NTT DATA

DATA INSIGHT

NTT DATAの「知見」と「先見」を社会へ届けるメディア

カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
2026.7.24業界トレンド/展望

先端技術と社会をつなぐ「テクノロジーガバナンス」

生成AI技術の登場を契機とした社会変革に代表されるように、新技術は社会に便益を与えると同時に新たなリスクを生み出す。新技術を事業に取り込みたい一方で、既存の統制ではリスクを十分に管理できないと感じる企業も多いのではないだろうか。NTT DATAでは東北大学との共同研究部門を設立し、テクノロジーガバナンスについての研究を開始した。
本稿では共同研究の中間成果であるホワイトペーパーをもとに、Agentic AI、Physical AI、ニューロテクノロジーを題材としたリスクの整理や、技術の社会受容性の考え方、企業が先端技術を安心して活用するために確認すべきテクノロジーガバナンスの観点を解説する。
目次

はじめに

先端テクノロジーは企業活動や社会構造に大きな変化をもたらします。近年では、大規模言語モデル(LLM)を用いたAIの普及により、業務プロセスの自動化、意思決定の高度化、顧客体験の再設計が進んでいます。
一方で、新しい技術が生む課題は、既存技術と同じ枠組みで適切に扱えるとは限りません。例えば、生成AIでは誤情報や透明性、Agentic AIでは自律的な外部操作、Physical AIでは身体・財産への直接的影響、ニューロテクノロジーでは認知活動情報の不適切な利用など、技術特性ごとにリスクの構造が異なります。
こうした技術が加速的に進展する中、個別技術ごとに後追いで対応するだけでは、リスク管理と便益活用の両立は困難です。
そのため、技術の特性に基づき、あらかじめ統治の枠組みを設計することが重要になります。

NTT DATAでは、新しいテクノロジーがもたらすリスクと便益を社会的・制度的に適切に管理し、技術を安心して活用するための仕組みとして、AIガバナンスを先行領域としてテクノロジーガバナンスの構築を進めています。
また、2025年12月には東北大学未踏スケールデータアナリティクスセンターと連携し、東北大学内に共同研究部門を設立しました。同部門では、現在着目されている新たな技術領域の課題・対策、社会受容性、ガバナンスの在り方について検討しています。
このたび、現時点での成果をまとめたホワイトペーパー「テクノロジーの質的進化に対応する組織的統制の在り方」を発行しました。
以降、その概要について紹介します。

テクノロジーの発展とリスクの拡大

Agentic AI

Agentic AIとは、ユーザーから与えられた高レベルの目標に対し、自ら計画を立て、外部ツール等を利用し、結果を評価しながら行動を修正していくAIを指します。
従来のAIが主に人間の入力に応じて回答や生成物を返していたのに対し、Agentic AIは目標達成に向けた一連の行動を自律的に進める点に特徴があります。

AIの自律性は業務効率化や意思決定支援に大きな可能性をもたらす一方、リスクも複雑化させます。
Agentic AIには、その実行能力により引き起こされる従来のITリスクに加え、LLM固有のリスクと自律性によって引き起こされるリスクがあります。
例えば、外部APIの不正呼び出し、ユーザー指示の誤解、相互作用による予期せぬ挙動などが想定されます。
また、LLM固有のリスクであるプロンプトインジェクションの可能性も外部ツール実行と結びつくことで拡大し得ます。
そのため、従来型のセキュリティ対策に加え、AIの行動範囲、人間の介入点、モニタリングと制御の設計が必要です。

図1:Agentic AIの基本的な振る舞い

Physical AI

Physical AIは、物理環境と相互作用しながら自律的に判断・動作するAIです。
自律走行ロボット、自動運転車、人型ロボットなどが代表例であり、人間向けに設計された道具や設備を活用しながら、従来のロボットより広い範囲で動作できる可能性があります。

一方で、Physical AIも従来のルールベースのソフトウェアで制御されるロボットと比べてリスクの発生可能性が高まるほか、異なるリスクが存在します。
自律性や多様な環境で動作する特徴により、Physical AIの判断の誤りは直接人の生命・身体・財産、環境などに悪影響を及ぼす可能性があるため、Physical AIを想定した安全分析や安全設計が必要になります。
さらに、高度な自律性をもったロボットは雇用・社会への影響や、悪用・犯罪のリスクも高めます。また、事故が発生した場合に、AIベンダー、機器メーカー、利用企業、運用者など、どの主体が責任を負うのかという問題も生じます。
そのため、Physical AIを想定した国際的なルール作りや、社会での合意形成が必要となります。

図2:Physical AIの基本的な振る舞い

ニューロテクノロジー

脳波や脳血流を測定し、人間の脳活動や認知活動を分析する技術、あるいは、人間の脳に外部から電磁波などで干渉する技術がニューロテクノロジーです。
従来から脳活動の計測などは行われてきましたが、AIの発展により、より高度に人間の認知活動を分析できる可能性が出てきました。
医療・福祉などでの活用にとどまらず、広告やエンターテイメントでの活用などが期待されています。

一方で、認知活動情報が本人の望まない形で利用されるおそれがあります。
人間の認知を意図しない形で分析・利用する行為は、内心の自由やプライバシーなど人権に関わる問題につながります。
そのため、データ管理、情報の取り扱い、認知活動情報の利用範囲に関するルール整備が重要です。

図3:ニューロテクノロジーの例

テクノロジーが社会に受け入れられるために

ここまで3つの新しい技術の特徴とそのリスクを紹介してきましたが、リスクを過大に捉えると、新しい技術の活用に対する過剰な忌避感を生み出してしまいます。
生成AIを例にすると、「AIを使って生成した」という事実を開示するか否かだけでなく、誰が、どのように、なぜ生成したのかをどう説明するかが、社会受容性に影響を及ぼします。
社会受容性を高めるには、情報開示の設計が重要です。

ホワイトペーパーでは生成AIの活用に関する情報開示の設計について以下の4つの原則をまとめています。

  • 第一の原則「帰属の明確化」:AIの関与を明確にする
  • 第二の原則「人間関与の可視化」:人間が担った工程や判断・創意を示す
  • 第三の原則「文脈整合の確認」:利用分野や感情的・象徴的価値に応じて説明を調整する
  • 第四の原則「ガードレールの明示」:高リスク領域では、利用範囲や制限事項、監督体制を示す

図4:社会受容性の構成要素

テクノロジーガバナンスの企業実装

テクノロジーの進歩は企業活動を高度化させる一方、既存の統制や制度設計では十分に対応できないリスクを生みます。従来の統制をそのまま適用するだけでは、技術活用を必要以上に制限してしまう可能性もあります。
そこで企業全体で横断的に技術を統治するテクノロジーガバナンスが求められます。

ホワイトペーパーでは企業実装を三段階で整理しています。

  • 第一段階「ガバナンス要否の判断」:リスクの不確実性・大きさ、既存のリスクマネジメントの有効性、社会実装のスピード等を踏まえ、新たな技術領域に対するガバナンスの必要性を判断する。
  • 第二段階「守りのガバナンス」:新たな技術領域の特性に応じたリスクマネジメントを実装する。
  • 第三段階「攻めのガバナンス」:リスクマネジメントから得た知見を、顧客への訴求、ルールメイキング、事業環境づくりに活用する。

図5:テクノロジーガバナンスのフレームワーク

このような三段階でテクノロジーガバナンスを企業内に実装することが、次世代テクノロジーの時代における企業の持続可能性と競争力獲得につながると考えます。

まとめ

新しい技術領域は、企業活動の可能性を広げる一方、従来の統制では対応しきれない新しいリスクを伴います。
テクノロジーガバナンスは、技術活用の加速と社会的信頼の確保を両立させ、企業の持続的成長と競争力を支えるために、リスクを制御可能な状態に置くことで企業が安心して挑戦できる環境を構築するためのものです。
本稿は、今回発行したホワイトペーパーの全体像を要約したものです。
テクノロジーガバナンスに興味を持たれましたら、ぜひホワイトペーパーをご一読ください。

ホワイトペーパー「テクノロジーの質的進化に対応する組織的統制の在り方」についてはこちら:
https://udac.tohoku.ac.jp/news/info/893/

テクノロジーガバナンス共同研究部門設立についてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/120101/

あわせて読みたい:

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

お問い合わせ

お問い合わせ

記事の内容に関するご依頼やご相談は、
こちらからお問い合わせください。

お問い合わせ