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違いを認める「雑相」のオープンな組織へ。これからの働き方とマネジメントを語ろう【沢渡あまね対談/後編】

NTTデータ卒業生を招き、NTTデータのリアルな姿を赤裸々に暴く本企画。今回も前編に引き続き、作家であり、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏と人事本部 採用担当 部長との対談の様子をお届けします。前編では、かつてNTTデータが「Global IT Innovator」と謳いながら役職名で呼んでいた文化に沢渡氏のツッコミが入りましたが、今回は業務スタイルやマネジメントスタイルについて言及。沢渡氏が描く「オープン型」のマネジメントスタイルを羅針盤にしながら、NTTデータが向かうべき方向性について語り合います。

目次

社員感の発信を促進し、つながりを生むには?

下垣 沢渡さんは、入社後にかなりいろいろな方と繋がって活躍していたイメージがありますが、社内のコミュニティ作りにおいて何か工夫していましたか?

沢渡 入社して最初に配属された、購買部の上司が道筋を作ってくれました。最初に「社内外の知り合いを増やそう。1ヶ月で100人目標ね」と言われまして。「ブラック企業か?!」と一瞬身構えましたが(笑)、上司が一緒にいろいろなところに連れて行ってくれたのです。副社長、社内の関連部門の部長、社外のお取引先の社長やキーパーソンなどと引き合わせてくれましたね。普段はなかなか会えない人と顔合わせをしてくれた。とても嬉しかったです。
自分なりの情報発信も心がけていました。新しい認証基盤システムを立ち上げた時の話を社外のカンファレンスで講演したり、ネットワークソリューション事業部にいた時には、今でいうライトニングトーク(LT)で話をしたりしていました。社内SNSで発信もしていましたね。そこでプロジェクトの学びを共有したり、気づきを発信していると、例えば金融のような日ごろ接点のない部門から、「お客さんが困っているから話をしてほしい」と、自分を見つけて声をかけてくれたり。だんだんと社内で声をかけてくれたり、相談できる人が増えていきました。1万人以上の社員がおり、しかもリテラシーが高いというのは、NTTデータのすばらしい財産ですよ。

下垣 社内コミュニティは近年特に活性化しています。グローバルコミュニケーション基盤の重要性は社員も理解しており、グラフ構造で人と人とをつなぐコミュニケーション基盤も作りました。

沢渡 すごい!私がいた頃より進化していますね。中途で入社すると、「こういうことがしたい」と発信できる機会はなかなかありません。そうなると、やがて「カオナシ」になってしまう。ですが、社内の誰かとは必ず意外な共通点があるはずだし、新しいコミュニケーション基盤によって出会いは間違いなく生まれていくと思います。せっかくリテラシーの高い人たちが多い会社なので、自分を発信して、見つけてもらって、新たな価値を創出してもらいたいですね。

下垣 ですが実際には、発信を躊躇する社員は多いです。後押ししてあげるにはどうしたらいいのでしょうか?

沢渡 「手を変え、品を変え」です。「誰にも負けないことを発信してくれ」というと発信しにくいですが、たとえば「いま発生しているこのインシデントを減らすには、どんな工夫をしたらよいか?あなたの経験から教えてくれ」などといった業務に関連したテーマであれば、自分の経験を見つけやすく言語化しやすくなります。私は業務に即した様々なテーマを設定して、若手のノウハウや気づきを言語化したり、そこから一緒に勉強会や発表会でプレゼンなど発信もしてもらっていました。

下垣 なるほど。この流れでもう一点伺いたいのですが、著書の中で「仕事が振れないマネージャー」について触れられていました。チーム内で気持ちよく仕事を振るコツはありますか?

沢渡 お互いに得意・不得意を把握しているといいと思います。私もNTTデータにいた頃、事務手続きが苦手だと言い続けていると、「それは私がやるから、沢渡さんは新しい仕事を企画することに専念してください」と言ってくれる人がいました。チームの中で仕事を分担する、そのためには得意・不得意を把握しておく、ということです。

下垣 なるほど…。それは私も思うところはあります。先日、チーム全員に「ストレングス・ファインダー」(強みを見つける才能診断ツール)を実施しました。その結果、結果重視、秩序重視など、傾向が全員綺麗に分散していることがわかったんです。強み・弱みを把握しておくことは確かに重要ですね。

先ほどお話にあった中途社員同士のコミュニティ作りは、人事としても何かしらやろうと検討しているところです。ですが、そもそもプロパーと中途を分け隔てない方がいいでしょうか。

沢渡 いえ、中途ならではの悩みもあります。例えばリモートワークなどの制度が、本当に使えるものかどうかは実際に聞いてみないとわからない。新卒だと、他部署の同期に「キミのところはどう?」など様子を聞きやすいですが、中途入社だと気軽に聞く相手がいない。孤立しがちです。その意味では、孤立を防ぐためにも横のつながりはあってもいいと思います。中途同士のつながりでいうと、研修という形で中途社員向けのワークショップやフォローアップ研修を行っているところもありますね。

下垣 ありがとうございます。中途社員に向けた企画は今後やっていこうと思っている所です。中途社員入社式のようなものなど、いろいろなことを仕掛けていきたいと考えています。

沢渡 素晴らしいです。ぜひやってください!

NTTデータの「マネジメント」は変わりつつある

沢渡 私からも下垣さんに聞きたかったことがあるのですが、技術畑でやってこられて今は人事にいらっしゃいますよね。NTTデータの「マネジメント」についてはどう考えていますか?

下垣 NTTデータはプロジェクトの規模が大きくて、職位が上がると技術に触れる時間が減っていきます。正直に言って、これは間違いない。管理のためにやることも多い。ただ、会社の規模を考えると仕方がないとも思っています。私も若い頃は技術をゴリゴリやって、気づいたら、今技術に触れるのは本を書く時だけになっている。自分としても危機感は持っています。ですが、私はエンジニアを束ねる人は、技術を理解している必要があると考えています。いわば「エンジニアリングマネージャー」です。

そうした背景もあり、最近、「テクニカルグレード」という専門性で職位が上がる制度を立ち上げました。技術を持っている人が組織を見ることができる仕組みに、ようやく変わっていきます。

沢渡 下垣さんがマネジメント志向に変わったのは、どのような理由からですか?

下垣 自分のいたチームに世界と戦えるレベルの高いエンジニアが多かったので、自分はマネジメントに徹しようと思えたんです。エンジニアも、上が技術を理解しているかどうかは厳しく見ます。そうでないと信頼関係は生まれない。管理一辺倒の人にエンジニアをマネジメントさせるのは難しいと思います。

海外のエンジニアリングチームは、まさにエンジニアがマネージャーの組織ですよね。NTTデータでは、GAFAと対抗できるように最高水準の給与で処遇する「アドバンスド・プロフェッショナル制度(ADP)」も実際に立ち上がりましたし、尖った人をきちんとマネジメントできる人もいます。

沢渡 これから面白くなりますね。間違いなく。

下垣 課題はたくさんあります。なかなかこれほどの規模の会社で新しい取り組みをしていくのは難しいのですが、私の上にいる人たちも「変わらないと面白くない」と言ってくれます。既に私が入社した頃のNTTデータの姿とは変わってきており、そこは純粋にワクワクしますね。

在籍中のテレワーク経験が、今の活動の基盤に

下垣 多様性という観点は技術だけの話でもなく、昨今はダイバーシティ・マネジメントの重要性が増してきています。NTTデータの働き方の多様性についてはどうお考えですか?

沢渡 私がNTTデータにいた頃は多拠点(東京の複数拠点と中国)をマネジメントしていたため、そもそも働き方を多様にしないと成り立たない、という背景がありました。

私はNTTデータに入社して間もない時期からテレワークを率先して行い、その後もテレワークを活用しながらヘルプデスクの運用や認証基盤の立ち上げなどを進めてきました。今、テレワークがブームになっていますが、私は10年以上前から実践していたわけです。多様な人が活躍するにはどういうテクノロジーを活用すべきなのか、そうした環境を支えるにはどんなシステムやネットワーク、セキュリティが必要なのかと、早くから経験できたのはいい財産になりました。ビジネスチャットも、普通にチーム内で使っていましたよ。

下垣 まさに今、NTTデータではテレワークの基盤を整備している真っ最中です。女性だけでなく、男性でもテレワークを利用するのは自然になってきています。今は会社のスマホで業務用のメールを見られたり、ちょっとした承認もできるようになってきて、昔とはずいぶん違ってきていると思います。

沢渡 私は2014年9月にフリーランスになったのですが、会社の外に出ると、NTTデータで実践していたような多様な働き方は、世の中の当たり前ではないと気づきました。それで、「働き方改善」の経験が自分のコンテンツになりました。私が働き方やマネジメントスタイルの変革を発信することで、世の中のコミュニケーションの景色が明るくなったり、多様性のある働き方が実現できつつあります。

テレワークは単なる非常手段ではなく、それぞれのプロが場所にとらわれず働き、コラボレーション、すなわちつながりあって新しい価値やビジネスを生んでいく。私はそれを「テレワーク2.0」と呼んでいます。その実現のためには、クラウドネイティブな働き方やネットワークを含むインフラ基盤やセキュリティ基盤が欠かせません。

私の今の活動の背景には、NTTデータの多様性のある環境で働いて、当時「それ、遊びでしょ?」とも揶揄されがちだったビジネスチャットなどを駆使しながら(笑)、新しい世界観を体験できたことが大きいんです。

下垣 当時としては相当攻めていますよね。

沢渡 NTTデータにいた私が世の中のワークスタイルや働き方改革に貢献することで、NTTデータの人ってすごいんだ、ひいてはITエンジニアは社会に付加価値を生み出す人なんだと世の人々に思ってもらえたら本望ですね。

仕事ごっこはもう終わり。オープン型組織への変革に期待

下垣 また踏み込んでお聞きしますが、沢渡さんがNTTデータを飛び出そうと思ったきっかけは何だったのですか?

沢渡 私は最後は、ネットワークソリューション事業部でワークスタイル変革やそれを支えるインフラ基盤を企画する仕事をしていたのですが、まだ早すぎたのかなかなか日の目を見なくて。ちょっと停滞感を感じてしまっていたのですね。あと2年やっていれば、絶対に売れたはず…!と思うのですが。働き方改革ブームが到来しましたから。

下垣 早すぎたと。すごい嗅覚ですよね。飛び出して、外から見たNTTデータはどうでしたか?

沢渡 改めて、NTTデータの働く環境のよさを再確認しました。オープンで、相互リスペクトがあり、面白い人財も多くて、今思えば、エンジニアファーストな文化だったなと。当たり前だと思っていたものは、当たり前じゃなかったことを痛感しました。次の会社は製造業でしたが、リモートワークはなく、固定席で昼休みも45分固定。シニア層が幅を利かせていて、社内のプロセスもお堅い。そんな旧態依然の環境や組織文化をよそに、トップは「イノベーションせよ」と叫んでいる。とてもイノベーションが生まれそうになかったですね。自分は働き盛りのこの時期に、ここで悶々としていていいのか?不安になりました。だから自分は外に出て、エバンジェリスト活動に身を投じようと思いました。

下垣 なるほど。今の沢渡さんから見て、NTTデータがもう一段成長するために必要なことは何だと思いますか?

沢渡 意思決定やコミュニケーションのプロセスをもっと迅速にすること。最近、フリーランスとの取引もOKになったようですが(他の大手SIerではいまだにフリーランスとの取引NGのところも)、今の時代は、答えを持っている人が社内にいるとは限らない時代です。外も含めて、答えを持った人といかに素早くつながり、価値を出すかが求められます。そんな中で、社内の意思決定プロセスに時間がかかるとか、大容量のファイルを送るのにクラウドストレージが使えないとか、そういうところは変えていくべきです。逆に、これだけ多くの人がいる組織でありながら、問題意識を持って変えているのはすごいとも思います。

下垣 実際、私たちもいろいろな制度を変えているところです。

沢渡 そこで、ある図を紹介したいと思います。今までの日本は旧来の製造業や自動車会社に最適化されたピラミッド型で、組織の中に答えがあった時代です。社長や企画部門が答えを持っていて、そこからトップダウンで指示が降りてきた。それさえ守っていれば勝てた。でも今、それが崩壊しつつある。わかりやすいのが、あのトヨタも他社であるソフトバンクと組んでいる。つまり、単独では勝てない。内製では叶わない。他の領域のプロとコラボレーションしないことには、Mobility as a Service(MaaS)のようなイノベーションが起こせない時代になりつつあるということです。
GAFAなどもそうですね。どんどんオープンにして、社内も社外も関係なく、どんどんつながっていって、掛け合わせで新たな価値を生み出す。そうなると、マネジメントのスタイルも変わります。従来のピラミッド型はいわば性悪説ベースのマネジメントスタイルです。たとえば、テレワーク。「見ていないところで部下がサボるかもしれない」と疑ってしまう。そして、ガチガチに「報連相(報告・連絡・相談)」させようとする。

テレワークをうまく使いこなしている組織は、性善説ベースのマネジメントをしています。あなたのやりやすい環境で仕事をしてください。あなたを信頼します。任せます、と。

オープン型の組織では、「報連相」よりも「雑相(ザッソウ)」を重視します。「雑相(ザッソウ)」とは、ソニックガーデン社長の倉貫義人さんの発想で、雑談と相談、あるいは雑な相談を意味します。「まだアイディアベースなのですが、聞いてもらっていいですか?」など、100点ではなく20点や30点のレベルで雑に相談する。「雑相」しやすいコミュニケーションスタイルは、対面やメールではしにくい。、むしろ、ビジネスチャットのような、お互いの都合の良いタイミングで気軽に声を掛け合えるツールが有効です。

コラボレーションやコミュニケーションを邪魔する「仕事ごっこ」はどんどんなくして、違いを認め合うオープン型に転じていく。それがNTTデータに対する期待です。それができる技術力と人間力のある会社ですから。

下垣 今でこそずいぶんオープンにコミュニケーションできるようになってきていますが、やはりまだ横並びの風土はありますね。特に「互いを認め合う/生かす」という風土は個人的にも重要だと感じます。個々の強みが結集して全体の強みになっているわけですから。文化を変えるには時間がかかりますし、「アドバンスド・プロフェッショナル制度」のように専門性を認める制度も実現できたことですし、これから変わっていくと思います。

沢渡 期待しています。個人レベルでできるのは、自分の専門性や強みを発信することですね。私も日産自動車で発信を続けていて、後半はグローバルプロジェクトに関わるようになりました。LTなどの場でも発信を続けるべきだと思います。NTTデータは発信を受け入れてくれる人が多い会社ですから。

今後、NTTデータがますますオープン型に移行して、私も一緒にコラボレーションできることを楽しみにしています!

『仕事ごっこ ~その“あたりまえ”,いまどき必要ですか?』(技術評論社)

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『マネージャーの問題地図 ~「で、どこから変える?」あれもこれもで、てんやわんやな現場のマネジメント』(技術評論社)

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『Hadoop徹底入門』(翔泳社)

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