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2026.2.5技術トレンド/展望

データスペース社会実装への挑戦 -東京大学とNTT DATAの研究・実証・教育活動

データスペースは、国や業界、組織を越えた多様な相手と信頼性を担保しながらデータを連携し、利活用できる仕組みだ。近年、データスペースの構築に向けた議論や技術開発が世界中で進んでいる。本稿では、データスペースの発展・社会実装に向けた東京大学 大学院情報学環 越塚研究室(以下、東大越塚研)との連携活動について紹介する。
目次

1.データスペースの動向

国境や企業の境界を越えて安全かつ信頼性の高いデータ連携を実現する枠組みとして「データスペース」の取り組みが世界的に広がっています。

欧州では、医療や製造、エネルギーなど多様な産業領域において、すでに実証から実装フェーズへと移行し、サプライチェーン全体でのカーボンフットプリント算定など、具体的なユースケースが社会に浸透し始めています。

日本においても、国内のデータスペースの構築に加え、各国のデータスペースとの連携を視野に入れた取り組みが動き始めています。今後は、企業内や業界内にとどまらず、業界横断といったさまざまなシーンでデータを循環させるエコシステム形成の重要性が一層高まると見込まれます。

2.NTT DATAの取り組み

こうした世界的な潮流を踏まえ、NTT DATAはデータスペースの社会実装をリードする立場として、国内外のステークホルダーと協働しながら技術開発・検証を推進しています。その取り組みの一環として、アカデミアとの連携活動にも力を入れています。

本稿では、その中でもデータスペース分野で先進的な研究に取り組む東京大学・越塚研究室との連携活動を取り上げます。

3.東京大学・越塚研究室との連携活動

NTT DATAと東大越塚研は、データスペースの研究と社会実装を両面から推進するため、以下の2つの連携活動を進めています。

  • 活動1:データスペースの社会実装を推進する「テストベッド」「教育プログラム」
  • 活動2:データスペースを学術的に深める「共同研究」

以下の章では、それぞれの活動をご紹介します。

活動1-データスペースの社会実装を推進する「テストベッド」「教育プログラム」

(1)「東京大学データスペース技術国際テストベッド」への貢献

「東京大学データスペース技術国際テストベッド」とは、東京大学が運営する、データスペース技術を実践的に試すことができる環境です。国内外から約30社・団体が参加しており、技術検証やユースケース創出、国際連携のための相互接続など、多様な取り組みが進められています。

NTT DATAは、本テストベッドに参画し、産学連携のもと、データスペースの社会実装に向けた実証環境づくりに貢献しています。さらに、グローバルなデータ連携に向けた技術検証も推進しています。これらの活動を通じて、データスペースの実践的な利用環境を整備するとともに、国内外のプレイヤーが参加しやすい基盤づくりに寄与しています。

写真:ルクセンブルク-日本間で初めてテストベッド上でデータ交換が成功した際の記念写真

上述のような国内外拠点との技術的な相互接続に加え、実際のユースケースに近い世界に先駆けた実証が進められています。

(2)「データスペース教育プログラム」への貢献

東京大学では、データスペースに関心のある技術者を対象に、概念整理やアーキテクチャの基本を学ぶ「データスペース教育プログラム」を提供しています。

2026年1月15日に開催された第2回教育プログラムでは、以下の講義が実施されました。

  • データスペース基礎講義(東京大学)
    データスペースの概念や動向、アーキテクチャを学ぶ基礎講座
  • データスペース実践演習(NTT DATA)
    当社提供の、データスペースを体験できるサンプルアプリケーションを用いて、参加者同士がデータ交換のプロセスを実際に操作しながら確認する演習

講義では、情報漏洩や改ざんがデータスペース上でどのように守られるのかといった、より実務に近いケースを、実機を用いて体感していただきました。データスペースの活用方法をより身近なものとして捉え、議論を深める内容となりました。

演習では、講義で学んだ内容を、実際に手を動かしながら具体的な体験として結びつけられる構成としました。参加者間で自身の業務や関心領域との関連性について意見交換をする時間が設けられ、具体的な利用場面を整理する機会となりました。

今後も複数のデータスペース教育プログラムが予定されています。NTT DATAは、データスペースの普及・展開を目指し、教材の提供に貢献する予定です。

活動2-データスペースを学術的に深める「共同研究」

世の中にデータスペースを普及させるために、ベースとなる技術仕様を理論的に定義する活動を実施しています。

(1)データスペースの先に広がる世界と課題

「データスペース入門」(独立行政法人情報処理推進機構が作成)によると、「データ主権」とはデータの提供元である企業や個人が、自身のデータ利用に関与できる状態を指します。複数のデータスペースが連携する際にも、このデータ主権が守られることが重要です。

現在、各地域・各国でデータスペースの実装が進んでおり、地域や業界の慣習を反映した多様なコンセプトに基づく仕様が生まれています。こうした多様性は、より優れた仕組みを実現していく上で望ましいことですが、多様な仕様・実装を持つデータスペース群に対してデータ提供・利用していく中で、建設的かつ効率的にデータ主権を守れるよう、ベースとなる考え方が必要です。そこで私たちは、各データスペースが理論的基礎として用いることができる記述論的モデル「ハイレベルアーキテクチャモデル」(Data Space High-Level Architecture Model、以下、DS-HLAM)を定義しました。

(2)データスペースを世に広めるためのベースとしてアーキテクチャモデルを提案

多様なデータスペースのコンセプトや仕様が存在する中で、それらの関係性や類似性を科学的に議論できるようにするため、DS-HLAMは、最低限のオブジェクトを持つモデルとしています。具体的には、データスペースを構成する5つのComponentsに加えて、Components間をつなぐためのインターフェース(I/F)であるMethodsを定義しました。5つのComponentsには、データ提供者側のポリシーである「Rules」を含みます。これを基に、さまざまなデータスペースのコンセプトや仕様、アーキテクチャモデルを応用的に表現することができます。

本稿では、Componentsについて紹介します。

  • Organizations(図内O):企業・行政・大学など
  • Data Provision Mechanisms(図内m):データベース・ファイル・APIなどの連携メカニズム
  • Data Units(図内d):共有・交換されるデータ(hはHeader、pはPayload)
  • Social Mechanisms(図内s):ID・認証・法制度・認定などのトラスト基盤
  • Rules(図内r):利用条件・制約・変換要件などの運用ポリシー

図:DS-HLAM概念図

この中で特に重要なのが、「Social Mechanism」と「Rules」です。この2つの存在によって、物理的なデータの移動のみならず、信頼性のあるデータ連携が可能なアーキテクチャとなります。「Social Mechanism」とは、社会的な合意形成・信頼性担保のための認証基盤や契約基盤などのことを示します。「Social Mechanism」と「Data Provision Mechanisms」は、データ提供者側の運用ポリシーである「Rules」に基づいて結びつけることで、データ主権を守りながら企業間でのデータ流通を可能にします。

世の中にはさまざまなデータスペースのコンセプトや仕様、実装が存在します。しかし、不特定多数の企業間のデータ連携に必要となる要件を抽象化して捉えると、「Data Provision Mechanisms」と「Social Mechanism」を連携させ、「Rules」に従ってデータ連携を行うアーキテクチャに帰着できる、というのが私たちの主張です。

ここでは詳細は省略しますが、Rules設定や、データ連携実行のMethod、Methodごとの形式的定義、有限状態オートマトンによるMethod間の状態遷移、さらには、データスペース間の相互作用についても定義しています。

例えば、データ連携のライフサイクルを状態遷移として表現し、各Operationの実行によって状態がどのように変化するかを数学的に記述することで、データ連携の営みを形式的に捉えることを試みています。多様な仕様や実装を抽象化した5つのComponentsと、それらの形式的定義を組み合わせることで、複数のデータスペースが混在する世界においても、データ主権を守りながらデータ連携を実現できる。こうした考え方に基づき科学的に議論できる基盤を提供しています。

なお、この取り組みは、論文としてIEEE BigData 2025 Special Session on Dataspaces and DFFTに採択され、2025年12月にマカオで発表しました。arXivにも公開していますので、ぜひご覧ください。
https://arxiv.org/abs/2509.12210

(3)今後の取り組み

今後は以下のテーマを取り上げ、活動予定です。

  • モデルの具体化
    今回はComponentsとMethodについて定義しましたが、実装に向けては、各Componentsの詳細なデータモデルや、Methodの具体化が必要です。
  • 実証による検証
    提案モデルの有効性を実証するため、実際の運用環境を題材とした体系的な評価を通じて、モデルの有効性を検証していく必要があります。

本アーキテクチャを皮切りとして、実装中心に進みがちな取り組みについての科学的評価を可能とし、異なる種類のデータスペースの連携に向けて、世界の技術者と議論を重ねていきます。利用者がさまざまなデータスペースのデータを利用できる世界の実現を目指しています。

4.終わりに

NTT DATAは、データスペースの実現に向けて、研究・技術検証・実証環境の整備・教育支援など、さまざまなステークホルダーと連携しながら取り組みを進めています。今回紹介した東京大学との連携も、こうした多様な取り組みの1つです。

データスペースを取り巻く国内外の環境は、いまなお大きく変化し続けており、技術面・制度面の議論や実践は、今後さらに広がることが期待されます。NTT DATAは、産学連携を強化し、データスペースに関する研究の深化と社会実装の拡大を両立させる取り組みを、今後も継続してまいります。安全で円滑なデータ流通を実現する社会の実現に向け、確かな形で未来のデータエコシステムづくりに貢献していきます。

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