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1.福島から万博へ 地域の想いを未来へ
「拡張地域社会」は、XRやAIなどの先端技術を活用し、地方と都市をつなぐ新しい社会デザインの構想です。
NTTデータは、災害からの創造的復興に挑む福島県をこの構想の出発点とし、2024年より一般社団法人メタバース推進協議会、福島大学地域未来デザインセンター、そして地域の皆さまとともに、その実現に向けた取り組みを進めてきました。
より多くの方々に「先端技術が地域社会や人の暮らしにどう役立つのか」を考えていただくため、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・フューチャーライフエクスペリエンス」のパートナーである一般社団法人メタバース推進協議会(代表理事:養老 孟司)の構成員として大阪・関西万博へ出展しました。
2.常設展示-日本の原風景「SATOYAMA」を先端技術と融合
展示は2025年9月28日(日)から10月13日(月)まで開催。
全体コンセプトである「里山」を五感で感じられるよう、建築家・隈研吾氏による木の温もりあふれるデザインのブースで展開しました。
ブース内では、イマーシブ動画「SATOYAMA」(福島の里山映像)、AI養老先生との対話体験、そしてポスター展示を通じて、「拡張地域社会」の世界観を発信しました。
イマーシブ動画「SATOYAMA」では、田村市・葛尾村・浪江町・喜多方市の協力のもと、豊かな自然や地域産業、人々の暮らしを描写。万博のシンボルである大屋根リングの製造工程をトロッコ列車でさかのぼる構成で、木の香りが漂う空間とともに来場者を包み込みました。
体験者からは「現地の空気を感じた」「福島を訪れてみたい」といった声が寄せられました。
イマーシブ動画「SATOYAMA」
AI養老先生との対話体験では、来場者の質問に養老孟司氏の視点でAIが応答。ご本人の協力のもと東京大学と共同開発したもので、「本人を映していると思った」という声も寄せられ、皆さま楽しそうに生き方や自然について質問されていました。
ポスター展示では、福島県川内村でクラフトジンの蒸留所を営む若者の挑戦を紹介。
福島の今と、未来へ挑み続ける地域の想いを伝えました。

イマーシブ動画「SATOYAMA」(写真奥)
AI養老先生展示(写真手前)

浪江町認知率調査中
3.ステージイベント①「フェアリージャパン元選手と福島大学学生が考える福島の未来」
2025年9月30日(火)、福島県葛尾村の未来をデザインする福島大学の学生たちが、フェアリージャパン元選手とともにステージに立ちました。
テーマは「福島の未来、そして生産者と消費者のつながり」。若い世代のまっすぐな想いと、アスリートの真摯なまなざしが交わる、温かな時間となりました。
前半では、福島大学・藤室玲治特任准教授が登壇し、被災12市町村の現状や葛尾村の復興の歩みを紹介。
新体操元日本代表の藤野朱美さん、フェアリージャパン元選手のサイード横田仁奈さんも、復興に向けた質問や応援メッセージを届けました。会場では、真剣に耳を傾ける来場者の姿が印象的でした。
後半は7月に福島大学で実施したワークショップの成果を発表。
高際均特任教授の進行のもと、「生産者と消費者をどうつなぐか」というテーマで多彩なアイデアが未来のニュース形式で披露され、活発な議論が繰り広げられました。
さらに、フェアリージャパン元選手・坪井保菜美さんによる絵画展示も開催。
色鮮やかな作品の数々が、復興への希望と人々の絆を象徴し、イベントの締めくくりを飾りました。
大きな拍手とともに、会場には前向きな余韻が残りました。

未来創造への意気込みを語る藤野朱美さん

経験を社会貢献につなげたいというサイード横田仁奈さん

進行をする福島大学の学生メンバー

福島大学高際均特任教授による解説

「福島の未来を応援しよう、おー!」

4.ステージイベント②「みらいの仕事 LumiUnionと福島大学学生が考える福島の未来」
2025年10月4日(土)、浪江町の「ふるさと応援大使」を務めるLumiUnionが、福島大学の学生たちとともにステージに登場。「食と農の未来」をテーマに、次世代の視点から福島のこれからを語り合いました。
授業形式で進められた本イベントには、浪江町の成井祥副町長も登壇。
被災からの復興や、未来に向けたまちづくりの取り組みについて語りました。
LumiUnionのメンバーからは「復興で一番大変なこと」「やってよかったこと」など、率直な質問が次々と投げかけられ、浪江町のこれまでの歩みを深く知る貴重な時間となりました。
続く第二部では、8月に浪江町で実施したワークショップの成果を学生たちが発表。
福島大学の小山良太教授(食農学類・農業経営コース)を迎え、「未来の食と農」をテーマに希望あふれる議論が展開されました。
浪江町の成井副町長から福島大学によるコラボ商品開発の構想も飛び出すなど、今後の地域連携の広がりに期待が高まりました。
イベントの締めくくりには、LumiUnionによるミニライブを急きょ開催。
小雨が降るなかでも多くのファンや来場者が集まり、会場は笑顔と拍手に包まれました。
復興へのエールと未来への想いが重なり合う、心温まるフィナーレとなりました。

浪江町の未来を熱く語る成井祥副町長

福島大学小山良太教授による解説

ワークショップの発表をするLumiUnion田中咲帆さん

未来の技術を説明するLumiUnion雪月心愛さん


会場の外側にも多数の観客
5.ステージイベント③「2025年 大阪・関西万博 AI養老先生誕生記念対談 知能と知性が響き合うふたりの養老」
2025年10月3日(金)、AI養老先生と養老孟司氏ご本人を交え、「拡張する地域社会」をテーマに、福島の復興と地域のこれからについて深く語り合いました。
冒頭では、福島県の内堀雅雄知事からビデオメッセージが寄せられ、続いて田村市の白石高司市長が先進技術を活用したまちづくりの取り組みを、浪江町の成井祥副町長が復興とDXを掛け合わせた地域の挑戦を紹介しました。
福島の復興をめぐる議論の中で、養老孟司氏はこう語りました。
「福島復興の話は福島だけではない、どうせ自分の足元です。いずれ。(南海トラフ)。他人事に聞こえているようなら考え直していただきたいなと思っている。」
その言葉には、南海トラフ巨大地震の先にある日本の未来を“自分ごと”として捉える重要性への強いメッセージが込められていました。
後半では、高知県の濵田省司知事からのビデオメッセージに続き、同県危機管理部長が防災DXの取り組みを紹介。
イベントの締めくくりでは、養老孟司氏が提唱する「現代版参勤交代(※)」をテーマに、AI養老先生との印象的なやり取りが行われました。
AI養老先生が「自然と触れ合う機会が増え、精神的にもリフレッシュできる」と語ると、養老氏は「お盆に帰るところを作っておく、それが災害時の避難場所にもなる」と応じ、人と自然、都市と地方の関係を改めて見つめ直す対談となりました。

AIがやらなそうな手話で挨拶する田村市白石高司市長

浪江町の復興について紹介する成井副町長

南海トラフ後の日本社会を心配する養老孟司 氏

「現代版参勤交代」…都市と地方を定期的に行き来し、自然や地域と関わりながら暮らすライフスタイルのこと。
6.万博から全国へ「拡張地域社会」構想が描くみらい
大阪・関西万博での展示やステージイベントを通じて、全国の多くの方々に「拡張地域社会」の構想をご紹介することができました。オンライン配信も行われ、全国各地から温かいメッセージや共感の声が寄せられています。
“浪江町から元気を届けるご当地アイドル”として活動してきたLumiUnionは、2025年6月28日に「浪江女子発組合」から改名し、新たな名前で活動の輪をさらに広げていくとのことです。地域の人々とともに“光”と“笑顔”のつながりを広げていくその姿は、まさに地域とともに歩む未来の象徴といえるでしょう。
LumiUnionが小さな支援の“たね”をまき、希望の光を咲かせていくように、「拡張地域社会」もまた、福島から始まる希望の輪を日本中、そして世界へと広げていきます。 NTTデータはこれからも、地域・大学・行政・企業が力を合わせ、テクノロジーの力で新しい社会のかたちを共に創り続けていきます。


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