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2023年9月15日技術ブログ

これからの内製化の話をしよう~難しさと解決のヒント~

これまで数多くの企業がシステム開発の内製化や市民開発(以降、内製化に統一)に取り組むものの、さまざまな苦労に直面している。そんななか、IT人材不足や開発アジリティの高さなどから、ローコードプラットフォーム製品(以降、LCAP製品に統一(※1))が内製化の手段として有望視されている。
今回は、DX推進における重要なアプローチである内製化について、その難しさや解決のポイントを解説するとともに、代表的なLCAP製品の一つであるPower Platformの特長を紹介する。
(※1)

LCP製品ということもある

目次

内製化の難しさ~どんな内製化をめざしますか?~

内製化の最大のメリットは「ビジネスアジリティの向上」にあるでしょう。これは以下2点によるものです。

  • 自社メンバーが直接開発を行うことで、アプリケーションに現場ニーズを色濃く反映できる
  • 開発名目でのキャッシュアウトが少ないため、より小さな裁量でより素早く実現できる

さらに副次的な効果として「ノウハウが社内に蓄積する」なども挙げられます。内製化に取り組む企業ではこうしたメリットを享受するために活動されているのではないでしょうか。
実際に内製化の取り組みを始める、もしくは始めようとした段階で直面する難しさを3点紹介します。

1.内製化の主体は誰か

内製化の目的のひとつとして「自社にシステム開発力を獲得・保有すること」を挙げる方も多いのではないでしょうか。しかし“誰が開発力を獲得・保有する状態をめざすのか”については各社ごとに解が異なります。
大きくは「事業部門やスタッフ部門社員が独力でシステム開発できる状態をめざす」もしくは「情報システム部門がITベンダーへの丸投げからの脱却をめざす」の2通りです。そのいずれかによって獲得すべきスキルの種類や優先度、ガバナンスの考え方が異なるため、主体を定義しておくことが重要です。

2.なぜ内製化に取り組むのか

内製化に限らず、新しい活動を始める際のアプローチとして他社事例を参考にする方は多いと思います。しかしながら上記主体に限らず、内製化に取り組む背景や目的も、各社さまざまです。新制度や生活様式の変化対応など比較的短期的な課題達成から、中長期的な変革をもくろむ場合など多岐にわたります。そのため、ひとくちに“内製化”といっても自社の事情や取り組みに対してどの程度参考になるのか、注意が必要です。他社事例はあくまで参考に留め、自分たちがめざす方向や目的をしっかりと検討する必要があります。

3.リスキリングをどう進めるか

リスキリングの難しさはよく言われるモチベーションや業務調整などの課題の他に「どの順番で」「どの領域のスキルを」学ぶか、も難しいポイントです。
「システム開発」という単語からは「要件定義や設計、コーディングを通してシステムを開発する」というイメージが直感的に想起されるかと思います。しかし実際はこれらの活動はシステム開発の一要素に過ぎません。またシステムライフサイクル全体で考えると、システム開発もまたその一部に過ぎず、ITスキルとしては他にも多岐にわたるスキルが必要です。以下に一例を挙げます。

  • 業務の可視化や分析/最適化
  • テスト戦略の策定やテスト手法の選定および実行
  • リリース管理や構成管理など、継続的な開発を円滑に回す仕組みづくり
  • ウォーターフォールもしくはアジャイルどちらの開発手法を参考にするか、の検討や実際の開発プロセスの策定
  • プロジェクトおよびプロダクトマネジメント
  • 主に運用フェーズにおける監視やバックアップ、ユーザーサポート

ここで挙げたスキルは「一定規模以上のアプリケーションが」「一定水準を満たすよう」「継続的に」開発するためのものであり、開発対象によってこれらすべてが必ず必要になるわけではありません。極端な例ですが、個人や数人で使うだけの便利ツールであれば動けばよいため、設計は後回しで、バグにもあまり神経質になる必要はない、という場合もあるのです。
またリスキリング対象者の前提知識もまちまちな点にも注意が必要です。開発経験が全くない場合「アプリケーションとは?」「システムライフサイクルとは?」「アルゴリズムとは?」など基礎的な部分から学習を始めなければ、開発言語や製品仕様などは理解できても開発を実践できるスキルはなかなか身につきません。

内製化に取り組む際のポイント~フェーズに合わせた取り組み方針~

本章では、前章で紹介した難しさに対して、内製化の導入期・成長期・安定期それぞれで有効なアプローチを紹介します。
ここで紹介するポイントを始めから全て網羅するのは容易ではありません。限られたリソースで効率的に活動を前に進めるために、フェーズを見極めて取り組むべきポイントを絞ることが重要です。

NTT DATAが提供するアプリケーション開発・管理サービスはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/adm/

図1:内製化の取り組みフェーズにおける壁

図1:内製化の取り組みフェーズにおける壁

1.導入期のポイント

導入期における一番のポイントは、「取り組み継続の価値が認められること」です。そのためには以下2点に注力することが有効です。

  • 目的および対象組織を明確にする
    内製化の主体は事業部門やスタッフ部門なのか、情報システム部門なのか。また誰が活動にコミットするのかを明確にし、社内調整や予算確保をすることが重要です。通常業務の傍ら内製化に取り組む、となると活動の成否が個人の資質やモチベーションに大きく依存してしまい、業務としてマネジメントすることが非常に困難になります。
    また対象組織と併せて「短期および中長期的な目標」の整理も重要です。短期的な目標は「簡単なアプリを1つ開発して使ってみて、その成果を振り返る」など分かりやすいものが効果的です。中長期的な目標としては「内製化すべき領域を選定し内製化で賄う算段を整える」などビジネス視点や全社IT方針を踏まえた、測定可能で具体的な目標であることが重要になります。
  • スモールスタートでクイックウィンを狙う。
    定量的に活動の価値を示すために最も効果的なのは、やはり具体的な成果でしょう。しかし、社内で誰もが重要性を認める業務を対象にするのは避けるべきです。業務の複雑さや関係者の多さ、思惑の多様性に戸惑ってしまう可能性が高いためです。特に導入期では、具体的な成果を出すために、「今いるメンバーが」「既に保有している、もしくは多少の学習で獲得可能なスキルセットと」「自分たちの裁量で」変革可能な業務を対象にするのがよいでしょう。毎月実施している事務処理の一部を自動化、などから始めてみてはいかがでしょうか。

2.成長期のポイント

導入期にて一定の効果が示せたなら、次はさらなる効果創出に向けた取り組み拡大を考えます。そこでは「戦略の見直し」「相談できる場所」「人材像定義とキーマン選出」が重要になります。

  • 戦略の見直し、全社IT方針とのアライン
    他組織を巻き込み、取り組みを拡大していくためには、導入期に策定した戦略を見直すことが重要です。導入期を振り返りより精度の高い目標を再定義するとともに、全社IT方針を勘案することで、内製化に取り組む組織を広げる、もしくは複数組織で協調する際の摩擦を減らすことができます。
  • サポートデスクなど「困ったときに相談できる場所」を構築
    別組織や別業務でも同じように成果を挙げるためには、導入期の活動を振り返り、形式知化しておくことが重要です。またその際、ノウハウを静的なコンテンツとして整理するだけでなく、相談窓口など人とセットで保有するなどKnow-Who情報として管理することで、より後進部隊が取り組むハードルを下げることができます。
  • 人材像定義とキーマンの選出
    戦略を見直し、相談先を用意しても、それだけで自動的に活動が広がることはまれです。着実に取り組みを拡大していくためには人的な要素が無視できません。なかでもこの段階では、内製化を推進する人材像の定義とそれを体現するキーマンの選出が重要です。理想的な人材像として、上記「リスキリングをどう進めるか」にて例示したITスキルを有することに加えて業務における造詣が深いこと、組織をまたがる業務改善を推進できることが望ましいです。特定の個人を選出することが難しい場合は、これらを満たす小規模チームを立ち上げることも考えられます。
    また人材育成にあたって、優先すべきITスキル検討の際には、これまで検討してきた内製化の目的や定義、戦略に照らし合わせることが重要です。
    プロジェクトマネジメントや開発手法、品質管理など一部のITスキルは、質・量ともに一定の開発経験がなければ身につかないものも多くあります。これらは研修などでの獲得が難しいため、NTT DATAのようなITサービス事業者の知見を特に有効に活用いただける部分です。

3.安定期のポイント

内製化の取り組みが一定組織に普及した「安定期」に重要となのは、ガバナンスと改善・効率化です。アプリケーションが一定数を超えたあたりから、野良アプリ(※2)問題や、セキュリティインシデントが発生しやすくなります。そのため、内製化におけるガイドラインや規約を策定し周知徹底するなど、ガバナンス向上の営みが必要になります。
一方で、ガバナンス=守りの施策だけではせっかく盛り上がったムーブメントが風化しかねないため、攻めの施策も重要です。たとえば、複数のアプリケーションで利用する公算が大きい処理を共通部品化して個々のアプリケーション開発を効率化する、などの施策が考えられます。

(※2)

情報システム部門が管理出来ていない、ITガバナンスやセキュリティ対策の考慮がかけたアプリケーションのこと

Power Platformの特長と内製化におけるメリット~Microsoft365徹底活用でスモール&クイックウィン!~

「高いアジリティを確保できる」「IT人材の確保」などの点からLCAPは内製化の手段として注目されています。

LCAPの概要はこちら:https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2022/1018/

LCAP製品は多様なベンダーが提供しており、今回紹介するMicrosoft製「Power Platform」もその一つです。Power Platformは、一般的なLCAP製品としての特長に加え、以下3点の特長を持っているため、特に非IT人材を中心とした内製化に取り組む方におすすめです。

  • Microsoft365ライセンスで一部機能が利用可能
    Microsoft365 E3/E5ライセンスを導入済みの企業であれば、Power Platformの一部機能を使うことが可能です。個人や担当内で扱う小規模なアプリであれば、追加費用無しで開発可能なため、スモールスタートに向いています。まずはExcel帳票の転記作業の自動化や、メール受信をトリガーにTeamsへの自動通知、など身の回りの定型業務の自動化から始めて効果を実感することができます。
  • ExcelやSharePoint、OutlookなどMicrosoft365製品との連携が容易
    Power Platform ではMicrosoft365製品やSAPなど外部サービスと連携する仕組み(コネクター)が400種類以上用意されています。コネクターを利用しさまざまなサービスと連携することで、さらなる業務改善やオペレーションの高度化が可能となります。また近年注目されている生成AI機能を含むサービス、「Azure OpenAI Service」などと組み合わせることも可能です。
  • Azureと組み合わせた拡張が容易
    Power Platformのスタンドアロンライセンス(有償)を購入すると、Azureのサービスやオンプレミスシステムとの連携用コネクターが利用可能となります。特に、大量データや複雑な計算を要する業務アプリを開発する場合、LCAP製品の標準機能のみでの実現は困難です。そこで必要になるのが、Azure Functionsなどのプロコードとの組み合わせで、Power Platformであればコネクターによる連携が可能なのです。
    ただし、市民開発者がプロコード製品を扱うことは難しいため、適切にプロ開発者と協業することをおすすめします。このように市民開発者とプロ開発者が1つのチームとなって開発することをフュージョン開発(※3)と呼びます。フュージョン開発により高難易度なシステムであっても、高アジリティを保ちながらガバナンスも確保でき、ビジネス価値の高いシステムを実現することができます。
(※3)Power Platformでのフュージョン開発

https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-platform/developer/fusion-development

NTT DATAのPower Platform内製化支援サービス

内製化を推進する際には、導入~安定期それぞれに重点的に取り組むポイントが異なります。NTT DATAが提供する「Power Platform内製化支援サービス」では、戦略の策定やガバナンスなど推進組織の支援から、導入期における座学研修や技術サポートなど市民開発者の支援まで幅広いサービスを提供しています。
内製化を全社レベルで推進していくためには、人材育成やガバナンスなどさまざまな機能が必要となり、推進側は組織横断的にユーザーを支援することが重要です。その際のベストプラクティスとしてCoE(Center of Excellence)(※4)という考え方があり、Microsoft社も公式サイトで推奨しています。NTT DATAのPower Platform内製化支援サービスはCoEの考え方をベースに、組織の成熟度や、内製化の取り組み状況に合わせたサービスを提供しています。お気軽にお問い合せください。

図2:Power Platform内製化支援サービス

図2:Power Platform内製化支援サービス

(※4)

プロジェクトや施策推進のため、企画立案・プロセス策定・ノウハウの整理を行い、組織横断的に活動する役割を持つ組織を指す

NTT DATAの「Power Platform内製化支援サービス」を含むアプリケーション開発・管理サービスはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/adm/

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