2021.3.25特集

モビリティ・コマースサービスが変える未来の生活 ~パーソナライズされた「移動」とは~

FUTURE STORY:未来の移動体験

朝の支度をしていたら、人工知能を搭載したクルマに話しかけられた。
「最近、仕事時間が増えていて、リラックスができていないようです。健康データも下がっていますので、リフレッシュをしてはいかがでしょうか」
ぼくはコーヒーを飲みながら、時計型のウェアラブルデバイスの数字を確認する。
「確かに熟睡できていないみたいだ。どうしたらいいと思う?」
「温泉地でゆっくり過ごされてはいかがでしょうか」
「いいね、それ。いろいろ候補を調べておいて」
「わかりました」
自宅のすべてのデバイスは“彼”とつながっている。ぼくは毎朝このクルマに乗りながら、仕事の準備をしている。

2030年の東京では、レベル5の自動運転車が公道を走るようになった。街の信号は減り、渋滞はなくなり、街はかつてよりシンプルだ。多くの人が移動に使う彼は「クルマ」といってもステアリングはついていない。車内にはソファとモニターがあり、クルマというよりは移動するパーソナルスペースと言ったほうが正しいかもしれない。
「あと15分で赤坂に到着します」
「了解。いい温泉地はあった?」
「温泉の成分的には、有馬あたりがいいかもしれません。観光施設を調べておきます。健康状態からすると、塩分は控えめの食事を探しておきましょう」
「ありがとう。旅行、考えておくよ」
ぼくは彼が提案してくれる旅のプランを聞きながら、今日も時間ぴったりにオフィスに到着する。

未来のクルマ体験

1980年代に米国で放送されたドラマシリーズ『ナイトライダー』。『ナイトライダー』は私立探偵機関の調査員、マイケル・ナイト(デビッド・ハッセルホフ)が、人間の言葉を話し特殊装備を搭載した人工知能K.I.T.Tを搭載したドリーム・カー『ナイト2000』とともに、さまざまな事件を解決するドラマだ。『ナイト2000』はマイケルの「相棒」で、たまに気の利いたジョークもたしなむ。

テクノロジーの進化は、私たちの「移動」の概念を変える。先に挙げたストーリーのように、やがて自動運転レベル5が実現すると、自動車にはステアリングも必要なくなり、自動車自体のデザイン、さらに概念すら変化するだろう。そして公共機関の交通網をはじめとした街の様相も劇的に変わるかもしれない。思わぬところに繁華街が誕生し、不動産の価値をも変えるだろう。

倫理や規制など法的な問題も抱えるが、私たちの技術は、いま『ナイト2000』を生み出す一歩手前まで来ている。

かつての自動車には「所有」する楽しみがあり、自らステアリングを握って運転するというのが基本的な移動体験だった。しかし、その「体験」は、今後、自動運転化が進めば変化をする。すでにインターネット接続をして車内で音楽や動画を楽しむサービスが提供されているが、今後はさらにそのサービスが拡大していく。

IoTやAIなどの技術を駆使した安全・安心で快適なスマートホーム、基礎インフラと生活インフラ・サービスを先端技術を用いて効率的に管理・運営するスマートシティなど、テクノロジーの進化によって、私たちの生活の質はますます向上していく。そんななか、特にモビリティ分野で、より便利な暮らしをもたらすため、業界の垣根を越えて、移動シーンとさまざまなサービスをつなぐ役割を目指しているのがNTTデータだ。

乗客の好みがわかるパーソナライズされた移動

NTTデータは株式会社unerryと、2020年4月に資本業務提携を締結した。移動と目的地でのサービス利用に関わる社会課題を解決し、新たな移動体験を得られる社会の実現を目的としている。

この提携では、コロナ禍での移動を支援するアプリ「おでかけ混雑マップ」のリリースとともに、個人ごとの興味・関心に合った快適な移動を実現する「モビリティ・コマースサービス」を目指す。

好きな食べ物、好きなアパレルブランドなど、個人の趣味嗜好のデータが、「移動」と結びつく。例えば、これまでも予約サイトからレストランを検索し予約はできてはいるが、そこから「移動」をするときは、また別の検索をかけて、移動手段を探して自分で出向く必要があった。しかしあらかじめ「移動」と結びついていれば、個人の好きな食べ物と、それを提供する店を、物理的にもつなげることが可能となるのだ。

NTTデータと提携するunerryは、1,200万台(月間でのアクティブ台数)ものスマートフォンの位置情報、移動状況を把握している。特徴はGPSだけでなく、全国の商業施設などに設置される約210万個のビーコン反応から得られるより詳細な移動を理解できることだ。こうした人流ビッグデータなどから、消費者の好みを理解し、提携する様々なアプリケーションを介して個人に合わせたレコメンドを通知したり、コンテンツを提供したりすることができる。NTTデータは、個々人の移動理解をベースにしたデジタルエージェントを作りこみ、それを介した目的地情報の事前提供や、サービスの予約、購入などを可能にしようとしているのだ。

このように自動車などで移動する消費者と、飲食店や商業施設・観光地などの目的地サービス事業者とをつなぎ、各業界のサービスを一体で提供するのが、「モビリティ・コマースサービス」だ。

「楽しい移動」というディスカバリー

今後、モビリティ・コマースサービスのマーケットは拡大していくはずだ。自動車メーカー、カーシェア業者などはもちろん、さまざまなサービス事業者に対して、モビリティ業界参入という、マーケット拡大の可能性を感じてもらうこともNTTデータの役割のひとつだ。

小売業、外食業、観光業など、コンテンツを提供するサービス事業者は、クルマをひとつのメディアとして捉え、既存サービスと組み合わせて提供することで、サービス価値がさらに向上する。

例えば、モビリティ・コマースサービスは観光コンテンツとも相性がいい。旅を楽しみたい人にとって、情報サイト、レンタカーなどの移動手段、観光スポット、買い物など、それぞれのサービスが断絶してしまっている問題点があるなか、旅行先での行動をリコメンドし、観光地のチケットを予約し購入までスムーズに行える。

エンターテインメント分野でも、UXを作り込むことで移動中に楽しめるゲーム、エンターテインメントのコンテンツは需要が高いだろう。これらマーケットの可能性を探り、カーシェア事業社や鉄道などの移動サービス提供社と、サービス事業者をつなぐことで、消費者は「楽しい移動」を体験することができる。さらにビッグデータに基づきパーソナライズされたレコメンドが与えられることで、人々は新しい気づきも得ることができるだろう。

最適化とセレンディピティ

あらゆるサービスをつなぐモビリティ・コマースサービスによって、あらゆるものが使いやすくなり、生活の質が上げるだろう。やがてモビリティの枠を超えて、生活すべてをつなぐインフラとなっていくはずだ。

しかし一方で、効率化、最適化だけでは得られないものもある。例えば旅に出る楽しみは、偶然の出会い「セレンディピティ」を味わうところにもある。

すべてを完璧に決められると、人間は“気持ち悪さ”を感じてしまうかもしれない。それを避けるような“気の利いた”サービスを提供するためには、アルゴリズム自体を人間のタイプに合わせて柔軟に使い分けていくことを目指さねばならない。

効率化を極めたものよりもアナログを好む人もいる。AIとの会話を楽しみたい人もいれば、それを嫌がる人もいる。つまりあえて効率化要素以外のものを作り込む必要も出てくる。誰もが快適にサービスを受けるために、パーソナライズの在り方は今後、さらに考えていかなければならない。

リビングから目的地までの移動をどう過ごすのか。私たちの社会インフラを変えるモビリティ・コマースサービスは、今後、劇的な進化を遂げるはずだ。

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