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2025.12.11

関谷かや人の新規事業コラム

~“I-nnovation”から“We-nnovation”へ~ 再現性ある新規事業創発のすすめ

私たちIDAチームは「プロセスに再現性を、アイデアに創造性を」という信念を持っている。イノベーションそのものは計画できなくとも、失敗を減らすプロセス設計は確かに存在するのだ。さらに、組織が一体となり進める「We-nnovation」の姿勢こそ、再現可能な新規事業創発の鍵となる。本稿では、その原理原則と組織における実践ポイントを解き明かしていく。
目次

1.新規事業創発の再現性

新規事業創発に再現性はあるのか?

新規事業創発は、二度と同じ内容を繰り返さない“アート”でしょうか。
それとも、再現性のある“サイエンス”でしょうか。
この問いは、イノベーションの世界で長年議論されてきたテーマです。

私たちIDAチームは、「プロセスに再現性を、事業アイデアに創造性を」という信念のもと、新規事業創出支援に取り組んでいます。
イノベーションそのものは設計できませんが、「ありがちな失敗を減らすプロセス」は設計できる-これがIDAの結論です。

ただし、どんな場面にも万能な「手順書」があるわけではありません。
基本的なフレームワークやプロセスをベースにしながらも、状況に応じてやり方を工夫し、視点を変えて繰り返す探索的な動きも必要です。

その意味で、新規事業創発のプロセスは「ルール」ではなく「原理原則」に近い存在といえるでしょう。
「こうすべき」ではなく、「こうすると上手くいくことが多い」と理解していただくのが正しいと思います。

共通言語としてのプロセスがもたらす力

「だったら、自由に考えた方が良いのでは?」と思われるかもしれません。 しかし、プロセスは単なる手順書ではなく、「共通言語」でもあります。

共通言語としてのフレームワークがあることで、

  • メンバー間での議論のズレを減らす
  • 評価する側/される側の視点を共有できる

といった効果が生まれ、建設的な議論が進みやすくなります。

たとえば有名な考え方に「フィットジャーニー」があります。
これは、新規事業開発を以下の3つの整合フェーズに整理するものです。

  • 1.顧客と課題のフィット
  • 2.課題と解決策のフィット
  • 3.解決策の市場性・収益性のフィット

このようにプロセスに名前をつけるだけでも、「顧客課題を議論している最中に収益性の話を持ち込む」といった混乱を避けることができます。
アーリーフェーズで「で、儲かる保証はあるの?」と問われて消えていったビジネスアイデアは少なくありません。

そしてイノベーションは、一人では成し得ません。強いリーダーも必ず仲間の力を借りています。
互いに会話し、刺激し合うための共通言語-それこそがプロセスの価値です。 だからこそ、新規事業創発は“I(私)-nnovation”ではなく、“We(みんな)-nnovation”なのです。

グローバルフレームワークを使いこなす

フィットジャーニーをはじめ、グローバルで活用されている新規事業創発のフレームワークやプロセスはいくつも存在します。これらを上手く活用しない手はありません。
まずは変に改変せず、設計通りの形で試すことをおすすめします。

つまり、プロセスは信頼できる方法に任せ、真の創造性は事業アイデア(コンテンツ)で発揮するのが理想です。
場合によっては、プロセス設計・実行を専門のファシリテータに任せるのも良いでしょう。

もちろん、経験を重ねて独自のフレームワークを生み出すことを否定するわけではありません。
ただ、まずは基本形を忠実に実践することが、イノベーティブな組織になるための近道なのです。

2.新規事業創発の実行体制~トップと現場をつなぐ「We-nnovation」のすすめ~

新規事業開発の同床異夢

新しい新規事業開発PJが立ち上がり、現場が数カ月かけて新規事業の企画をまとめ、トップに報告したところ「これは求めていたものと違う」と差し戻しがおきる。そんな経験はないでしょうか。新規事業開発において、経営層と現場が同じ言葉を使っていても、実はまったく違うイメージを持っていることがよくあります。

その多くは「新規事業の目的や目標が言語化されていない」ことに起因します。具体的には次のようなズレが生じがちです。

1.新規性の定義のズレ

顧客が新しいのか、製品・サービスが新しいのか、それとも両方なのか。一方、狙いたいのは新しい領域であっても、自社のコア技術を使うことを前提条件ということもあります。さらに「新しい」とは自社にとってか、業界にとってか、世界的に見てか。この認識を合わせないまま議論しても、永遠に交わりません。

2.時間軸と市場規模のズレ

「3年後の10億を目指すのか、10年後の100億を狙うのか」。この前提が異なるだけで、取るべき戦略はまったく変わります。

3.エグジットスキームの不明確さ

既存事業部で育てるのか、新しい部門をつくるのか、あるいは子会社化するところまで目指すのか。事業の受け皿が変わると、取るべき戦略も変わります。それ以上に、違ってくるのは、それを推進するリーダに問われる覚悟です。新規事業には常に「そこまでやるか」が求められますが、どこまでパワーを込めてやれるかは人それぞれです。

4.“無理ゲー”な目標設定

上記目標を紐解いていくと、目指すべき姿が誰も成し遂げたことのないような短期間での巨大成果となっていることが、ままあります。高い目標設定自体を否定するものではありませんが、あまりに高い目標を求められても、検討メンバの士気は上がりません。他業界含め類似事例を分析し、現実的かつストレッチな目標設定が不可欠です。

そもそも新規事業とは、既存事業以外という「無限空間」を指すものです。更には、比較的簡単にできることとかなり難易度が高いことも入り交じっています。既存事業より遙かに広い範囲を指す訳ですから、その性質を理解して、走り出す前に、まず方向性を定めることが大切です。「何でも良い」としたい気持ちをどう抑えるか、これがポイントですよね。

NIH症候群の予防的処方箋

この意識のズレを防ぐには、トップと現場のキーパーソンが一堂に会して「何のために、どのような新しい価値を生み出すのか」を明文化した指針を事前に文章化しておくことが有効です。これを我々は「イノベーション・アサインメント」と呼んでいます。その作成には、外部の専門ファシリテータを入れるのも有効です。第三者の視点が、組織内の暗黙の前提をあぶり出し、共通認識の形成を促します。

なお、参加メンバーには経営陣だけでなく、企画・設計・製造・販売など、実際に事業を遂行する候補の各部署のキーパーソンも含めることが肝要です。「これは求めていたものと違う」が起きるのは、トップと現場の間だけではないためです。現場間でも同じようなことが起きます。「良い企画だが、それは作れない」、「それは、良さそうだが売る仕組みがない」といった、組織間の意識の違いも新規事業が先に進まない良くある理由です。

そしてこの巻き込みは活動の始まりだけでなく、アイデア創出や選定といった検討プロセスの重要な局面でも、継続して行うことが大切です。なぜなら、人は自分が関与していないアイデアには本気でコミットしないからです。これはNIH(Not Invented Here)症候群と呼ばれています。

そう言われても、部門間連携は調整が大変。そんな声が聞こえてきそうです。確かに、経営層の参画はスケジュール確保だけとっても決して容易ではありません。そこで重要なのが「構造化されたプログラム」の導入です。新規事業開発をプロセスとして体系化し、キーポイントとなる日程をあらかじめ設定しておくことで、トップが確実に関与できる仕組みを整ることをお勧めします。

衆議独裁のススメ

上記で言わんとしていることは、まとめると、新規事業開発は、特定の個人が孤軍奮闘する「I-nnovation」ではなく、組織全体で創り出す「We-nnovation」であるべきということです。

とはいえ、全員の合意を得るまで動けない完全コンセンサス主義では、スピードを失います。議論を尽くしつつも、最終的にはリーダーが「決める」責任を持つことが不可欠です。これが「衆議独裁」の考え方です。

衆議独裁とは、「多様な意見を聴き、議論を重ねたうえで、最終判断は一人のリーダーが下す」スタイル。民主的なプロセスとリーダーシップを両立させる考え方です。

そのためには、リーダーに一定の裁量権=ワイルドカードを与えておくことが重要です。たとえば「この範囲までは即断してよい」「この投資額まではリーダー判断で進める」といったルールをあらかじめ設定しておくことで、現場が迷わず動ける体制をつくることができます。

最後に

新規事業創発は「学べるスキル」です。 その学び方の精神として、ぜひ「守破離」を大切にしていただければと思います。
まずは守り、やがて破り、そして離れていく-
IDAチームは、その最初の一歩を共に歩む伴走者でありたいと考えています。

3.【15分シリーズ】20週間でビジネスプランを創出!FORTH INNOVATION METHODの魅力3選

新規事業の再現性を高める「FORTH Innovation Method」の魅力を、公認ファシリテーターがわかりやすくご紹介します。ぜひご覧ください!
>>>視聴はこちらから<<<

FORTH Innovation Methodについて:

オランダのハイス・ファン・ウルフェン氏が開発した、世界20カ国以上で導入されている、国際的に実績のある新規事業創発メソッド。イノベーション創出を“冒険の旅”として体系化したプロセスであり、約20週間で、5つのステージ-“Full Steam Ahead”、“Observe & Learn”、“Raise Ideas”、“Test Ideas”、“Homecoming”-を経て、確実に3~5つのビジネスプランを生み出す手法となっている。それぞれのステップで行う具体的なワークショップやアクティビティの内容があらかじめ定義されている点が特徴。NTTデータが提供するFORTH Innovation Method は、公認ファシリテーターによる推進だけでなく、専門知見を持つNTTデータの共創支援メンバーがお客さまとチームを組んで共に進める体制になっている。

NTTデータの新規事業創発支援(IDA)についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/ida-bizdev/

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