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1.データスペースは「構想」から「社会実装」へ
AI活用が広がる中、企業の競争力を左右する要素として、データの重要性がこれまで以上に高まっています。とりわけ重要になるのが、自社だけでは得られないデータを組織や業界を超えて活用することです。その鍵の一つが「データスペース」です。
データスペースとは、各主体がデータの管理権を保持したまま、必要な相手と必要な範囲で、安全にデータを連携・活用する仕組みです。
では、日本のデータスペースは今、どこまで来ているのでしょうか。
この問いを起点に、NTTデータグループおよびNTTデータは2026年7月24日、「Data Spaces in Action 2026」を開催しました。本イベントでは官民学の最前線を担う方々を招き、データスペースの「構想から社会実装へ」、さらにその先にある「業界横断」をテーマに議論しました。
イベントを通じ、日本のデータスペースは「なぜ必要か」を議論する段階から、「どの社会課題を、どのようにつないで解決するか」を具体化する段階へ移ったことが見えてきました。
2.官民学共創で描く新たな社会基盤
-データスペースはAI活用を見据えた新たな社会の仕組み-
イベントの冒頭でNTTデータ代表取締役社長の鈴木正範は、複数のデータスペースを業界や分野横断でつなぎ、社会全体の価値を高める「社会データプラットフォーム構想」を示しました。
この構想がめざすのは、個々の企業・業界に閉じたデータ活用にとどまらず、官民・業界横断で必要なデータを安全につなぎ、社会プロセスコストの削減と、生活者起点の安心・安全で便利な社会の実現を両立することです。
図1:社会データプラットフォーム構想
その実現に向けた重要な構成要素となるのが、各領域で社会実装が進み始めているデータスペースです。
AIの進展により、データをつなぐ意味も変わりつつあります。経済産業省 大臣官房審議官(商務情報政策局担当)の奥家敏和氏からは、AI政策とデータ政策を一体で進める重要性が示されました。企業内のデータの活用が進む中、文書や画像など形式が統一されていない非構造化データをAIで利用しやすい状態にする「AI-Ready化」や、特定のプラットフォームに依存せずデータを分散管理・連携する仕組みが求められます。
東京大学大学院 情報学環 教授の越塚登氏は、その先の姿を「AI-Connected(接続知能)」と表現しました。AIが現場や組織固有のデータやリアルタイムデータとつながり、さらにAI同士でもつながる世界では、知能とデータを安全につなぐ仕組みが不可欠です。
第一部のパネルディスカッションには、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の守谷学氏も加わり、データスペースを実証から社会実装へ進め、さらに広げていくために必要な取り組みを議論しました。守谷氏からは、個別実証を重ねるだけでなく、接続方法やデータ形式、トラスト(相手やデータの信頼性を担保する仕組み)、運用などを共通化することで、それぞれの取り組みを横展開し、より広い社会実装につなげていく方向性が示されました。
こうした発表や議論を通じて、データスペースが将来構想にとどまらず、AI活用も見据えた社会基盤として実装され、広がる段階に入っていることが明らかになりました。
図2:第一部 パネルディスカッション(右から、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長 守谷学氏、東京大学大学院 情報学環 教授 越塚登氏、NTTデータ代表取締役社長 鈴木正範)
3.日本の社会実装は「出口」から始まっている
-実装フェーズに入った日本版データスペース-
では、日本のデータスペースはどのように社会実装され始めているのでしょうか。イベントの第二部では、三つの具体的な取り組みを紹介しました。
一般社団法人 自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(ABtC)代表理事の藤原輝嘉氏からは、カーボンフットプリント情報の収集やサプライチェーン強靱化など、個社では解決できない課題に対し、業界で協調領域を定めて企業間データ連携を実装する取り組みが紹介されました。
CMPコンソーシアム 代表幹事の古田清人氏からは、製品含有化学物質の情報伝達を起点に、規制対応から資源循環、海外展開へと、データ連携による価値を段階的に広げるロードマップが示されました。
生活基盤プラットフォーム 代表取締役社長の林敬恭氏からは、引越しワンストップサービス「ペンリィ」を通じた取り組みが紹介されました。この取り組みでは、金融機関や自治体、生活インフラ事業者をつなぎ、引越しに伴う煩雑な手続きをスマートに完結できるオンライン・プラットフォームを実現しています。
三つの取り組みに共通するのは、「データをつなぐこと」自体を出発点にしていないことです。社会・業界課題の解決という明確な「出口」から必要なデータと参加者を特定し、協調領域や運営主体を定めて実装する。この「出口起点」のアプローチに、日本のデータスペース社会実装の特徴が表れています。
4.次のステージは「業界横断」
-一つの業界では解けない社会課題に挑む-
個別領域で実装が始まった今、次のテーマは「業界横断」です。一つの企業や業界だけでは解けない社会課題に対し、異なる分野のデータをつなぐことで新たな解決の可能性が生まれます。
第三部では、日立製作所 インフラ制御システム事業部 シニアストラテジストの入江直彦氏、金融データ活用推進協会(FDUA)代表理事の岡田拓郎氏、神奈川県CIO(情報統括責任者)兼CDO(データ統括責任者)の江口清貴氏、モデレーターのNTTデータ常務執行役員 柳町暁が、製造、金融、防災の視点から、業界を超えたデータ連携について議論しました。
入江氏からは、製造業のデータスペースを社会インフラや公共領域へ広げる可能性が、岡田氏からは、金融が培ってきた本人性や法人実在性などの「信頼」を他産業の価値創出につなげる可能性が示されました。
江口氏は、コロナ禍や能登半島地震での経験を踏まえ、組織ごとにデータが分断される「サイロ化」と、人手による処理の限界を指摘しました。そのうえで、防災データスペースを、データを守りながら知恵や答えを共有する「次世代のデジタル公共財」と位置付け、官民を横断したデータ連携が不可欠であると語りました。
業界横断の意味を具体的に示したのが、会場で実施した防災データスペースのデモです。地震発生時を想定し、避難所の需要や企業の在庫、物流、道路、気象などのデータとAIをつなぐことで、これまでFAXや電話による個別調整に頼っていた対応を、必要物資の探索から配送手段・ルートの検討、現場の意思決定まで一連で支援できる姿を紹介しました。一つの組織だけでは解決が難しい社会課題に対し、業界を超えてデータをつなぎ、より迅速かつ的確な対応を可能にする具体像を示したものです。
個別業界の最適化から業界横断へ。そして、社会全体の最適化へ。個々のデータスペースをつなぎ、社会課題の解決へと広げていくことが、データスペースの次のステージです。
その先にNTT DATAが描くのが「社会データプラットフォーム構想」です。
図3:業界横断のデータ連携とは
図4:防災データスペースデモ
5.AI前提時代のデータスペースへの期待
-「データを持つ」から「どうつなぐか」へ-
今回のイベントが示したのは、データスペースは単なるIT基盤ではなく、社会課題の解決に向けて企業や行政などが協調するための仕組みだということです。
構想から社会実装へ、そして個別業界から業界横断へ。その先にNTT DATAがめざすのは、複数のデータスペースが官民・業界横断でつながり、社会全体の価値を高める「社会データプラットフォーム構想」の実現です。
AI前提時代には、自社が「どれだけデータを持っているか」だけではなく、誰と、どの目的で、何を、どのようにつなぐのかが、より重要になります。
データスペースが社会実装フェーズに入った今、個社・個別業界のデータ活用から一歩進み、「データをどうつなぎ、社会全体としてどのような価値を生み出すか」を考えることが、企業や行政にとって重要なテーマです。


データスペース 取り組みの紹介についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/dataspace/
X-Curiaの紹介についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/x-curia/
D-Resilioの紹介についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/d-resilio/
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