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【新社長・佐々木が語る】グローバル 20万人が挑む「新たな社会・産業変革」とは?

2023年7月、NTTデータ株式会社は持ち株会社制に移行。NTT データグループに社名変更しました。海外事業の拡大もあり、2023年度のグループ全体の売上高は約4兆円、グループ全体の社員は約20万人という規模になっています。持ち株会社制の以降に合わせ、国内事業をメインとし、NTTデータという社名を継承する国内事業会社を同じく7月に設立。今回は、NTTデータ代表取締役社長に就任した佐々木 裕が、テクノロジーによる社会の変革と、NTTデータが担っていく役割についてお話しします。
※本記事は日経BP主催のIT Japan 2023エグゼクティブ講演(2023年8月23日)の内容を再構成したものです。

目次

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1.テクノロジーの進化が、人々の生活・社会に変化をもたらしてきた

まず、IT の進化がもたらした生活の変化について振り返っていきます。テクノロジーの進化は、シェアリングや生体センシングなどの「消費・生活スタイルの変化」、サプライチェーン変革やコネクテッドカーなどの「つながるモノの拡大」、脱炭素化や循環型経済など「環境問題への取り組み」という形で、社会や産業に大きな変革をもたらしてきました。

2015年ごろから本格的に普及し始めたUberやAirbnbといったSharing Economyが社会に与えたインパクトは大きく、空間や移動のシェアにとどまらず、スキル、お金、モノのシェアまで進んできました。また、決済の仕組みも大きく進化。日本は諸外国と比べて現金主義と言われますが、2022 年には決済の36%がキャッシュレス決済となっています。

クラウドの普及とともに多くのモノがつながることで、自動車業界ではコネクテッドカーなどの技術も発展しています。より多くの車が無線ネットワークを経由してクラウドに接続され、またセンシング技術の進化により自動運転支援の車が増加。技術の進化によって交通事故も年々減少傾向にあります。また、建築業界では3DCADやコンピューターデザインの進化により、皆様もご存じの通りサグラダ・ファミリアの工期が大きく短縮され、2026 年には完成すると発表されたところです。

こうした社会変革にNTT データグループも大きく貢献してきました。例えば決済インフラの領域では、クレジットカード決済の領域を中心にCAFISというプラットフォームを 35年以上にわたって運用しています。また、銀行のインターネットバンキングではANSER、電子納付・決済ではPay-easy(ペイジー)も便利に利用いただいています。

自動車関連ではカーナビなどをはじめとした組み込みソフトウェア開発の領域で実装を支えてきました。最近の車はメータなども電子化され、エンターテイメントも充実。IVI と言われる領域のソフトウェア開発に加え、自動運転支援のソフトウェア開発も進めています。海外では自動駐車のアルゴリズムを実装し、その実現にも貢献しています。

2.私たちが目指すのは「Global Top 5」。進むNTT DATAの変革

ここまで IT技術の革新による社会や生活が大きく進化してきたことをお話ししてきましたが、続いては当社自身の変革についてご紹介いたします。

NTT データグループでは 2005 年から海外事業がスタート。その後、M&Aを通じて事業規模の拡大を図ってきました。2022年度に日本電信電話傘下にあったNTT LimitedをNTTデータグループの傘下に巻き取ったことで、海外事業における売上高は約1兆円増加し、約2.4兆円規模の事業を海外で展開しています。現在は「Global 3rd Stage」というフェーズに入っており、2025 年度に「Global Top 5」の企業となれるよう事業に取り組んでいます。

売上高の構成も大きく変容し、2005 年には国内中心だった当社の売上高は 、2022 年度には約 60% が海外事業からの売上となりました。国内の事業ポートフォリオについても、2001 年は公共分野が約50%だったところから、金融・法人分野が大きく成長したこともあり、バランスの取れた事業ポートフォリオとなってきています。今ではエンタープライズ領域においても、製造業・流通業をはじめとした大手のお客様とデジタル領域を中心に事業を展開させていただいています。

社員数も約20万人の規模まで拡大。国単位では日本が最も多く、4万4000人を超える人員、次いでインドが 3万9000 人となっています。リージョンで見てみると、ヨーロッパでも5万人弱の社員が活躍するなど、グローバルでも比較的バランスの取れた形で人員配置ができています。

グローバルで多様な人財と一緒に仕事を進めており、今年の 7 月にはインドのバンガロールにNTT データグループの幹部 150 名が集まり、グローバルカンファレンスを開催。NTT データグループとしての戦略の方向性について意識合わせを行う良い機会となりました。多様な人財の多様な知見を結集することで、皆様のお役に立つことができると考えています。

3.For The Future 未来構想×先進技術で社会の変革をリードする

IT 企業の役割は、ここ数年で大きく変容してきました。以前はお客様にシステムを納品するまでが私たちの役割でしたが、DXの時代を迎えたことでIT企業はお客様の先にいる生活者も含めて相手のことを考える必要が出てきました。多くのシステムが API などを通じて相互に接続され、社会全体のシステム化が進んできたことで、IT 企業の役割は社会システム全体の設計や実装をしていくことにシフトしつつあります。

具体的な事例をいくつかご紹介します。1つ目の事例は、次世代医療基盤のプラットフォームとして NTT データが推進している「千年カルテ」というプロジェクト。これは、医療機関、製薬会社などを統合的に接続した社会プラットフォームです。これまで医療機関それぞれで管理されてきたカルテなどの診療データをセキュアに集積活用することで、匿名化された個人の病歴や診療歴を統合的に分析。どういった病気にどういった医療が役に立っているのか把握することが可能になったのです。そうした分析結果を製薬会社等にご提供することで、新薬の開発などに役立てていただいています。

2つ目の事例は、国庫金キャッシュレスサービス「KOKOPASS」。こちらも NTT データが開発をしたもので、行政機関、金融機関、クレジットカード会社などを接続した社会プラットフォームです。これまで収入印紙や現金などで支払うことが前提だった行政サービスの手数料を、クレジットカードや電子マネーで支払うことを可能にするキャッシュレス化のプラットフォームを提供してきました。

これら 2 つの事例を見ることでご理解いただけるように、行政や金融機関企業などが相互に接続される社会プラットフォームが実現されつつあります。そして、生活者にとってもスマートフォンなどを通じて便利な社会生活を送ることができるようになってきたと言えるでしょう。

それでは、こうした社会の変革を推進していくための「変革ドライバー」とは何なのでしょうか。人間社会はこれまでも多くの課題を解決し、より生活を便利にしてきました。漸進的に社会が進歩することも、非連続に社会の変革が起きることもあったと思います。特に非連続に社会変革を実現したケースでは、大きく3つの「変革ドライバー」が関係してきていると考えています。

1つ目は「テクノロジー」。2つ目は「規制緩和・制度改革・商習慣」。そして3つ目は「産業構造・競争環境」です。

例えば、規制緩和によって、これまでできなかったことができるようになったり、古い商習慣から新しい商習慣に変わることで利便性が一気に上がったり。サプライチェーンが見直されることにより産業構造自体が大きく変容し、社会の変革が実現する。商品価格やサービス価格といった価格面での変革は、競争環境の変化によって生じることが多いのではないでしょうか。

そうした中で、「テクノロジー」も大きな役割を果たしています。新たなテクノロジーが実用化されることで、社会は大きく変容してきました。製造業では生産技術の発展によって、生産コストが大きく下がるということがさまざまな製品開発において起きています。新たな素材の開発が、大きな社会変革を作り出すこともあります。

例えばシェアリングエコノミーの代表事例であるUberは、GPS技術とソフトウェア技術を組み合わせ、スマートフォンのソフトウェアと連動することによって実現。タクシー業界の古い「商習慣」を大きく変えることに成功しました。QR コード決済も大きく「商習慣」を見直すことにつながりました。また、ドローンの活用などについては「規制緩和」も大きな要素となっています。このように多くの社会システムの変革事例は、3つの変革ドライバーと密接に関連しているのです。

私たち NTT データグループでは社会変革をリードしていくために、「規制」や「産業構造」などの社会的な観点から体系的に未来を構想するForesight起点のコンサルティングと、「テクノロジー」の活用範囲を見極める先進技術力の両側面からアプローチをしています。マーケットのトレンド、テクノロジーのトレンドをしっかりと見定め、3つの変革ドライバーを全方位で捉えることにより、社会全体のシステム設計・実装を進めていきます。

先進技術の活用にあたっては、技術の成熟度に合わせた「E・G・M フレームワーク」を採用。当社グループとして注力すべき技術を定義しています。メインストリームには、クラウド、AI、EASなどを置き、今すぐ使える技術の迅速なビジネス活用を行っていきます。また、昨年 10 月に NTT Limitedと統合したことにより、コネクティビティの領域での技術開発にも注力しており、Edge as a Serviceについてもフォーカスしています。

エマージングとグロースの領域は、それぞれ長期的に活用されるであろう技術だったり、3 年後を目安に普及するであろう技術を定義しています。量子コンピューター、ブロックチェーンなどは一部で活用事例が出てきていますが、ビジネス規模としてはまだこれからです。こういった技術領域は先進的なお客様との取り組みを通じて、技術のブラッシュアップを図り、より高度な技術活用ができるよう取り組んでいます。

一方のコンサルティングアプローチについては、Foresightコンサルティングの実践を進めています。規制緩和や商習慣の変化なども視野に入れつつ、お客様とともに業界の将来について“ありたい姿”を策定し、それを踏まえた各企業の提供価値の再定義、デジタル技術の活用の可能性などについて議論。大きな方向性を見定めた上で、伴走型のコンサルティングにより、デジタル技術による実装効果創出を図っています。

私たちがゴールに定めているのは、お客様ビジネスに貢献すること。「お客様のお客様」も含め、効果が本当に発揮されているかを見ていくことが重要だと考えています。先進技術の活用範囲を見極めて実用化に取り組むことと、社会のさまざまな構造を読み解き体系的に未来を構想するForesight起点のコンサルティング。この両輪で社会変革を進めて参ります。

4.社会の動きを捉えた変革を推し進め、豊かで調和の取れた社会の実現に貢献していく

私たちはグローバル20万人の多様な人財と、多様な経験・知見を有しています。これらNTTデータグループが持つ人財の総合力を発揮することで、新たな日本を作っていきたいと考えています。「テクノロジー」「規制緩和」「商習慣」という3つの社会変革ドライバー、そして社会の動きを全方位で捉え、未来構想力と先進技術力を組み合わせることで、豊かで調和の取れた社会の実現に貢献していきます。

「システムを作る会社」というイメージを持たれてきたNTTデータグループ。これからは価値提供範囲を大きく拡大し、「企業や社会の変革プロデューサー」としてリードしていきます。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです