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2026.7.21技術トレンド/展望

Agentforce最新事例に見る AI活用の着眼点

生成AIの活用は、多くの企業で進みつつある一方、PoCや一部業務での利用にとどまり、業務変革や顧客体験・従業員体験の向上までつながっていないケースも少なくない。背景には、顧客ニーズの多様化、人手不足、業務の複雑化といった課題がある。本稿では、グローバルのAgentforce活用事例からAIが業務の中で果たす役割や人とAIの協働が生み出す価値をひも解き、自社の業務におけるAI活用を検討する際の着眼点を示す。
目次

1.顧客体験・従業員体験の未来はAgentforceによってどう変わるのか

生成AIの活用は、多くの企業で既に始まっています。
文章作成や情報検索、議事録の要約など、個人の作業レベルでは確実に効率化が進んでいます。
一方で、多くの企業ではPoC(概念実証)や特定業務での試行利用にとどまり、業務プロセス全体に組み込まれた活用には至っていないケースも少なくありません。
生成AIを導入したものの、

  • 特定の担当者しか使っていない
  • 業務プロセスの一部でしか活用できていない
  • 効果は感じるものの、全社展開のイメージが描けていない
  • 顧客体験や従業員体験の変革につながっていない

といった課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。
その背景には、生成AIが「作業を効率化するツール」として利用される一方で、業務そのものの進め方までは変わっていないという実態があります。
さらに企業を取り巻く環境も大きく変化しています。

顧客ニーズは多様化・複雑化し、即時対応やパーソナライズされた体験が求められるようになりました。人手不足や属人化も進み、システムやデータは分散し続けています。加えて、AIやAgent技術そのものも急速に進化しており、AI活用をめぐる競争は加速しています。
こうした市場環境の変化により、企業は次のような経営課題に直面しています(図1)。

  • 顧客体験の差が、そのまま競争力の差になっている
  • 人中心の運営モデルが限界を迎えている
  • 生産性の低下によって対応品質とスピードが落ちている
  • 人とAIの役割や品質基準の再設計が求められている

図1:AI活用が求められる市場変化と経営課題

いま企業に求められているのは、単なる業務効率化ではありません。
品質・スピード・一貫性を維持しながら、顧客体験と従業員体験の双方を向上させることです。
その実現に向けて、先進企業ではAIを単なる作業支援ツールではなく、業務変革の打ち手として活用し始めています。
業務変革につながっているケースでは、AIは次のような役割を担っています。

  • 難解な業界用語や複雑な情報を理解し、要点を整理する
  • 複数のシステムに分散した情報へ横断的にアクセスする
  • 条件や文脈を踏まえ、次に取るべき選択肢を提示する
  • 確認・審査・調整といった業務を支援する
  • 業務データや対応履歴を活用し、継続的に提案や判断の精度を向上させる

これらに共通しているのは、人が時間を取られていた「複雑さ」をAIが引き受けている点です。
従来は、人が情報を探し、複数のシステムを確認し、経験をもとに判断していました。しかしAIがその一部を支援することで、人は顧客との対話や最終判断といった、より付加価値の高い業務へ集中できるようになります。
その結果、従業員は情報探索や確認作業の負荷が軽減され、顧客はより迅速で一貫性のある対応を受けられるようになります。

2.グローバル事例に見るAI活用の変化

先進企業ではどのようにAgentforceを活用しているのでしょうか。
グローバルの事例では、AIが単なるチャットツールではなく、業務の中で実際に働く存在として活用されています。

実際にNTT DATAでは、Agentforceの導入を検討する際、業務課題や期待する成果を整理しながら、AIの適用領域を検討しています(図2)。
以下では、その考え方が実際にどのような業務で実装されているのかを、グローバル事例をもとに紹介します。

図2:NTT DATAのAgentforce導入に実際に用いているFramework

複数システムに分散した情報を、AIが横断して活用

欧州大手銀行では、法人営業担当者向けにAI金融アシスタントを導入しています。
従来、担当者は顧客対応のたびに、財務情報や与信情報、リスク情報などを複数のシステムから収集し、それぞれの情報を確認しながら判断する必要がありました。また、訪問後の議事録作成やフォローアップにも多くの時間を費やしていました。

Agentforceは、Salesforceだけでなく複数のシステムにリアルタイムでアクセスし、必要な情報を収集・整理します。さらに、銀行業務特有の専門用語や業務ルールを理解したうえで、顧客訪問の要約や次のアクションの整理まで支援しています。
これにより、担当者は情報収集や記録作業に追われることなく、顧客との対話や提案活動により多くの時間を使えるようになりました。結果として、意思決定の迅速化や業務負荷の軽減、顧客対応スピードの向上につながっています。

在庫状況を踏まえた最適な商品提案

Salesforce Global Award を受賞したVolkswagen Group Espana Distributionの事例を紹介します。この事例では、ECサイト上の商品検索にAgentforceが活用されています。

図3:車購入までの顧客ジャーニーへのAI活用

従来、顧客が検索した商品の在庫がない場合、それが顧客離脱につながるポイントの一つになっていました。
Agentforceは、顧客の検索意図や過去の購買傾向を踏まえながら、複数の在庫システムを横断して利用可能な商品を検索し、代替候補として提示します。
特徴的なのは、単純に類似商品を表示するのではなく、顧客ニーズと在庫状況の双方を考慮しながら最適な選択肢を提案している点です。

大量のデータを横断的に参照しながら候補を比較・評価することは、AIが得意とする領域です。そのため、人では気づきにくい代替案や、よりニーズに適した商品を提示できるケースもあります。
その結果、顧客は商品を探し直すことなく検討を続けられるようになり、企業にとっても販売機会の損失を抑えることにつながっています。

さらに、この事例では商品提案だけでなく、営業活動を支援する要約機能やメール作成支援にもAIが活用されています。これにより、担当者は事務作業の負担を減らし、顧客対応や提案活動により多くの時間を使えるようになっています。

事例から見えてくるAI活用の可能性

これらの事例に共通しているのは、AIが単なる業務効率化ツールではなく、業務の一部を担う存在として活用されている点です。
複数システムに分散した情報を整理し、候補を比較し、人では気づきにくい選択肢を提示することで、顧客体験と従業員体験の向上につなげています。

重要なのは事例をそのまま模倣することではありません。
自社の業務に置き換えたとき、情報収集や確認、調整などの「複雑さ」をAIが支援できる余地はないか。その視点で考えることが、AI活用を具体化する第一歩になるのではないでしょうか。

図4:2つのAgentforce事例から見えてきたこと

3.AI活用で成果を生むための着眼点

本稿で紹介した事例が示しているのは、AI活用の価値が単なる工数削減にとどまらないという点です。
提案や対応の質の向上、判断の標準化、顧客と向き合う時間の創出など、AIは業務や体験そのものを変える可能性を持っています。
そのため、AI活用を検討する際には、

  • 自社の業務にどのような複雑さがあるのか
  • その複雑さをAIでどのように改善できるのか
  • 顧客体験や従業員体験にどのような価値を生み出したいのか

を整理することが重要です。
NTT DATAは、Salesforceの『Forward Deployed Engineering(FDE)』 Partner Networkのパートナーとして、Agentforceの実装から本番展開までを支援できる体制を有しています。PoCや試行導入にとどまらず、業務への定着や価値創出まで含めた伴走支援が可能です。

また、AI活用による効果は企業や業務によって異なります。工数削減だけでなく、顧客対応品質の向上や提案力強化、人材不足への対応など、着目すべき価値はさまざまです。
だからこそ、どの業務から着手するべきか、何を成果として捉えるべきか、費用対効果をどのように考えるべきかを含めて設計することが重要になります。
AI活用を判断するために、まず見るべきなのは技術ではありません。
『どのような顧客体験・従業員体験を実現したいのか』その問いから考え始めることが、AI活用の第一歩ではないでしょうか。

※本記事は、Agentforce World Tour 2026における、当社のラウンドテーブル「いま、AI活用を判断するために知っておきたいこと」の発表内容をもとに構成しています。

NTT DATAのSalesforceソリューションについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/salesforce/

「Forward Deployed Engineering Partner Network」に関するニュースリリースについてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/evaluation/2026/063000/

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