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2025.2.5

関谷かや人の新規事業コラム ~Why ○○○に潜む罠

新規事業創発チームのマネージャー”関谷かや人”が、新規事業の提案時によく聞く「Why ○○○(会社名)に潜む罠」についてお届けします。
目次

自己紹介

みなさま初めまして。NTTデータの新規事業開発伴走支援チーム、IDA(Innovation Design & Acceleration)の関谷かや人(せきやかやと)と申します。名前が珍しいので、かやとさんと覚えてください。

少しだけ自己紹介させていただくと、前職はNECという会社で25年間、技術研究開発、製品開発、そして新規事業開発に取り組んできました。長らく自らのテーマでの新規事業開発、特に研究所技術起点での新規事業開発に取り組んできましたが、そこでの悩み・経験(主に失敗系)、それを踏まえてのプロセス・方法論の重要性への想いから、NEC時代のメンターであった西村に声をかけ、先の9月にIDAにジョインしました。主に、技術起点、および経営戦略起点の新規事業創発支援を担当していきます。お見知り置きをください。

初回の今回は、私が新規事業の提案時によく聞く「Why ○○○(会社名)に潜む罠」についてお話ししていこうと思います。

自社の強みっていったい何なのか

あなたは、とある会社の新規事業開発の担当者です。既存事業の伸びが鈍化する中、社内では新規事業開発への期待が高まっています。最中、有望な事業機会領域を見つけ、ターゲット顧客を定めつつ、それを解決する新たなソリューションをピッチ資料にまとめ、意気揚々と意思決定者に提案を行いました。すると問われたのは、「それを何故うちの会社がやる必要があるのか?うちの会社のどの強みを活かしているのか?」。「Why ○○○(会社名)」の問題ですね。企業内で新規事業開発をやったことがある人なら、一度は問われたことがあるのではないでしょうか。

あなたは応じて何をしますか?自社の強みと思われる技術、保有しているデータ等をリストアップし、それで足りなければ組み合わせを使って説明をしようとしたりしていませんか。このソリューションに必要なAとBの両方をもっているのは当社だけです、のような。

これ、実はそもそもの問い立て方が間違っていると思います。これって、本来は競争優位性もしくは模倣困難性の問題なのです。今回の事業アイディアの事業成長の過程において、どうやって真似されないようにするのかということ。それを単純に自社の(既存の)強み・技術に頼ろうとするのは、それもワンオプションとして否定はしませんが、視野が狭すぎる感が否めません。

「リソースフル」であるということ

新しい事業というものにおいて、本質的にその成功の鍵となるリソースは、現時点では、まだ誰も保有していません。それが決まっていないからこそ、新規事業と言えるのです。であるからして、本来問うべきことは、「この事業を真似されないようにするために鍵となるリソースは何か?それをいち早く構築するために活かせる当社のアセットは何か?」。問いとしては、同じ「Why ○○○(会社名)」ですが、かなり異なった響きを持つのではないでしょうか。少なくとも、説得力ある説明に必要なAとBの組み合わせが思いつかずに意気消沈、というパターンに比べはるかにポジティブなマインドになれるはずです。

私が経営大学院のベンチャー系クラスに通っている頃学んだとても印象的な概念に「リソースフル」という言葉があります。これは、ある新規事業において必要なリソースを持っていること、という意味ではありません。リソースフルとは、どのような新規事業においても、必要だが、まだ保有できていない鍵となるリソースを新たに獲得する・創り出すための方法を編み出す能力、それに向けて創意工夫を繰り返すマインドを指しています。BizDev担当者の必須能力と言っても過言ではないかもしれません。

キーリソース獲得に向けた、発射台(カタパルト)程度のものとして既存の自社のアセットがある、そういう捉え方をするのが良いのではないでしょうか。

競争優位性は時間経過とともに強まるもの

そもそも競争優位性は、××技術の活用であったり、四象限のポジションニングマップのようなシンプルな図で表現できるほど単純なものではないと思います。組織外部からは見えにくい仕組みによって、時間とともに積み重なっていくために、真似することが難しいのです。これを設計するには、ビジネスモデルを構成する要素間で、互いに強め合う好循環構造を作り込むと良いと言われています。この設計には、アレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールにより開発された、ビジネスモデルキャンバス(BMC)というビジネスモデルを構造化して表現するためのツール・共通言語が有用なのですが、これについては、またの機会にお話しできたらと思います。

「Why ○○○(会社名)」の問題。この問いに対する考え方が少しでも変わったな、と思っていただけたら嬉しいです。

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