NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
実証実験の概要 ~D-Planner®でiCADsのポテンシャルを見える化~
「iCADs(アイキャズ)」とは「in Contents Ads」の略で、動画内に広告情報を付与するAVOD(広告情報付き無料動画配信)の新しい形であり、動画本編に看板などの広告情報や商品情報を付与するプロダクトプレイスメントのひとつです。
通常のAVODはコンテンツの前後や途中にインストリーム広告が入る構造となっていますが、iCADsを導入することで動画本編内に広告を挿入することができるため、インストリーム広告の代替になれば、ユーザーにとっては動画本編を途切れることなく視聴できるメリットが得られます。
iCADs挿入前後の画像。動画本編内に広告挿入することで、コンテンツを途切れることなく視聴できるように。
このように、画期的なiCADsですが、「iCADsがどの程度ブランドリフトに貢献するか?」などの広告効果についてはこれまでアンケート調査以外に科学的に測定する手段がなく、広告出稿するスポンサーにとってはiCADsに広告出稿して良いかどうか、客観的事実に基づいた判断ができないという課題がありました。
そこで今回の実証実験では、脳科学×AIを用いたNTTデータのマーケティングソリューション「NeuroAI®/D-Planner®(以下、D-Planner®)」(※)を用いることでiCADsのポテンシャルを科学的に示せるかを検証しました。科学的な検証に成功すれば、スポンサーにとってはiCADsを利用した広告出稿の大きな判断材料となり、デジタルプロダクトプレイスメントという新しい広告サービスの市場開拓が期待できます。
※D-Planner®…「脳科学×AI」で人の感性を定量的に予測できるNTTデータのマーケティングソリューション
https://nttdata-neuroai.com/d-planner/
今回は、iCADsを活用したフジテレビさまのオリジナルドラマ「片想いの彼のために捜査してたら、いつのまにか名探偵になりました。(仮)」を対象に、D-Planner®を活用して下記3つの観点からユーザーの感性(反応予測)を解析することで、iCADsの広告効果について検証しました。
① iCADs対象シーンのブランドリフト効果比較
iCADsで広告を挿入したシーンを対象に、挿入前後のアテンション(ユーザーが画像のどの領域に注目しているか)予測や行動意向(購買意向など)予測などを比較することで、ブランドリフト効果について検証
② ドラマ全体を通したブランドリフト効果比較
iCADsで広告を挿入したシーンのみならず、ドラマ全体を通したブランドリフト効果について検証
③ iCADs対象商材に係る広告効果検証
iCADsで広告を挿入する対象商材が持ち合わせている広告効果(ポテンシャル)検証
広告効果検証結果の発表
アドテック東京2022で行われたフジテレビ冨士川さんとNTTデータ小川さんのトークセッションでは、前述の検証結果発表に加え、検証結果を踏まえた今後の展望についても熱い議論が交わされました。今回はその一部をお届けします!
写真左:冨士川さん、写真右:小川さん
冨士川 祐輔
株式会社フジテレビジョン 編成制作局 編成ビジネスセンター ビジネスセンター事業部 局次長職 DX担当
小川 貴之
株式会社NTTデータ スマートライフシステム事業部 課長代理
小川さん:今回の実証実験ではD-Planner®を用いて、iCADsが人の感性にどのような影響を与えるかを解析しました。
はじめに、解析観点①「iCADs対象シーンのブランドリフト効果比較」の結果です。これは、iCADs対象商材にアテンションが当たっているシーン・当たっていないシーンがはっきりと分かりましたね。
D-Planner®によるアテンション予測例。本シーンはプロダクトプレイスメント部分にアテンションが当たっていることが分かる。
D-Planner®による行動意向予測およびGAP予測例。本シーンはiCADs後の方が行動意向が高まり、高級感が想起されていることが分かる。
冨士川さん:この解析結果は制作サイドにとっては非常に貴重な情報です。iCADs対象商材にアテンションが正しく当たっているか制作段階から判ることで、無駄なiCADs制作コストが抑制されるメリットが得られます。
小川さん:つぎに、解析観点②「ドラマ全体を通したブランドリフト効果比較」の検証結果です。オリジナルドラマ全体を通しては、iCADs前後で人の感性に大きな変化を与えたとは言えない結果となりました。
冨士川さん:こちらは意外でした。結果をポジティブに捉えると、オリジナルドラマに対する没入感を損なわないようなプロダクトプレイスメントができたと考えており、ある意味成功だったと思います。次回以降の検証では「プレイスメントとアテンションの相関性」などを探りたいです。これが把握できれば、ドラマへの没入感を阻害しない最適なプレイスメントが実現できるのではと期待します。
小川さん:どういうプレイスメント商材を出せば良いか?に関しては、解析観点③「iCADs対象商材に係る広告効果検証」からの気付きとして、iCADs対象商材が持ち合わせている広告効果(ポテンシャル)を踏まえて、表出対象商材を選定頂いた方がブランドリフトへ貢献されやすいと考えます。
冨士川さん:実は今回、インストリーム広告に至るまでのシーン各所に、インストリーム広告と同じ商材をiCADsにて配置し、インストリーム広告のブランドリフトに繋げようと画策していました。インストリーム広告に何か影響は与えられていましたか?
小川さん:正直なところ、今回の実証実験ではインストリーム広告に対する影響は認められませんでした。次回以降の検証課題になるかと思いますが、D-Planner®を使ってドラマ本編の行動意向予測を解析することで、「最適なインストリーム広告挿入タイミング」についても取り組んでみたいですね。
冨士川さん:忌憚のない意見ありがとうございます。D-Planner®によるiCADs対象シーンのブランドリフト効果検証の結果、リフトアップに繋がっているシーンもあれば、ダウンしてしまっているシーンもありました。一方、これまでにもアンケート調査などを実施してきましたが、総じて良好な回答結果となっていました。アンケート調査の場合はインセンティブ(アンケート調査謝礼など)の影響か、調査結果が良い方に振れるポジティブバイアスを感じることがあったのは確かです。
小川さん:その点、D-Planner®は脳科学の情報に基づいているため、客観的に効果を可視化してくれるだけでなく、アンケート調査よりも何倍も早く結果提供できる点が強みです。ある意味”ドライすぎる”結果を出してしまうこともありますが(笑)。
冨士川さん:忖度のない”ドライすぎる”結果というのは大変貴重で魅力的と感じています。これからも商用展開含めてお付き合いさせていただければと思います。
トークセッションの様子。
今後の展望 ~プロダクトプレイスメントの未来に思いを馳せて~
今回の実証実験を経て、D-Planner®を活用することでiCADsの広告効果を検証することが出来ました。プロダクトプレイスメントは今後成長が期待できる市場です。NTTデータはこれからもD-Planner®を用いたフジテレビさまとの協業を通じて、プロダクトプレイスメント市場の活性化に取り組んでいきたいと考えています。また、プロダクトプレイスメントに留まらず、「広告効果の価値最大化」という観点でこれからもさまざまな企業さまとコラボレーションしていきたいと考えています。
【製品・サービスに関するお問い合わせ先】
株式会社NTTデータ
ITサービス・ペイメント事業本部
スマートライフシステム事業部
メディア統括部
小川 貴之
E-mail:Takayuki.Ogawa@nttdata.com
道向 潤
E-mail:Jun.Michimuko@nttdata.com