キャンパスドンキ誕生の背景
まず、キャンパスドンキの概要と、誕生の経緯について教えてください。
PPIH 小林氏
キャンパスドンキは、2025年7月にドン・キホーテ初の無人小型店舗としてオープンしました。現在、国内3大学(※2026年8月時点)で営業しています。PPIHグループの「majica」アプリのバーコードをかざして入店し、商品を持ったままゲートを通るだけで自動的に会計が完了するため、短時間で買い物ができる仕組みです。
以前から「大学生向けのドン・キホーテを展開してはどうか」という案がありました。若年層との接点を強化し、majica会員を増やしたいという狙いもあり、企画が具体化しました。一方で、大学内に通常のドン・キホーテのような大型店舗を設置することはできません。またコンビニ規模の店舗を立ち上げた経験もなく、多店舗展開を見据えると、すべての店舗に人員を配置することも難しいという課題がありました。そこで、「小型・無人・レジレス」という店舗形態が適していると考え、NTTデータに相談しました。
図1:キャンパスドンキ桃山学院大店 外観
実際の顧客行動から見えてきた、新たな店舗づくり
学生が利用するキャンパス内の店舗としてどのような購買体験を目指したのでしょうか。通常店舗との違いも教えてください。
PPIH 小林氏
まずめざしたのは並ばずに短時間で買い物ができることです。手書きPOPや手書き値札を活用して、どこに何があるかを分かりやすく示しながら、無人店舗でもドン・キホーテらしいアミューズメント性を失わない買い場をめざしました。
当初は充電器や文房具などへのニーズがあると考えていましたが、実際に運営してみると、食品へのニーズが高いことが分かりました。そこで棚の構成を見直し、食品の割合を増やしました。ドン・キホーテの特徴であるトレンド品を含め、限られたスペースに何を置くか、現在も試行錯誤を続けています。
NTTデータ 新原
システム面では、実際の利用状況を見ながら、利用者が困るポイントを一つずつ改善しています。例えば、アプリをスキャンしても入店できない場合、理由が分からなければそのまま利用を諦めてしまう可能性があります。そこでエラーの内容を音声で案内するようにしました。また商品を取ったかどうかの判定にはカメラを使いますが、POPや装飾によって死角が生じることもありました。そのため「POPを外してほしい」といったシステム的な要望と、「最大限貼りたい」といった店舗側の要望をすりあわせ調整を重ねてきました。このように顧客の購買体験と新しい技術を両立させるため、さまざまな試行錯誤を重ねています。また、学生は友人同士で入店したり、店内で写真を撮ってSNSに投稿したりします。オフィス内店舗とは異なる利用行動も見られます。こうした行動も、実際に出店したからこそ分かったことの一つです。
図2:買い場づくり
キャンパスドンキの特徴の一つが、majicaを活用した会員型店舗であることです。そこにはどのような狙いがあるのでしょうか。
PPIH 小林氏
majicaはPPIHグループの公式アプリで、会員数は約2,100万人(※2026年8月時点)です。これまでは電子マネーや付帯機能として利用されてきましたが、キャンパスドンキではmajicaアプリを使って入店する仕組みを採用しており、アプリがないと入店できません。キャンパスドンキをきっかけにmajicaを利用してもらい、卒業後もアプリを通じて継続的な接点を持つことを目指しています。またキャンパスドンキから近隣の通常店(母店)への送客もKPIの一つです。majicaを通じて会員情報や購買行動をつなげることで、キャンパスドンキを起点とした顧客行動や送客効果も把握しやすくなります。一方で、利用者にとってはアプリのダウンロードがハードルになる面もあります。そこで、オープン記念にはmajicaポイントを提供し、まずはレジレス店舗の利便性を体験してもらう施策を行いました。
図3:キャンパスドンキの利用方法
データとAIを活用し、店舗を継続的に進化させる
「Catch&Go®」を活用してキャンパスドンキを実現するにあたり、どのような点を重視しましたか。また、実際の運用を通じて、どのような気づきがありましたか。
NTTデータ 新原
Catch&Go®はあくまで構想を実現するためのツールです。最初から完成形を決めすぎず、運用しながら改善を重ねていくことが重要だと考えています。PPIHには、新しいことに積極的にトライする柔軟な企業文化があります。私たちもその姿勢に伴走しながら、店舗づくりを進めてきました。
より運用しやすく、より売れる店舗を目指すなかで、例えば店舗のデータとAIを活用し、棚別の売り上げとリピート率を可視化するヒートマップを作成しています。日常的に利用される店舗だからこそ、販売数だけではなく一人ひとりの購買行動を分析し、通常の店舗では捉えにくいデータも活用しながら、これまでとは異なるアプローチで店舗を改善していくことが重要だと考えています。
PPIH 小林氏
私たちにとって、それは新しい考え方でした。通常のドン・キホーテの店舗では、売れ数をもとに商品を棚から外すかどうかを判断します。しかし、販売数が少なくても、特定の顧客が繰り返し購入している商品を外してしまうと、その顧客が来店しなくなる可能性もあります。そうした一人ひとりの購買行動を可視化してもらえたことは、店舗を改善していくうえで非常に参考になっています。
図4:棚別 売上×リピート ヒートマップ(開発中)
PPIHにとって、Catch&Go®の導入にはどのような価値がありましたか。
PPIH 小林氏
Catch&Go®の導入により、大学生が新しいテクノロジーに触れる機会をつくるとともに、買い物時間の短縮など新たな購買体験を提供することができました。
実証から100店舗へ。キャンパスドンキが目指す次の展開
最後に、キャンパスドンキを今後どのような店舗に育てていきたいと考えていますか。
PPIH 小林氏
今後は、商品やPOPなどを学生と一緒に考えながら、店舗を育てていきたいと考えています。実証実験を進め、将来的には100店舗規模への展開を目指しています。また、キャンパスドンキは若年層との接点を持てる場でもあることから、メーカーと連携した新商品の展開も考えています。
今回の取り組みを通じて、新しい挑戦では最初から完成形を固めるのではなく、アジャイル的に進めることが大切だと感じました。実際に運用することで、当初の想定とは異なることも見えてきます。そうした変化に柔軟に対応しながら試行錯誤を重ねていくこと、そして、ともに取り組むパートナーを選ぶことが重要だと考えています。
※「Catch&Go®」は株式会社NTTデータの登録商標です。


Catch&Go®詳細はこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/catchandgo/
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