルツイン、デジタルヒューマン、生成AIなど、ビジネスとしては未だ初期のステージにあるスタートアップを幅広く探索し、その企業の可能性を検証した上で未来に向けた協業をめざすのです。グローバルイノベーション本部を中心に、こうした2つの注目領域を前提として、2022年実績では年間約500社へのリサーチ、年間約10件程度の新パートナー契約締結を実現しました。協業の具体例について廣田はこう話します。

「たとえば協業を開始した米国のTasktop社(現・Planview社)は、お客さまのアンチマネーロンダリングに関わるソフトウェア開発を実施する企業です。協業によって、開発プロセスフローの課題を明確にし、製品のリリースが長期化してしまう状況を改善することに成功しました。米国事業会社での技術検証などを経て、現在では大手金融機関からの受注も実現しています」

図3:注力技術テーマ

図3:注力技術テーマ

図4:Tasktop(現Planview)との協業事例

図4:Tasktop(現Planview)との協業事例

オープンイノベーションにより生まれた新規ビジネスの事例

国内においては「豊洲の港から」と銘打ったオープンイノベーションフォーラムを2013年から立ち上げ、NTT DATA、有望なスタートアップ企業、お客さま企業がともにWin-Win-Winとなる新たなビジネス創発を推進してきました。この取り組みの最新の状況についてNTTデータ 経営企画本部 オープンイノベーション・チームの渡辺出がこう語ります。

「2023年度はWeb3.0、生成AI、ウェルビーイングといった注目すべきテーマでフォーラムを実施し、有望な出会いや発見が多々ありました。ただ、スタートアップ企業と“出会う”だけではビジネスは進みませんので、私たちは“アクセラレーション”という活動に重きを置いています。まずはお客さま、NTTデータグループの該当事業部のニーズがどこにあるのかをあらためて検証し、オープンイノベーション戦略を明確化。新規ビジネス創発におけるミッシング・ピースを認識した上で、スタートアップ企業を探索し、ビジネスの具現化につなげていくのがアクセラレーションの中身です。ポイントを簡潔に言えば、めざすべき世界観の共有ということになるでしょうか。適切なマッチング、協業の実現を果たすには、新規ビジネスに関わる企業や市場が向かうべき方向を検証し、明確にするこのプロセスがとても大切だと考えています」

こうしたプロセスを経て実現した具体的な協業事例について渡辺が説明を続けます。

「オープンイノベーションコンテストで出会ったCloudpick社の技術と当社のソリューションを掛け合わせ、”CATCH&GO”というレジのない無人での営業が可能となるウォークスルーの店舗を実現。2023年10月に、ダイエー様が運営するイオンフードスタイル横浜西口店内に、一般路面店として日本初となるウォークスルー店舗がオープンしました。スマートフォンのアプリを入口ゲートにかざすだけであとは好きな商品を店舗内で手に取り、ゲートを出れば決済終了するという近未来型の店舗スタイルです。協業によって生まれたのは消費者の利便性だけでなく、新たな買い物体験の提供。当社の法人分野の事業部がリアル店舗のデジタル化とデジタルマーケティングを組み合わせた世界観を構築し、Cloudpick社との適切なマッチング、ビジネス創発が実現した好例と言えるでしょう」

ロボットソリューションが描く、理想的な未来社会のビジョン

ここからはNTT DATAとともにオープンイノベーションによって新ビジネスを創発した企業「ugo」社の事例について詳しく見ていきます。ugo代表取締役CEOの松井健氏は、同社の取り組みについてこう語りました。

「当社は、人とロボットで協働する新たなワークスタイルを構築すべく、先端的な技術によるロボット開発、ソリューションを提供する企業です。根底にあるのは、日本の労働人口減少に伴い、近未来の社会を支えるインフラ構築に対する切実なニーズです。ますます困難となるであろう労働力の確保、さらには労働生産性そのものの向上、こうした課題に対して高性能ロボットの活用が有力な打ち手になるという考えのもと、多様な業界の現場業務をDX化、少人数で成立するオペレーションの構築、リモートによる効率的な労働の実現などを、クライアントに対して提案、具現化していくビジネスとなります」

ugo社のロボットソリューションはすでにオフィスビルや商業施設の警備業務、データセンター、発電所、医療介護施設などの保守管理といった領域で活用されています。たとえば従来は設備点検やその運営管理においては、人間の五感や経験に依存したスタイルが主流でした。ところがロボットが常駐することで、異常検知やその警告、管理レポートの作成までを自動化し、ロボットと協働するワークスタイルを実現しています。

図5:ugoが実現する自動巡回/点検

図5:ugoが実現する自動巡回/点検

このugo社にとって、NTT DATAとの協業がどのようなメリットをもたらしたかについて、松井氏は説明を続けます。

「オープンイノベーションのスタート地点ではNTT DATAのデータセンターにおける点検、運用においてロボット活用の可能性をテーマとしていただきました。一方、当社は警備領域でのロボット導入に軸足を置いていたため、新たなフィールドを模索しているタイミングでもありました。そこで協業がスタートし、データセンターでの実証実験を経た後に、警備目的で使用していたソリューションをデータセンターでの点検、保守向けへと改良していくことに成功したのです。振り返れば、オープンイノベーションフォーラムでの出会いは当社にとって新たな市場獲得における重要な分岐点になったと感じます」

データセンターでのロボット運用について、NTTデータ 法人コンサルティング&マーケティング事業部の奥村友佳はこう補足します。

「データセンターはお客さまのIT資産をお預かりする極めて重要な施設であるため、24時間365日を通じて電源供給、空調などを厳格に管理する必要があります。一方、施設の安定的運営にはマンパワーが必要であることに加え、熟練者不足も深刻化しています。そこでロボットによる点検業務の実施を検討し、ugo社のロボットを使った検証を2021年から行ってきました。現在では、品川データセンターで本格導入を行っており、ロボットがセンター内を自動で動き回って、メーターの値やランプの様子、異物や異臭などの確認を行っています。これによって、設備担当者の点検業務にかかる時間はロボット導入前と比較して約半分に短縮できることを確認しています。」

すでに成果を挙げたこの取り組みですが、奥村は今後、めざすべき方向性についてもそのイメージが浮かんできたと話します。

「データセンターでの実績を踏まえ、当初より考えていた「働く選択肢の多い社会」の実現もより具体的に見えてきたと感じています。遠隔操作が可能なロボットがより多く社会に実装されれば、高齢の方や、障害のある方、育児や介護に関わる方など、多くの方が多様なワークスタイルのなかから自分に合った仕事との向き合い方を選択できたり、新たな仕事を得られたりすると考えています。センサーやカメラをはじめロボットの進化も目覚ましく、ugo社のソリューションもさらなる可能性を秘めています。私たちはロボットを使った業務変革サービスを広く社外に提供していくことで、より効率的な労働環境の実現や、多くの人にとって望ましいワークスタイルの提供を実現し、豊かな社会の構築に貢献できると感じています」

グローバル、ドメスティック、双方において、次世代に向けたビジネスを創発すべく活発化するオープンイノベーションの取り組み。NTTデータは今後ますます、イノベーティブな企業の探索を加速させ、理想的、革新的な未来社会の創造に邁進していきます。

本記事は、2024年1月26日に開催されたNTT DATA Foresight Day2024での講演をもとに構成しています。

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