誕生「AI養老先生」
「AI養老先生」は、2024年1月25日に開催された特別鼎談「メタバースとAIが人の暮らしに何をもたらすのか?」をきっかけに誕生しました。
鼎談には、養老孟司氏(メタバース推進協議会代表理事)、VR研究の第一人者・廣瀬通孝氏、AI研究の先駆者・松尾豊氏が登壇し、AIやメタバースが社会や人の暮らしに与える影響について、多角的な議論が交わされました。
養老氏はAIやメタバースといった新しい技術に期待を寄せつつも、「自分の頭で考えることが大切だ」と強調しました。一方で「養老孟司の知能を有する自律アバターが、現実の養老孟司と語り合ったら何が起きるのか?」という問いに対して、「何ごともやってみなきゃわからんよ」、「やってみてわかることも出てくるだろう」といった言葉が飛び出し、「AI養老先生」開発プロジェクトの出発点となりました。
「AI養老先生」は、メタバース推進協議会、東京大学、NTTデータによる共同プロジェクトとして開発され、養老氏の外見を再現したフォトリアルアバターに、知識や思想を反映したAIを組み合わせ、本人らしい声で会話するよう設計されています。
そして2025年10月3日(金)、大阪・関西万博「フューチャーライフヴィレッジ」で開催された「AI養老先生誕生記念対談 - 知能と知性が響き合うふたりの養老」で初めて一般公開されました。
この様子は2025年10月8日(水)のNHK「おはよう日本」でも紹介され、“考えることを促すAI”として大きな注目を集めました。
知能と知性の対話
知能とは、学習や知識に基づき、明確な答えを導く能力です。一方、知性とは、明確な答えがない問いに対して深く探求する力とされています。たとえば、テストで答えを導くのが「知能」、答えのない問いに思索を続けるのが「知性」といえます。「AI養老先生」は、この“知能と知性のあいだ”をつなぎ、私たちの知性を呼び覚ます存在を目指しています。
第1部では、養老氏自身が「AI養老先生」と対面。VR研究の第一人者・廣瀬通孝氏による解説も交え、初対面の印象や感じたことに始まり、子どもや若者、意識と無意識、リアリティ、死生観など、社会的テーマを軸に対話が展開されました。自らの分身であるAIとの対話を通じて“一人の中に社会が生まれる”という新しい感覚を見いだした養老氏は、「一人の世界、広がりますね。」と静かに締めくくりました。
第2部では、「拡張する地域社会」をテーマに、東日本大震災からの復興に取り組む福島県(県知事・田村市・浪江町)、そして南海トラフ巨大地震の防災に取り組む高知県(県知事・危機管理部)の事例が各自治体よりスピーチや映像で紹介されました。養老氏は、福島県の復興について、他の地域の人々が「次には自分のところに来るっていう真剣さがどうも足りないような気がしている」と懸念を示しました。「AI養老先生」は、「地域の人たちが協力して進める体制を整えておくことが重要」と応えました。
最後は「現代版参勤交代(※)」について「AI養老先生」と養老氏が対話し、人間本来の生き方と防災・復興が密接に関わっていることが改めて見えてきました。

会場の様子

自律アバターについて解説する廣瀬通孝氏

「AI養老先生」との対談をする養老孟司氏

AI養老先生×養老孟司氏のツーショット
「現代版参勤交代」…都市と地方を定期的に行き来し、自然や地域と関わりながら暮らすライフスタイルのこと。
知性は拡張する - 「AI養老先生」が映す、人とデジタルの未来
「AI養老先生」は、問いに対してすぐに答えを返すのではなく、私たちが自分の頭で考えるための“余白”を与えてくれる存在です。その語りには、養老氏が長年伝えてきた「考えることの大切さ」が息づいています。テクノロジーが進化する時代にあっても、考え、問い続けることの価値は変わりません。
「AI養老先生」は、人とAIが知性を通じて学び合い、社会の未来をともに見つめる“知の対話者”として歩み始めています。そして今後、「AI養老先生」と人が語り合う新たな機会も構想されています。
著名な識者との“知の対話”、そして一般の方が直接質問できる“開かれた対話”-二つのかたちで、新しい思索の場が生まれようとしています。
現在、大阪・関西万博で展示された「AI養老先生」が期間限定でNTTデータのヘルスケア共創ラボに展示されており、実際に対話を体験することができます。
次はどんな問いが投げかけられ、どんな答えが返ってくるのか。あなたの“考え”も、ヘルスケア共創ラボで深めてみてはいかがでしょうか。


ヘルスケア共創ラボはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/HCClab/
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