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経営交代後の組織運営とプラットフォームとしてのZOZOTOWNの未来像【ZOZO澤田宏太郎 対談/後編】

NTTデータの卒業生をお招きし、人事本部 人事統括部 部長の森田が聞き手としてお話を伺う本企画。前編に引き続き、株式会社ZOZO代表取締役兼CEOである澤田宏太郎氏との対談をお届けします。前編では澤田氏のキャリアの原点や人財育成についてお話を伺いしましたが、今回の後編では、前社長の前澤友作氏が退任した後の組織運営の変化や、事業の今後の展望といった貴重なお話を伺いました。

目次

代表交代と「ファッションで生きていく」という決意表明

森田
澤田さんは2019年9月に前社長の前澤さんの後任として代表の座を受け継ぎました。当時、「トップダウン経営から社員一人ひとりの力を生かした組織経営に変化していかなければならない」といったメッセージを発信されていました。それから組織文化や運営において大きな変化を求められたと思いますが、現時点で振り返ると、どのような期間だったのでしょうか。

ZOZO澤田
私が前澤の代わりになることはできませんし、そんなことは誰も望んでいません。まずは、会社の拠りどころになる言葉を据えることにしました。幹部陣で何度もディスカッションして生まれたのが、経営戦略として掲げている「MORE FASHION×FASHION TECH」という言葉です。要は「自分たちはファッションで生きていくんだ」ということを改めて表明したわけです。

森田
前澤さんというカリスマ的な存在の代わりに、「MORE FASHION」と「FASHION TECH」という言葉を社員の共通目標として中心に置いたわけですね。

ZOZO澤田
はい。ただ理由はそれだけではありません。ファッション業界はもともと課題も多い業界です。自分たちの事業は社会や業界のためになっているのだろうかと不安感を抱えている社員もいました。さらに、会社が大きくなって様々な専門性を持つ社員が増えてきた中、自分たちが大切にするものを改めて言葉にする必要がありました。

森田
組織の中心に言葉を置いたのは、社員の目線を合わせ、多様性のある人財をまとめ上げる意味合いもあったのですね。

ZOZO澤田
そうですね。それともうひとつ、ZOZOのマインドセットをあらわす“ZOZOらしさ”として、「ソウゾウのナナメウエ」という言葉も掲げました。

以前から社内では「これはZOZOっぽい」「これはZOZOらしくない」といった会話がよくなされていました。この「ZOZOらしさ」なるものを明文化すれば、働く上での大きな拠りどころになります。「ZOZOらしさ」は、いろいろな要素の複合体ではありますが、一番重要なものを定義した言葉が「ソウゾウのナナメウエ」です。

もともとZOZOTOWNは、インターネット上のファッション街をコンセプトに、想像(SOZO)と創造(SOZO)の二つの「ZO」をかけあわせた街として誕生しているので、私たちにとっては違和感のない言葉です。

また、斜に構えるといいますか、真っ直ぐ行くより、少しナナメに考えようというZOZOのカルチャーも表現できている、いい言葉だと思います。

森田
本当にZOZOさんらしい言葉ですね。ですが、ミッションや理念を掲げるのと、実際に社員に浸透させていくのは、また別の難しさがあると思います。その点はいかがでしたか。

ZOZO澤田
実は、コロナ禍における働き方の変化によって浸透が進みました。リモート会議に変わることで私がコミュニケーションする相手が劇的に増えたんです。

今までの経営会議では、参加者はせいぜい幹部が10名くらい。それ以上人数が増えても、発言せずにその場にいるだけの人がいると気になってしまいます。ですが、リモート会議なら喋らずに聞いているだけの人がいても気になりません。会議を聞いているだけの社員も徐々に増えてきました。そして、その社員たちが私の考えを現場に持ち帰ってくれることで、より広く浸透していきます。

森田
リモートでのコミュニケーションが後押しになったのですね。コロナ禍での社内コミュニケーションは、ほかにどのような取り組みを行ったのですか。

ZOZO澤田
同じくミッションの浸透を目的として、2020年11月から社内ラジオを始めました。番組名は「DJさわだのナナメウエラジオ!!」。毎週水曜、お昼の1時から1時30分まで放送している、社員しか聞けないラジオ番組です。「昼飯でも食べながら気軽に聞いてよ」という意図で始めました。

基本的に雑談がメインなのですが、会社にとって重要なことを時折散りばめるようにしました。これもコロナ禍だからできたことですね。リモート会議と社内ラジオで、社内の情報がすごくフラットになりました。

森田
私がZOZOさんの社内コミュニケーションで素晴らしいと思うのが、双方向であることです。社内では本音が飛び交うオープンな議論がなされていると伺いました。

ZOZO澤田
オープンさは当社にとって昔から続く社風ですからね。その点はこれからも変わらないと思います。

テクノロジーでファッションの「正解」を見つけられるか

森田
「ソウゾウのナナメウエ」という言葉がありましたが、ZOZOさんはZOZOSUITなどのように、まさしくナナメウエの挑戦を続けている会社ですね。

ZOZOテクノロジーズという技術開発の会社があり、「FASHION TECH」という言葉も掲げているように、テクノロジーには注力されていると思いますが、ファッションビジネスの未来像をどのように描いているのですか。

ZOZO澤田
ファッションビジネスにおける究極は、「カッコイイ・カワイイ」の正解を見つける旅だと思っています。ファッションは曖昧なもので、だからこそパーソナライズにやりがいがあります。

例えば、ZOZOには「WEAR」というコーディネートアプリがあり、私たちは膨大なコーディネート画像のデータを持っています。そのコーディネート画像をスタイリストに見てもらった結果を教師データとして、自動解析に生かそうとしたこともあります。

森田
良質かつ膨大なデータを自社で持っていることは、データ活用技術が進むなかでとても有利な状況だと思います。

ZOZO澤田
そうですね。しかし、まだ満足できる結果には結びついていません。ファッションの難しいところで、ある人が「いいね」と言っていたコーディネートが、翌日には「イケてない」になってしまうこともあります。ファッションというのは、それくらいセンシティブなものなんですね。

逆に言えば、それだけ堀り下げていく余地があるということでもあります。日によって判断が違うというのは、その人の気分や体調、天気など、すべてを複合した上で最適なコーディネートをレコメンドできるのが、私たちが目指す究極の姿です。

森田
テクノロジーでファッションの世界が変わりそうですね。ZOZOさんの数々の新しい取り組みの土壌には、社員が積極的にアイデアを発信できる風土があると思うのですが、どのように現場からアイデアを引き出しているのでしょうか。

ZOZO澤田
もはやDNAに埋め込まれていると言ってもいいレベルで、ZOZOには新しいことに挑戦する文化があります。「洋服がネットで売れるわけがない」と言われていた時代からビジネスを始めて、ここまで成長させてきたという成功体験があるわけです。「ありえない」と言われたことを、ひっくり返してきた。その自信が組織の根幹にあります。だからこそZOZOには「新しいことに取り組んでみよう」という文化が息づいています。

森田
なるほど。それはさすがに一朝一夕では真似ができないですね。現場のみなさんのアイデアはどのように吸い上げているのですか。

ZOZO澤田
明確なルールを定めているわけではありませんが、私たち経営陣は、どんな話でもいったんは聞いてみようというスタンスでいます。情報はオープンにしているので、ここから先は社員に考えてほしい、ということがわかりやすくなっています。

また、ZOZOには「デザイン部」という発想をミッションにした専門部署があり、ZOZOTOWNのUIから社内イベントまで、幅広い仕事を行っています。

2週間に1度、目的のない会議も実施しているのですが、本当にのんべんだらりとした会議です(笑)。でも、そこから生まれてくるも実はたくさんあります。トップとして社員たちのアイデアを大切にしようと意識しています。

データをオープン化し、アパレルECをソリューションに昇華する

森田
コロナ禍によりファッション業界やECのあり方は大きく変わったかと思います。今後のアパレルECの可能性はどのように見ていらっしゃいますか。

ZOZO澤田
ネットで商品を売るというECの基本に関しては、既に汎用的な手法や技術があります。つまり標準化が可能です。

今後、アパレルECが小売を脱却して目指すべき方向はソリューション化だと考えています。私たちで言うとZOZOSUITやZOZOMAT、肌の色を計測するZOZOGLASSが実例です。取得したデータを活用してパーソナライズし、全力であなたをカッコよく、可愛くしますよ、ということですね。

森田
NTTデータも様々なお客様のデータ活用を支援しているのですが、例えば「個人情報を個人が管理した上で複数企業で共有する情報銀行という仕組み」など、データの新しい流通方法で大きなイノベーションを起こすことにも取り組んでいます。その点、ZOZOさんはいろいろなパートナー企業とオープンにデータ活用の道を模索しており、データビジネスの未来にいち早く取り組んでいる印象を持っています。

ZOZO澤田
そうですね。発想の転換点はZOZOSUITでした。

初代のZOZOSUITは、ビジネスとしては、いまひとつ上手く行きませんでした。ですが体型をミリ単位で計測する技術には自信があったので、アパレルだけで使うのはもったいないと、他社の話を聞いてみたんです。

ZOZOSUITをダイエット目的で使う人もいたように、ファッションの世界でしか生きていない自分たちには出てこない発想もあります。ファッション以外の可能性も広がっている中、自分たちだけですべてを実行できるという自信は到底なかったので、それならばオープンにしてしまおう、と。

プラットフォームとして展開した方が、経営的にも可能性があると考え、「ZOZOSUIT 2」という次なる事業が生まれました。

森田
その意味では、初代のZOZOSUITは新しいチャレンジの土壌になっていたわけですね。小売からの脱却という点では、より上流にある製造にも進出していくとのことですが、もう少し詳しく教えてください。

ZOZO澤田
製造は絶対にやらなければいけないテーマだと考えています。ZOZOのプライベートブランドは過去に立ち上げて既にクローズしたのですが、その際に工場の整備やパートナー企業の開拓ができました。

今、考えているのは再びプライベートブランドを始めるという話ではなく、製造についてもプラットフォームをめざすということです。データを活用したパーソナライズと、製造から小売までの流れをつなげることが今後のファッションECでは重要になります。

森田
ZOZOSUITにしても、製造のお話についても、当時は失敗のように思われていた過去の経験が今に活かされているのが興味深いですね。

ZOZO澤田
ビジネスにおいて失敗なんてよくあることです。ZOZOではボツになった企画や、失敗した企画もたくさんあります。例えば、ZOZOTOWNで、カテゴリー別にタブを切り替える機能を導入した時ことがあったのですが、スマホが普及する前だったこともあり、誰も「タブをクリックする」という行動を取ってくれませんでした。大々的に始めたのですが、半年ほどで元に戻すことを決めました。

森田
ダラダラと継続せずに、合理性がないと判断すればすぐに撤退を決断できるのもひとつの強みですね。

ZOZO澤田
たしかに、失敗を恥じない文化もZOZOの強みだと思います。失敗はたくさんしてきていますから、ZOZOにおいてチャレンジの心理的ハードルは相当低いと思います。私も「よくあることじゃん」と言っています。

森田
失敗を恐れず多くのチャレンジを続けているからこそ、社員も新しいことに挑戦できるのでしょうね。

株式会社ZOZO 代表取締役社長 兼 CEO澤田宏太郎氏のインタビューを通して、組織・人財に対してどのような思想を持って事業を推進してきたか、また、人財育成やミッションを浸透させるための社内コミュニケーション施策など、貴重なお話をお伺いできたと思います。
ファッション業界をはじめ、様々な業界でITの力を活用したDXの取り組みが昨今、急速に進んでいます。未来の社会全体をデザインする役割も担っている当社として、時代の流れを見据えた上で、何を目指していくべきか、改めて考えることができたと思います。

本日はどうもありがとうございました。

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※掲載記事の内容は、取材当時のものです