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グローバル企業からの転職で目撃した「Global IT Innovator」の実態とは?【沢渡あまね対談/前編】

働き方が多様化する時代。ひとつの企業に定年まで勤める時代は終わり、転職や卒業は当たり前の行為になりました。ところで世の中のIT・Web・テック系企業などで活躍する人びとの中には、実はNTTデータ出身者もチラホラ。彼らはなぜNTTデータに入社し、退職したのか。当時抱えていた不満や、過去と現在のNTTデータの違いとは?今回は第一回目の企画として作家であり、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士として活躍する沢渡あまね氏を招待。日本の旧態依然とした働き方を「仕事ごっこ」として痛烈に切り捨てる沢渡氏はNTTデータをどのように語るのか。人事本部 採用担当 部長との対談をご覧ください。

目次

なぜ外資系企業ではなく、NTTデータを選んだのか

下垣 私は2003年入社なので沢渡さんとは在籍期間が被っているはずなのですが、グループ会社のNTTデータ先端技術に出向していたこともあり、当時は接点がありませんでしたね。

沢渡 先端技術ですか!とても尖ったところにいらっしゃったんですね。

下垣 はい。Web系の著名なエンジニアとも一緒に仕事をしていましたし、NTT OSSセンタの初期メンバーでもあります。PostgreSQLを高速化させる拡張バルクロードユーティリティの開発や、社外に対するプロモーション、テクノロジーカンファレンスの立ち上げなども行ってきた上で、今は人事を担当しているという、NTTデータの中でも異質な経歴です(笑)。
今日はぜひ沢渡さんのお話を伺いたいのですが、まず日産自動車からNTTデータに転職された理由を教えていただけますか?

沢渡 転職した大きな動機は、ITの世界に身を置きたかったからです。私は前職の日産自動車でも、文系卒でありながら一貫してITに関わってきました。当時の日産自動車は、まさにグローバル化を推し進めていた時期で、私はオフショア開発のパートナー選定など、ITの調達を担当していました。
最後の3年間は海外マーケティング部門に在籍しており、現場にITを導入する立場として、ナレッジマネジメントを担当。海外のベストプラクティスを収集したり、日産ブランドを海外のグループ会社や協力会社に浸透させるインターナルコミュニケーション/インターナルブランディングを担当しました。販売情報管理システムやコミュニケーション基盤をベンダーと共同で開発し、海外拠点への導入促進も行っていましたね。

下垣 自動車会社とはいえ、ITに密接に関わってこられたのですね。

沢渡 はい。そうした中で「ITの力はすごい」と、リスペクトする気持ちが高まっていきました。しかし、ITを突き詰めようとすると、どうしても事業会社の中では経験できることに限界があります。そこで、IT企業に飛び込んで、もっと極めていきたいという想いを持つようになりました。数あるIT企業の中でも、日本最大のSIerで仕事ができれば知見が広がると思って、NTTデータに応募しました。

下垣 沢渡さんは日産自動車でグローバルの仕事をされていたのでビジネス英語も話せると思うのですが、なぜ外資ではなくNTTデータだったのですか。おそらく当時、外資の方がうちよりも給料が良かったはずですよね?(笑)

沢渡 外資系も含めて複数のIT企業に応募はしていました。ただし正直、お金はそんなに変わらなかったかな(笑)。決め手は外資系よりも意思決定が早かったことです。「古い会社だから決定まで1、2ヶ月はかかるだろう」と高をくくっていたのですが、いい意味で予想を裏切られました(笑)。

下垣 なるほど。さらに踏み込ませていただくと、日産自動車にも「パネルベンダー」と呼ばれる推奨取引先企業があったはずです。当時はNTTデータも「パネルベンダー」には入り込めていませんでした。それでも、あえてうちを選んだ理由とは?

沢渡 よくご存知ですね!ですが、「あえてNTTデータを選んだ」というわけではありません。
私が日産自動車でナレッジマネジメントに関わっていた頃、NTTデータのメンバーとも交流がありました。ナレッジマネジメントの事例などを勉強させてもらっていたのです。そこで、NTTデータの人たちが優秀であることを肌身で実感していました。
あと、これは裏話ですが、退職の時に取引先にメールを送りますよね。私が日産自動車を退職するときに、挨拶メールを送ったところ、真っ先に返信をくれたトップ3が全員NTTデータの人だったんです(笑)。あれは嬉しかったですね。

下垣 (笑)。みんな、沢渡さんがこれからNTTデータに転職するとは知らなかったわけですよね?

沢渡 もちろん。「実は転職先は御社です。あ、来月からは弊社ですね(笑)」と返信すると、「ええっ!」と驚かれて(笑)。そして、すぐに返信してくれた人が、私の所属部門よりも早く歓迎会も開いてくれました(笑)。そういう意味では、日産自動車の頃から情報発信がしっかりした会社だという印象があって、優秀な人が多いのはもちろん、人としても魅力がある、ホスピタリティの面でも好感度が高い会社だったんです。

志望動機の話は一切ナシ。面接で見えた権限移譲の組織

下垣 もうひとつ伺いたかったのは、面接の時の話です。以前、沢渡さんはTwitterで面接の時の話をツイートされていましたね。「転職理由は一切聞かれなかった」と。どんな面接だったのですか?


沢渡 ツイートのとおりで、志望動機の話などはまったくなく、面接というより、ITの専門家同士が意見をぶつけ合っている感じでした。例えば、「今まで沢渡さんが関わられた中で、、マネジメントがすごいと思ったベンダーはどこでしたか?」など。まさにプロとプロの会話ができたなと。面接が終わって、あんなにすっきりした会社はありませんでした。「この人ともっと話がしたい」と思える清々しさがありました。
さらに、先ほど話したように外資系よりも意思決定が早かったです。面接をパスしたのかどうか、次の面接はいつ頃行われるかを人事担当者にメールで聞いてみたところ「沢渡様には是非当社にご参画いただきたく…」と返ってきて。ええっ?二次面接も最終面接もナシですか? みたいな。「このスピード感は予想外だ…!」と、ギャップ萌えでした(笑)。

下垣 エントリーから採用決定までのスピード感は候補者が気にするところですよね。それでも、沢渡さんのように一発で採用決定というのは、よほど刺さったものがあったんでしょうね。今でも候補者さんに応じて、質問内容であったり選考の流れであったりというのは、柔軟性を持って対応しています。

沢渡 面接一回で意思決定できたのは、私の経験やポテンシャルをしっかり評価してくれたのはもちろん、きちんと社内で権限移譲できている証拠だとも思いました。現場の管理職を信頼していないと権限移譲はできません。なので、権限委譲ができているということ自体にも、チャレンジできそうな会社だという期待感を持ちました。
というか、あとから面接を振り返ると、「一緒に中国の都市をめぐって、ベンダーを開拓したいのですが、この時期海外出張できますか?」など、既に入社前提の話をされていたんですよね(笑)。

下垣 面接で話をしていれば、その人の実力はある程度わかりますからね。確かに私も、一緒に働きたい人財がいれば、相手に質問しながらこちらの良さも伝えたりして、半分口説いているような感じになります(笑)。

沢渡 さすがです。面接でのコミュニケーションは、きちんと密度濃くやった方がいいですよね。

こんなのGlobal IT Innovatorじゃない!?

下垣 実際にNTTデータに入社してからはいかがでしたか?

沢渡 当時の面接官が上司になり、一緒に中国のオフショアベンダー開拓を進めることになりました。入社して最初に覚えた社内手続きが海外出張の申請でしたね(笑)。入社してすぐに中国に駐在して、約1ヶ月かけて、サポートデスクやオペレーションデスクの候補の取引先や土地を選んでいきました。

下垣 何もレールがないところに、自分自身でレールを作っていく仕事ですよね。NTTデータの通常業務とはかけ離れています(笑)。

沢渡 そもそも当時は中途採用の比率も少ない時代でした。だから私が入社した頃も、「宇宙人が来た」といった具合で、アウェー感はすごかったですね(笑)。
入社して最初にびっくりしたことがあって、当時NTTデータの社内では「〜〜部長」といったように、名前に役職名をつけて呼んでいる部署も多かったですよね。前職の日産自動車はグローバル企業だったので、その文化は気持ち悪くて(笑)。周囲に合わせた方がいいのかなとも思ったけれど、やめました。私はあえて空気を読まないぞと。私だけは全員を「さん」づけで呼んでいました。
だって、当時のNTTデータは「Global IT Innovator」と謳っていたんですよ!グローバル企業は、職位で呼んだりしない。だから私は、「Global IT Innovator」のポリシーに則って、あえて「さん」づけで呼びますと。あと、当時は和暦を使っていましたが、私の資料だけは西暦表記にしていました。これもグローバル基準です。

下垣 確かにそれはありましたね……。2013年くらいから、そうした風土は変わってきたと思いますが。私もオープンソースの世界にいたので、「さん」づけの文化に慣れていて、沢渡さんの覚えた違和感は理解できます。

沢渡 大事なことは二つあって、ひとつは会社のビジョンやポリシーに沿って行動であれば否定されないということ。とはいえリテラシーの低い会社だとそうもいかないのですが、NTTデータでは私の考えを説明すればみなさん理解してくれました。
もうひとつは、NTTデータは人の質が高いということ。新しいことをやろうという時に、きちんと思いを伝えればファンになってくれる人もいる。私はNTTデータの社内でいろいろな仕事をしてきましたが、応援してくれる人との出会いは嬉しかったです。

下垣 おっしゃるとおり柔軟な人は多いのかなと思います。NTTデータと聞くと、官公庁や金融系の「堅い」仕事をイメージする人も多いと思いますが、人に関してはそうではない。私も人事に来て、そのことがよくわかるようになりました。

沢渡 グローバルで活躍している人もいますしね。管理職でも若手を登用するようになってきたと聞いていますし、ダイバーシティが浸透してきている印象があります。
これからは再雇用される人も増えてくるでしょうし、そうすると今まで部長だった人が一般社員になるケースもあるでしょう。そんな時、職位で呼ぶ文化だと気まずい(笑)。職位で呼ぶ文化は、変化に弱いということも言えます。

下垣 正直なところ、組織によっては今でも一部でそうした文化は残っていると思いますが、だいぶ変わってきているというのが印象ですね。

沢渡 オープンなコラボレーションが求められる中、古い文化はますますアップデートしていく必要があると思います。

沢渡 職位で呼ぶ文化もそうですが、社内の事務手続きや作法としては、やはりお堅いところはありました。社内処理を進める為のシステムがあって、あれには苦労しましたね(苦笑)。何をどうしたら良いか分からず、いつも画面の前で思考停止していました。でも、私はどちらかというと自由にやらせてもらっていて、事務手続きが得意な人に任せていました(笑)。すごく感謝しています。

下垣 その社内システムは今、大刷新に向けたプロジェクトが動いています。10万人以上が使用する巨大システムなので、グループ内とはいえ、かなりの大型プロジェクトになります。

沢渡 確かに社内やグループ向けであっても、大規模なシステムや、業務も包括したリデザインに携われるのは、いい経験になりますね。

NTTデータも人財輩出企業をめざすべき

下垣 NTTデータの在籍中、沢渡さんがグローバル広報を兼任したのはどういった背景があったのですか?

沢渡 当時、NTTデータがM&Aを進めていて、その中でNTTデータとして海外でのブランドを高める必要がありました。「Global IT Innovator」なるタグラインは掲げつつも、当時はグローバルで広報戦略を考えられる人が広報部にいなくて。そんな時に、当時の上司がたまたま私が日産自動車でグローバルでのブランドマネジメントをやっていたことを知り、声がかかったのです。

下垣 グローバルでは、NTTデータの名前はなかなか通じないですね。それこそ外資のIT系のコンサルティングファームなどの方がブランド力は強いです。グローバルという観点から、今のNTTデータをどう見ていますか?

沢渡 人が優秀、魅力的な人がいることがNTTデータの最大のブランドだと私は思っています。「NTTデータの人と一緒に仕事をしたらイノベーションが起こった」とか、そうしたユーザー体験をつくっていくことが大事です。今日のこの場もそうですが、NTTデータは本当にグローバルカンパニーになってきていると感じます。一昔前だと、私のような人間は会社の裏切り者でした。

ですが、例えばP&Gやリクルートなどのように、その企業の「卒業生」が活躍することで、「在校生」の価値も上がるという図式があります。あの会社はいい人財を生むんだと思われるようになれば、自然と企業のブランドイメージはよくなります。グローバル企業は、そこに気づいているのですね。そうして、卒業生も応援します。これからはグローバル化、ダイバーシティが進む世の中、卒業生も在校生も分け隔てなく一緒に頑張っていくことが大切です。そうすると、お互いに応援し合う美しい関係が生まれます。

下垣 確かにNTTデータの人は、卒業してからも重宝されることが多いと聞きます。SI出身者は、Web系の企業でも重宝されるそうです。NTTデータでもアルムナイネットワークをこの前から始めた所で、これからはNTTデータも人財輩出企業をめざさないといけませんね。

沢渡 おっしゃるとおりです。その点で、NTTデータには二つの魅力があります。ひとつは、大規模システムに携われること。もうひとつは、繰り返しになりますが、優秀な人が多いということ。中にはおかしい人もいますが(笑)。部長になっても自分でSIPサーバを立てるとか、ネットワークの超オタクとか。あとは、ダーツが無茶苦茶上手いとか、山を登りまくっているとか(笑)。仕事だけでなく、いろいろな面で尖った人財が多いですね。私もダム際で仕事したりとか、おかしなことしているから人のこと言えないかな(笑)

それでいて、他人に興味を持ってくれる人が多くて、掛け算として一緒におかしなこともさせてもらえます。仮に「今の仕事が面白くない」という時期があっても、他の部署にいるファンが「このプロジェクトを一緒にやろうよ」と声をかけてくれることもある。モヤモヤをぶつけられる会社です。もう少しスピード感やビジネス感覚を高めて、つまらない業務を減らせると良いなとは思いますけどね。

(後編へ続く)

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※掲載記事の内容は、取材当時のものです