ミッションクリティカルな領域で、スピードと品質を両立する秘訣とは
Q:まずはお二人がPMになろうと考えたきっかけについて教えてください
前田
就職活動のときですね。私は幼少期よりラグビーをしていて、主将を務めることも多かったので、「この経験が仕事に活かせたら良いな」って漠然と考えていました。自身の性格を考えたときに、みんなで一つのゴールに向かって走っていくなかで、チームの先頭に立って引っ張っていくよりも、縁の下の力持ちのようにメンバーを後押しするほうが性に合っているんじゃないか。そう考えて仕事を探していった結果、PMが自分の働くイメージとぴったり合致したんです。
内田
私がPMを意識するようになったのは、前職で顧客常駐のソフトウェアベンダとして、コーダーで出向していたときです。出向先のPMの方々が働く姿を見ていると、自身で手を動かした経験の有無によって、同じPMでも考え方が全く違うことを実感しました。パフォーマンスを適切に管理するうえでも、PMが現場の気持ちをくみ取れたほうがスムーズでした。当時から新しいことにどんどんチャレンジしたいと考えていたので、周りを巻き込む力を身につける意味でも、PMの経験は必要だと思いました。
前田
現場の経験があったほうが協力会社とも上手くやっていけるでしょうし、プロジェクトも円滑に進められそうですね。そういった意味では、私も入社して2~3年目くらいまでは、コードをくんだり、テストをしたりと、実際に手を動かす業務が多く、そこで理解を深めていました。
Q:お二人にとって、「金融分野のPM」にはどんなイメージがありますか?
前田
ミッションクリティカル性の高い金融システムの開発でQCDを守りながら、プロジェクト期限までにゴールを達成できる存在がPMだと考えています。でも、実際のところ、当初の計画通りに進まないこともあります。計画が崩れたときにどう軌道修正していくか、ある種アジャイル的に調整する、その対応力がPMの力量そのものとだと言えます。特に私が現在担当するプロジェクトでは、これまでの常識が通用しないことが多いなかで、スピードと品質を両立しなければいけません。そのバランスを取るのが難しさであり、腕の見せ所です。
内田
私の場合は、素早く的確な判断ができる存在ですね。現在、デジタル戦略室では、SAFe(Scaled Agile Frameworkの略)という、アジャイル開発の考え方を大規模な組織全体に適用するためのフレームワークに沿ったスクラム開発を基本として進めています。細かく開発サイクルが設定されており、2週間単位で課題を解決していくことが求められるため、メンバーからあがってきた提案や相談に対し、スピード感をもって応えることが必要不可欠です。その場で正しい判断を下すには、技術要素や活用方法などに関する引き出しをどれだけスクラムチーム(≒開発チーム)に向けてインプットできているかが大切で、自分の引き出しをもとにできる限りよい示唆だしをすることを意識しています。インプットに向けては、昔は技術書や論文を調べるなどの時間を要していましたが、今は生成AIという心強い相談役がいるので、スクラムチームの成熟としての選択肢が広がりましたね。
Q:内田さんは前職で接していたPMと比較して、NTTデータ金融分野のPMは「ここが違う」と感じる部分はありますか?
内田
シンプルに頭が良い方が多い印象です。転職したばかりのころは、仕事に対する順応の早さと、アウトプットの質の高さに驚きましたね。ドキュメントが揃っていなかったり、ルールに曖昧な部分があったり、誰に聞けば分かるのか不明確だったりということもなく、きちんとマニュアル化されている。だから統率がしっかり取れているんだなと思います。
前田
確かに、ナレッジを積極的に蓄積していこうという文化はありますね。
私が担当している案件も、現在オープン化に向けた転換期にあり、マニュアル作成を含めた各種整備も丁寧に進めているところです。
技術要素のルーツを知り、新たなビジネスにも挑戦できる環境
Q:前田さんと内田さんが現在、PMとして関わっているプロジェクトについて教えてください。
前田
しんきん共同センター様の共同利用型システムの開発案件で、メインフレームからの脱却(オープン化)を目的とした「PITON(注1)」基盤への適用に取り組んでいます。全国にある230を超える信用金庫様がエンドユーザーとして使用する大規模システムで、私はオンラインに付随するバッチ処理チームを担当しています。
*注1)「PITON」はメインフレーム向けに開発されたアプリケーションを、オープン系の基盤上で稼動可能とするフレームワークです。
内田
私は複数のマイクロサービスの立ち上げを担当していて、SAFeを用いて、複数のスクラムチームのプロダクトオーナーとして活動してきました。これまでリリースしたものだと、リモート営業ツールSaaS、メール通知PaaS、認証局PaaS、電子契約SaaSなどに関わってきました。
Q:PMとしてプロジェクトを動かすうえで、難しかったことはありますか?
前田
現行と次期のシステム間の非互換対応ですね。今回は歴史ある金融システムをPITONへ移行するにあたり、PITON開発側と信金様向け現行システムを長年担ってきた側という、所属の異なる関係者間での認識のすり合わせが重要なテーマでした。PITON開発側のメンバーは歴史ある金融システムがどのような思想で作られているのか細部まで把握することが難しく、現行の金融システムを手がけてきた側もまた、PITONで実現できることが分からない状態だったんです。基盤が変わっても、以前と同じような感覚でシステムを動かすためには何が必要か。現行システムではできるけれど、次期システムだとできない仕組みはどのように補うのか。PITON側と長年信金様のシステム開発を支えてきたメンバーのどちらの言い分にも耳を傾けながら、一つずつ丁寧に協議していきました。
内田
私の場合は、前田さんが仰っていたスピードと品質を両立するうえで、調整力や説明力が強く求められる局面がありました。担当していた銀行のお客様には新しいサービスや技術を調査・検討する「調査役」と呼ばれるポジションがあり、銀行サービスに付加価値を与えるために、世の中のあらゆるサービスを調査しています。このことから、ニーズの発生に応じてジャストインタイムでの開発が求められるため、スクラム開発を採用しました。しかし、お客様が段々と完成形に近づいていくスクラム開発のやり方に馴染みがなく、最初にチェックいただいた際に「この品質で大丈夫なの?」と不安を感じていたんです。その際お客様に段階をきちんと説明し、一つずつ着実にクリアしていく過程を見せていくことで信頼関係を構築していきました。
Q:さまざまな局面があったかと思いますが、金融分野のPMだから得られる経験について、お二人の意見を聞かせてください。
前田
金融業界では今まさにメインフレームからの脱却が求められているため、金融業務を半世紀以上支えてきた、歴史ある金融システムの真髄に触れられる絶好のタイミングになっています。歴史あるシステムの設計思想はドキュメントに載っていないことも多いので、それをどのように読み解くのか。どうすれば実現できるのか。このような経験は他では味わえません。でも、どの領域でも通用する汎用性の高いスキルになると思います。成長機会は確実に多いですね。
内田
情報処理技術者試験に出るようなコア技術をはじめ、IT業界の技術基盤(特にセキュリティの分野)は金融業界から生まれていると言っても過言ではありません。日本の技術書を読むと、まず、金融業界やATMに関するシステムの記述が出てくることがわかると思います。なので、金融業界のルーツを知ることは、現在のIT業界のルーツを知ることになる、またとないチャンスです。しかも歴史ある領域って、普段は不可侵領域として触れないんです。そこを触れるだけでも非常にレアな体験です。歴史的背景を踏まえて、なぜこの考え方が必要なのかを学ぶことは、今後のキャリアにも必ず活きてくると思います。
前田
お客様から見るとあくまで基盤更改であり、表面的な提供価値が変わらないという点では「守り」のプロジェクトと言えるかもしれません。けれど、裏側では仕組みがガラッと変わるため、かなり挑戦的な取り組みをしているんです。
また、金融業界は既存システムへの機能追加や維持/保守の「守り」が強いと思われがちですが、内田さんが関わっているのはまさに「攻め」の領域ですよね?
内田
そうですね。日銀の利上げで8年間続いたマイナス金利時代が終わり、金融機関には金利以外の付加価値が求められるようになりました。だからこそ、先手を打って独自に新しいことにチャレンジしようというお客様も増えており、マイクロサービスの需要の高まりを感じています。金融って他組織に比べて慎重なのでは、とイメージする方もいらっしゃるかと思いますが、そんなことはなく、お客様が自ら業態を変えようとしている局面であり、我々にとってもビジネスチャンス含め新しいことへの挑戦がたくさん散らばっています。これまでの強みだった守りの領域で知識を深めることと、付加価値を生み出すための攻めの領域で新しいビジネスにチャレンジすること、その両方を経験できる環境が今の金融分野にはありますよね。
千載一遇のチャンスを活かし、PMとして突き抜けた存在を目指す
Q:今後、PMとしてどんなスキル・経験を身につけたいですか?
前田
今回のインタビューを通じて、自分が守りの領域、内田さんが攻めの領域を担当していることを知って、金融分野って想像以上に活躍のフィールドが広いんだなと改めて感じました。これまでは担当内異動で金融システムの根源に触れながら、大小さまざまなプロジェクトマネジメントを経験し、やってきたことへの納得感も出てきました。ただ、内田さんのやっている業務とでは大きくジャンルが違うように、挑戦できることはまだたくさんあるわけで、将来にワクワクしますね。今後はより広い視野で色んなプロジェクトに関わって、より知見や技術を深めていきたいです。
内田
前職ではウォーターフォール開発のみだったので、転職後にアジャイル開発という異なる開発工程を学び、新しいサービスを次々と生み出していけたのは良い経験だったと感じています。金融業界はBaaSの登場で、非金融のお客様に対して提案する機会もあります。そのシームレス性を上手く活用して、まだ世の中に浸透していない新技術をビジネスに昇華して、幅広い業界に展開していきたいです。
Q:最後に、PMとして成長していきたいと考えている読者の皆さんに、メッセージをお願いします!
内田
PMを経験した後の未来って、意外とイメージできない方が多いんじゃないかと思います。だからこそ、PMとしてのキャリアに漠然とした不安を感じがちというか。でも、PMのスキルって、かなり汎用性が高いです。経験が深まるほど、自然と応用力が上がっていくので、求められる人財になるための登竜門だと考えてみると良いかもしれません。
前田
金融分野の話をすると、PITON適用を通じて歴史的な金融システムに触れるチャンスは、私の担当プロジェクトが第二弾ですが、すでに第三弾・第四弾も動き出しています。そう考えると、今の金融分野がPMにとって最も幅広い知識・技術を吸収できる環境といっても過言ではないかもしれません。
内田
私もそう思います。もともと金融分野はミッションクリティカルな領域を担当することから、信頼性の担保が極めて重要で、関連する技術力の習得という観点では申し分ありません。そこに歴史ある金融システムの設計思想を紐解くという類を見ない体験と、時代の潮流に伴う金融機関の価値向上を目的とした新たなビジネスチャンス、この2つの付加価値が上乗せされるわけです。脂がのっていて、成長機会として贅沢な状態にあるのではないでしょうか。少しでも興味がある方は、ぜひ、金融分野でPM業務を体験してみてほしいです。


