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2026.7.13業界トレンド/展望

新時代のサプライチェーン・マネジメント

人、組織、意思決定を進化させるSCM変革の道筋

地政学リスクや人手不足、自然災害など、サプライチェーンを取り巻く環境は大きく変化している。そうした中で、企業には時代に即したサプライチェーン・マネジメント(以下、SCM)変革がこれまで以上に求められている。NTTデータグループでは、構想策定から運用定着まで一気通貫で支援するだけでなく、多様な製造業の企業を招いたラウンドテーブルを開催し、企業の垣根を超えたSCM全体の進化を後押ししている。今回は、旭化成、オムロンヘルスケア、キリンビール、コニカミノルタ、サントリーホールディングス、セイコーエプソン、ネクスティエレクトロニクス、三菱マテリアル、ライオン、良品計画、レゾナックを招いて開催したラウンドテーブルでの議論を踏まえ、SCMの理想的なあり方について、NTTデータ コンサルティング事業本部 サプライチェーンユニット コンサルティンググループ部長・大居由博が語る。
目次

ラウンドテーブルから生まれるSCM変革への道筋

地政学リスクや人手不足、自然災害など、サプライチェーンを取り巻く環境は急速に変化しています。各企業にとって、時流を見据えたSCM変革は喫緊の課題です。さらに現在は、「人が考え、技術が支える」段階から、「人と技術が協働し、ともに価値を創出する」段階へと移行しています。その中でSCMには、組織設計や意思決定のあり方、人材育成、最新技術の導入など、従来の延長線上では捉えきれないテーマが数多く顕在化してきました。

NTTデータグループでは、各企業のニーズに寄り添いながら、構想策定からツール導入、運用定着まで一気通貫で支援しています。また、SCM全体の進化に貢献するため、多様な取り組みも進めています。その一つが、2023年度からスタートした「SCMラウンドテーブル」(NTTデータ・フォーティエンスコンサルティング共催)です。

このラウンドテーブルでは、業界を代表する先進企業を招き、グループディスカッションや識者による講演を実施しています。業界や企業文化の違いを超えて、SCMに携わるリーダー同士が率直に課題や本音を共有し合うことで、SCM変革の解像度を高めることを目的としています。加えて、参加企業同士のコミュニティ形成も進み、継続的なコミュニケーションを通じてSCMに関する集合知が高度化している点も特徴です。

第三回目となったSCMラウンドテーブル。約4時間、SCMにおける課題共有や有効な打開策について議論が交わされた。

2026年3月には、三回目となるSCMラウンドテーブルを開催しました。当日は「新時代におけるSCM組織・人材のあり方」をテーマに、製造業11社が参加。早稲田大学ビジネススクール教授・長谷川博和氏のファシリテーションのもと、実務と理論の双方から活発な議論が行われました。
その中で浮かび上がってきたのが、「経営とSCMの距離感」「SCM人材の定義と育成」「AI活用における意思決定のあり方」という3つの重要な論点です。いずれも多くの企業に共通するテーマであり、SCM変革を進める上で避けて通れない課題です。

経営とSCMをつなぐ「経営価値の可視化」と「言語化」

まず大きな論点となったのが、経営とSCMの距離感です。多くの企業では、SCMの現場で高度な意思決定が日々行われている一方で、その活動が売上や利益にどのように寄与しているのかが、経営層に十分伝わっていないケースがあります。

その際に重要になるのが、「経営価値の可視化」と「言語化」です。例えば、経営指標を頂点としたKPIツリーを構築し、現場施策との関係性を整理することで、SCMの各施策が経営目標や企業パーパスとどうつながっているのかを体系的に示すことができます。SCM業務が企業価値向上にどう貢献しているのかを可視化することは、SCMの存在価値を社内に浸透させる上でも非常に重要です。
実際にラウンドテーブルでは、「利益を生むSCM」というコンセプトを掲げ、SCMの役割をコスト削減だけでなく価値を創出する機能として再定義している企業の事例も共有されました。こうした役割の再定義と社内への地道な浸透活動が、SCMを単なる効率化機能ではなく、企業価値を創出する機能へと進化させるための1つの鍵となります。

SCM人材の再定義と育成の方向性

二つ目の論点となったのは、「SCM人材の定義と育成」です。多くの企業でSCMに求められる役割が広がる一方で、どのようなスキルや経験を持つ人材を育てるべきかを明確に定義しきれていないケースがあります。
これからのSCM人材に重要なのは、個別機能の専門性だけでなく、事業、機能、地域、さらには社外のパートナーを横断して物事を捉える力です。SCMは、需要、供給、在庫、物流、生産、調達といった領域を一気通貫で見渡す機能であり、企業活動全体を俯瞰できる数少ない領域だからです。

実際にラウンドテーブルでも、SCM人材には「好奇心」が重要であり、自分の担当業務に閉じるのではなく、その先にある製品や顧客に関心を持てる人ほど活躍している、という意見がありました。また、事業、機能、地域をまたぐローテーションを通じて、SCMに必要な視野を広げていくことの重要性も議論されました。

こうした人材を計画的に育てるためには、まずSCMに必要なスキルや経験を体系化し、一人ひとりの強みや今後補うべき経験を可視化することが重要です。加えて、SCM領域に閉じないキャリア形成を進めることで、SCMを単なるオペレーション管理ではなく、企業価値を生み出す経営機能として捉えられる人材を育てていくことができます。

AI活用と意思決定の再設計

三つ目の論点となったのは、「AI活用における意思決定のあり方」です。
SCM領域でも、需要予測、在庫最適化、リスク検知、調達判断、物流計画など、AIを活用できる領域は広がっています。一方で、AIを導入すれば自動的に意思決定の質が高まるわけではありません。

AI活用において重要なのは、どこまでをAIに任せるかだけではなく、人間側がどのような判断軸を持つかです。AIが選択肢を提示したとしても、その前提となる優先順位や判断基準が曖昧であれば、経営層や現場は結果を納得して受け入れることができません。

実際にラウンドテーブルでも、AIによって意思決定がブラックボックス化することへの懸念が示されました。また、AIに会社としての優先順位や判断軸をどう反映するのか、AIを使うSCM人材の教育が重要である、という意見もありました。
この議論から見えてくるのは、AI活用の本質が、人の判断を不要にすることではないという点です。高頻度・大量に発生する判断や計算処理はAIが担い、人は出来事の意味づけ、ステークホルダーとの合意形成、長期的な方向性の選択に集中する。つまり、AIの役割は人を置き換えることではなく、人の能力を拡張することにあります。AI活用とは、単なる業務効率化ではなく、SCMにおける意思決定のあり方そのものを再設計する取り組みだと言えるでしょう。

SCMは企業価値を生み出す経営機能へ

今回のラウンドテーブルを通じて改めて感じたのは、SCMがもはや単なる効率化やコスト削減のための機能ではないということです。

地政学リスク、自然災害、人手不足、原材料調達の不安定化、顧客ニーズの多様化など、企業を取り巻く環境はますます複雑になっています。こうした時代において、SCMには、決められた計画を正確に実行するだけでなく、変化を捉え、関係者をつなぎ、企業価値を生み出し続ける役割が求められています。

そのために必要なのは、経営とSCMをつなぐ可視化と言語化、組織の内外を横断するSCM人材の育成、そしてAIを前提とした意思決定プロセスの再設計です。これらは個別のテーマではなく、相互に深くつながっています。
これからのSCMは、需要、供給、在庫、物流、生産、調達を一気通貫で管理するだけの存在ではありません。事業、機能、地域、社外パートナーをつなぎ、変化する環境の中で企業価値を生み出し続ける経営機能です。

NTTデータグループは今後も、ラウンドテーブルのような共創の場を通じて、各社が持つ知見や課題意識をつなぎながら、SCM変革を構想策定から実行、運用定着まで一気通貫で支援していきます。

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

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