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Salesforceのトップエキスパートが語る、AI時代のアーキテクト像とは

NTTデータではSalesforceビジネスを推進するため、組織を横断し、高度Salesforceエンジニア同士がつながるネットワークを構築しています。これにより、プロジェクト間での知見共有や助け合いが可能となり、グループ全体の競争力を高めています。今回の取り組みでは、Salesforce最高難度資格「CTA」取得者をはじめとするトップエキスパートが集結し、AIエージェント時代に求められるアーキテクト像や、グローバルで活躍するためのキャリア戦略などについて語り合いました。

目次

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世界で400名、日本で20名の希少資格CTAとは

――今回はSalesforceのトップエキスパートであるNTTデータ社員と関連企業社員(飯田さん・野戸さん)にお集まりいただき、最新の技術潮流と人財育成のヒントを語っていただきます。まずは「CTA(※)とは?」という方も多いと思いますので、CTAの位置づけと難易度、実務での価値などについて説明してください。

※CTA=Salesforce 認定テクニカルアーキテクト (Salesforce Certified Technical Architect) の略。Salesforceの開発者・アーキテクト系資格の最高峰資格に位置づけられている。

小林 清一郎 小林

CTAはSalesforce資格群の“アーキテクト領域の最高位”といえる資格です。アーキテクト以外の資格は“○○コンサルタント”といった上位資格しかない一方、アーキテクトの資格群はピラミッド構造になっていて、段階を踏まないとたどり着かない構造になっています。

取得するためには、前提資格を積み上げたうえで3日間のワークショップに参加します。ワークショップでは試験の様式、採点のポイントを知ることができます。そのうえで試験までの数カ月を通して自身のスキルとして足りない分野を補完していきます。実際の試験ではショートシナリオを読み、その場で1時間のソリューションを設計し、面接官 1人にプレゼンする事前評価(1次試験)を実施。その後、長いシナリオを読み、その場で3時間のソリューションを設計し、面接官3名から矢継ぎ早に質問され、それに答える必要があるレビューボード試験(2次試験)に臨みます。合否は知識だけではなく、「なぜ、それを選択したのか」という背景まで含んだ“総合力”でジャッジされます。

飯田 飯田

多岐選択式の試験では“正答を選ぶ”傾向が強いですが、CTAは“理解して語る”ことが問われます。制約条件やトレードオフを踏まえ、なぜその設計を選ぶのかを論拠をもって説明することが求められます。私自身、厳しい面接の緊張感の中で、過去案件を構造化して語った経験が思い出されます。

――海外では、CTA取得者は好待遇だと聞いていますが、市場での評価はどのようなものなのでしょうか。

小林 清一郎 小林

CTA資格取得者は世界で約400名、日本においては約20名とたいへん希少です。アメリカのRFPでは「CTAをアサインせよ」と明記されることもあります。単なる肩書としての資格ではなく“アーキテクト力の保証”として扱われています。報酬面にも明確に反映され、平均年収は2,000万円~3,000万円と言われ、希少性と期待値の高さの表れですね。

飯田 飯田

海外では、世界最大級のテクノロジーカンファレンスであるDreamforceなどの場で “CTAです”と名乗るだけで、相手の反応が変わります。CTA同士だと、あの厳しい面接を乗り越えた “同志”みたいな感覚ですね。一方日本では、まだ認知が追いついていない印象です。お客様はもちろん、Salesforce系の資格を取得している人でさえ、その価値やすごさを理解していないように感じています。

小林 清一郎 小林

アメリカでも社内に2名以上のCTAがいる会社はまれですからね。それを理解しているから、RFPの中でCTAを条件にする会社があるのでしょう。有資格者数だけでその会社の実力が図れ、CTA不在の会社は、その段階で選定から外れるケースも少なくありません。日本ではCTAの理解が進んでいないので条件にされるケースは、まずありません。

――日本とアメリカで、その重要性の理解には大きなギャップがあるのですね。アメリカの現状を知る小林さんならではのお話でした。

Agentforce時代にアーキテクトが果たす役割とは

――続いて、Agentforceについて話を進めたいと思います。2025年11月20日(木)、21日(金)の2日間、Agentforce World Tour Tokyo(AWTT)が開催され、先進事例として日本のメガバンクや大手保険会社の事例が取り上げられました。メガバンクを長く担当されている野戸さん、いかがでしょうか。

野戸 野戸

今までSalesforceの採用やMuleSoftの活用について、プレスリリースでの発表はありましたが、これまでのSalesforceのイベントでは、メガバンクの事例が取り上げられることはあまりありませんでした。今回、AWTTでSalesforceの革新的な取り組み企業を意味する“Agentic Enterprise”として大々的にメインキーノートで取り上げられたのはうれしいですね。私が法人営業CRM構築に携わっている中でも、AIエージェント利用前提のニーズ、ビジネス要求が当たり前になりつつあると感じています。

――もう一社の大手保険会社を担当されている渡辺さんはいかがでしょうか。

渡辺 豊士郎 渡辺

大手保険会社様とは、基幹系システムの保守・運用として長年歩んできましたが、Agentforceの黎明期に腕試しとしてお声がけいただきました。共に手探りでプロジェクトをスタートさせ、機能性/非機能性の検証、基幹システム連携、ユースケース実装などを経て、今ではエッジ分野のパートナーとして信頼をいただいています。

同社は、海外事例の後追い導入ではなく、日本から先進事例を数多く出したいという熱意を持っています。お客様のビジョンの実現には、業務知見や既存システム、データ構造への理解も重要です。私はSalesforceの専門家ですが、そちらの専門家も交えて、お客様に伴走しています。

少し細かい話ですが、従来型の固定的な画面の開発では、一度のクエリで全情報を取得するという発想でAPIが作られています。一方で対話型であり、さまざまな情報から柔軟に、必要なものだけ取得するようなAgentforceの用途ではバッドデザインになりがちです。あまりにもAPIレスポンスが巨大だと、AIエージェントがうまく処理できないんです。それよりも、業務ブロックごとにマイクロサービス化した方が、AIの応答精度も再利用性も高まります。実プロジェクトの中では、Agentforce向きなアーキテクチャ(あるべき論)と、既存資産(環境制約)の狭間で、精度も速度も出していかなければならず、バランスを探っていく必要があります。

山本 英之 山本

渡辺さんがおっしゃったマイクロマネジメント化において重要になってくるのがSalesforceのMuleSoftです。MuleSoftとは、APIを通じて企業内のシステム、データ、アプリケーションを接続・統合するためのプラットフォーム(iPaaS)です。特徴的なのがエクスペリエンス層/プロセス層/システム層という三層に分けてAPIを構築・管理する点です。これまでのサイロ化した状態からMuleSoftでコンポーザブルに管理することができます。

来るべきエージェンティック エンタープライズの世界観に対応したAIプラットフォームがAgentforceです。AIエージェントをAPIと同じように管理していく仕組みを構築していますが、複数のAIエージェントを活用する中で重要になってくるのがMuleSoftで、AIを活用する際のバックエンドサイドのハブとなっています。今後、MuleSoftでMCPやA2Aが提供されることが期待されています。

――“SaaS is Dead(SaaSは終わった)”論にも通じる話ですね。SalesforceがAgentforce主体になっていく中でアーキテクト人財(CTA)に求められるスキルについて教えてください。

飯田 飯田

テクニカルアーキテクトに求められるのは、問題を特定し、解決策を設計し、その選択理由を説明できる能力です。試験では、問題点に対する解決策を示すだけでは十分ではありません。システムを理解し、構築でき、制約や理由を把握していることが重要です。今日のAgentforceやMuleSoftの話でもMCPやA2Aといったキーワードがでてきましたが、技術が新しくなっても、それがなぜ必要でどう動くのかを理解する視点が、今後も変わらず求められます。

――全体を俯瞰しながらアーキテクチャを構築していく能力が、今後も重要になるということですね。

再入社した小林さんが語る、キャリアの転機とグローバル視点

――ここからは小林さんを例に、どういうキャリアを目指していくべきかについて考えていきます。小林さんは一度、NTTデータを退職したのち総合系コンサルティングファームへ転職し、再びNTTデータに再入社していますが、この経緯について教えてください。

小林 清一郎 小林

転職先の総合系コンサルティングファームは成熟していて、コンサルティングファームの一つの理想形といってもよいと思います。ただ、実際に入社してみて実感したのは、思ったほどグローバルの連携がなかったということ。グローバルリーダーが存在する、定例で各国の事例紹介をする、オフショア開発などで連携するなど、つながりがないわけではないのですが、特にアジア各国のブランチは国内に閉じているという印象を持ちました。連携してもインドやアフリカなどのリージョン内までで、アメリカやヨーロッパとの連携はあまりなかったと思います。

対してNTTデータは、“グローバルで連携し、一つのチームとして動く文化”があります。私がアメリカ・ダラスへ出向し、グローバルアーキテクトとして携わったことも、そうした文化を象徴する好例だと思います。ドイツ、スペインなどとも会議や案件で自然につながれていますね。組織は進化の途上かもしれませんが、だからこそ、“一丸でやる”価値観が推進力になっていると感じました。その文化・雰囲気が、再入社した一番の理由です。

――国内・海外問わず、小林さんを指名するケースが多いと聞いています。渡辺さん、現場側としてどうなのでしょうか。

渡辺 豊士郎 渡辺

グローバルの実績が豊富なので、”言葉の重み” が違います。最近の意欲的なお客様は、Salesforce社が示すビジョンとそれを支える理想的なシステム構成をよくご存じです。それを、単になぞったようなプレゼンだと、軽い提案になりがちです。しかし、グローバルの事例や情報を得ている小林さんが語ると反応が違いますね。ファクトの力は偉大です。「資料に”小林印”をつけて出そう!」と社内コミュニケーションがとられているほどです。

先進分野の国内当社実績は、どうしても限られてしまうので、小林さんの知見や、小林さんをハブにした当社グローバル実績の集約は、当社の強みにしていきたいです。

――渡辺さん、ありがとうございます。ほかの皆さんからも、この記事をご覧になっている方へメッセージをお願いします。

山本 英之 山本

今日はMuleSoftの立場で参加しています。初めて聞いた方もいると思いますが、MuleSoftはSalesforceの世界観の中で“システム連携の要”になる存在です。Salesforceの描く理想図ではMuleSoftはキラキラした世界観に見えますが、現状では、まだ期待値が低いと感じることもあります。だからこそ、実績を積み、この場で胸を張って語れるようにしていきたい。皆さんには、こうした新しい技術に触れ、連携の仕組みを理解し、将来の強みにしてほしいです。

飯田 飯田

時代が複雑になる中で、アーキテクトの役割はどんどん広がっています。もちろん、自分自身が学び続けることは大切ですが、一人でやるのは難しい。今日のように詳しい人とつながれる場があるのは心強いですよね。Salesforceのコミュニティを活用しながら、自分も貢献し、助けてもらう。そんな関係を築いていくことが、キャリアを伸ばす鍵になると思います。

野戸 野戸

今日のお話で可能性を見せてもらいました。次はそれをどう実現するかです。アーキテクト的な視点で、価値を見失わずにソリューションを形にしていくことが大切ですが、壁にぶつかったときに頼れる仲間がいるのは本当にありがたいので、これからも皆さんと一緒に夢を実現していきたいです。

小林 清一郎 小林

最近アメリカの現場に入って感じるのは、AIエージェントや生成AIの進化のスピードがすごいということ。過剰な期待感の中で熱狂しているように思えるので、アメリカではいずれ揺り戻しが来るでしょうが、そのとき、日本は熱狂の真っ只中にいるかもしれません。我々NTTデータは、どういう状況であっても、お客様に“本当に目指すべき姿”を示すことが価値になると思っています。

また、ただのプログラマーや初級コンサルタントは生成AIに淘汰される可能性があります。アメリカではすでに起きている現実です。だからこそ、目指すべきは“尖った専門性を持つコンサルタント”か、“全体設計ができるアーキテクト”のどちらか。ポジティブにいえば、上を目指すチャンスです。ぜひ挑戦してください。

SalesforceもNTTデータも劇的なスピードで進化を遂げており、気が付いたときには取り残されている可能性があります。しかし、NTTデータにはこれだけのプロフェッショナルがそろっており、自分で勉強しながらも仲間に相談できる環境が整っています。より高度な専門知識を身に着けていきたいという思いをお持ちの方であれば、大きなやりがいを持って活躍できるフィールドが広がっていることでしょう。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです