最近、店舗や学校、各種施設などでコミュニケーションロボットを目にする機会が増えました。これに伴い多くの企業が、コミュニケーションロボットを活用したビジネスの可能性に高い期待を寄せています。
しかし、現状のロボティクス技術と期待値の間にはギャップが存在することも事実です。このギャップを解消すべく、NTTデータは高度な知的処理を行うクラウド基盤の開発を進めています。
【 近未来の展望と可能性 】人型ロボットで「ノー・インターフェース」時代が始まる
コミュニケーションロボットが普及するにつれ、ロボティクス技術に対する期待の声が多く聞かれるようになりました。例えば、以下のような具合です。
「ロボットは最新のAI(人工知能)により、どんな会話もできるはずだ」
「AIによって自動で賢くなっていくはずだ」
「導入すればすぐにビジネス効果が出るのでは」──。
しかし、複数の高度な要素技術を組み合わせた現状のロボティクス技術は、いまだに発展途上の段階にあります。
確かに、ディープラーニングにより、画像・音声認識など急速に発展を遂げた要素技術もあります。ただ一方で、自然言語処理や意図解釈、感情・ボディーランゲージといった非言語コミュニケーション、さらには、知識・記憶に基づく処理などの技術は発展の道半ばというのが現実です。
とはいえ、多種多様なロボットの登場によって、シーンに応じた使い分けや組み合わせができるようにもなっています。それらがさらに拡張し、ネットワークを介してさまざまなデバイスやサービスとつながり、連携し合う世界がすぐそこまで来ています。
こうしたロボティクス関連技術が切り開く未来の一つが、「ノー・インターフェース」です。人と自然なかたちで対話し、感情を分析して意図を理解し、センシングに基づいて人の行動を先読みして“あうんの呼吸”でコミュニケーションを取る──。そんな人型ロボットが、コンピュータと人との対話に画面を介在させない、ノー・インターフェースの世界を切り開いていくことになります。
【 NTTデータの取り組み 】
このようなロボティクス技術の発展を目指し、NTTデータがいま取り組んでいるのが、クラウドロボティクス基盤(図1)の確立です。
図1:クラウドロボティクス基盤の概念
これは、利用者や環境の状況を正しく認識し、複数のロボットやデバイスを統合して高度な知的処理を行うクラウド基盤です。ロボットもデバイスもそれぞれ単体では処理能力に限界があるため、高度な機能をクラウドに集約することによって、付加価値の高いサービスを創出します。
クラウドロボティクス基盤を構成する技術の一つである、NTT研究所が開発した「R-env:連舞®」を紹介します(図2)。
図2:「R-env:連舞®」の概念
この技術は、人を支援し、人と協創するAI技術「corevo™」のうちの一つであり、クラウド上のアプリケーションから複数のロボットやデバイスを連携させる基盤であり、「気づき・気遣い」を行いながら人とのインタラクションを成立させることを目指しています。簡易なUIによってロボットを始めとするデバイスの連携や高度な技術を容易に扱えるため、トライ&エラーが必要な新しいサービスの検証・創出に最適であり、ロボティクスのオープンイノベーションを加速させることができます。
【 ユーザー事例 】実証実験を通じた先端サービス創出
銀行窓口においては、クラウドロボティクス基盤と「Sota」を用いた対話の実証実験を行いました。センサーで顧客の来店を自動で検知し、「Sota」によって、金融商品や支店、キャラクターに関する対話を実現しながら、行員の顧客対応支援を行っています。
結婚相談カウンターにおいては、より深い接客シーンを設定し、結婚を考えているカップルが、ロボット3体との対話によってどのような心理の変化、行動の変化を見せるかという、マーケティングツールとしての有効性の検証を行いました。
また、デバイスの連携による魅力的なサービスの創出を目指し、テレビ放送波と各種デバイスをタイムリーに連動させた新たな視聴体験の実現の検証も行っています。
パートナー企業がビジネストライアルを行いやすい実証実験向け共通基盤を提供し、観光案内や介護、小売など多種多様な先端サービスの創出に活用できるプラットフォームとしての可能性も示してきました。
このように、NTTデータのクラウドロボティクス基盤を用いることで、企業はサービスやコンテンツ開発に専念し、より実用的なサービスを実装できるようになっています。
今後はクラウドロボティクス基盤上でユーザー企業様、デバイス/ロボット企業様、テクノロジーパートナー様、開発パートナー様と連携してさまざまな業界で数多くの実用的なサービスを創出していくことを目指しています。
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